ブライダル市場の現状
■2022年はコロナ前の8割超まで回復
2020年初頭から猛威を振るい始めた新型コロナウイルス。その影響を大きく受けた業界の1つが、ブライダル業界でした。株式会社Colorsが2020年10月に発表した調査では、2020年3月から8月に結婚式を予定していた新郎新婦のうち、53.9%が延期、38%が中止を決断したとのこと。イベントごとの代表格である結婚式は、開催が難しい状況が続きました。
しかしながら2022年に入り、コロナと我々の付き合い方も少しずつ変わってきています。『ニューノーマル』という言葉を耳にする機会も増え、コロナと上手く付き合っていくという『WITHコロナ』の時代が訪れつつあるのではないでしょうか。
下のグラフは、2019年10月から2020年10月までの、『結婚式』というキーワードをネット検索したユーザー数の推移を示したグラフです。なおこちらは、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用しています。
「結婚式」検索ユーザー数の推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2019年9月〜2020年10月
デバイス: PC・スマートフォン
2019年から2020年にかけて、検索ユーザー数はおよそ半数にまで減少しています。
そしてこちらは、2020年10月から2022年10月までの、『結婚式』というキーワードをネット検索したユーザー数の推移を示したグラフです。
「結婚式」検索ユーザー数の推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2020年10月〜2022年10月
デバイス: PC・スマートフォン
全体的にユーザー数は増加の傾向にあり、2022年10月は2020年10月の約1.5倍にまで回復しました。2019年10月の『結婚式』検索ユーザー数は約89万人、2022年10月のユーザー数は約74万人であり、コロナ前の8割越えの水準となっています。
■検討は例年、春秋シーズンに集中
また、ユーザー数増加のポイントが3-5月と9-11月ごろにあるのが特徴的ですが、背景には、結婚式の実施月に関する理由がありそうです。
下は、「ゼクシィ結婚トレンド調査2022」による調査を基に作成した結婚実施月に関するグラフです。
出典:ゼクシィ結婚トレンド調査2022
回答者数:3,865名
実施期間:2022年4月15日~5月16日
調査によれば、結婚式は3月から5月にかけての春のシーズンと、10月から12月にかけての秋から冬のシーズンに実施されることが多い様子。このシーズンに合わせて、ブライダル市場も盛り上がりを見せるものと考えられます。
■結婚式にまつわる新たなトレンドが続々登場
以上のようなブライダル市場規模の回復と並行して、結婚式にまつわる新しいトレンドも登場しています。
家族婚・マイクロ婚・マイクロウエディング
家族婚、またはマイクロ婚・マイクロウエディングとは、親族や近しい友人のみを招待し、20名程度の比較的小さめの規模で結婚式を開催する形態のこと。
下は、2022年にLINEリサーチが実施したマイクロウェディングに関する調査の結果です。
出典:LINEリサーチ
回答者数:2108名
実施期間:2022年4月8日~2022年4月11日
2022年4月時点で認知度は回答者全体の約18%、利用意向を持つ回答者(「ぜひ利用してみたいと思う」「機会があれば利用してみたいと思う」と答えた回答者)は約36%となっています。
また同調査において、利用意向を持つ回答者の自由回答として以下のようなものが見られました。
・「結婚式はしたいが大勢の人を呼んでまではしなくていいから」(20歳男性)
・「参加してみて新郎新婦の人柄やこだわりがよく伝わる式だったので、自分も挙式をするならこうしたスタイルで行いたいと思ったため」(28歳女性)
・「少人数な分、本当にお祝いしたいという人だけになると思うと、そちらのほうがアットホームないいお式になりそう」(47歳女性)
感染防止という文脈よりも、少人数でこじんまりと行いたい・大勢の人を呼びたくないといったポイントが目立つのが印象的です。
マイクロウェディングは、コロナ禍において感染対策がしやすい形式であることが前提としてありつつ、もともと小規模で挙式したい意向が強かった人のニーズをすくい上げる形になったと考えられます。コロナが収束した後も、選択肢として定着していきそうなスタイルですね。
WEB招待状・WEBご祝儀
