現在、中国では半数近くの国民が口腔内トラブルに困っていますが、さらに新型コロナウイルス蔓延でマスク着用時間の増長により、口腔内トラブルが目立って来ました。口腔ケア用品ブランド「BOP」の創業者である劉濱は、「マスクをすると自分の口臭を自覚される方が非常に多くなったので、オーラルケアのためにマウスウォッシュや口腔用スプレーなどの口腔ケア用品を購入するようになりました」と語っています。
昨年度では、ほぼ全種類の口腔ケア用品の消費が増加しました。歯磨き粉や歯ブラシのような一般的な製品はもちろん、新しい商品の売行きも絶好調でした。
口腔トラブルの国民病化
「2021年飲食習慣と口腔内トラブルに関する報告」によれば、中国では口腔内のトラブルを持つ人口は年々増えており、昨年までには7億人を超えました。
中国版インスタグラム「RED」では、65万以上のオーラルケアに関するコンテンツがあります。それに伴い、マウスウォッシュと口腔洗浄器の売上は約100%、口腔用スプレーは約130%アップし、口腔ケア用品の市場は百億元(約1770億円)の規模に達しました。
2015〜2020年の中国における口腔内トラブルを持つ人数
口腔ケア用品の客層
まず、中国では口腔ケア用品の消費者の7割以上は女性です。この数字はCBNDataが公表した口腔ケア用品の消費者の特徴とも一致しました。CBNDataの「健康生活消費トレンドに関する報告」によれば、口腔ケア用品の消費者のうち、72%は口腔内トラブルは対人場面での不安をもたらし、67%は顔面偏差値を下げると考えているようです。
つまり、見た目を重視し、対人不安を感じやすい女性が口腔ケア用品を積極的に購入している可能性が高いということです。
次に、「2020中国口腔医療業界に関する報告」によれば、口腔ケア用品の消費者は20代に集中しています。
そのうち、20代前半の消費者は26%、20代後半は33%を占めています。また、中国最大のECサイト「Tmall(天猫)」は口腔ケア用品の輸入品の客層を分析しました。口腔ケア用品の輸入品は幅広い年代が購入していますが、その全年代の平均購入金額は平年と比べて増加しました。特に、全消費者の5割以上を占めている20代前半の消費者の平均購入額は、増加率が最多となりました。
さらに、「2021年TikTokオーラルケア業界に関する報告」から分かるように、口腔内のトラブルやオーラルケアに対して関心が高い人の半数近くは大都市に分布しています。
TikTokにおけるオーラルケアに関心を持つユーザーの特徴
オーラルケア市場のアップグレード
中国の20代の人口は約1.7億人です。継続して収入が向上するこの年代は活発に消費しているだけでなく、消費する際には商品のコンセプトや品質、外観、有効性など様々な方面を重視する特徴があります。
すなわち、中国の消費市場を支えている20代の消費意識が高くなったことで、中国の消費構造が変化しました。この変化はオーラルケア市場においても見られます。
近年の口腔ケア用品は消費者のニーズに合わせて大幅にアップグレードしました。口腔ケア用品の単価は10元(約177円)から20〜30元(約354〜532円)に上昇したという価格のアップグレードのみならず、革新的な製品を次から次へと生み出され始めたという、口腔ケア用品の種類とビジュアル・コンセプトのアップグレードも見られました。
■口腔ケア用品の種類のアップグレード
マウスウォッシュや口腔ジェル、マウススプレーなど、近年の口腔ケア用品は用途別に様々な種類があります。歯磨き一つとっても、歯間ブラシやデンタルフロス、スポンジブラシ、舌ブラシ、電動歯ブラシなどの、様々な新製品が流行り出しました。
「2020年オーラルケア業界最新のトレンドに関する報告」によれば、消費者のうちの31%は同時に2種類以上の口腔ケア用品を購入しています。これは、多くの人は歯磨き以外にも、マウスウォッシュやマウススプレーを用いて口腔ケアを行っていることを示唆しています。
また、近年中国では歯列矯正も注目されているため、昔なら歯科クリニックでしか見かけることのない口腔洗浄器も日常的に使用されるようになりました。REDで「口腔洗浄器」を検索すれば、3万以上のコンテンツと1800以上の商品が出てくることからも、口腔洗浄器の人気が窺えます。
「RED」におけるオーラルケアに関するコンテンツ
CBNDataのデータによると、歯磨き粉や歯ブラシのような一般的な口腔ケア用品は依然として高い購買頻度を維持していますが、マウスウォッシュと口腔洗浄器の市場成長率は100%、電動歯ブラシに至っては驚異の280%増、新種類の口腔ケア用品はかなり人気のようです。
■口腔ケア用品のビジュアル・コンセプトのアップグレード
上記のように、口腔ケア用品の消費者の約7割は女性で、口腔内のトラブルによって、見ためが悪くなり、さらに対人場面では不安を感じやすいと考えています。その心理に合わせて、コスメのような口腔ケア用品が生み出されました。
例えば、口腔ケア用品ブランド「BOP」はマウススプレーを「口腔のコスメ」と位置づけし、パッケージもリップのように小さく、可愛くすることで、爆発的な人気を獲得しました。
「BOP」のマウススプレー
一方、口腔ケア用品ブランド「CANBAN(参半)」の創業者である張軼は、マウスウォッシュをガムに位置付けることから商機を見つけました。
彼はインタビューで「従来の口腔ケア用品は、耐用財として扱われています。(中略)大量のマーケットアナリシスとユーザー調査を行った後、全種類の口腔ケア用品のうち、FMCG(Fast Moving Consumer Goods;商品回転率が高い消費財のこと)化の可能性が最も高いのはマウスウォッシュだということに気づきました。」と語っています。実際、CANBANが昨年10月に発売したマウスウォッシュは、80日だけで1億元(約18億円)を売り上げました。
まとめ
大量の時間とお金をかけてオーラルケアを丹念に行う人がいる一方で、朝と夜にしっかりと歯磨きすることもできない人も存在しています。第4回の全国口腔流行病学に関する調査の結果に示されているように、中国では1日に2回歯磨きする人口は36.1%しかありません。また、2019年の世界におけるマウスウォッシュの市場規模はオーラルケア市場の10.97%を占めているのに対して、中国では僅かの1.45%と、まだまだ中国のオーラルケア市場には成長があると考えられます。
<参考文献>
「美妆化的漱口水、9.9元的电动牙刷,口腔里的“快消”战事拉响」
https://www.cbndata.com/information/198749
「2020口腔护理行业最新趋势报告」
https://www.sohu.com/na/445509395_384789
「线上口腔微损伤修复市场达百亿规模,云南白药口腔健康关注国人口腔黏膜健康」
http://news.hexun.com/2021-11-01/204646733.html
「为什么说中国口腔市场是创新大赛道?」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1700271825070282792&wfr=spider&for=pc
「口腔经济崛起:一口好牙齐又白,千亿市场随风来」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1706667373181735245&wfr=spider&for=pc
「社交焦虑障碍为何男女有别?」
http://blog.sina.com.cn/s/blog_13e620b4a0102vb6l.html
「2021抖音口腔护理行业洞察报告」
https://finance.ifeng.com/c/88fdu3x8NIR
「对话未来商业 | 漱口水“美妆化”?参半张轶:口腔护理快消化时代已经来临」
http://www.nbd.com.cn/articles/2021-08-03/1862849.html
中国出身の留学生。立教大学大学院に在学中。