「全国旅行支援」、世間の期待度は「GoToトラベル」「県民割」より高い?どんな旅行アプリが最近のトレンド?

「全国旅行支援」、世間の期待度は「GoToトラベル」「県民割」より高い?どんな旅行アプリが最近のトレンド?

2022年10月から、旅行需要を呼び起こすための「全国旅行支援」が始まりました。12月下旬までの期間限定ではありますが、旅行会社では既に売り切れのプランもあるなど、注目度が高い施策と言えそうです。「全国旅行支援」が行われたことによって、旅行業界にはどのようなインパクトがあったのでしょうか。GoToトラベルや県民割など、これまでの支援事業への世間の反応も含めて、分析を行いました。


「GoTo」「県民割」「全国旅行支援」。各施策の違いは?

まずは全国旅行支援についての基本情報をご紹介します。

全国旅行支援とは、2022年(令和4年)10月11日〜12月下旬(予定)に行われる、全国を対象とした旅行需要喚起施策です。別名、旅行支援や旅行割などとも呼ばれています。全国旅行支援は旅行代金を40%割引にしたり、地域のクーポンを配布したりするといった内容で、基本的に旅行会社を通して受けられるものです。
※新型コロナワクチンの接種済み証明書やPCR検査の陰性を示す結果通知書の提出など、全国旅行支援を受けるためには細かな条件があります。

近年の旅行需要喚起施策は、GoToトラベル、県民割、全国旅行支援の流れで変遷してきました。
GoToトラベル事業は、新型コロナウイルス感染症の大きな影響を受けた観光需要を呼び起こすために、2020年(令和2年)7 月 に開始されました。しかし度重なる新型コロナウイルス感染者数の増加により一時見合わせとなり、2022年11月現在まで中断となっています。

また同じく、都道府県が行う観光需要喚起施策として「県民割」があります。こちらは全国一律の施策ではなく都道府県ごとに異なる内容ながら、旅行の割引支援やクーポンの配布が行われました。2021年(令和3年)4月1日以降に、感染状況が落ち着いているステージ2相当以下の都道府県から順次開始となり、中断・延長を経て、2022年(令和4年)10月10日(10月11日チェックアウト分)まで実施されました。県民割はお得感があったものの、実施している地域や対象者が限られており、地域ごとに違う内容だったため、「わかりにくい」との声もありました。

2022年11月現在は、GoToトラベルは中断、県民割は終了、全国旅行支援は12月下旬まで実施予定となっています。

検索のされ方から、コンテンツへの活かし方を考える

「全国旅行支援」には、どのような検索の特徴があるのでしょうか。毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて分析しました。

まず全国旅行支援の2021年11月〜2022年10月における検索者数の推移です。下図からは、検索者数は2022年9月から増加し、10月に急増していることがわかります。全国旅行支援についての発表があったのは、2022年9月26日です。全国旅行支援が発表されてから急激に世の関心が高まり、検索者数が増えたことがうかがえます。

「全国旅行支援」検索者数の推移
集計期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PC・スマートフォン

さらに検索者の年齢層を見てみましょう。下図は「全国旅行支援」を検索した人の年代の割合です。検索者で多いのは、40-50代であることがわかります。「全国旅行支援」は若年層よりもミドル層に検索されやすいワードといえます。

「全国旅行支援」検索者の年代
集計期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PC・スマートフォン

「全国旅行支援」に似たワードである「旅行割」や「全国旅行割」の傾向も見てみます。下図は「全国旅行支援」「旅行割」「全国旅行割」を検索した人の推移です。「全国旅行支援」が圧倒的ですが、「旅行割」「全国旅行割」のどちらも、全国旅行支援の発表があった2022年9月から急増している傾向は全国旅行支援と変わりません。ただ「全国旅行割」は9月の急増後10月に微減となっています。今後は「全国旅行割」よりも、「全国旅行支援」や「旅行割」といったワードの方が、コンテンツ制作の上で検索に引っかかりやすい状況となるかもしれません。

「全国旅行支援」「旅行割」「全国旅行割」検索者数の推移
集計期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PC・スマートフォン

年代別に見てみると、「全国旅行支援」と「全国旅行割」はほぼ同じ年代から検索されていることがわかります。一方で「旅行割」は、40代の割合が高く、50代以降の割合が下がっています。シニア層の方が、正式名称に近い検索ワードを正確に打ち込む傾向にあるのかもしれません。

「全国旅行支援」「旅行割」「全国旅行割」検索者の年代
集計期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PC・スマートフォン

世間の反応を「GoTo」「県民割」と比較

新型コロナウイルス流行初期に行われているGoToトラベルや、県民割とも比較してみましょう。

下図は「全国旅行支援」「GoToトラベル」「県民割」を検索した人数の推移です。「県民割」は終盤になるに従って大幅な減少が見られ、夏休みシーズンである2022年8月・9月も増加は見られません。夏休みに向けては、6月に早めに検討する人が多かったことも考えられますが、対象エリアが限定的であったり、地域ごとに異なる割引内容でわかりにくさがあったためか、「全国旅行支援」ほどの爆発的な伸びは見られません。

