リサーチワークフロー(調査企画のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチワークフロー(調査企画のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は「リサーチワークフロー」(調査企画のアウトプット)について寄稿いただきました。


1.リサーチワークフローとは

●概要

リサーチワークフローとは

リサーチワークフローとは、組織で行うユーザーリサーチにはどのような業務があり(業務工程)、どのような手順で行うのか(実行手順)を明記した、ワークフローとチェックリストを合体させたような案件管理用のアウトプットです。

本図を作成することにより、リサーチの案件をディレクションする担当者は、組織におけるリサーチの業務工程を定義して、各業務の仕事量や全体スケジュールを正しく見積もりができます。

特に、ユーザーリサーチにおける事務系統の資料作成業務は調査票などに比べると初めのうちはメンバーの意識外にありますが、そうしたドキュメントの存在も漏れなく認識できるのです。

この機能性により、複数部門が協力して行うユーザーリサーチ業務において、必要なだけの担当者アサインを行い、スケジュールの計画と実行の乖離を最小限で案件を運用できます。

※本稿で紹介するワークフローは、判断や行動の分岐をツリー上に整理するものではなく、ユーザーリサーチ全体のおおよその流れを掴むためのものです。また、実際の各ステップは並行対応を基本としていることをあらかじめご了承ください。

●構成要素

リサーチワークフローの構成要素は以下のようになります。

※以下、定性調査と定量調査とで基本的な進行や表記の同期は取っていますが、細部においてはそれぞれの業務の慣習を優先した構成にしています。

<定性調査>

リサーチワークフローの作り方|定性調査(構成要素)

①企画書作成

・調査概要作成
・配信対象者決定
・調査対象者決定
・データ録画有無決定
・従業員向け希望日程・時間帯のヒアリング
・スケジュール表作成

②インタビュー依頼メール作成

・インタビュー依頼メール作成
・スクリーニング調査票作成(※)
・ウェブ画面スクリーニング調査票作成(※)

③インタビュー依頼メール配信

・インタビュー依頼メール配信
・スクリーニング調査実施(※)
・スクリーニング調査結果集計(※)

④候補者リスト作成・対象者選定

・候補者リスト作成
・対象者優先度設定

⑤日程調整連絡・対象者確定

・対象者向け日程調整連絡
・従業員向け日程調整連絡
・対象者一覧表作成
・インタビュアー決定
・記録者・見学者決定
・従業員向けインタビュー実施要項作成・案内
・対象者向けリマインド連絡

⑥インタビューガイド作成

・質問項目のリストアップ
・インタビューガイド作成
・関係者事前テスト

⑦実査

・インタビュー実査
・デブリーフィング

⑧謝礼送付

・謝礼送付メール作成
・謝礼送付対象者リスト作成
・謝礼付与の設定・実行
・謝礼送付メール配信

⑨分析、報告書作成

・発言録作成
・発言録サマリ作成
・分析・ワークショップ実施
・報告書作成

⑩報告

・関係者向け速報連絡
・従業員向け録画データ案内
・報告会実施
・成果物データの格納・案内

※スクリーニング調査ありの場合、2〜3の間にスクリーニング調査票作成〜スクリーニング調査実施の工程が入る。(自社ユーザーに行う場合の配信リスト作成は、定量調査の4〜5の工程を参照して欲しい)

<定量調査>

リサーチワークフローの作り方|定量調査(構成要素)

①企画書作成

・調査概要作成
・配信対象者決定
・調査対象者決定
・割付決定
・クロス集計軸決定
・納品日・報告日の希望日程ヒアリング
・スケジュール表作成

②調査票作成

・スクリーニング調査票作成(※)
・本調査票作成
・アンケート依頼メール作成
・アンケートフォーム前文作成

③ウェブ画面作成

・ウェブ画面スクリーニング調査票作成(※)
・ウェブ画面本調査票作成
・テスト回答

④配信リスト抽出

・抽出条件決定
・抽出作業実行
・配信リスト作成(ID・メールアドレスなど)

