今年の「618キャンペーン」、Eコマースは盛り上がらず?|中国トレンド調査

今年の「618キャンペーン」、Eコマースは盛り上がらず?|中国トレンド調査

中国で毎年恒例のECセール「618キャンペーン」。ECショップやプラットフォームが収益を上げる大きなチャンスとなるはずですが、コロナウィルス感染症の流行や街のロックダウン、消費意欲の減退など「不安要素」が相次ぐ中、各プラットフォームはどのような対策を打ち出しているのでしょうか? 本レポートでは、3大プラットフォームであるTmall、Douyin(中国版TikTok)、京東による2022年「618キャンペーン」期間中のプロモーション施策を詳しく紹介し、今年の特徴をまとめていきます。


2022年5月16日に中国国家統計局が発表したデータによると、4月の消費財小売総額は2兆9483億元で、前年同月比は11.1%減となり、中でも自動車分野では31.6%の減少となりました。
また中国招商証券のデータによると、4月のTaobao系カジュアル衣料のGMVは391億元で前年比20%減、コスメ及びスキンケア商品のGMVは162億元で前年比22%減、ジュエリーのGMVは29億8千万元で前年比20%以上減となったことが明らかになりました。

製品価格や物流、消費者行動の変化、非必需品への消費熱意の低下は、どのように今年の「618キャンペーン」に影響を与えているのでしょうか。

1. Tmall

2022年のTmall における「618キャンペーン」の正式な販売期間は5月31日から6月20日までで、プレセールと在庫セールに分かれています。
5月26日からプレセールの入金受付を開始し、プレセールの最終支払いは5月31日の20:00から開始されます。在庫セールの第1段は5月29日、第2段は6月4日から6月13日、第3段は6月15日から6月20日が予定されています。

消費者へのプロモーション

「保証金割引を取り消し、参加型先行販売に参加すると割引可能に変更」
Tmall 「618キャンペーン」のクロスストア割引は300元ごとに50元の割引となり、またTmallによる「保証金割引」キャンペーンが廃止されたことで、直感的でわかりやすいプライスダウンに変更されました。

メタバースショッピングを導入」
今回の「618キャンペーン」に備えるため、Tmallはプロジェクトチームを設置し、メタバース仮想ショッピング会場をローンチするようにしています。

ショップへのプロモーション

「無金利分割払いの実施及び加盟店金利の引き下げ」
無金利分割払いキャンペーンは、新規顧客の獲得、取引の促進、客単価の向上、クレジットカード分割払い手段の追加など、ECショップのブランド価値向上に貢献すると想定されます。

「ECショップ支援のための取り組みを開始」
Tmallは、昨年の「W11(ダブルイレブン)/ 独身の日」の2倍以上となる25条の加盟店支援の取り組みを公開し、マーケティング、コンテンツ、運営コスト、テクノロジー支援、金融補助、物流支援、交通補助、コロナウィルス感染症特別取り組み、技術アップグレードなどの側面から、加盟店への支援及び消費の回復を目指しています。

2. Douyin(中国版TikTok)

6月1日から6月18日まで「Douyin 618グッズフェスティバル」を開催します。

消費者へのプロモーション

「消費行動を喚起する各種クーポン」
今年も「618デイリーレッドパケット」キャンペーンを継続します。
内容としては、
・多数のライブ配信を対象とした「ライブ配信レッドパケット」キャンペーン
・ユーザーの継続的な参加を呼びかける「サインインレッドパケット」キャンペーン
・「レッドパケットとインタラクティブプレゼント」キャンペーン
などが挙げられます。
レッドパケットは3種類あり、毎日オンラインでゲットできるようになっています。

ショップへのプロモーション

「ポイントチャレンジ:100元ランダムクーポンゲット」
Douyinプラットフォーム側はメッセージ、チャレンジページメッセージ、商品ページを通じてイベント情報を公開し、DouyinのEC加盟店であれば、618ポイントチャレンジに参加できます。

「ショップ初利用ボーナスを新設し、集客を支援」
初めて注文したお客様に補助金を出すことで、プロモーション期間中にファンを増やし、新規顧客の獲得につなげられます。

3. 京東

消費者へのプロモーション

「618のクロスストアセール:299元に達すると50元オフ」
今年、京東は299元以上の商品を購入すればマイナス50元というルールをとり、利用者はクーポンを受け取る必要がなくなりました。
さらに京東は、618商戦期間中、北京、深セン、長沙など多くの都市と協力し、オンラインとオフラインの消費シーンをカバーする消費者クーポンを発売する予定です。

「クロスストアの還元セールをバージョンアップ」
消費者は別途クーポンを集める必要がなく、決済時に直接還元セールに参加することができます。

消費者の消費体験を向上させるために、フルサプライチェーンサービスに注力
今年の京東618キャンペーンは5月23日午後8時に開始し、夜更かし要らずの「午後8時からショッピング」という体験を継続するほか、「フルサプライチェーンサービス」を通じて消費者が安心して買い物ができるようにしています。

ショップへのプロモーション

Shopifyと連携してアメリカ発ショップ向けプロモーション
京東は、入金やプラットフォーム手数料の無料化に加え、ショップごとの特別プロモーションの提供、京東グローバルの「海外から直接購入」キャンペーンへの参加など、大口顧客のショップを支援すると発表しました。
また、ベストセラーになりそうな商品は、越境ECの「注目商品ライブラリー」に掲載し、露出を増やすこともできるようになっています。さらにShopify加盟店から初めて購入する利用者には、特別なクーポンなど様々な特典が提供されます。

