ヴァリューズで金融業界向けにウェビナーを行っている3名の担当者が、2021年11月に実施した証券(投資信託)口座開設者に向けたアンケート調査、及びWebログに関する調査に関する分析を5ヶ月にわたり、初回分析・2回目分析・最終分析と3回に分けてウェビナーにて公表した試みを紹介します。
・大手ネット証券
SBI証券、楽天証券
・その他ネット証券
マネックス証券、岡三証券、岡三オンライン証券、GMOクリック証券、松井証券、auカブコム証券、LINE証券
・都市銀行
三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、ゆうちょ銀行
・メガグループ証券
三菱UFJモルガン・スタンレー証券、みずほ証券、SMBC日興証券
・大手証券
野村證券、大和証券
・地方銀行・信用金庫
(左上)株式会社ヴァリューズ コンサルティングG マネージャー 横井涼
(右上)マーケティングコンサルタント 辻阪誠
(下)ソリューション局 データアナリスト 檜山和希
※鼎談はオンラインで実施
【初回分析】大手ネット証券で口座開設する人は金融リテラシーが高い?
横井涼(以下、横井):初回ウェビナーに際して、大手ネット証券と地方銀行・信用金庫にて口座開設したという消費者の分析から始めました。改めてその結果について振り返りたいのですが、辻阪さんはどのような傾向を捉えたのでしょうか?
辻阪誠(以下、辻阪):大手ネット証券と地銀信金の分析結果は、大手ネット証券での口座開設者は金融リテラシーが高く、地銀信金はリテラシーが低いのではないか?というものです。
大手ネット証券での口座開設者はアンケートで金融について勉強していると回答する人が多かったですし、Webログからみても金融商品にかかわらず何でもおすすめ・ランキングサイトを検索する習慣がある人が多いという傾向がみられました。
対して地方銀行・信用金庫での口座開設者は営業担当や家族や知人に聞くと回答する人が多い等、自分自身で積極的な情報収集はさほどしていないという印象を受けました。
Webログ分析では主婦層などお子さんがいて日常的に忙しい人が多いのか、Web上での行動は突発的で脈絡がないものが多かったです。
大手ネット証券を選んだ人の特徴
地方銀行・信用金庫を選んだ人の特徴
【2回目分析】大手ネット証券で口座開設する人は実は金融リテラシーは高くない?
横井:2回目のウェビナーでは大手証券と都市銀行も加えて調査を行いました。大手証券の口座開設者はアンケートでは金融リテラシーは中程度と判断される回答をする人が多かったですが、Webログをみるとリテラシーが高いと判断できる人が多いという結果が見えました。檜山さん、この結果からどのようなことを考えましたか?
檜山和希(以下、檜山):大手証券での口座開設者は投資経験が豊富であるがゆえにより専門的な知識がある人がいるという事実認識から謙虚な回答になっているのかと思いました。というのもWebログをみると社会や経済に関する考察記事を習慣的に閲覧していたりと金融リテラシーがある人がするであろう行動が多くみてとれたからです。一方、初回の分析を振り返って大手ネット証券での口座開設者のWebログを改めてみると、ランキングやオススメを把握したいという閲覧が多かったです。
この様な行動に代表される大手ネット証券での口座開設者と、世の中の動きを把握したいという大手証券口座開設者層とでは消費者像は変わるのだろうという気づきがありました。すなわち大手ネット証券の口座開設者と大手証券の口座開設者を比較すると、大手ネット証券の口座開設者を金融リテラシーが高いと考えるのは難しいと思いました。
横井:もう少し具体的に大手ネット証券、大手証券の口座開設者のWeb行動について説明してもらえますか?
檜山:大手ネット証券の口座開設者だと、例えば、検索エンジン経由だと多いのは「投資信託 おすすめ」などからアクセスするランキングサイトや比較サイトの利用者ですね。ランキングサイトではネット証券をおすすめしている記事やブログが割合として多く、そこから口座開設に繋がるケースが多いと見受けられます。一方、大手証券で口座開設している人は政治カテゴリーに強い関心のある傾向がありますね。金融に関する記事やメディアを閲覧するけれども、必ずしも比較サイトやランキングサイトは見ないということも読み取れています。
横井:このような分析からどのようなことを考えましたか?
