生命保険のカスタマージャーニーの実態は?マーケティングへの活用事例も解説

生命保険のカスタマージャーニーの実態は?マーケティングへの活用事例も解説

競争が激しくなる保険業界ではカスタマージャーニーの把握の重要性が高まっています。実際の保険検討者のネット上の検討行動を可視化・解説しながら、カスタマージャーニーの活用事例についても取り上げます。


カスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーとは、簡単にいうと、顧客が商品やサービスの検討から購入に至るまでの行動プロセスのことです。

認知~購入までの流れを指すこともありますが、実際には、特定の商品やサービスを認知する前から、その商品・サービスのターゲットとなる行動を行っていることも多く、そうした周辺行動も含めたカスタマージャーニーを捉えることが重要となっています。

生命保険の場合、たとえば

「子どもが生まれて家計を見直す」
「病気ではないけど、健康診断の数値が気になって調べてみた」

などの行動は、まさに「保険をこれから検討し得るカスタマージャーニーの始まり」となる可能性があるでしょう。こうしたターゲットのカスタマージャーニーを把握することで、より効率の良いアプローチが可能となります。

生命保険のカスタマージャーニーは?

では、実際のカスタマージャーニーを見ていきましょう。

ある保険会社A社の検討を例に、以下のようにファネル(検討ステップ)と行動を分けて、それぞれの前後3時間の検索キーワードを集計してみました。

検討初期:一般ワード「生命保険」の検索
検討中期:保険会社A社の商品ページ接触
検討後期:同社の申込フォーム接触

保険検討者のカスタマージャーニー

保険検討者のカスタマージャーニー

検討初期:控除、確定申告等の検索者が多く見られますが、その後の行動も確認したところ、手続きを調べるだけでなく、加入も検討する人が一定数見られました。

検討中期:「おすすめ」関連、「20代」等の自分事検索などが増加し、検討が進んでいることがわかります。

検討後期:受取人や加入済みの保険の解約について調べ始める動きが増えていました。

※初期・中期・後期はあくまで便宜上のファネル区分となります。


もう少し詳しくCV前後の動きを見てみましょう。
CV(申込フォーム訪問)前後3時間の閲覧サイトを集計してみました。

フォーム接触者のフォーム接触前後の閲覧サイト

CV(申込フォーム訪問)前後の閲覧サイト

保険市場、ライフィ等の保険メディア・代理店サイトが目立ちます。価格が優位性になるダイレクト生保は、特にこうした比較サイトを押さえておくことが重要と言えそうです。また、中堅の生命保険会社のサイトもよく閲覧されていました。

A社は業界でも比較的規模の大きな保険会社だったのですが、A社を積極的に検討している人は会社の規模も、商品特性も異なる中堅生保も検討していることがわかります。

尚、今回はわかりやすくする為に、それぞれの行動の前後3時間で束ねて集計しましたが、実際の保険の検討行動は、より複雑です。

ある保険検討者の具体的な動きをもう少し詳しく時系列で可視化してみました。(保険やお金、ライフイベント関連の行動をピックアップ)

保険検討者の具体的なカスタマージャーニー例

保険検討者の具体的なカスタマージャーニー例

・idecoやふるさと納税、引っ越し等、保険ではないが保険から遠くも無いテーマの検索をしながら保険についても検討している
・Web上での検討期間が半年以上と長い
保険会社と他のサイトを行き来しながら、検討を行っている
・事前にシミュレーションをしたり、控除を調べる
等の特徴的な行動がみられました。

このような複雑な検討行動は蝶の動きにたとえて「バタフライ・サーキット」と呼ばれています。

最初の表で上げたような「生命保険 おすすめ」等のベーシックな検討行動を押さえつつ、その背後で起こっている複雑な検討行動に対し、いかにアプローチしていくか?が今後の保険マーケティングのポイントと言えます。

カスタマージャーニー分析を活かした保険会社B社の事例

最後に、カスタマージャーニーをうまく捉えて施策に落とした実際の事例をご紹介します。

保険会社B社では、Webマーケティングに注力する必要が出ていました。反面、競合ほどはマーケティング予算をかけることができず、いかにターゲットに効率良くアプローチするかが課題となっていました。

そこで、

・対象商材に関連する保険以外の行動をしたか?
・保険をWebで検討したか?
・保険に加入したか?


をアンケートで聴取してターゲットセグメントを分け、それぞれの具体的なネット行動をWeb行動ログデータから読みとく、ということを行いました。

調査事例…セグメント毎のカスタマージャーニーを可視化

調査事例…セグメント毎のカスタマージャーニーを可視化

・ターゲットのリアルな悩み
・想定していなかった検索キーワード
・検討上、重要なメディア
などを把握でき、それぞれ施策に落としていくことができました。

CMやWeb広告の効果を高める為に重要なのがクリエイティブです。

B社では、カスタマージャーニーからわかったネット行動の特徴に対し、各種のWeb施策を行った他、ターゲットの具体的な関心や悩みをもとに、インサイトにより刺さるクリエイティブや、ストーリー仕立ての動画などに活用しました。アンケートやインタビューでは答えて貰いにくい生々しい悩みを捉えることができるネット行動の分析ならではの取組みと言えます。そうした様々な施策の結果、従来獲得できていなかったセグメントの大幅な獲得に繋がったとのことでした。

他に、カスタマージャーニーをうまくとらえて潜在層にアプローチする、競合と接点を持つより前の行動のタイミングでアプローチするなどの施策に活かされることも増えています。

保険業界は、大手ダイレクト生保がWebマーケティングに大きな予算をかける一方で、近年では非ダイレクト系の各社でもWebマーケティングを強化する動きがあり、ますます競争が激しくなっています。

その中で、マーケティング施策の効果を最大化する為に、カスタマージャーニーの理解は重要と言えるでしょう。

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この記事のライター

京都の大学で長らく中国哲学史を研究。現在は事業会社に対するマーケティング支援を担当。中国・東南アジアを中心にグローバルリサーチにも携わっている。趣味は旅行と文献研究。

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