不動産企業Webサイトのユーザー数ランキングを調査。集客のポイントは「自社の強みの打ち出し」

不動産企業Webサイトのユーザー数ランキングを調査。集客のポイントは「自社の強みの打ち出し」

不動産業界の企業について、各社のWebサイトの集客力をユーザー数ランキングで調査しました。上位には三井のリハウスや大和ハウス工業、三井住友トラスト不動産などがランクイン。Webでの集客に成功している不動産企業が、実施している施策も併せて分析します。


近年のIT化は、かつて実店舗での商談が主であった不動産業界の構図も大きく変えようとしています。建築、売買、仲介…と様々な業態を持つこの分野においては、この先ネット上でどれだけの顧客を創出し、集められるかというミッションが非常に重要です。

また、昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大により、いま現実問題として集客上の課題に直面している不動産関連の企業も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用い、Web集客に成功している不動産サイトのランキングデータを作成しました。ランキングに登場する不動産サイトから、実際にどのような戦略や施策でWeb集客を行っているのかヒントを探ってみましょう。

Webサイトユーザー数が多い不動産会社ランキング

Dockpitによって不動産関連の企業のデータを抽出し、訪問ユーザー数が多い順にランキング化したのが以下です。

「Dockpit」で抽出した「不動産 企業」「不動産 メディア」のWebサイトのユーザー数ランキング
期間:2020年9月〜2021年8月
デバイス: PC・スマートフォン
※不動産総合企業を対象にランキング化。不動産投資コンサル専門企業、不動産仲介マッチングサイト、住宅メーカー等はランキングから除外

最もユーザー数が多かったのは、三井不動産リアルティ株式会社が運営するブランドの「三井のリハウス」で、1年で640万UU弱となっていました。ランキング全体で最高位となっているほか、旧財閥系企業の運営する不動産サイトの中でも最も訪問者が多い結果となりました。

「三井のリハウス」は不動産売買サービスとして長い歴史を持ち(1981年にブランドが始動)、その知名度・紹介実績共に、業界内でのスタンダードとも言える存在です。

4位には540万UUで「大和ハウス工業」がランクインしており、建設会社系の不動産企業としては首位となっています。戸建てや分譲住宅のようなハウスメーカーとしての基本事業を軸に、近年では「D-room」ブランドで知られる賃貸住宅事業も大きな成長を遂げている企業です。

11位に登場している「三井住友トラスト不動産」は三井住友信託銀行グループの1社で、こちらは銀行系の不動産会社としては最もユーザー数が多くなっていました。不動産売買の仲介を専業としている企業で、不動産流通全般を手掛けているのが事業の強みとなっています。

Web集客に成功している3社の施策を考察

先ほどのランキングの各部門で首位に立った「三井のリハウス」「大和ハウス工業」「三井住友トラスト不動産」の3社のサイトを分析し、集客に成功している要因やWeb施策について考察していきます。

三井のリハウス | ディスプレイ広告を活用したブランディング戦略

「三井のリハウス」Webサイトの集客構造をDockpitで見てみます。

「Dockpit」で抽出した「三井のリハウス」Webサイトの「集客構造」データ
期間:2020年9月〜2021年8月
デバイス: PC・スマートフォン

集客構造の大きな特徴はディスプレイ広告による集客割合が37.5%で最大である、という点です。このことから、三井のリハウスがディスプレイ広告に大きな予算を投じている可能性が示唆されます。

ディスプレイ広告は、複数回の接触機会によって徐々に消費行動を促すのに適している特性を持つため、検討期間の長くなる不動産商材との相性が良いとも言えます。また、多くの人にとって定常的に購入する商品を取り扱わない以上、いざ消費者が検討フェーズに入った際に「想起」されるブランディングも重要な要素となります。

三井のリハウスではブランド想起の拡大目的でGoogleのディスプレイ広告を活用している事例もあり、広告の視覚効果や配信セグメントの最適化などによって、潜在顧客の創出に力を入れている様子が窺えます(参考:『「三井のリハウス」、ディスプレイ広告の新たな 潮流となる vCPM 運用でモバイルを活用した ブランディングに成功』)。

大和ハウス工業 | 「D-room」によるニーズへのアンサーと顧客接点づくり

次に、建設会社系でトップだった「大和ハウス工業」Webサイトの集客構造をDockpitでデータ抽出します。

「Dockpit」で抽出した「大和ハウス工業」Webサイトの「集客構造」データ
期間:2020年9月〜2021年8月
デバイス: PC・スマートフォン

上図、集客構造を見ると、最も割合が大きいのは「自然検索」の35.5%です。
具体的に自然検索によってユーザーがどのページに訪れているのかも調べてみました。

「Dockpit」で抽出した「大和ハウス工業」Webサイトの「ランディングページ」データ(セッション数で降順,TOP10)
期間:2020年9月〜2021年8月
デバイス: PC・スマートフォン

