Yahoo!が参入するクイックコマースは日本で広がるか?市場動向をWebサイトデータで分析

Yahoo!が参入するクイックコマースは日本で広がるか?市場動向をWebサイトデータで分析

インターネットを介した多様な購買活動が発展してきた昨今、にわかに注目を集めている「クイックコマース」という形態。欧米で急成長を遂げているクイックコマースの市場が、同じように日本国内でも拡大していくのかどうか気になるところです。この記事では、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用し、国内のクイックコマース市場の展望を探っていきます。


Yahoo!も参入「クイックコマース」とはどんなサービス?

クイックコマースとは、数十分程度の短時間で注文者へ商品を即配するサービスのこと。「Qコマース」とも呼ばれます。

実店舗を持たず、配達員が配達専用店(ダークストア)から、食品や日用品などの商品を二輪車などで運びます。また、サービスのAIが自動で配達先近辺の配達員へ配送指示を出すことで、効率的かつ迅速な商品の提供を確立している点が特徴です。

クイックコマースの需要は、2020年以降の新型コロナウイルスによるパンデミックが後押しとなり急拡大しました。人々が自宅近辺からの移動を制限される中、日々の生活必需品を購入するのにEC市場全体が活性化しましたが、例えば、「夕食のおかずにもう一品加えたい」といった消費者の衝動的な意欲が起こった場合、一般的なECでは配送までの時間的な制約が生まれてしまいます。

この問題を解消するサービスとして、注文から数十分という短時間での配達が可能なクイックコマースに脚光が当たっていると言えるでしょう。国内のニュースとしては、 Yahoo!などの運営で知られるZホールディングスが、2022年1月より「Yahoo!マート by ASKUL」という名称で同分野でのサービス提供を開始し、22年度中に東京23区全域のエリアをカバーするべくダークストアの出店を進めています。

クイックコマースの海外市場と国内マーケットにおける見込み

米国のクイックコマースの市場規模は、21年時点で200億~250億ドル(およそ2兆3000億~2兆8750億円)と推定されており、既に大きなマーケットになっていることが窺えます。日本と同じく、やはり新型コロナによる影響により一気に需要が拡大し、市場が急成長した様子です。

では、日本国内においてクイックコマースの市場がどれほど大きくなるか、という見立てについては、EC市場全体の成長度合いが1つの参考になるかと考えます。経済産業省のまとめる「令和 2 年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」を見ると、コロナ禍を通じて国内のECの市場が大きく伸長している様子が見て取れます。

クイックコマースでの配達の主となる商品ジャンルの成長率を見てみると、例えば「食品・飲料・酒類」では19年と比べて21.13%の市場成長が見られ、EC化率も0.4%ほどの伸びとなっています。 同じく、「化粧品・医薬品」では17.79%、「生活雑貨」では22.35%と大きな成長が見られ、双方のEC化率も同様です。

このように、クイックコマースの市場がEC全体の市場成長に沿うのであれば、マーケットの展望には明るいものがあるのではと推測できます。

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一方で、先駆けて2020年から日本市場へ展開していたデリバリーヒーロー社の「pandamart(パンダマート)」は、同社が手掛けるフードデリバリーサービスの「foodpanda(フードパンダ)」とともに、2022年1月に事業撤退しています。同社が日本市場からの撤退理由に挙げているのが「競争激化」と「労働力不足」です。

前者の「競争激化」は、主にフードデリバリーの領域におけるシェア争いを指すのではと考えられます。foodpandaの参入領域では、既に「Uber Eats」や「出前館」といった大きなプレイヤーがしのぎを削っています。これに対して、まだ市場が大きくなっていないクイックコマース部門のpandamartだけでは、日本国内での事業継続はできないという判断がなされたのではないでしょうか。

また、後者の「労働力不足」については、次項で別の観点と合わせて説明をしていきます。

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クイックコマース浸透の鍵はギグワーカーの労働環境の改善か

近年「ギグワーク」という単発での業務を請け負う就労形態が拡大しています。(詳細は下記の記事で解説しました。ぜひ併せてお読みください。

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ギグワークという形態と、クイックコマースの親和性は高いです。AIによって最適な配達員のアサインを行うクイックコマースのサービスは、空き時間で行えて、かつ単発で業務を請け負うことを希望するギグワーカー達のニーズにマッチしている形態であると言えます。

