2022年「618キャンペーン」のまとめ
中国において、2022年上半期の非常に重要な販促イベントとして「618キャンペーン」が挙げられます。今年の「618キャンペーン」の先行販売は早期に開始され、プロモーションルールの簡素化、商品のバラエティ、配送の効率化やアフターサービスなど、ユーザーのショッピング体験の向上が注目されていました。
統計によると、2022年「618キャンペーン」期間(2022年5月31日20:00から2022年6月18日24:00まで)の間に、全体の総取引金額は6,959億元を記録しました。そのうち統合Eコマースの総売上高は5,826億元に達し、上位3位は前年と変わらず、Tmallが1位、京東、拼多多がそれぞれ2位、3位となっています。
また、ライブEコマースプラットフォームは非常に好調で、「618キャンペーン」期間中にライブによる売り上げは合計1,445億元に達しました。
トレンディな販売カテゴリーから見ると、家電製品が好調で、インターネットでの売上高は879億元に達し、前年比で6.7%増加しました。洗濯・パーソナルケアの売上高は136億元で、前年比33.1%増となりました。
2022年、中国の消費者は何を買っているのか?
新型コロナウィルス感染症の流行によって、"お金を賢く使うには?" というテーマが、多くの消費者にとって最も重要なトピックとなりました。
では、消費者は何を買っているのでしょう。今年「618キャンペーン」の個人消費の傾向について解説します。
1. 美に対する需要が集中的に爆発
Tmall「618キャンペーン」が始まってわずか59秒で美容関連の売り上げが1億元、パーソナルケアも3分で1億元を突破し、昨年の1日売上を上回りました。日本でも「動物アイシャドウパレット」が話題となった中国コスメブランドのPerfect Diaryがカラーコスメ第1位となり、red earthはわずか10秒で去年の「618キャンペーン」の日次売上を上回るなど、化粧品ブランドの活躍が注目されています。
京東は6.1-6.18ショッピングフェスティバル全体の累計受注額が2,692億元に達し、美容とスキンケアカテゴリーの売上高は昨年と比べて減少しているものの、今年の購入数トップ3にランクインしたと発表されました。
美容カテゴリーの売り上げ推移
(ピンク線:リップの売上、青線:マスクの売上、横軸:コロナウィルス感染症の流行、仕事復帰、春、「618キャンペーン」)
また、中国で「洗練された暮らし」がトレンドになっていることに伴い、美容家電が再び注目されています。
京東のデータによると、個人向けの高額な小型家電がよく売れており、RF(ラジオ波)美顔器の売上は前年比500%増となっています。
売り行きが好調な小型パーソナルケア家電
2. 中国における大量生産への需要が上昇
人々のライフスタイルが変わりつつあり、幾度となくあった「買い占め」は場所をオフラインからオンラインに移し、今年の「618キャンペーン」では京東スーパーの食品・生鮮食品カテゴリーにおいて大容量の商品が人気を集めています。例えば京東スーパーでは、三只松鼠、百草味、良品铺子(いずれも菓子メーカー)などの大型包装が、最近の売れ筋となっているようです。
3. 健康志向の高まりにより、「肉・卵・乳」カテゴリーの消費が拡大
近年、食品・飲料業界において、消費者の健康志向が高まっています。消費者は栄養を補うための機能性食品に注目するのでなく、日々の食材にこだわる方へシフトしつつあり、「肉、卵、牛乳」カテゴリーの売上額が伸びていることが、各プラットフォームのデータからわかりました。
2022年版の中国食事摂取基準では、1日に300~500gの牛乳・乳製品の摂取が推奨されており、牛乳は再び消費者の関心を集めています。京東スーパーのデータによると、今年「618キャンペーン」期間に高品質の牛乳カテゴリーが非常に急速に成長しました。特仑蘇(牛乳メーカー)の公式ショップで販売している牛乳は、6月1日、1時間以内に去年「618キャンペーン」の日次売上を上回る売上高を記録しました。
また、今回の「618キャンペーン」期間中、京東スーパーマーケットの生食用卵の売上も大幅に上昇し、生卵のブランド「イエロースワン」は、1月から5月までの売上が前年同期比120%以上となりました。
4. クイック料理やキッチン家電への需要を生むダブル消費シナリオ
コロナウィルス感染症の影響を受け、消費者のスティホーム時間が徐々に長くなる一方で、遠くへ出かける機会が減り、近場で楽しめるキャンプが新たに人気を集めています。
消費シナリオの変化は、人々の消費選択にも変化をもたらしています。スティホーム・キャンプいずれのシーンでも、手間が省ける惣菜やファストフードが選択肢になっており、この2つのカテゴリーも今年、消費者からの注目を集めています。