一方で、中断している「GoToトラベル」の検索者数は、他の施策の発表に伴って若干の伸びが見られ、直近1年間でも一定の検索者がいることがわかります。「新しい支援施策が開始するようだけど、そういえばGoToトラベルはどうなったのかな」と気になって検索する人が多いのかもしれません。

「全国旅行支援」「GoToトラベル」「県民割」検索者数の推移
集計期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PC・スマートフォン

GoToトラベルの検索者数は、ピークが2020年10月で1,870,000、その後下降と上昇を繰り返してきました。一方の全国旅行支援の検索者数は2022年10月で4,720,000、GoToトラベルの約2.5倍となっています。GoToトラベルを検索した人の期待の多くが、最終的に全国旅行支援に注がれたのでしょう。

また、GoToトラベルはキャンペーンが開始された2020年7月でなく、同年10月にピークを迎えていることを考えると、全国旅行支援も今後のホリデーシーズンやコロナ感染が収まったタイミングで、さらに関心が高まる可能性があるといえそうです。

「GoToトラベル」検索者数の推移
集計期間:2020年7月~2022年7月
デバイス:PC・スマートフォン

下図は「全国旅行支援」「GoToトラベル」「県民割」を検索した年代についてです。全国旅行支援とGoToトラベルは年代の比率はあまり変わりませんが、県民割は特に20代の比率が低くなっています。県民割は対応地域が限られているため、遠出したい人が多いであろう若年層には使われにくいワードだったのかもしれません。

「全国旅行支援」「GoToトラベル」「県民割」検索者の年代
集計期間:2021年11月~2022年10月
デバイス:PC・スマートフォン

ここまでで、幅広い年代が全国旅行支援に関心があることがわかりました。さまざまな年代の人たちが実際に行動に移すためには、旅行業界は何を準備しておけばよいのでしょうか。

最新のトレンド旅行アプリ

ここで旅行者の求めるものを探るべく、「Dockpit」の「トレンド分析 - アプリトレンド」で、2022年9月、10月のトレンドアプリが何か見てみましょう。対象月までの半年間で利用ユーザー数の伸び率が高い順にランキングを作成しました。

2022年9月に注目されたアプリ

9月は、地域こそ限定されていましたが「県民割」の実施中で、なおかつ長期休暇が取りやすいシルバーウィークもあり、旅行しやすい条件が重なっていました。

アプリトレンド(6ヶ月上昇 | 「旅行&地域」カテゴリ)
※カテゴリはヴァリューズにて独自に設定
集計期間:2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン

アプリの上位には交通社や空港のアプリのほか、「さっぽろグルメクーポン」「ぎふ旅コイン」など、エリアを絞ったアプリが上位に来ています。

ぎふ旅コイン

「ぎふ旅コイン」利用者の年代を見てみると、60代からの注目度が高いことがわかります。ぎふ旅コインは、岐阜県内の旅行中にお土産の購入や飲食等で使える電子観光クーポンのアプリです。QRコードによる操作が中心で複雑な設定がいらないのが利点といえ、スマートフォンに慣れていない人でも使いやすいのではないでしょうか。

「ぎふ旅コイン」利用者の年代の割合
集計期間:2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン

TichetQR

TichetQRというアプリも上位に上がっています。TichetQRは同アプリが導入されている地域の公共交通機関に、キャッシュレスで乗車できる機能を持つアプリです。交通系ICカードのアプリであるモバイルSuicaと比較すると、50代、60代に人気があります。決済方法はPayPayやクレジットカードなど多彩。特筆すべきは、SuicaやICOCAなどの交通系ICカードが使えない地域の公共交通機関でも導入されているケースがあることです。見知らぬ土地の公共交通機関でもキャッシュレス決済が可能であれば、荷物を減らせて手軽な旅行となるでしょう。今後も注目のアプリです。

「TichetQR」「モバイルSuica」利用者の年代の割合
集計期間:2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン

経県値

「経県値」は、これまでの人生で関わってきた全国47都道府県の「経験」を日本地図に表すというアプリです。こちらは利用者は20代が74.5%と、20代からの人気が顕著に高いことがわかります。こうしたゲーム性を持たせることは、若年層へのアプローチとして有用そうです。日本全国を回るという意味で、経県値と似た要素をもつゲーム「桃太郎電鉄(桃鉄)」シリーズが若者に人気であることも、影響しているのかもしれません。