大和ハウス工業Webサイトの「ランディングページ」のデータを見ると、同社の手掛ける賃貸住宅「D-room」のサービスTOPと、物件検索ページのセッションが大きいことがわかります。

D-roomは時代に沿って変化している賃貸入居者のニーズに応え、大きく受注戸数を伸ばしてきた同社のヒット商品です。たとえば、D-roomにはホームセキュリティ・サービスのセコム等が付帯しており、防犯配慮型賃貸住宅として導入時から大変な人気を呼んでいます。同警備システムに加え、録画機能付きインターホンやIoTを備えたグレードも供給しており、機能性の面で高い需要を持った商品であると言えるでしょう。

そして、D-room入居者が上記の機能群を利用する際や、新しい機能を使い始める際のツールとして「myD-room」という会員向けサイトが用意されており、入居後のユーザーとも一定間隔でタッチポイントを作ることに成功しています。

実際に「myD-room」のサイトへアクセスすると、住宅設備だけでない入居者の「暮らし」全般に対するサポートサービスを充実させ、商品への付加価値の創出と、同社のマネタイズポイントの拡充を上手く両立できている印象です。

このように、ただ「建てて、渡す」といった物件供給だけに留まらず、その先の入居者のニーズや、D-roomという商品価値の創造に至るまでを考え推し進める同社の戦略が、絶対数の多い賃貸入居者からの支持を集め、多くのサイト訪問者の獲得にもつながっているのではないでしょうか。

三井住友トラスト不動産 | 専門分野での情報発信でSEOに強み

最後に、銀行系でトップだった「三井住友トラスト不動産」Webサイトの集客構造もDockpitで見ていきます。

「Dockpit」で抽出した「三井トラスト不動産」Webサイトの「集客構造」データ
期間:2020年9月〜2021年8月
デバイス: PC・スマートフォン

三井住友トラスト不動産のWebサイトへの「集客構造」を見てみると、69.8%が自然検索経由のユーザーで圧倒的に多い結果でした。同Webサイトのどのページに訪問者が多いのかを詳しく見てみましょう。

「Dockpit」で抽出した「三井トラスト不動産」Webサイトの「ランディングページ」データ(セッション数で降順,TOP10)
期間:2020年9月〜2021年8月
デバイス: PC・スマートフォン

上記、セッション数が多い「ランディングページ」のタイトルには、「境界立ち会いはどのように行うのか」「私道負担とその評価」「建築基準法上の私道に注意」といった不動産売買に関する専門的な解説記事が並んでいました。売買に関する専門知識を豊富に提供することで検索エンジン対策(SEO)が行われ、Webサイトへの訪問者を大きく集められている様子です。

なお、同Webサイトが検索エンジンに評価されているひとつの要因としては、

①不動産売買に関する情報量が多く"網羅性"が高いこと
②三井住友トラスト不動産という企業自体に業界内での"権威性"があること
③「不動産鑑定士」や「土地家屋調査士」などの"専門性"のある発信者がコンテンツを監修していること

…という、Google検索がWebサイトを評価する際の基準として設けている「E-A-T(専門性・権威性・信頼性)」の指標に沿っているからだと推察されます。

まとめ | 不動産サイトのWeb集客のポイント

今回分析してきた内容をおさらいすると、集客に成功している三社が三様に異なる戦略によって集客を行ってはいますが、いずれも「自社の強み」が最終的なWeb集客に繋がっている様子が見て取れました。

三井のリハウスの「ブランディング」や三井住友トラスト不動産の「専門分野の権威としての立ち回り」は、自社の「企業力」を的確に生かした集客戦略となっているのではないでしょうか。また、大和ハウス工業の「ヒット商品に集客を牽引させる」という図式も、「商品力」を大きな武器に昇華している印象です。

不動産会社だけに言えることではありませんが、改めて、企業が自分たちの強みを認識したうえで、最適なマーケティング戦略に打って出る重要性を感じられたように思います。

本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2020年9月〜2021年8月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス
※対象サイト:自社で不動産を保有し幅広くビジネス展開を行う、不動産総合企業が対象。不動産投資コンサル専門企業、不動産仲介マッチングサイト、住宅メーカー等はランキングから除外

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この記事のライター

国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。

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