ヤクルト1000……なぜここまで大バズり?検索ワードから見えた「SNS投稿したくなるきっかけ」

ヤクルト1000……なぜここまで大バズり?検索ワードから見えた「SNS投稿したくなるきっかけ」

食品業界のマーケターや、トレンドに敏感なマーケター層に向けて、食品のトレンドを分析します。今回のテーマは「ヤクルト1000」。とにかく様々な場所でよく耳にする「ヤクルト1000」ですが、なぜここまで流行っているのでしょうか?そこで今回は「ヤクルト1000」検索者のデータからそのブームのきっかけと理由を分析します。


ヤクルト1000とは?

「ヤクルト1000」と呼ばれている商品には実は2種類あります。「Yakult1000」と「Y1000」です。

いずれもヤクルトが販売している飲料ですが、従来のヤクルトと比べ、ヤクルト独自の乳酸菌の「シロタ株」が1本に1,000億個(厳密には「Yakult1000」は1,000億個、「Y1000」は1,100億個)入っているというもの。これは歴代のヤクルト製品の中でも圧倒的に多く、それに伴いストレス緩和や睡眠の質を向上できる機能があると言われています。「シロタ株」は身体の環境変化やストレスによって発生する情報をつかさどる神経系に作用することから、効果が得られるとされています。

「Yakult1000」はヤクルトレディが届けてくれる商品で2021年4月に全国発売を開始、「Y1000」はスーパーやコンビニで一般販売されている商品で2021年10月に全国発売を開始しました。

研究結果などにより、ヤクルトのホームページでもはっきりと「ストレス緩和」「睡眠の質向上」と謳っているのが特徴で、その商品特性は確かに素晴らしいもののようですが、なぜここまでの大ブームにつながったのでしょうか?

2022年2月から検索数が急上昇!

Dockpitの検索キーワード分析を見てみると、まず顕著なのが検索ユーザー数推移の爆上がり具合。(※Dockpit(ドックピット)とは、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールです)

「ヤクルト1000」検索ユーザー数推移
(集計期間:2021年5月〜2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

それまでは月間数万人程度だったところが、2月以降ものすごい勢いで右肩上がりに。3月には12万人、4月には35万人と伸長しています。

「ヤクルト1000」季節比較
(集計期間:2021年5月〜2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

季節比較で掛け合わせワードを見てみても、それまではおそらくヤクルトを好きで飲んでいる人が価格や効果について調べている程度だったと予想される状況が、2月以降は「どこで買える」「通販/Amazon/楽天」「あらゆる効果/眠くなる」など買える場所を知りたがっていること、そしてその効果について興味を持っている爆増したことがわかります。

「ヤクルト1000」季節比較2022年2月~4月
(集計期間:2021年11月〜2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

中でも目立つのが「マツコ」というワード。2022年4月4日放送の「しゃべくり007(日本テレビ)」にゲスト出演したマツコ・デラックスさんが「最近さぁ、ヤクルト1000……あれ飲んでからすごく眠りが良くなった」「(1日)1本でいいって言われてるんだけど念のため2本飲んでる」と発言したことが話題になりました。その放送直後から、スーパーやコンビニでは欠品が相次ぎ、改めてマツコ・デラックスさんの影響力が話題になったのです。

さらに、過去にはマツコ・デラックスさん以外の芸能人もその効果をテレビやSNSで発信しています。華丸大吉の大吉さんはテレビで「寝れなかったが、人に勧められて飲んだらぐっすり寝れるようになった」と発言。

サカナクション山口一郎さんも「松任谷由実さんに勧められて飲んでいる」と発言。

ほかにも、ぼる塾の田辺さんや

高嶋ちさ子さん

など多くの芸能人が宣伝でもないのにこぞって紹介したことから、興味を持った人が多かったことがうかがえます。そして実際に飲んだ結果、効果を実感した人がどんどんネットで自分の体感した効果を投稿し、ブームとなったのではないでしょうか。

「ヤクルト1000」属性別マップ
(集計期間:2021年5月〜2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

属性別マップを見てみると、興味を持っているのは女性が多く、その検索ワードは「お試し」や「お得な買い方・キャンペーン」、「買える場所」「効果」「飲む時間」など多岐に渡ります。男性は類似商品である「R-1」「カルピス」との比較や花粉症への効果が気になっている方がいるようですね。

「悪夢を見る」という噂もバズりの理由のひとつ?

季節比較の掛け合わせワードで「マツコ」というワードに続いて気になるのが「悪夢」というもの。買える場所や効果について調べる人が多いのは理解できますが、健康飲料で「悪夢」というワードが多く検索されるのはなぜなのでしょうか?

