「低糖質」と「低脂質」。ワードの使い分けで、特定ユーザーにリーチできる?

「低糖質」と「低脂質」。ワードの使い分けで、特定ユーザーにリーチできる?

食品業界のマーケターや、新しいもの好きな人、ヘルスコンシャスな人に向けて、食品のトレンドを分析します。今回のテーマは「低糖質と低脂質」。よく似た言葉で、どちらも健康やダイエットに関係のありそうな言葉ですが、その検索者を分析すると微妙にニーズが異なることがわかりました。今回はそんな「低糖質と低脂質」について、行動ログデータから検証し、市場を調査します。


「低糖質」「低脂質」を検索している人はどんな人?

「低脂質」にブームの兆し。「低糖質」訴求は1~2月と5月がおすすめ

「低糖質」「低脂質」はどちらも健康やダイエットを気にする方にとっては「あまり摂取すべきではない」というイメージがあると思います。検索者数推移を見てみると、低糖質と低脂質では圧倒的に「低糖質」に関心を持っている人の方が多いことがわかります。

「低糖質vs低脂質」検索者数推移
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

これは近年低糖質ブームともいわれ、「糖質制限」メニューがコンビニエンスストアなどを中心に広まったことや、様々な媒体やメディアで「糖質制限をしよう!」というメッセージが押し出されたこともあり、「痩せたい!=糖質を制限しなくては」と考えた人が増えたと考えられます。

一方、「低脂質」単体で検索者数の推移を見てみると、2022年8月に減少が見られるものの、1年間でおよそ右肩上がりに検索者が増えていることがわかります。現時点では「低糖質」が主流であるものの、「低脂質」もトレンドとなりつつあるのかもしれません。

「低脂質」検索者数推移
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

また直近2年間にデータ期間を延ばしてみると、「低糖質」は2年とも1~2月と5月に検索者が増えていることがわかります。「冬休みで太ったかも」「夏に向けて動き出そう」といった消費者意識があるとすると、「低糖質」商品を売り出す場合は、この時期の訴求が効果的なのではないか、と仮説立てることもできます。

「低糖質vs低脂質」検索者数推移
(集計期間:2020年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

「低糖質」は30~40代、「低脂質」は20代からの関心が高い

続いて、検索者の属性を見ていきましょう。
まず性別で検索者の割合を見てみると、女性のほうが関心を持っている人が多いようです。ただし、「低糖質」と「低脂質」ではそこまで大きな男女差は見られません。

「低糖質vs低脂質」ユーザー属性 性別
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

年代別では、「低糖質」は30~40代の検索者割合が高く、「低脂質」は20代の割合が最も高いことがわかります。これは後述で見えてくるように、「低糖質」は手軽に取り入れられる健康を、「低脂質」はストイックに筋トレを意識している人が多いことが影響していそうです。

「低糖質vs低脂質」検索者の年代
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

「低糖質」は手軽な健康実践層、「低脂質」はストイックな筋トレ層

「低脂質」なコンビニ商品がブームとなるか

続いては、「低糖質」と「低脂質」それぞれのワードに掛け合わせでどのような単語を入れて検索をしているのか見てみましょう。まずは「低糖質」です。

「低糖質」検索者の掛け合わせワード
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

「低糖質」検索者は「レシピ」「パン」「スイーツ」「コンビニ」を掛け合わせで調べている人が多く、「低糖質な食事をしたいがどういうものがあるのか」「自分で作る場合にはどういったレシピがあるのか」といったことに関心がある人が多いことわかります。低糖質を「手軽に日常の健康のために取り込もう」という層が多い印象です。

続いては「低脂質」との掛け合わせワードです。

「低脂質」検索者の掛け合わせワード
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

一方で「低脂質」検索者は、「高タンパク」「レシピ」「コンビニ」「低糖質」といったワードを掛け合わせて調べる人が多いことがわかります。「レシピ」「コンビニ」はやはり同様のニーズがあるとわかりますが、コンビニなどの店舗で「低脂質」を謳った商品はまだ少ないことから、低糖質と同じように、そういった商品のニーズが今後高まることが予想できます。

続いて、一般のネット利用者に比べて「低糖質」「低脂質」検索者の関心が高いワードを見ていきましょう。まずは「低糖質」です。

「低糖質」検索者の関心ワード
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

「低糖質パン」「糖質オフ」といった商品に関するものが多い印象です。話題の「ラカント」や「おからパウダー」などへの関心も高いです。11位には「オオバコ」もランクインしていました。

「低脂質」検索者の関心ワード
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

「低脂質」検索者は「タンパク質」「筋トレ」「プロテイン」といった関心ワードが目立ちます。掛け合わせワードでも「高タンパク」が1位にランクインしていたことから、「低脂質」検索者はストイックに食事制限をして筋トレに励む層が多いことがうかがえます。

このように行動ログデータを見てみると、似たようなワードの「低糖質」「低脂質」でも、検索者像が異なることがわかりますね。

「低糖質」検索者はレシピサイトや通販、「低脂質」検索者はトレーニング系サイトへ

最後に、「低糖質」「低脂質」検索後、実際にどのサイトへの流入が多いかを分析しました。

「低糖質」検索者の流入サイト
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

「低糖質」検索者は「COOKPAD」「楽天市場」「Amazon」など、レシピサイトや通販サイト、そして「mybest」「macaroni」などの情報サイトが中心です。低糖質なレシピを検索したり、低糖質な商品の購入につながっていたりすることがわかります。

「低脂質」検索者の流入サイト
(集計期間:2021年9月〜2022年8月、デバイス:PC&スマートフォン)

一方で、「低脂質」検索者はトレーニング系・パーソナルジム系などが目立ちます。低脂質を意識しつつどのように身体づくりやトレーニングをしていったら良いのかを知りたい人が多いということではないでしょうか。

まとめ

今回は「低糖質」「低脂質」それぞれの検索者について分析しました。その結果、次のようなことがわかってきました。

・「低糖質」を検索している人は1~2月と5月に増えている
・「低脂質」の検索者はそれほど多くないものの、増加傾向にありブームが予想される
・「低糖質」は30~40代、「低脂質」は20代の関心が高い
・「低糖質」検索者は、手軽にできる健康を意識している人が多い
・「低脂質」検索者は、ストイックに筋トレを意識している人が多い

このように、似た言葉でも検索者の人となりやニーズが異なっていることがわかりました。言葉の使い分けを意識し、商品づくりやマーケティングに役立ててみてはいかがでしょうか。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。

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