消費者はどんな「レトロ」が気になっている?
早速、「レトロ」と掛け合わせてよく検索されているワードを確認してみましょう。
掛け合わせて検索されているワードとは、メインキーワード(レトロ)と組み合わせて検索されているワードのことで、「レトロ 〇〇」の〇〇の部分を意味します。
「レトロ」との掛け合わせ検索ワード
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
上位20キーワードを見てみるとさまざなワードが並んでいますが、「喫茶店」、「カフェ」といった飲食系や「ワンピース」、「ジョーダン」といったファッション系のワードがまず目にとまります。
飲食系、服飾系のトレンドは「以前流行ったもの=レトロ」なものが再度流行る傾向にあり、飲食系だと記憶に新しいタピオカブーム、服飾系だとY2K(Year 2000の略)と呼ばれる2,000年代のファッションが流行しています。
それ以外に特にランク内で気になったのが「冷蔵庫」、「カスタム」、「車」といったワード。「カスタム」との掛け合わせ検索者は、「クルマとカスタムで暮らしをカエる」をコンセプトとしたホンダ運営の「カエライフ」やグーネット、カーセンサーといった自動車系のサイトに検索後よく流入していることから、カスタムカーを意味するワードであることがわかります。中古車の2大サイトが上位入りしていることから、「レトロ」文脈で中古車へのニーズが高まっていることが伺えます。
「レトロ」「カスタム」で掛け合わせ検索した人が流入した主なページ
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
続いて21〜35位を見てみると、26位に「バイク」、28位に「扇風機」、33位に「軽自動車」がランクインしていました。
「レトロ」との掛け合わせ検索ワード
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
「家電」や「車」「バイク」といった乗り物は飲食、服飾とは違い、時間の経過に伴って機能がアップデートされます。家電量販店を例に考えると、古いバージョンの商品は新商品が出るとセールになるなど、新しいものが好まれる傾向にありますが、なぜ家電や乗り物に「レトロ」を掛け合わせて検索されているのでしょうか?
レトロな「家電」「車」の関心層はどんな人?
では特徴的な、「冷蔵庫」、「カスタム」、「車」、「バイク」、「扇風機」、「軽自動車」の6つのキーワードに注目して、検索者の人となりを分析してみます。
■女性はレトロな「冷蔵庫」や「車」、男性はレトロな「バイク」や「カスタム」に興味あり
「レトロ」との掛け合わせ検索ワード | 検索者の男女比率
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
家電と乗り物に分けてデータを分析していきます。
「冷蔵庫」は料理やインテリアといった女性が興味を持ちやすいトピックが関係するからか、女性が73%と男性を大きく上回る結果となりました。「扇風機」は男性が55%と少し多いものの、女性も一定の興味があることがわかります。
面白い結果が現れたのが乗り物。女性の割合は「車」59.7%、「軽自動車」55.6%と、女性の方が多い結果になりました。「車」は男性の方が興味を持ちやすいイメージですが、「レトロ」との掛け合わせは、女性の関心も高いことがわかります。
一方で「カスタム」は男性67.5%と、男性にニーズが高いキーワードのようです。レトロな車は女性の関心が高いですが、DIY的に機械をいじるカスタムとなると、男性の方が関心が高まるのかもしれません。
「レトロ 車」「レトロ カスタム」でそれぞれ検索してみると、実際に検索をして上位に表示されるページには微妙な違いがでています(2022年12月28日時点)。
・「レトロ 車」→タイトルに「かわいい」「おしゃれ」といったワードが目立つ
・「レトロ カスタム」→カーセンサーやグーネットの中古車一覧などが目立つ
「レトロ 車」「レトロ カスタム」Google検索結果(2022年12月28日)
このように、同じ車に関するワードでも、求められているニーズが若干違う結果となりました。
残った「バイク」は74.7%と男性ニーズが高くなっています。Dockpitで「バイク」の単一キーワードで検索者の男女比率を見てみると、男性が72.3%となっており、「バイク」自体が男性にニーズがあるキーワードであることがわかります。
「バイク 」検索者の男女比率
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
■ライフイベントが、「レトロ」関心層の年代に影響
「レトロ」との掛け合わせ検索ワード | 検索者の年代
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
年代別のデータでは山の大きさに差はありますが、20代、40〜50代と多くの商品で2回の山があることがわかりました。トレンドに敏感な若者だけでなく、幅広い年代がレトロブームに乗っていることがわかります。
この2つの山にはライフスタイルが関係しているかもしれません。
あくまで一般的にではありますが、はじめの山がある20代は独身の人が多く、趣味に没頭したり、自分自身にお金をかけることができる年代です。
一度凹んでしまう30代は、結婚や子育てなどライフイベントが多くなる年代です。自分だけにお金をかけることができなくなり、「おしゃれさ」よりも「利便性」を重視するようになるのかもしれません。
もう一度山ができる40〜50代はライフイベントもある程度落ち着き、子どもも大きくなって手がかからなくなる年代です。再度自分の趣味にお金をかけることができるようになるので、それに応じてニーズが高まるのかもしれません。
一方で唯一30〜40代に大きな山がある「冷蔵庫」は、白物家電(※)でインテリアとしても大きな部分を占める商品です。家族が増えることで新しい家電を検討するシーンが多い30〜40代が、せっかく買い替えるならレトロでおしゃれなインテリアを揃えたいという思いから、レトロな冷蔵庫へのニーズが高まるのかもしれません。
※DVDプレイヤーのような娯楽性の高い「黒物家電」とは反対に、日常生活を楽にするための家電のこと
商品の金額によって流入ページは検索結果が変化する傾向
では、これらの商品に興味がある人は、どのようなページに流入しているのでしょうか?
