現地目線とクイックな消費者分析で、トレンドを押さえた中国進出を支援。中国マーケティングを成功に導くリサーチ術

現地目線とクイックな消費者分析で、トレンドを押さえた中国進出を支援。中国マーケティングを成功に導くリサーチ術

海外進出。地理的・文化的な距離もある中で、リスクを軽減して効率よく参入を目指すには、適切なリサーチが必要不可欠です。そこでマナミナでは、「中国市場への参入」をテーマに、マーケティングの各フェーズにおいて効果的な調査・分析手法をご紹介する連載をスタート。第1弾の今回は、ヴァリューズの中国人アナリストに最初のフェーズ「市場環境分析」や、中国の最新トレンドについて伺いました。


中国進出。そもそも何から取りかかれば良いの?

新型コロナの感染拡大が落ち着き、政府の水際対策も大幅緩和され、個人の外国人旅行客の入国も解禁となりました。インバウンド復活を機に、拡大を続ける中国マーケットへの進出を考えている企業も多いのではないでしょうか。
今回は特に注目を集める食品業界での中国進出について、株式会社ヴァリューズで海外市場調査を担当しているアナリスト、姜茹楠さんにお話を伺いました。




姜茹楠(きょう じょなん)
株式会社ヴァリューズのアナリスト。
海外市場調査を担当している。
中国出身。





編集部:日本と中国では食習慣も異なり、どんな食べ物が流行っているのか、どの年代に流行っているのかなどトレンドも常に変化しています。そんな中、自社の商品が受け入れて貰えるのかどうか確信が持てない、中国人スタッフがいるわけではないので肌感が持てない、そもそも最新の動向を掴もうにも中国語の記事や調査レポートを読める人がいない、という声もよく耳にします。








姜茹楠(以下、姜):なるほど、なかなか日本から中国市場のリアルを掴むのは難しいですよね。
まず食品業界への参入チャンスについてお話しますと、食への関心は中国では20代・30代の女性が高い印象です。日本の商品が好きなのもこの層で、全体の人口も多いので、市場としては大きいかなと思います。

念頭に置いておきたいのが、中国市場はトレンドの変化が非常に速いということです。例えば最近では、地方や郊外を指す「下沈(かしん)市場」が台頭してきています。「国潮ブーム」といって、中国風のモノへの関心が高まっていることや、Z世代の消費行動が影響力を持ちつつあることも、押さえておくべき中国全体のトレンドです。








編集部:今後まず狙っていくとしたら、典型的な大都市よりも「下沈市場」の方が効率的ということでしょうか?








:まずは、誰がターゲット層になり得るのか、調査するのがおすすめですね。「下沈市場」は市場としては大きいですが、今まで海外商品とあまり関わりなく生活してきた人が多いため、いきなり狙うのは難しいかと思います。








編集部:なるほど、そんな特徴が。
順番的には、どういう調査から始めていくと良さそうでしょう?








:これからの参入を考えていらっしゃる企業様ですと、下図の一番左、「市場環境分析」フェーズから始め、市場規模や参入の余地などを調べていくことになります。




参入の足固め。初期フェーズでやるべきリサーチとは?





:この段階でよく使われる分析手法としては、デスクリサーチや、より消費者視点に寄るものですとアンケート・インタビュー系があります。デスクリサーチ・Webアンケートは定量的な要素が強く、インタビューは定性調査です。トレンドをいち早く掴むなら、「百路QIC(ヴァリュークイック)」というヴァリューズ独自の定性調査手法もありますね。








編集部:どういう場面で定量・定性調査を使い分けたら良いですか?








:市場環境分析ですと、まず定量的なデスクリサーチで、市場の全体感を把握します。その中で、例えば「食生活に変化が起こっている」という状況が掴めれば、「どういう風に変化したのか」「どういう食べ方をされているのか」などの具体的な部分を定性調査で見に行く流れが、典型的な調査設計かなと思います。

デスクリサーチは公開データがベースなので、消費者のリアルな状況や行動は見えてこないんです。なので、デスクリサーチで全体感を把握した上で、定性調査でリアルな生活ぶりを捉える方が、漏れなく確認できます

ここで、中国人の食生活の変化について調査した事例をご紹介しますね。まずデスクリサーチで、中国では、1日1人当たりの食用油・塩・砂糖の摂取量が推奨摂取量を上回っていること、肥満の人の割合が1992年に比べ倍以上も増加していることが、背景情報としてわかってきました。








:それに対し、政府の啓蒙活動や「減塩、減糖、減油」の呼びかけなど、国民の健康意識を高めるための動きが活発化してきていることもわかりました。








編集部:実際に食生活に変化は見られたのですか?








