注目のキャリア支援策「リスキリング」とは。社会人も効率的に学べる「オンライン学習」業界を調査

注目のキャリア支援策「リスキリング」とは。社会人も効率的に学べる「オンライン学習」業界を調査

「リスキリング」とは、2022年10月、臨時国会開会時の岸田首相による所信表明演説で国家的支援の発表がなされ、ニュース等でも一斉に取り上げられた「学び直し」を意味するワードです。ただ、働き方の変化に必要不可欠なスキル習得を急に迫られたところで、仕事を持ちながらキャリアアップのため新たな技術を習得するには、さまざまなハードルもあるのが現状ではないでしょうか。今回は、社会人でも手軽に「リスキリング」を始められるオンライン学習業界に注目。業界状況や利用する人々の属性などを調査分析しました。


「リスキリング」とは。「学び直し」でキャリアの創造に繋がるか

「リスキリング(Reskilling)」とは、新しい職業に就く、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応することを目的に、必要なスキルを獲得するための教育を指します。その取り組みに5年間で1兆円の予算を投じ、国をあげて支援をするという背景には、現代が「第4次産業革命」とも呼ばれる革新的な変化の中にあることを示唆しています。

今や人の手を介さず、AIなどの活用によってデジタル化・自動化に移行される作業・業務が急速に増加しています。それに伴い、労働者の業務が失われる懸念がある一方で、多くの新たな業務が発生するとも考えられます。

新たな業務に対応するスキルを身につけることは、キャリアアップへの近道となるでしょう。「リスキリング」による学びの機会は、誰にとっても重要なものとなりそうです。

そこで今回の調査では、社会人が仕事の合間で続けやすい、人気オンライン学習ツールに注目し、その業界の現状や利用ユーザー層、集客戦略などを、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて分析しました。

オンライン学習業界を担う、主要サービスのユーザー層を調査

「学び直し」を検討している人たちとは?

ではまず、どのような人たちがオンライン学習業界に対して興味を示しているのか、2021年10月から2022年9月のユーザー属性を見てみましょう。(Dockpitでのカテゴリ「教育 通販」業界を分析対象としました)

性別で見ると、男性が57.5%、女性42.5%となっており、男性の方が少し上回る結果に。

年代別では、40代が最も多く、20代~40代がボリュームゾーンとなっています。この年代が多い背景には、転職や昇進へ向けてのスキルアップのために学習を始めたいというようなニーズが考えられそうです。

図:業界分析 ユーザー属性(左:性別、右:年代別)

図:業界分析 ユーザー属性(左:性別、右:年代別)
期間:2021年10月〜2022年9月
デバイス:PCおよびスマートフォン

オンライン学習業界のシェア

次に、各Webサイトのアクセス状況から、2021年10月~2022年9月における「教育 通販」業界シェア状況を見て見ましょう。

下記では、全体の10%以上を占めるトップ4位までのサービスにフォーカスしました。
(※調査対象は社会人向けサービスのみ。幼児・子ども向けの総合知育ゲームアプリ「dキッズ」は除く)

図:業界分析 シェアグラフ

図:業界分析 シェアグラフ
期間:2021年10月〜2022年9月
デバイス:PCおよびスマートフォン

主要なオンライン学習サービスの特徴と講座内容

1位Udemy
米国Udemyと資本提携した株式会社ベネッセコーポレーションが国内運営。AI開発に使用されるPythonなどのプログラミング言語をはじめ、Excelやプレゼンテーション等のビジネススキルなど豊富なラインナップが特徴

2位TECH CAMP
株式会社divによる日本最大級のプログラミングスクールで、ITエンジニア育成などがメイン

3位GLOBIS学び放題
株式会社グロービスが展開するマーケティング、経営戦略、会計・財務などのビジネスに直結した14カテゴリーが定額で学び放題のサービス

4位Progate
株式会社Progateが提供するWeb開発コースなどのプログラミング学習サービス

米国との資本提携もあり、20万以上の講座数を誇る「Udemy」と、ITプロフェッショナルの育成に特化し、厚生労働省の教育訓練給付制度対象で受講料の最大70%が戻ってくる「TECH CAMP」が現在では2強と言えそうです。

主要4サービスを比較。ユーザーは男性、20~40代がメイン利用層

利用者の半数以上は男性

続いて、主要4サービス(Udemy、TECH CAMP、GLOBIS学び放題、Progate)の各サイト訪問者のユーザー属性を調べます。2021年10月~2022年9月までの1年間における属性別グラフを見てみましょう。まずは性別です。

4サービスともに、男性が女性を上回っていました。特に「GLOBIS学び放題」においては、男性が82.4%と4サービス中で最も男性比率が高くなっています。

「GLOBIS学び放題」のカリキュラムを見てみると、「経営戦略」「組織マネジメント」「リーダーシップ」などの人材育成に関する講座が多いことが特徴的です。組織内における「エグゼクティブ人材形成」のための学びが多そうです。