■車より低価格帯の家電は、ECへの導線が設置されているページが多い
「レトロ×冷蔵庫」「レトロ×扇風機」の流入ページ
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
「冷蔵庫」や「扇風機」といった、今回の対象商材の中では価格が安めのアイテムは、キュレーション系の記事の中でもECサイトへの導線が設置されているなど、そのまま購入にまで至るページが多くなっています。
Googleの画像検索もランクインしており、キュレーションサイト内でも画像を用いて商品を紹介していることから、「見た目が確認できる一覧から選んでいる」ことが特徴と考えられます。
その中でもポイントとなるのが、「冷蔵庫」「扇風機」のいずれも「デザインマガジン」のページがランクインしていること。どちらのページにも「おしゃれ」というワードが使われていて、「インテリア性・デザイン性が高い家電を選びたい」というニーズが伺えます。
ただし、商品紹介ではスペックもしっかりと紹介されており、デザイン性だけではなく省エネや機能性も意識した商品紹介がされています。
■高額商材の乗り物は、キーワードによって潜在層と顕在層に分かれる
価格が高い乗り物系のキーワードからは、家電と同様にキュレーション系ページへの流入が目立つものの、購入への導線が明確に設定されていないページもあり、ワードによって、検索のモチベーションにあると推察されるのが潜在的なニーズなのか顕在的なニーズなのか分かれる結果となりました。
潜在的なニーズが高そうなのが「車」、「バイク」。ランクインしているページは家電同様、キュレーション的におすすめ車種を紹介しているページのみとなっています。
「レトロ×車」「レトロ×バイク」の流入ページ
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
「車」「バイク」というビッグワードなので、「車、バイクでレトロなものってどんなものがあるんだろう?」と漠然と考えて検索している方が多いのかもしれません。
実際にランクインしているページを見てみても、「この年代のこの車種」と絞って紹介するのではなく、車種も見た目も幅広くたくさんの種類が紹介されていました。これらのページを見て、「この車が欲しい」となり、車種名などで検索し直すのかもしれません。
対して「カスタム」、「軽自動車」はニーズが顕在化しているキーワードのようです。
「レトロ×カスタム」「レトロ×軽自動車」の流入ページ
調査期間:2021年12月〜2022年11月
デバイス:PC、スマートフォン
「車」「バイク」との大きな違いが、中古車サイトがランクインしていること。「カスタムをしている・これから施す車」「軽自動車」とニーズがある程度顕在化しているので、実際に販売されている車を見て、吟味したいニーズがあるのかもしれません。
また、どちらの検索においても「モデストカーズ」のページがランクインしています。レトロでかわいい軽自動車をカスタムする専門店で、事例なども紹介しているので、実際にカスタムをした実例も見てみたいというニーズも伺えます。こうした専門店の存在やコンテンツが、乗り物界のレトロブームを後押ししているのかもしれません。
まとめ
今回は「レトロ」をキーワードに家電や乗り物などのニーズを分析しました。
分析の結果、性別や年代によってさまざまなニーズの違いがあり、商品の価格帯によってもよく見られているコンテンツに違いがあることがわかりました。
特に車業界は昨今の半導体不足の影響もあり、今まで新車を見ていた人が、新車が納品されないからと、中古車を見て「レトロカーいいかも」と思っている人も増えている気がします。
国や業界としては「EV(新しい車)へのシフト」をさせたいけれど、しばらく車を含むレトロブームは続きそうです。
一言でレトロといっても商材、キーワードによってニーズは異なります。データを分析しユーザーが「どんなレトロを求めているか」を知ることが今後のポイントになるかもしれません。
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