グリーン商品プロモーションや会場を設置」
京東「618キャンペーン」は、伊利、清風、ネスレ、雅培、P&Gなどのブランドとコラボし、「グリーンプラン」を打ち出しました。
その商品カテゴリーには主に、省エネ・節電、グリーンフード、グリーントラベルなどが含まれるとのことです。
また、京東は「カーボンポイント」と呼ばれるシステムを立ち上げ、消費者はグリーン商品の購入後にポイントを獲得し、そのポイントでグリーン商品との交換やクーポンの利用、ゲームへの参加が可能になりました。

まとめ

9年目を迎えた「618キャンペーン」。各プラットフォームによるプロモーションの革新やブランドの増加が見られてきましたが、各地で繰り返されるコロナウィルス感染症の流行や複雑な物流環境ゆえに、今年の「618」は以前ほどの盛り上がりを見せないと予想されます。

注目すべきは、今年の618キャンペーンの開幕前に、京東が率先して30条の「三減三利」ECショップ支援策を発表し、中小企業を支援していることです。その直後にTmallも25条の618加盟店支援策を発表し、消費の回復を図ろうとしています。このように大手2社が争う一方で、多くの新しいECプラットフォームも台頭しています。

ところがプレセールなどで盛り上がった例年とは異なり、今年は購入品やオーダーをシェアする人が少なくなっています。各ECプラットフォームが「618キャンペーン」によって消費を回復させられるかは、消費者のニーズを汲み取り、ファンを増やすことができるかにかかっていそうです。

参考URL

「618特别策划 | “史上最大力度满减”怎么玩?一文网罗淘东抖快打法」
https://www.163.com/dy/article/H7OO4HBJ051998O7.html
「从520到618,电商大节“静悄悄”」
https://www.163.com/dy/article/H8A31IIP051284V8.html

この記事のライター

慶應義塾大学在学中。

関連するキーワード


中国市場 中国トレンド調査

関連する投稿


勢いを見せる中国国外旅行のトレンド調査

勢いを見せる中国国外旅行のトレンド調査

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によって大打撃を受けた中国の国外旅行産業ですが、2023年からは徐々に回復傾向にあり、2024年現在は感染症流行前の2019年に追いつく勢いを見せています。現在中国ではどのような国外旅行トレンドが形成されているのか、その背景と共に紹介します。


史上最もシンプルな「618セール」?2024年中国「618セール」の変化を解説

史上最もシンプルな「618セール」?2024年中国「618セール」の変化を解説

中国のコロナ後の618として、今年の「618セール」は例年とは少し異なるようです。経済が低迷し、競争が依然として非常に激しい中、各大手ECサイトはこぞって「予約販売」を取りやめ、「史上最もシンプルな618セール」を推進しています。しかし、より理性的になった中国の消費者はどのように反応しているのでしょうか。また、中国のAIGC(人工知能生成コンテンツ)の発展はどのようにEC業界に取り入れられているのでしょうか。今回の記事では、中国における2024年の「618セール」の変化について解説します。


What is “reverse consumption,” the new consumption trend among Gen Z in China?

What is “reverse consumption,” the new consumption trend among Gen Z in China?

At the end of 2023, “reverse consumption” became a hot topic on Chinese social media and still remains popular. In the rapidly changing Chinese society, new consumption attitudes and trends are constantly emerging. We will introduce “reverse consumption,” the most popular consumption trend among China's Gen Z.


中国Z世代の新しい消費トレンド「逆消費」とは

中国Z世代の新しい消費トレンド「逆消費」とは

2023年の年末から中国のSNSで「逆消費」というホットトピックが現れ、今日まで人気が続いています。急速に変化している中国社会では常に新しい消費観念や消費トレンドが生まれており、この記事では現在の中国のZ世代において最も流行している消費トレンドである「逆消費」について紹介します。


中国の若者に人気!生活の各分野で広がる「新中式」スタイルを調査

中国の若者に人気!生活の各分野で広がる「新中式」スタイルを調査

2023年に大流行した“新中式”。新中式とは、中国の伝統的な要素と現代的な要素を融合させたスタイルを指します。この新中式の流行は発展変化しており、小紅書が発表したデータによると、ファッションのみならず、メイク、グルメ、インテリアなどの領域にも次々と広がっています。それらに関する投稿は実に前年同期比350%以上の増加となりました。この記事ではファッション、グルメ、インテリアに焦点を当て、新中式がどのように広がっているのかを紹介します。


最新の投稿


アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

Repro株式会社は、アパレル系店舗アプリのインストール前後の利用状況に関するユーザー調査を実施し、結果を公開しました。


認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

未知株式会社は、全国の企業に在籍する20〜60代の方を対象に「コンテンツマーケティングの実施・成果」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

近年、美容インフルエンサーの発信により特定のスキンケア成分がフォーカスされ、「成分関心層」が増加しています。今回は、@cosmeを運営するアイスタイル社が保有する、日本最大級の美容に関する生活者データと、ヴァリューズが保有するオンライン行動データを活用。成分に関する情報感度の高いアーリーアダプター層に注目し、その裏にあるユーザーインサイトから、成分関心層と取るべきコミュニケーションを探ります。※本セミナーのレポートは無料でダウンロードできます。


官民連携の智略 ~ PPP/PFI

官民連携の智略 ~ PPP/PFI

高い効率性が求められるのは今や個人の仕事や学業の範疇にとどまらず、国の施策運営である公共事業などにもその思考傾向は浸透しつつあります。その結果、国は民間企業の協力を得て「官民連携」で公共事業を進めることでそれらを効率化し、さまざまな事業を支えている例が多く存在します。本稿では、このような「官民連携」で効率化を目指す手法のPPPやPFIなどについて、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が解説します。


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