感染予防対策への需要の高まりと共に、WEB招待状・WEBご祝儀へ注目も集まっている様子。WEB招待状・WEBご祝儀とは、言葉のとおり、オンライン上で結婚式の招待状やご祝儀を送ることが出来るサービスです。感染予防の観点だけではなく、ゲストの管理や受付も全てサービス上で一気通貫的に行え、費用も抑えられるという特徴があるようです。
「Dear」によるWEB招待状
出典:https://dear-guest.com/g/templates
その中でも今回はWEB招待状に焦点を当て、ユーザー数の推移を調査していきます。
下のグラフは、2020年10月から2022年10月に「WEB招待状」を検索したユーザーが流入していた上位3サイトについて、同時期のユーザー数の推移を示したものです。
「Weddingday」「Dear」「楽々!WEB招待状」のユーザー数推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2020年10月〜2022年10月
デバイス: PC・スマートフォン
コロナ禍初頭はブライダル市場の落ち込みと共にユーザー数も減少傾向にありましたが、2021年半ば頃から再び注目を集めているようです。
以上を踏まえると、コロナ禍においては、感染予防観点からユーザーを獲得していると考えられる「WEB招待状」ですが、マイクロウェディング同様、コロナが収束した後も新しい結婚式のスタンダードとして浸透していくのではないでしょうか。
ファミリー婚・パパママ婚
ファミリー婚・パパママ婚は、新郎新婦、そしてその子供も一緒に開催するスタイルの結婚式です。
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズが2022年に行った、ウェディングプランナーを対象とした調査では、回答者の73%が「コロナ禍においてファミリー婚が増えた印象がある」と回答。コロナ禍で結婚式を延期せざるを得ず、かつコロナ禍で妊娠・出産を経験した新郎新婦が、出産後に子供と一緒に結婚式を開催する事例が増加しているようです。
また、ファミリー婚・パパママ婚を希望するユーザーに向けて、ホテルニューオータニなどの式場が、ベビールームの無料利用などがプランに含まれた「パパママ婚プラン」を提供する事例も増えています。
以上の調査から、新型コロナの影響によって落ち込みを見せたブライダル市場が徐々に回復傾向にあること、また新たなトレンドが登場していることが分かりました。中にはコロナ収束後も定着していきそうなトレンドも見られました。
では、実際に結婚式に関心を寄せるユーザーは、どのようなポイントに注目しているのでしょうか?今回は、引き続き「Dockpit」と、Web行動データとアンケートデータを掛け合わせた分析ツール「story bank」を用いて、結婚式に関心を寄せるユーザーについて詳細に調査を行いたいと思います。
「結婚式」へ関心を寄せるユーザーの傾向
■初めて結婚式に参列する人が増えた?気になりごとを分析
ここからは、ユーザーが「結婚式」と掛け合わせて検索したワードに着目して、ユーザーの関心事を調査してみます。コロナ前の2019年、コロナ初期の2020年、そして2022年の3期間について、各期間10月時点で「結婚式」と掛け合わせて検索された上位15ワードを比較してみます。
「結婚式」検索ユーザーの掛け合わせワード(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2019年10月、2021年10月、2022年10月
デバイス: PC・スマートフォン
2019年と比較して、2022年はより多く「返信」「メッセージ」が「結婚式」と共に検索されているようです(赤色)。『WITHコロナ』の状況下で開催される結婚式は、コロナ以前とは様式が大きく変わったポイントも多く、招待側・ゲスト側ともに、「どのように招待メッセージを伝えるか・どのように返信するか」という点について敏感になった消費者が増えたのではないでしょうか。
また2022年に入り、「お呼ばれ」「持ち物」というワードがランクインするようになりました(黄色)。この点から、2022年に入って結婚式の開催が徐々に可能となり、コロナ禍を挟んで初めて結婚式に参列するため、式に向けて何を準備するべきかわからず調べている人が多いと考えられます。
「結婚式」検索ユーザーの掛け合わせワード
期間:2019年10月、2020年10月、2022年10月
デバイス: PC・スマートフォン
また、「二次会」のランクダウン(青色)も特徴的です。以前、こちらの記事でもご紹介したように、感染対策のためか、コロナ禍において、二次会の開催を控えるケースが増えているようです。WITHコロナでの結婚式における『ニューノーマル』が定着しつつある様子が伺えます。