檜山:銀行や証券会社が考える消費者像と大手ネット証券で口座開設する消費者の消費者像にはギャップがあるのではないかと思いました。
横井:元金融機関にいた者としては(横井は三菱UFJ銀行やプルデンシャル生命に10年ほど勤務経験あり)ドキッとする指摘でしたね(笑)。初回分析では大手ネット証券と地方銀行のみ。そこに大手証券等を加えると消費者像が解像度を増してみえてきたのが印象的でしたね。
辻阪:アンケート回答からは大手証券の口座開設者のアンケート回答から保有している金融資産の幅が大手ネット証券口座開設者よりも広いことも分かりました。大手証券と大手ネット証券の口座開設者では年齢の違いも大きく、若年層の多い大手ネット証券はつみたてNISAなど限定的な利用が多いという傾向もありました。ここから考えても二者を比較した時には大手証券の口座開設者のほうが金融リテラシーの高い消費者像が浮かび上がるのではないでしょうか。
アンケート結果のまとめ
年齢・リテラシー別のWeb検討行動
【最終分析】メガグループ証券の口座開設者が銀行や証券会社が想定する消費者像に1番近い?
横井:3回目のウェビナーではメガグループ証券やその他ネット証券も追加して、調査対象をデータ取得した全てとした上で、ここまでの経緯から独自の考察も踏まえて年齢と金融リテラシーで各金融機関をポジショニングしてみました。辻阪さんいかがでしたか?
辻阪:メガグループ証券で口座開設している人が最も、銀行や証券会社の担当者様からよく伺う消費者像に近いのではないか?と思いましたね。昨今、商銀各行がグループ証券さんと連携強化していることがよく分かる納得感のある結果だなと。
横井:たしかに。今回段階的に分析を実施してきましたが、各金融機関毎の口座開設者にそれぞれ違いがあることがみえてきましたね。
檜山:各金融機関が捉えている消費者像はそれぞれに違うのかもしれませんね。そうなると、いまの取り組みの目指している方向性によっては本当にそれでいいのかと考える必要があるのかもしれないと思いました。
横井:そうかもしれないですね。消費者像が変われば当然打つべきマーケット施策も変わってくると思います。
アンケート×Webログデータを用いた消費者分析まとめ
今後の取組みについて
辻阪:ウェビナーにご参加いただいた方からはもっと消費者像を詳しく知りたいという意見が多かったです。さらに分析をすすめていくべきと考えています。
例えば投資信託を購入するために投資の勉強をしたというデータだけでなく、投資信託を買ってお金が増えたら何がしたいのか?など、その先の目的までデータを取得すること等で、ご要望にお応えできるのではないかと考えています。
檜山:投資信託だけでなく個別株やつみたてNISAなどの選択理由などについても「知りたい」とお考えの方もいらっしゃいましたし、そのデータからも新たな気づきが得られるはずです。
消費者像は変化し続けていく
横井:いかがでしたでしょうか?通常の調査では全てのデータを分析した上で結論を出しますが、今回の試験的な取り組みでは数ヶ月にわたってデータ分析を段階的に進め、それをウェビナーという形で公表していきました。
分析の過程でこれまでなかった気づきが出てきたりと刺激的なことがありました。これをもう少し拡大して金融商品・サービスを取り巻く環境全てと考えた時にどうでしょうか。昨今、これまでなかった金融商品・サービスもどんどん増えてきています。それがでてくるたびに消費者のニーズも変容していくのではないでしょうか。変化を捉え続けていくことの重要性を、いま一度強く感じる取り組みになったのではないかと考えています。
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フリーランスのライターです。SEOで1位を出してます。
ビジネス系の中ではtoB向けの執筆が得意です。
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