「経県値」利用者の年代の割合
集計期間:2022年9月
デバイス:PC・スマートフォン

2022年10月に注目されたアプリ

続いて「全国旅行支援」が始まった2022年10月の「旅行&地域カテゴリ」を見てみましょう。

アプリトレンド(6ヶ月上昇 | 「旅行&地域」カテゴリ)
※カテゴリはヴァリューズにて独自に設定
集計期間:2022年10月
デバイス:PC・スマートフォン

2022年10月では、9月期にも登場していたTichetQRがランキングのトップとなっていました。

また日産やトヨタなどのレンタカーのアプリも上位に来ています。「日産レンタカー」「チョクノリ!」のユーザー属性を見てみると、8割以上が男性となっています。レンタカーの手配や車での旅行について調べるのは、男性が多いと言えそうです。

「日産レンタカー」「チョクノリ!」利用者の性別の割合
集計期間:2022年10月
デバイス:PC・スマートフォン

11月の紅葉シーズンに向けてレンタカーを手配した人が多かったことが考えられます。なお2022年10月は、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行が起こるかもしれないという注意喚起がされていました。ここから公共交通機関ではなく、車での旅行が選ばれている可能性もあります。

また10月のアプリのランキングには、韓国の地図アプリや大韓航空など、韓国に関するアプリが上がっています。海外旅行は直接的に全国旅行支援とは関係がありませんが、旅行のキャンペーンや施策にかかわらず、海外旅行をしたい欲求が高まっている可能性も考えられます。

【調査リリース】2022夏の旅行トレンド全国調査 ~ 夏の国内旅行予定はコロナ前水準に回復、 旅先に求めるのは“定番の観光スポット” | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

https://manamina.valuesccg.com/articles/1913

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸、以下「ヴァリューズ」)は、国内の20歳以上の男女7,632人を対象に、今夏の旅行予定に関する消費者アンケート調査を実施しました。またヴァリューズが保有する約250万人の独自消費者パネルを活用したインターネット行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用して、消費者の旅行動向を分析しました。

コロナ後の旅行動向はどう変化する?2022年シルバーウィークから分析 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

https://manamina.valuesccg.com/articles/2046

新型コロナウイルスと戦い続けて3年。2022年は9月のシルバーウィークで、長い連休を取って遠出した人も多いのではないでしょうか。感染症の流行がある程度落ち着いていた2022年のシルバーウィークは、「コロナが落ち着いたら旅行動向はどう変化するのか」を分析するのに適した時期でもあります。そこで今回は、旅を計画したときに検索するであろう「旅行」と「観光」という2つのワードを中心に、消費者の要望や行動を調査しました。

まとめ

以上、全国旅行支援と全国旅行支援が発表された時期のトレンド傾向について見てきました。まとめると、下記のようになります。
・「全国旅行支援」の検索者は施策開始の報道直後から急増。40-50代がボリュームゾーン。
・「県民割」のように地域ごとの施策は、若年層に検索されにくい傾向がある。「GoToトラベル」は今でも一定の検索者がいるが、「全国旅行支援」が最もピーク時の検索者が多い。
・10月は日産レンタカーやチョクノリ!など、レンタカーアプリが主に男性に多く活用されている。先行アプリでは対応できていない部分をカバーしているTichetQR、経県値などゲーム感覚で楽しめるアプリにも注目。

全国旅行支援は期間限定の施策ではありますが、今後はGoToトラベル事業の再開や他の施策が登場する可能性が考えられます。旅行業界としては、施策に合わせてキャンペーンや割引情報に敏感な40-50代に向けた企画を打ち出すと良さそうです。

またキャッシュレス決済など、スマートフォンの使用を前提にした旅行は、全年齢層に浸透しつつあることが伺えました。国内外問わず、その地域に特化したアプリも今後使われていくでしょう。旅行アプリは「旅行予定先で使えるかどうか」が大きなカギを握ります。先行アプリで対応できていない機能を提供しているアプリの制作を、視野に入れると良さそうです。

今後の国の施策については、最新情報を逃すことなくキャッチしていきましょう。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年11月〜2022年10月、2020年7月~2022年7月(GoToトラベル検索者数推移のみ)
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

<参考情報>
観光庁|全国旅行支援の実施について
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000570.html
観光庁|全国を対象とした観光需要喚起策の実施について(2022年6月17日発表)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000560.html
県民割支援の期間延長について(2022年8月25日発表)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000566.html
TicketQR
https://play.google.com/store/apps/details?id=net.wakoticket.ticketqr
経県値(Web版)
https://uub.jp/kkn/
厚生労働省|新型コロナウイルス・季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00003.html

この記事のライター

IT企業にシステムエンジニアとして10年あまり勤務。結婚・出産を経てお声がかかり、あっという間にライター・編集が主たる業務になりました。IT系記事と一般家庭向けの役立つテーマをメインに、今さら聞けない人でもしっかり参考にできる、わかりやすい記事を心がけています。

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