このギグワークに関しても、新型コロナウイルスの影響によって収入が減ってしまった労働者の現状に沿う形で、市場が拡大した背景を持ちます。コロナ禍で外出の伴う買い物が減ってしまった市場への影響が、宅配とギグワークという形で、消費者と労働者それぞれのニーズに呼応する形で伸びている点は興味深いです。

一方で、前項でもお伝えしたデリバリーヒーロー社の事例のように、「自社サービスを拡大するにあたって配達員をどれだけ確保できるか」という点が、共通して今後の課題になるのは間違いありません。

実際に、フードデリバリー業界では参入企業が急増したことで各サービスの価格競争が激化し、配達員に支払われる報酬額が低下したことが、配達員たちの間に不安を広げているといった報道がなされています。こうした動きによってギグワーカー達からの需要が低下してしまえば、クイックコマースにおいても同様の労働力不足が起こることは必至です。

なお、Yahoo!マート by ASKULが報じている記事では、「フードデリバリーの注文が少ないアイドルタイムに配達を行うことで配達員であるギグワーカーの労働環境の安定化に寄与する」といった内容もあります。やはり、類似した対労働者のサービス改善が、クイックコマース市場全体で取り組まれていく必要があるでしょう。

Photo by Adobe Stock

日本におけるクイックコマース業界のプレイヤーを調査

日本におけるクイックコマース市場は黎明期ということもあり、まだプレイヤーが多く参入しているわけではありません。

ここでは2022年3月現在、国内でクイックコマースのサービス提供のある、「Yahoo!マート by ASKUL」「OniGo」の2サービスについて、手元のブラウザでスピーディーに競合サイト分析を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」で調査していきます。

はじめに、両サービスのWebサイトへの訪問ユーザー数のデータです。

「Yahoo!マート by ASKUL」と「OniGo」のサイト訪問ユーザー数の推移

「Yahoo!マート by ASKUL」と「OniGo」のサイト訪問ユーザー数の推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年3月〜2022年2月
デバイス: PC・スマートフォン

OniGoのサービス開始は2021年8月、Yahoo!マート by ASKULは2022年1月です。

昨年夏よりスタートしたOniGoは、サービス開始当初は月間7,000人ほどのユーザーがサイトを訪れた後、秋~冬にかけてはユーザーが減少しましたが、その後年始からは急激に訪問ユーザーが増加しています。一方、2022年からスタートしたYahoo!マート by ASKULは、開始当初から月間約2万人に近い訪問ユーザーを集めています。

時節としては、ちょうどオミクロン株による新型コロナウイルスの急速な感染拡大が22年の年始から起こっているため、両サービスへの需要が高い時期に合わせて、訪問ユーザーが増えている状況もあると思われます。

つづいて、両サービスのWebサイトへ訪問したユーザーが閲覧している、他サイトの情報も見てみましょう。

 「Yahoo!マート by ASKUL」と「OniGo」の訪問ユーザーの閲覧サイト

「Yahoo!マート by ASKUL」と「OniGo」の訪問ユーザーの閲覧サイト(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年3月〜2022年2月
デバイス: PC・スマートフォン

閲覧サイトは、全体的にニュースメディアが目立つ印象です。これは、実際にサービスの利用を考えるユーザーが見ているというよりも、クイックコマースという新しい業態に対して、情報のキャッチアップやビジネスのきっかけを模索している層に閲覧されている可能性が高そうです。

国内ではまだまだ認知も参入も少ない市場なので、新規サービスへの感度の高いビジネスパーソンによって、盛んに情報収集がおこなわれているというのが現状ではないかと思います。

クイックコマースの分析まとめ

今回は、新進気鋭のクイックコマース市場について、日本国内での展望について調査をしてきました。わかったことのまとめは以下の通りです。

• コロナ禍を通じてクイックコマースを含む日本のEC市場全体の成長は著しい
• クイックコマースの市場拡大には労働力の確保が大きなポイントとなりそう
• クイックコマースへの関心は伸びているが今はビジネス上の情報収集の目的が大きそう

フードデリバリーが一気に浸透したように、クイックコマースの業態も急速にスタンダードになりえる要素は多数、持ち合わせていると思います。それは、Zホールディングスのような大きな資本を持つ企業が参加し始めていることからも明確です。

一方で、多数のサービスが乱立していくことによる競争激化や、それに伴う労働力の確保が至上命題なのは間違いないでしょう。対労働者の観点で優れた環境を用意できることが、クイックコマース業界における成功と拡大のファクターなのではと筆者は感じました。

本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年3月〜2022年2月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。

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