:はい。例えばZ世代の女性は「低糖質」と「満腹感」を重視し、主食として玄米やキヌアへの注目が高まっているようです。2021年時点で、これらの食材のオンライン売上は2年連続で伸び率50%を超えているんです。

また、より定性的なデスクリサーチとして、中国SNSの「RED」上で「健康的な食事」と中国語で検索し、実際にどのような食事が「健康的」とイメージして食べられているのかも調査しました。やはりトレンド情報はSNSが速いので、こうした調査も有効です。








編集部:ヘルシー重視の主食の選択肢として、玄米やキヌアが注目されているのは、日本と同じような波が来ているんだなと驚きました。




消費者のリアルをクイックに分析。トレンドを押さえる「百路QIC」

主要プレイヤーの実態も分析できる





:先程ご紹介した「百路QIC(ヴァリュークイック)」を使うと、さらに定性的な調査が可能です。例えば今回は、次のような質問項目でアンケートを実施しました。








:具体的な食べ方など、消費者のリアルな行動について聞いています。
回答を集計すると、食べたことがあるシリアル商品のメーカーとしては、1位から順にクエーカー・カルビー・SEAMILDがトップ3を占めていました。このようにして、市場に参入の余地があるのか、競合はどこなのか、などを把握することもできます。








編集部:主要プレイヤーの動きや、レッドorブルーオーシャンといったところも見に行けるのですね。この「百路QIC」というのは、普通のアンケート調査とは何が違うのですか?








:ヴァリューズで定性調査パネルを構築しているので、回答者を都度ゼロから集めに行く必要がなく、既存パネルに対してクイックに質問できる点が「百路QIC」の最大の強みです。
通常のアンケート調査ですと回答者を集めるために時間がかかるため、実施から最終的なご納品まで最短でも1.5ヶ月ほどかかることが多いです。一方「百路QIC」を使うと、それを最短1週間で完結させることが可能です。例えば、先程の調査では2日で120人もの回答者を集めることができております。
「いま、このとき」のトレンドを押さえるのに最適な調査手法といえますね。








編集部:なるほど。短期間でこれだけの回答者を集められるのが独自性であると。
定性的なアンケート調査だと、回答を分析するのにも工数がかかりそうですが...








:今回は上の3つの質問のみ投げかけて回答負荷を軽減していますが、パネル情報として、全ての回答に回答者の属性情報も紐づいています。ですので、20代女性に絞って分析する、ということもできます。実査から分析まで、クイックな調査が可能となっております。




日常の写真から、消費者の生活ぶりを読み取ることも可能





:また、リアルな消費行動を掴めるのも「百路QIC」の強みです。別業界ですが、下のような調査もございます。








実際にどの商品がライン使いされているのか、日本ブランドはどれくらい使われているのか、といったことが写真からわかりますね。
食品業界の調査に置き換えるなら、自宅で調理した際の完成写真や、普段食べているものの写真を送ってもらう、などが考えられます。キッチンの写真を送ってもらうことで、よく使われている調味料も分析できそうです。








編集部:テキストだと自分が意識している部分しか言語化して答えてもらえなさそうですが、写真だと無意識の部分も共有してもらえるのが良いですね。








:そうですね。リアリティという文脈ですと、ヴァリューズでは私自身をはじめとして、日本語とバイリンガルの中国人アナリスト・リサーチャーが調査を担当させていただきますので、現地目線での調査が可能です。中国政府が出している統計データや現地の調査会社によるレポートなど、中国で公開されたものも言語の壁なくデスクリサーチすることができます。








編集部:中国人スタッフがいない企業様が掴みにくい、現地の最新動向を教えていただけるんですね。








:はい。課題の整理から調査設計・実査・分析・レポーティング・提案に至るまで、現地目線から一貫して行えるのも、当社の独自性となっております。この点は幅広い業界のクライアントさまからご評価をいただいておりまして、医薬品・日用品・家電・旅行・通信・ITなどの業界でも調査実績がございます。
海外進出をご検討の際はぜひ、ヴァリューズにご相談ください。




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コラム「生産者さんの顔」

姜さんってこんな人

大学を卒業後、日本の大学院に留学。成長産業という点でIT業界への就職を考える中で、「日本はデータが先進的」というイメージから、日本でアナリストとして働くことを決意。
ヴァリューズ初の外国人アナリストとして、日本国内の消費者行動ログデータ分析からスタートし、現在は海外調査領域を牽引している。

日本市場の調査と海外調査の違いは?











一番大きなところだと、調査テーマが違いますね。
国内向けの調査では、既にリリース済みのプロダクトについて、マーケティングでどう集客を拡大するかというテーマが多いです。一方で海外調査となると、そもそも現地に進出していないというケースが多いです。
クライアントと一緒に商品を作る段階から始め、世界に届けることができるのが楽しいですね。






【今回使用したレポートはこちら】

中国の激しい市場変化に対応するには?「中国市場・トレンド分析手法 解説セミナー」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/2002

中国市場のトレンド変化は非常に速く、激しいのが特徴です。そのため、中国市場をいち早く理解するためには、リサーチ方法が大きなカギとなります。本レポートでは、マーケティング・プロセスに合わせた分析手法を用いて、中国の「健康意識」と「美容」の2テーマのトレンドを調査しました。(ページ数|66ページ)

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

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