同様に「コロナ」のランクダウン(紫色)も印象的です。2020年と比較すると2022年は、結婚式準備・参列におけるユーザーの、コロナに対する感度が下がった、あるいは『ニューノーマル』としてWITHコロナの時代における結婚式の様式がより広く定着し、常識的なものとなりつつあると考えられるのではないでしょうか。
コロナ影響下での結婚式実施動向を調査 ~ 緊急事態宣言後に復調傾向も規模・予算縮小
https://manamina.valuesccg.com/articles/1348インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、国内の20歳以上の男女24,665人を対象に、結婚式・結婚式に相当するイベントの実施予定を調査しました。<br><b>※詳しい調査レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロード頂けます</b>
まとめ
今回は、『WITHコロナの結婚式』をテーマに、WITHコロナ時代の結婚式のトレンドやユーザーの関心を調査しました。
その結果、以下のような特徴が見られました。
・2022年10月に「結婚式」を検索したユーザー数は、2019年10月の8割越えの水準にまで回復。ブライダル市場の回復傾向が伺える。
・家族婚・パパママ婚・WEB招待状などの新しいトレンドが登場。感染予防対策の観点が盛り込まれた開催形態や、コロナ禍で出産を経験したカップル向けの開催形態がトレンドとなり、『WITHコロナの結婚式』の形態が形成されつつある印象。
・2019年と比較して、2021年は結婚式の「二次会」ニーズが減少。感染予防の観点が結婚式にも盛り込まれている様子。
・2020年と比較して、2022年は「お呼ばれ」「持ち物」など、参列者のマナーに関するワードが「結婚式」と共に検索されるケースが増加。そもそも結婚式に参列する人が増加したことに加え、コロナ禍を挟んで初めて結婚式へ参列する人が増加した様子が伺える。
2020年3月ごろから私たちの生活に影響を与え始めた新型コロナウイルス。一旦は落ち込んだブライダル市場も、2022年に入り徐々に回復の様子を見せています。今回の調査を通して、家族婚やパパママ婚、オンラインでのご祝儀や招待状のやり取り、二次会を開催しない形式など、『WITHコロナ』での結婚式のスタイルが徐々に形作られ、私たちの間に浸透している様子が伺えたのではないでしょうか。
▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
また、『story bank』は、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できるツールです。詳しくはこちらをご覧ください。
参考資料
・92%の新郎新婦が結婚式の延期・中止の決断!コロナ禍における挙式予定の新郎新婦343組に調査を実施しました
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000068031.html)
・結婚・結婚式|マーケットを読む・調査データ|リクルート ブライダル総研
(https://souken.zexy.net/research_news/trend.html)
・流行体感から読み解くサービス未来予測 流行予想シリーズ ~マイクロウェディング編~ : LINEリサーチ調査レポート
(https://research-platform.line.me/archives/40080274.html)
・マイクロウエディングとは?話題の結婚式の形・メリットを詳しくご紹介|スタイルズ
(https://www.styles.jp/news/what-micro-wedding/)
・テイクアンドギヴ・ニーズ ウェディングプランナーアンケート調査 2022年 多様化する結婚式のイマ|T&Gのプレスリリース
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000154.000012799.html)
・[WEB招待状、ご祝儀]卒花&ゲストに聞いた「使ってどうだった?」
(https://zexy.net/article/app002012029/)
・WEB招待状 Dear
(https://dear-guest.com/)
・コロナ禍で諦めた結婚式、お子さまと一緒に叶えませんか?ホテルの全面サポートで安心「パパママ婚」フェア開催!
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001568.000014571.html)
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