インバウンド回復中。2021年からの増加率は170%
今回の調査は、観光庁が公表している「宿泊旅行統計調査」を元に作成しています。
宿泊旅行統計調査 | 統計情報 | 統計情報・白書 | 観光庁
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html2008年(平成20年)10月1日に発足した観光庁の公式ウェブサイトです。観光庁の紹介や観光立国実現のための施策などを紹介しています。
同調査によると、外国人の延べ宿泊者数は2022年1月〜2022年11月の累計で10,779,840人でした。新型コロナウイルス感染症が流行する前の2019年と比べて、増減率は-89.9%となっています。しかしコロナ2年目の2021年と比べると、増加率は170.4%となっています。
■2022年10月以降、外国人宿泊者数が急増
下のグラフは新型コロナウイルス感染症が流行する前の2019年、コロナ3年目2022年における、外国人の延べ宿泊者数の推移です。2019年と比べると2022年の外国人の延べ宿泊者数はいずれの月でも、2019年の同月より少ないことがわかります。
外国人延べ宿泊者数推移
※折れ線グラフが2022年の延べ宿泊者数、グレーのエリアグラフが2019年の延べ宿泊者数
集計期間:2019年1月~12月、2022年1月~2022年11月
一方で、2021年と比べると2022年の外国人の延べ宿泊者数は10月以降、急激に伸びています。コロナ禍前の水準まで戻ったとは言えませんが、インバウンドは着実に回復傾向にあると言っていいでしょう。
外国人延べ宿泊者数推移
※折れ線グラフが2022年の延べ宿泊者数、グレーのエリアグラフが2021年の延べ宿泊者数
集計期間:2021年1月~2022年11月
2022年10月には、新型コロナウイルスへの感染が疑われる症状がある人を除く全ての帰国者・入国者について、いわゆる水際規制が大幅に緩和されました。その影響の大きさがグラフから見て取れます。
コロナ禍で大きな打撃を受けたインバウンドは、さまざまな規制が緩和されている今、引き続き順調に回復していくものと考えられます。
■出身国は韓国が1位、中国はコロナ前より98%減少
2022年に訪日した人の出身国についても調査しました。入国者の数がもっとも多い国は韓国で、100万人あまりの人が日本を訪れています。次点は台湾、その後にアメリカ、ベトナム、香港が続きます。
中国については2019年には約960万人と他国に比べて訪問者数が圧倒的に多い状況でした。しかし2022年は約19万人で、約98%減少しています。これは中国側で日本行きの海外旅行制限措置や帰国時の入国制限が継続していること、当時は日本側で中国からの訪問者に対して水際規制が実施されていたことの影響と考えられます。
外国人に人気の都道府県は?
次に外国人がどの都道府県に宿泊しているか、ランキング形式で見てみます。
■コロナ収束で、東京に人気が集中?
2019年は1位・東京都、2位・大阪府、3位・京都府、4位・北海道でした。コロナ禍となった2020年は京都府と北海道の順位が逆転し、北海道が3位となっていました。
外国人宿泊都道府県ランキング
集計期間:2019年1月~2020年12月、2022年1月~2022年11月
2020年は新型コロナウイルスの実態がまだわかっていない時期で、特に3密を避けることやマスク着用が推奨されていた年です。北海道が人気となったのは、都会の密をさけたいという訪問者の心理があった可能性があります。
対してコロナ禍の終息が見えてきた2022年には、3位に京都府が返り咲きました。他にも有名テーマパークのある千葉県や観光スポットとして人気の沖縄県などが上位に見られることから、定番の観光地への回帰が起こっていると考えられます。
また2022年は、1位東京都と2位大阪府の宿泊者数に差が開いています。入国が最も多い韓国からは従来、食の都である大阪府や距離的に近い福岡県への訪問が多くありました。近年では、韓国の若者が東京へ個人旅行で訪れることが多くなっています。訪日韓国人の興味は原宿・渋谷など東京の先進的・都会的な観光スポットへ移っているのかもしれません。
■京都府はナイトタイムエコノミー・キャッシュレスに取り組む
下のグラフは、東京都、大阪府、北海道、京都府の外国人延べ宿泊者数の年ごとの推移です。
外国人延べ宿泊者数年推移
集計期間:2015年1月~2022年11月
いずれの都道府県も2020年に落ち込んだものの、2015年〜2019年には宿泊者数は右肩上がりに増えています。
