1年目データアナリストに読んでほしい本 ~ データ分析者の考え方・心構え編

1年目データアナリストに読んでほしい本 ~ データ分析者の考え方・心構え編

ヴァリューズの在籍2年目以上のデータアナリスト達に、1年目の自分に向けておすすめするとしたら、「これだけは読んでおいてほしい!」と思う本を紹介してもらいました。テーマは「技術以外の面で、データアナリストとしての自分の礎になっていると感じる本」です。技術が求められる職種でありながら、技術面以外にも分析者として読むことで視野が広がる本は沢山あるようです。記事内で紹介される本をめくってみると、データアナリスト達の脳内が覗き見できるかもしれません。


こんにちは。ヴァリューズでデータアナリスト(※以降DAと表記)をしている本間と申します。

今日は、これからDA職に就く人や、DAという仕事に興味を持っている学生の皆さんに向けて、データ分析職における考え方や心構えの参考になる書籍を紹介していきます。

株式会社ヴァリューズ データアナリスト 本間 花



株式会社ヴァリューズ データアナリスト 本間 花

東京都出身、津田塾大学総合政策学部卒業。1998年生まれ。
2021年にヴァリューズへ新卒入社。
ヴァリューズのWEBログデータの分析を手掛ける。

本文に入る前に、あえて技術書ではなく、「データ分析者の考え方や心構え」をテーマと設定している背景について少しお話できればとおもいます。

私が学生や新卒DAだった頃、技術書や、技術に関する発信に触れる機会は豊富にあった一方で、実際にDA職に就いている人たちの仕事観や、技術面以外で参考になったとされる情報を知る機会はあまり多くありませんでした。

そして、2・3年目と年次を重ね、基本的な集計設計やデータの分析・レポーティングについて遂行できるようになるに連れて、技術面ではない「事業課題から分析で解決可能な課題を抽出し、調査設計に落とす力」を習得する必要を実感する機会が増えました。

下図の成長イメージのスキルセットで「ビジネス課題抽出」と表現されるような内容ですね。

ヴァリューズの新卒データアナリスト向け配属後研修資料より抜粋

ヴァリューズの新卒データアナリスト向け配属後研修資料より抜粋

そんな背景があり、これからDAとして年次を重ねて成長したいと思っている人にむけて、技術面ではない、その先の力の礎になるようなおすすめ書籍を、お伝えしたいなと考えたのが、本企画の発端です。

また、DA3年目の私だけでなく、入社2年目〜9年目という幅広い年次の3名のDAにも、おすすめの書籍を選んでもらい、座談会形式で会話をしています。

本記事では、会話内容も交えつつ、書籍について紹介していきます。

おすすめ書籍に関する座談会の様子 (中央奥)砂原 路万 2022年入社 (手前左)米田 光佑 2020年入社 (手前右)竹久 真也 2014年入社 共に株式会社ヴァリューズ ソリューション局 インサイトアナリティクスG所属

おすすめ書籍に関する座談会の様子
(中央奥)砂原 路万 2022年入社
(手前左)米田 光佑 2020年入社
(手前右)竹久 真也 2014年入社
共に株式会社ヴァリューズ ソリューション局 インサイトアナリティクスG所属

書籍選定のテーマ

前述の目的に照らし合わせ、より具体的に下記3つの観点でテーマを設定しています。

・「年次を重ね重要性を認識した/早くに読みたかった」
・「DAでの自己経験が言語化されている」
・「DAとして働く上で原動力になった」

書籍紹介

ここからは、実際の対話記録も交えながら、各人のおすすめ書籍を紹介していきます!

1. 『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 (角川書店)』

『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 (角川書店)』(推薦者:本間)

本間

まず、全体的に面白いのでおすすめです笑
1年目の自分にここだけは読んでほしい箇所としても取り上げた、p,40,41が全体に一貫 し ている考えなんですが、本書のテーマである「USJのV字回復」のようなスケールの大きい話の根底の考えが結構シンプルだなぁというところが意外で新鮮でした。

配属直後とか、それこそ学生時代とかもそうですけど、データ分析ってスキル面が注目されやすかったり、何かとスタイリッシュなイメージがあって色々小難しく色々考えがちだったんですよね。
当時何かと思うことがある度に、後半でこんなに数式が出てくる話も根底の本質的な考えはシンプルだぞみたいなことを思い出させてくれたり、このスケールの話ですら、根底はこんなにシンプルなら、そこを理解できる自分もまぁなんとかやれるだろう、みたいに奮起する材料になっていたりしました笑
DAとしての活躍するイメージみたいなものも、この本を読んでから具体的にイメージできるようになりましたね。

竹久

本間さんの取り上げたP40-41では、「認知率」と「配架率」の大切さが語られていましたよね。

要は「知らないと買えないし、買いに行って目にも入らないものは買わない」と。 ウェブの世界でもこれが重要だと感じることはよくあります。

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 (角川書店)

\3,520

2. 『コンサルティング会社完全サバイバルマニュアル (文藝春秋)』

『コンサルティング会社完全サバイバルマニュアル(文藝春秋)』(推薦者:砂原)

砂原

新卒でコンサルティング会社に入社された著者が、マネージャーになるまでの過程で得た教訓や反省を、リアルなエピソードを踏まえつつ書いてくれている本です。やっぱり自分が二年目っていうのもあって、最初のアナリスト編のところが、たくさん身に染みるところがありました。

中でも、自分の限界を会社の限界にするなっていう章は、僕自身がゼロから考えたいタイプだったので、ぐぅぅ...ごめんなさい...!!っていうぐらい、読んでいて心にくるものがありましたね笑
若手、特に1年目って客観的にみても自分一人で辿りつける場所とかスピードって限界があるし、自分がやっている仕事って自分だけのものじゃなくて、会社としての一つの事業でもあるわけで。そんな中で自分一人で全部やろうとするのはエゴだなって思い知らされた、そんな章でしたね。