また近年、中国におけるテクノロジーの発展に伴い、新しいキッチン家電が続々と登場し、キッチン小型家電の市場規模は急速に拡大しました。今年3月から5月にかけて、キッチン小型家電のオンライン売上が急速に伸び、2022年6月5日現在、Tmallキッチン家電業界618社の売上は21億4000万元に達し、前年同期比19.4%増となりました。そのうち、フライヤーは前年同期比95.8%増の1億5800万元、ベビー・ママ用キッチン用品は同57.2%増の1億1500万元の売り上げを記録しました。
「618キャンペーン」における新消費モデルが登場
ますます加速する中国オンラインビジネスの中で、各ブランドはいかにして中国消費者の日常生活の中に浸透していくか、という観点で競走が激化しています。
消費者ニーズが変化している中で、「618キャンペーン」は、もはや消費者にとって年に一度の爆買い日ではなくなり、その消費モデルも変わってきています。具体的には、消費者側が最も安い商品を求める「モノを探す人」状態から、「ヒトを探すモノ」、すなわちブランド側がユニークで特徴のある商品を用いて新しい顧客を獲得する方向へ変化し、ユーザー体験を高めようとするモデルに変わってきていると言われています。
1. 特徴的で希少性の高い商品で、新規顧客の獲得とユーザー体験の向上を目指す
現在、中国における消費者ニーズは急速に変化しており、ブランド側はeコマースイベントへの参加のみでは安定した新規顧客の獲得が困難になっています。その解決策として一部の中国国内外ブランドは、より希少性の高い、斬新な商品を開発しようとしています。
今年の「618キャンペーン」では、嘉興粽、西南香辛料、嶺南茘枝、大連さくらんぼなど各地域の代表的な目玉商品が話題になっています。また、子供時代を思い起こさせる「辛いスティック(駄菓子の一種)」は餃子の具となって新登場しました。思念(冷凍食品メーカー)は、今年の618で豚肉風味の辛いスティックとこんにゃくが具となった餃子を発売し、好奇心旺盛な消費者を惹きつけました。
新発売の豚肉の辛いスティックとこんにゃく餃子
2. ブランド側は新商品PRのためにEコマースプラットフォームを利用
新商品発売前、その効果を検証するために、Eコマースプラットフォームを通じてより多くの若い消費者にアプローチする中国国内外のブランドが増えてきています。あるいは、プラットフォーム利用者のユーザー体験を高めるために、プラットフォームを通じて限定的な販売を行う場合もあります。
2022年5月26日、コカ・コーラのグローバルクリエイティブプラットフォーム「Coca-Cola Creations」は、中国での限定商品第2弾として、5月下旬に発売したコカ・コーラ「リズムキューブ」(Rhythm Cube)を「618キャンペーン」期間中、TmallやDouyinなどのEコマースでも数量限定で販売しました。結果として、ブランドのファン以外のユーザーを獲得することに成功しているようです。
コカ・コーラ「リズムキューブ」
まとめ
今年の「618キャペーン」では、消費者側が「モノを探す人」となる状態から、ブランド側がユニークな「ヒトを探すモノ」を提供する方向へシフトしてきていることがわかりました。
また、消費者、ブランド、プラットフォームの間で新しいコミュニケーションモデルを見出すことが注目されています。中国国内のECプラットフォームはブランドと共同でクリエイティブなコンテンツマーケティングを行い、サプライチェーンの改善や消費者体験の向上が注目されつつあります。
参考URL
「爱美需求在618爆发 疫情之下跑赢大盘的美妆个护赛道」
https://m.news.leju.com/news-6682153161693904063.html
「“停下来就死得更快”? 今年618,食品行业怎么样? 」
https://www.sohu.com/a/558028852_120013927
「家用电器行业:618过半 清洁电器、投影、小家电表现较好」
http://stock.finance.sina.com.cn/stock/go.php/vReport_Show/kind/search/rptid/708363697280/index.phtml
「618购物节,家用美容仪成交额同比增长500%,本土新锐品牌受青睐」
https://read01.com/zh-sg/B2GPReN.html#.Yq7LYBPP23I
「星图数据618全网销售战报:2022年618大促期间交易总额6959亿元」
http://science.china.com.cn/2022-06/21/content_42009225.htm
慶應義塾大学在学中。