特に京都府は2019年に宿泊数の急激な伸びが見られます。世界的に影響があるアメリカの旅行雑誌「Travel+Leisure(トラベル・アンド・レジャー)」が毎年行っている読者アンケート「The World's Best Awards」で、京都市が8年連続ベスト10入りするなど、京都の魅力への認知度が高まったことが要因のひとつとみられます。
その2019年に京都府は、ナイトタイムエコノミー(※)やキャッシュレス環境の改善に取り組んでいました。
※ナイトタイムエコノミー:18時から翌日朝6時までの夜間を狙った施策。地域の状況に応じた、夜ならではの楽しみ方を創出して、経済効果を高めること。
京都市のナイトタイムエコノミーの事例として、もみじが有名な「永観堂」の取り組みを挙げます。永観堂では通常の拝観時間は17時までですが、紅葉シーズンは特別に17時半から21時の時間帯も拝観することが可能です。夜間はもみじがライトアップされて幻想的な雰囲気を楽しめます。
こうした取り組みを積極的に、また継続的に行っていることも、京都の人気を高める要因となっている可能性があります。
京都府が外国人観光客の満足度を高めて効果を上げたように、他の地域でも観光資源の魅力を維持しながら、利便性の向上にも注力していくことになるでしょう。
中国側の海外旅行制限が緩和されるときに注目
中国は、日本行きの海外旅行制限措置や帰国時の入国制限を継続しているため、制限がある間に訪日中国人が急激に増えることはなさそうです。日本では2023年3月に中国からの入国者に対する水際規制が一部緩和されることとなりました。
コロナ禍前は最も日本への訪問者数が多かった中国。中国人観光客が戻ってくると、どのような消費が起こるのでしょうか?
マナミナで2022年9月に公開した「 アフターコロナのインバウンド動向調査」では、
中国人が日本製品の品質に対して寄せる信頼は高く、「爆買い」という言葉が一時話題となったように、物を大量に購入する「モノ消費」がブームとなりました。そしてその次に、体験に価値を見出す「コト消費」の旅行トレンドへと変化していきました。
しかし、コロナ禍で訪日旅行が難しくなった今、再びモノ消費への回帰が起ころうとしているような動きが見られます。
という指摘があります。水際規制の一部緩和が今後の訪問者数や消費の動きにどう影響するのか、注視しておきたいところです。
アフターコロナのインバウンドの動向は?データから対策を考える|ウェビナーレポート | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/1977新型コロナウイルス感染拡大により、インバウンド観光産業は未だ厳しい状況が続いていますが、ワクチンの普及や感染状況の落ち着きから訪日観光客の受け入れが再開し、インバウンド回復に大きな期待が寄せられています。ヴァリューズで開催された「アフターコロナに向けたインバウンド対策セミナー」では、訪日観光客数が上位地域の中国・台湾・タイにフォーカスして、消費者の行動変化について徹底解説。いま消費者が求めていることや、旅行意向の変化はどういったものなのか、レポートします。
参考文献:
外務省|国際的な人の往来再開に向けた措置について
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/cp/page22_003380.html
JNTO|訪日外客数(2022 年 12 月および年間推計値)
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/pdf/20230118_monthly.pdf
在中国日本国大使館|新型コロナウイルス感染症(日本渡航に必要な手続)
https://www.cn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_000631.html
訪日ラボ|訪日韓国人観光客が訪れる観光地:福岡、大阪人気が特徴的。ベタな東京・京都旅行者は比較的少ない
https://honichi.com/news/2016/06/15/honichikankokujinkank/
訪日ラボ|京都観光総合調査2019年版、外国人観光客数は886万人!98%が「満足」と回答
https://honichi.com/news/2020/06/24/kyotokankou/
京都府|令和元年観光入込客数及び観光消費額について
https://www.pref.kyoto.jp/kanko/research/1report.html
IT企業にシステムエンジニアとして10年あまり勤務。結婚・出産を経てお声がかかり、あっという間にライター・編集が主たる業務になりました。IT系記事と一般家庭向けの役立つテーマをメインに、今さら聞けない人でもしっかり参考にできる、わかりやすい記事を心がけています。