これを読んだ後は、うちの会社は色々な業界のリサーチを経験してきた先輩がたくさんいるので、そこは先人の知恵を借りて、乗ってやっていこうと思いました。
ただ、とはいえ全部人任せにしろとはいう本ではないんですね。
書いてあるのは、要はその道の王道を、まずは先人の力を借りて最短でたどり着いて、あとはクライアントに合わせたチューニングの部分を自分でやろうっていうメッセージです。スピードと質を含めて全体で最適化しようというか。この本を読んだ後は、このあたりも参考にして仕事をしています。

竹久

すでに蓄積のあるところまでは他の人の手を借りて、そこから先は自分でやるということと、やはりお客さんの目線に立つということですよね。

お客様の課題を解決することが大切で、自分でやりたいという気持ちにこだわるのはそこから離れてしまう態度ですよね。

本間

最近は、いい意味で砂原くんが頼ってくれる感じが増えたなと思っていたんですが、この本を読んだこともその一因なんだろうなぁと感じながら聞いてました。

コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル(文藝春秋)

\1,980

3. 『データ分析の力 因果関係に迫る思考法(光文社)』

3. 『データ分析の力 因果関係に迫る思考法(光文社)』(推薦者:米田)

米田

恐らく社会人一年目だった気がしますが、DAに配属してもらってこういった本も読まないといけないかなと思って読み始めた記憶があります。
本の内容に入りますが、因果関係って、そもそも特定するのが非常に難しいものですよね。そういった中で、できるだけ因果関係と言えるような分析を行うためのこれまでの営みが蓄積されてきているので、それらを分かりやすく解説しながら、データ分析にどう活かしていくべきか・どういうスタンスでいるべきかが語られています。

最終的には完全な因果関係と立証するのは困難なケースがほとんどですが、他の要因では無さそうと議論したり、最終的には因果関係らしいかを人が判断することの重要性が感じられる内容になっています。

また冒頭で、因果関係を特定しようとして失敗する例がたくさん紹介されています。(例:アイスクリーム店で施策を行って売上が上がったが、単純に気温が上がったタイミングで施策を打っておりその気温の影響の方が大きかった等)

専門的に言うと共通因子や、逆の因果などと言われますが、こういった失敗事例に多く触れておくことで、自分が行っている分析が「因果として疑わしい」と気づくことができるようになるんじゃないかなと思います。この部分は単純に読み物としても面白いので、1年目のみんなにもぜひ読んでもらいたい部分です。

本間

共通因子とか逆の因果みたいな話は、どこかでインプットとして触れてはいるのですが、そういった失敗事例も、そもそも知らないと気づけないっていうのはそうだなと思います。この本にはそういった失敗例も多く載ってるってことですよね。

竹久

二章のところで結構手法とかが出てくるけど、最終的にこれが因果関係だと特定するのは知識がある人と議論して判断していくみたいな話が書いてあるのが面白いですよね。

米田

そうですよね。因果関係と言いやすいような緻密な分析設計を行っても、結局のところはある物事が何かの効果である(因果関係である)とは多くの場合断定できないと語られています。
よって、我々分析者ができることは、他の要因では無さそうだという理性的な議論を続けていくことだけであると語られていました。このあたりは、非常に納得感が高く、数年データ分析を行ってきた今でも、改めて腑に落ちた部分でした。

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社)

4. 『会社を変える分析の力 (講談社)』

4. 『会社を変える分析の力(講談社)』(推薦者:竹久)

竹久

この本で何度も言われていることとしては、データを分析すること以外の力も大事ですよと。その力っていうのは、計算もするけど、問題を見つけるとか、結果を使ってもらうという段階では、人に動いてもらうみたいな力ですね。

分析の結果を単に伝えるだけじゃなく、分かりやすい形で伝えて、人に行動してもらうことが大事だっていう風に書かれていて。
現実とどうつなげるかみたいなところっていうのが、重く書かれているのが良いところだなと。そしてこれが約10年前に既に書かれているというのも、面白いですよね。

本間

著者の方は他の書籍(データドリブン組織)でも、データ分析やその結果を意思決定プロセスに組み込む重要性を語られてましたね。

米田

とりあえずAI使って、何かやりましょうみたいなことが最近多く、その後頓挫するという話はよく聞きますが、実際のビジネスに活かすことが大事、という話ですかね。

よくデータサイエンティストが持つべき三つの力(データサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力)も耳にしますが、そういうところにも通じる考え方なんだろうなと思いながら聞いていました。

砂原

一年目の時に読んでおきたかった気持ちにもなりましたね。分析をしてると、細かいところに目がいってしまいがちですが、今やっている分析の先には現実世界があって、どんな分析、伝え方をすると現実世界にどんな影響があるのか、っていう部分を見据えながらやるのが大事なんだなっていう。

竹久

データ分析に明るくない人も含めた組織を動かしたい時は、結果をわかりやすくするとかシンプルにするとか、そういうポイントが大事ですよね。

会社を変える分析の力 (講談社)

まとめ

現役DA達のおすすめ書籍紹介はいかがだったでしょうか?DA達の頭の中が少し覗き見できたのではないでしょうか。私自身も、周囲のDA達がどんな本に触れて、どんな仕事観でいるのかを知る、貴重な機会になりました。

本記事が、気になる本と出会うきっかけになっていれば幸いです!

この記事のライター

株式会社ヴァリューズ データアナリスト 本間 花(ほんま はな)
東京都出身、津田塾大学総合政策学部卒業。1998年生まれ。
2021年にヴァリューズへ新卒入社。
ヴァリューズのWEBログデータの分析を手掛ける。

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