「ヤクルト1000」季節比較2022年2月~4月
(集計期間:2021年11月〜2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

調べてみると、なんと口コミの中に「確かに睡眠の質は上がるが悪夢も見る」「悪夢を見て夜中に飛び起きることもあるがそれでも目覚めはすっきりしている」と言ったコメントが多いことから「どういうこと?!」と多くの人が気になり、話題になっている様子。

「すごく効果を感じる良い商品だった」というだけでなく、「人によっては悪夢を見ることもあるらしい」というギャンブル的な(?)ところも話題にしたくなる要素なのかもしれません。良いことでなくても「私の場合どうなるんだろう……試してみたい!」と思わせるネタがあること、そして「私はこうなったよ!」と報告したくなる要素はネット時代にバズるためには欠かせないポイントなのですね。

ちなみに、流入ページの上位にはAmazonでの販売ページがあり、多くの人が流入していることがわかります。

「ヤクルト1000」流入ページ
(集計期間:2021年5月〜2022年4月、デバイス:PC&スマートフォン)

しかし、Amazonの販売ページを見てみると、その価格は7本で3,300円(5月16日現在)……。「Yakult1000」はメーカー希望小売価格130円(税別)、「Y1000」はメーカー希望小売価格150円(税別)ですから、あまりにも高騰しています。入手困難とはいえ、ヤクルトの販売所での購入や、定期購入の申し込みで購入できるようです。不当な金額で購入してしまわないように注意しましょう。

まとめ

今回の「ヤクルト1000」の分析から、ブームを巻き起こすためには「火付け役として発信する存在」に加え、「自分も購入してその感想を発信したい」と思える要素があることが重要なのではと感じました。

商品の魅力はもちろん必須ですし、芸能人が宣伝してくれたら話題になるのは当たり前です。しかし、それに加え「自分も試したらこうなった」を伝えたくなる要素……今回の場合は「悪夢」もキーワードだったのではないかと思うのです。もちろん、「悪夢」のように一見マイナスに捉えられてしまうワードが良いとは限らず、ヤクルト側も意図したものではないでしょう。しかし、要素として地球グミの「ASMR」のように、「自分もやってみたい」と思わせる何かがあることはバズりのきっかけを作ってくれるかもしれません。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。

関連する投稿


The latest trends provoke “empathy for real-life negative situations”? Analyzing popular characters and events

The latest trends provoke “empathy for real-life negative situations”? Analyzing popular characters and events

To generate buzz in a systematic manner, rather than by chance, it is important to look for commonalities in why certain things become a trend. We will analyze recent trends such as "cat memes," popular characters, and events to determine "what people are supporting these days, and why."


現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!早くも「夏」の準備開始?「母の日」プレゼント選びも(2024年5月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!早くも「夏」の準備開始?「母の日」プレゼント選びも(2024年5月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

Z世代のデータアナリストが、自らZ世代の行動データを分析する本連載。第19弾となる今回は、Z世代とミレニアル世代の検索キーワードランキングから、「夏」「母の日」の2テーマを取り上げてZ世代のトレンドをお送りします。Z世代の準備・楽しみ方が気になる「夏」、「母の日」のプレゼント選びの悩み など、データとリアルな声を掛け合わせ、Z世代のニーズを読み解きます。


「おぱんちゅうさぎ」人気に迫る!トレンドの共通点は「等身大なネガティブに対する共感性」?

「おぱんちゅうさぎ」人気に迫る!トレンドの共通点は「等身大なネガティブに対する共感性」?

若者の間で、「ちいかわ」を超えて人気に火がついていると言われる「おぱんちゅうさぎ」。なぜ人々は魅了されてしまうのか?「おぱんちゅうさぎ」がどのような人を取り込み、なぜ人気なのか、昨今のトレンド「ちいかわ」「猫ミーム」「やだなー展」などとの共通点も探りながら、分析していきます。


最終章まであと少し!「鬼滅の刃」トレンド変遷

最終章まであと少し!「鬼滅の刃」トレンド変遷

2024年5月から、TVアニメ最新作「柱稽古編」が放送中の「鬼滅の刃」。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は国内歴代興行収入1位を記録するなど、社会現象的な大ヒットを飛ばした本作ですが、最終章に向けて、世間の関心はどのように移り変わっているのでしょうか。TVアニメシリーズ放送前から現在に至るまでの関心の度合いと、初期から関心層がどのように変化していったのか、分析していきます。


Analyzing dramas, anime, and games is getting popular among young people! Why is it trending?

Analyzing dramas, anime, and games is getting popular among young people! Why is it trending?

In recent years, there have been lots of “analysis” content, especially popular among young people. They cover a range of subjects, and platforms for expressing insights and “analysis” in writing is gaining popularity. Let's look at data to understand its popularity, different from that of “spoilers” or “synopsis”!


最新の投稿


アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

Repro株式会社は、アパレル系店舗アプリのインストール前後の利用状況に関するユーザー調査を実施し、結果を公開しました。


認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

未知株式会社は、全国の企業に在籍する20〜60代の方を対象に「コンテンツマーケティングの実施・成果」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

近年、美容インフルエンサーの発信により特定のスキンケア成分がフォーカスされ、「成分関心層」が増加しています。今回は、@cosmeを運営するアイスタイル社が保有する、日本最大級の美容に関する生活者データと、ヴァリューズが保有するオンライン行動データを活用。成分に関する情報感度の高いアーリーアダプター層に注目し、その裏にあるユーザーインサイトから、成分関心層と取るべきコミュニケーションを探ります。※本セミナーのレポートは無料でダウンロードできます。


官民連携の智略 ~ PPP/PFI

官民連携の智略 ~ PPP/PFI

高い効率性が求められるのは今や個人の仕事や学業の範疇にとどまらず、国の施策運営である公共事業などにもその思考傾向は浸透しつつあります。その結果、国は民間企業の協力を得て「官民連携」で公共事業を進めることでそれらを効率化し、さまざまな事業を支えている例が多く存在します。本稿では、このような「官民連携」で効率化を目指す手法のPPPやPFIなどについて、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が解説します。


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