図:トップ4サービス 属性別グラフ(性別)

図:トップ4サービス 属性別グラフ(性別)
期間:2021年10月〜2022年9月
デバイス:PCおよびスマートフォン

上から順に、Udemy,Progate,TECH CAMP,GLOBIS学び放題

キャリアポジションによって変わる講座への関心

次はそれぞれのサービス利用者の年代層を見てみましょう。20代~40代がボリュームゾーンであるのは、前述のグラフと同様です。しかし、20代~40代の間でのトップ4のポジションには大きな変化が見られます。20代ではWebプログラミング系専門の「Progate」の構成比が群を抜いて高く、40代では「GLOBIS学び放題」の構成比が最も高くなっていました。

このグラフからは年代ごとに要望が違うことが考えられます。20代では、現場で必要なスキルを習得するためにプログラミングなどを受講していること。40代になると、実務を執行するポジションからマネジメントなどを執り行うポジションへとキャリアステージの変化が起きるために、受講する講座も変わると推測できそうです。その時の自身が置かれているポジションによって関心を持つ講座が変わってくるのは、自然なことでしょう。

図:トップ4サービス 属性別グラフ(年代別)

図:トップ4サービス 属性別グラフ(年代別)
期間:2021年10月〜2022年9月
デバイス:PCおよびスマートフォン

プログラミング系サービスでは「TECH CAMP」の強さが際立つ

「Udemy」「TECH CAMP」「Progate」はデジタルスキル、「GLOBIS学び放題」に関してはビジネス全般といったように、取り扱う講座に違いがありました。その差がユーザー層の違いに表れるのも無理はないかもしれません。

それでは、同じようにプログラミング系講座を多く展開している「Udemy」「TECH CAMP」「Progate」の併用はあるのか、あるとしたらどのような併用率なのかを調べます。

下図の円グラフを見てみると、プログラミング系講座において併用されるサイトは「TECH CAMP」と「Udemy」の併用が一番多いことがわかりました。しかし併用率は1桁、同様に「Progate」との併用率も僅かであることから、「TECH CAMP」のプログラミング系オンライン学習業界での立ち位置の強さがうかがえます。

図:キーワード検索 プログラミング系サービス併用率

図:キーワード検索 プログラミング系サービス併用率
期間:2021年10月〜2022年9月
デバイス:PCおよびスマートフォン

業界勢力図に異変?「Udemy」ユーザーが急増

業界の勢力図やそれぞれのユーザー属性が掴めたところで、2021年10月~2022年9月のユーザー数推移を見てみましょう。

全体数としては僅かながら減少気味となっていますが、2022年10月に「リスキリング」がニュースになったことを考えると、今後、オンライン学習系サービスを検索する総数は上昇する可能性が高いのではないかと思われます。

現時点で特筆すべき点は、2022年7月までトップを保っていた「TECH CAMP」に対し、2022年8月には「Udemy」のユーザー数が急増しトップに躍進している点です。一体何があったのでしょうか。

図:トップ4サービスUU数推移

図:トップ4サービスUU数推移
期間:2021年10月〜2022年9月
デバイス:PCおよびスマートフォン

なぜ、2022年8月に「Udemy」は急増したのでしょう。

急増のヒントや他サービスの実情を知るため、4サービスの集客構造を示したグラフ(2021年10月〜2022年9月)を見てみたところ、下図のような結果が表れました。

図:トップ4サービス 集客構造

図:トップ4サービス 集客構造
期間:2021年10月〜2022年9月
デバイス:PCおよびスマートフォン

こちらをみると、「TECH CAMP」の自然検索の多さに、「プログラミング系オンライン学習の代表格」という認知度の高さがうかがえます。その一方で、急増した「Udemy」を見てみると、自然検索では2番手ですが、リスティング、ディスプレイ、メール、アフェリエイトなど、様々な手法で広告を打ち出していることがわかります。

「Udemy」はこのような積極的な広告手法により関心層のサイト流入を増やした結果、トップに躍り出たと考えることもできそうです。

まとめ

「リスキリング」という耳慣れないワードの出現により「学び直し」が見直されている今。リスキリングは「仕事終わりの稽古事」とは一線を画し、自身の今後のキャリアに深く関係する可能性を多分に含んだ「スキルアップのための学習」となるでしょう。

日々の仕事と低迷した経済の中で、どれだけ合理的に時間とお金を費やすことができるか。その現実的な方法として、手軽に始められるのが「オンライン学習サービス」となるのではないでしょうか。

国家的支援策の発表直後から、「リスキリング」「学び直し」に関連したニュースも多く取り沙汰されています。「オンライン学習サービス」はさらに注目を集める存在となりそうです。

調査概要

・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき「Dockpit」で分析
・行動ログ分析対象期間:2021年10月〜2022年9月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経てマーケティング・リサーチ業界へ。
趣味は食と旅行。

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