⑤配信システム設定

・配信メール登録設定
・テストメール配信

⑥実査

・配信実行〜回収状況確認
・リマインドメール配信

⑦謝礼送付

・謝礼送付メール作成
・謝礼送付対象者リスト作成
・謝礼付与の設定・実行
・謝礼送付メール配信

⑧集計

・集計計画表作成
・ローデータ・GT表作成
・クロス集計表作成(数表データ・グラフデータ)
・自由回答リスト作成

⑨報告書作成、分析

・報告書作成(要約版・詳細版)
・分析、提案

⑩報告

・報告会実施
・成果物データの格納・案内

※スクリーニング調査ありの場合、事前調査としての2〜7の工程を行う。

●このアウトプットの導入が向いているケース

リサーチワークフローが必要なケース

「ユーザーリサーチはなぜそれほど時間がかかるのか?」
⇒この質問に一枚で答えるためのアウトプット

①知識や経験が異なるメンバーで調査を行うケース

ユーザーリサーチ業務は、自分のみ、あるいは固定メンバーで行っている時は阿吽の呼吸で進めることができます。ところが、チーム内にリサーチに携わる新任担当者を迎えたり、新しいプロジェクトで仕事をする時はそうはいきません。

メンバーのリサーチに対する知識や経験は異なり、その関わり方も企画だけ・実行だけ・レビューだけなど様々です。関係者が増えてくると、リサーチ業務では特にクリティカルなミスである確認漏れ・実行遅延のリスクも高まります。

事業会社では、実のところスケジュール表で業務管理しているケースが多く、スケジュール表には詳細なタスクまでは記載が無いので、管理者の立場からは「(納品や報告までに)なぜそれほど時間がかかるのか」という疑念が生じます。

②特定のメンバーに事務リソースが集中するケース

ユーザーリサーチは庶務の作業がとても多い仕事です。インタビューの日程調整、アンケートの配信管理、調査協力者への謝礼付与など、事前段階では後からどうにでもなると思っている事務仕事も、集めてみるとけっこうな量になります。

たいていは質問作成に皆の意識が集中していて、実施の直前に前出の作業を気づいた人が埋めることになりとても大変な思いをします。また、準備が一定程度進んでからこうしたタスクが発生すると、心理的に割り振りもしづらくなります。

それゆえにこうした事務作業は部門のアシスタントスタッフに割り当てられがちなのですが、その場合も完全なる作業なので、納得感や達成感は醸成されにくく、次第にユーザーリサーチ業務が「厄介ごと」として認識されるようになります。

2.作り方

リサーチワークフローの作り方(作成手順)

①親タスクでステップを整理する

・主だった業務の工程を親タスクとして並べる
(企画書やスケジュール表などに記載する粒度)


②子タスクで実作業を見積りする

・実作業をリストアップしてアイテム化する
(作業日報や進捗管理表などに登録する粒度)


③業務の担当者/確認者を割り振る

・担当者欄には資料作成者や業務実行者を記載する
・確認者欄には承認者やレビュワーを(かっこ書き)で記載する


④関連資料にはリンクを設定する

・それぞれの業務に対応する資料の名称を記載する
・資料のファイルパスをリンク設定する

3.使い方

リサーチワークフローで得られる効果

①調査業務の役割分担のオリエンテーション用に

アンケートやインタビューの仕事は、実施が近づくにつれて関連する他部門との連携業務が出てきます。リサーチワークフローを使うと、これから取り組むことになる仕事を順を追ってメンバーと一緒に確認する機会を作ることができます。

特に新任のプロジェクトのメンバーとは、どのような業務があるのか?仕事に見落としはないか?を点検していきましょう。また拡大関係者にも自分が関わる部分だけでなく全容を知ってもらえている方が後々理解を得られやすくなります。

ワークフローは後半に行くほど当初想定していない、ユーザーデータへのアクセスやユーザーコミュニケーションの業務が出てきます。これらの仕事は担当が曖昧になりやすいので、あらかじめリストアップできていると後々スムーズです。


②事務系統の中間成果物ドキュメントの管理用に

アンケートの告知やインタビューの募集など、ユーザーリサーチで必要になる事務系統のドキュメントは、元データが散らばりやすい傾向にあります。最終成果物としてのメールで発信されていたり、担当者が個人で文書を管理していたり…

こうした中間成果物ドキュメントがリサーチの直接的な付加価値として認識されることはありません。しかし、もちろん作成や管理の稼働は発生していますし、管理ができていないとメールの誤送信などミスが起きやすい箇所でもあります。

リサーチワークフローは、事務系統のドキュメントの目次・看板ページとして、各成果物へのファイルパス(リンク)を設定して、前述のようなリスクを回避することができます。(逆に、他にこの機能を果たすちょうど良い資料が無い)

この記事のライター

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でUX戦略・リサーチ全般を担当する。

個人でリサーチに関する著作を持ち、デザイン・マーケティング・経営を横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行うほか、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。

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