レトロ可愛い「フレンドシップ・ブレスレット」、娯楽に出費を惜しまない「ファンフレーション」| 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年7月)

レトロ可愛い「フレンドシップ・ブレスレット」、娯楽に出費を惜しまない「ファンフレーション」| 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年7月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、コンサート会場で手作りブレスレットを交換する「フレンドシップ・ブレスレット」と、インフレでもレジャー需要が止まらない現象「ファンフレーション」について紹介します。


大人になっても楽しめる、懐かしの「フレンドシップ・ブレスレット」

フレンドシップ・ブレスレット

フレンドシップ・ブレスレットとは

アメリカの歌手テイラー・スウィフトのコンサート会場で、手作りブレスレットをファン同士が交換するのが流行しています。友情の証として交換し合うことから、「フレンドシップ・ブレスレット」と呼ばれています。ブレスレットはミサンガやビーズで作られ、曲名や歌詞などをアルファベットのビーズで表現するものが一般的です。

懐かしさや人との交流が生まれるのが魅力

この流行が始まった背景には、テイラー・スウィフトの曲の影響があります。歌詞(※1)でフレンドシップ・ブレスレットのことが触れられていることから、ファンの間で手作りしてコンサートの時に身につける、そしてファン同士で交換し合うことがお馴染みの楽しみ方として広まりました。

(※1)
“Make the friendship bracelets. Take the moment and taste it.”
(フレンドシップ・ブレスレットを作って、この瞬間を大切に味わおう。)
テイラー・スウィフト10枚目のアルバム『Midnights』に収録されている楽曲『You're on Your Own, Kid』(2022年)の歌詞より

また最近では「Y2K」として2000年前後のファッションやアナログなものがトレンドとなりました。フレンドシップ・ブレスレットに関しても、子供時代に流行っていた懐かしさが大人たちの興味を惹きつけています。実際に学生時代に友人とミサンガを交換した経験のある人も多いのではないでしょうか。年齢は関係なく、子供も大人も一緒になってこのトレンドを楽しんでいます。

フレンドシップ・ブレスレットを交換することで、見知らぬ人との会話が生まれることもファンの中で楽しみの一つとなっているようです。ブレスレットをきっかけに、ファン同士の繋がりや一体感をより感じることができ、一層思い出深い体験となります。コロナ禍で人との関わりが希薄になったりオンラインでのコミュニケーションが増えたことから、対面で楽しめるアクティビティという面でも人気が広まったのかもしれません。

広がる経済効果

このトレンドで面白いのは、ブレスレットは公式グッズとして販売されているわけではなく、ファン個人が手作りで用意しているものだということです。ブレスレットの材料を取り扱うお店では、その地域のコンサート前に売り上げが急増する事態となっています。

画材や手芸品を取り扱う北米チェーン店Michaels Storeでは、この流行によってビーズとジュエリー部門の売り上げが増加しており、特にペンシルベニア州の店舗ではジュエリー部門で500%もの売り上げ増加に繋がったといいます。他にも、手芸品のオンラインマーケットEtsyでブレスレット販売を生業にする人が出てきたりと、ビジネスチャンスにも繋がっています。

【参考文献】
https://www.theguardian.com/music/2024/feb/07/taylor-swift-eras-tour-australia-friendship-bracelets-inspiration-beads-explained
https://www.usatoday.com/story/money/retail/2023/08/08/taylor-swift-friendship-bracelets-driving-michaels-sales/70549834007/
https://edition.cnn.com/2023/08/08/business/taylor-swift-friendship-bracelet-etsy/index.html

物価が上がっても積極的に遊びたい「ファンフレーション」の波は継続

フェスを楽しむ女性3人組

ファンフレーションとは

物価高騰が進む中、旅行やエンタメなどレジャーへの出費は惜しまない価値観が特に北米で広がっています。この現象は、経済学者の間で「ファンフレーション(Funflation)」と呼ばれています。従来であれば、物価高騰によって必要最低限のものにしかお金を払わない動きが広がるはずですが、ここ数年は消費者の価値観や行動に変化が起きているようです。

「今しかない」という価値観が背景に

ファンフレーションが起きる背景には、パンデミックの影響があると言われています。コロナ禍に様々なイベントが制限された反動として、規制が緩和された今、レジャーアクティビティへの支出が積極的になっています。しばらく経験できなかった分を取り戻す、といった感覚に加えて、未来の心配よりも今を楽しみたい、といった考えにシフトしている人が増えていることも背景として考えられます。

楽しむためには借金もいとわない?

アメリカの成人を対象にしたBankrateの調査(※2)によると、借金をしてでも楽しいアクティビティをしたい人が一定数いることが明らかになりました。2024年の間に27%の人が旅行、14%の人が外食、13%の人がライブイベントに借金をしてでも行きたいと回答しています。また、回答者の約7割の人が2024年にこれらのアクティビティ(旅行、外食、ライブイベント)に2023年と同程度かそれ以上のお金を費やすつもりだ、と答えていることから、2024年もファンフレーション現象は期待できそうです。

また、調査結果には世代間の感覚の違いも見られました。2024年に2023年よりももっと娯楽にお金を使いたいと回答している人は、若い世代(Z世代とミレニアル世代)の割合が高くなっています。

借金をしてでも楽しいことをしたいかという点でも同様に、若い世代(特にミレニアル世代)の割合が高い結果となりました。旅行のために借金をしてもいいと回答した人の割合は、Z世代30%、ミレニアル世代35%、X世代23%、ベビーブーマー世代22%(※3)でした。特に若い人の間で、体験にお金を使いたいファンフレーションの傾向があるようです。

(※2)Survey: Would you go into debt to have fun this year? More than 1 in 3 Americans say they would
https://www.bankrate.com/credit-cards/news/discretionary-spending-survey/
2024年3月の調査、アメリカの成人2,276人が対象。

(※3)
世代区分: Z世代(18〜27歳)、ミレニアル世代(28〜43歳)、X世代(44〜59歳)、ベビーブーマー世代(60〜78歳)

【参考文献】
https://www.cnbc.com/2024/06/26/funflation-why-consumers-are-spending-so-much-this-summer.html
https://calgaryherald.com/opinion/columnists/opinion-funflation-bucks-the-trend-of-constrained-consumer-spending
https://newsroom.breadfinancial.com/aaa-summer-travel-survey

この記事のライター

大学ではポルトガル語と言語学を専攻していました。
趣味は、海外エンタメ情報の追っかけとおうちでラテアート修行をすることです。

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