「クワイエット・ラグジュアリー」「Japandi」など...海外トレンドに見るビジネスの種(2023年10月)

「クワイエット・ラグジュアリー」「Japandi」など...海外トレンドに見るビジネスの種(2023年10月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、アメリカ出身の著者が、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、ロゴに頼らないシンプルなデザインで、スローファッションの考え方とも通ずる「クワイエット・ラグジュアリー」と、日本の「侘び寂び」とスカンジナビアの「ヒュッゲ」を融合させたスタイル「Japandi」に注目しました。


クワイエット・ラグジュアリー(Quiet Luxury)

2023年5月に「Quiet Luxury」のGoogle検索は684%急増しました。クワイエット・ラグジュアリーとは、最高品質の素材と職人技によって作られ、50年後でも優れたコンディションとトレンドに影響されないデザイン性を維持できるものです。しばしば「新時代のミニマリズム」とも呼ばれます。クワイエット・ラグジュアリーでは、派手なパターンや目立つロゴは使われません。「ステルスウェルス」というワードも、クワイエット・ラグジュアリーと同様に見せびらかすことなく裕福であることを表現するものですが、当ワードの検索ボリュームは990%増加しました。

これは「古いお金(old money)のスタイル」であり、超裕福な人々によってインスパイアされています。彼らは裕福なライフスタイルに非慣れているため、誰に対してもそれを証明する必要を感じていません。クワイエット・ラグジュアリーは、自分の個人的なスタイルを確立し、自信を持つために派手なラベルやトレンドに頼る必要を感じない女性の間でのスタイルも表しています。興味深いことに、インドやアフリカのような国々は鮮やかで大胆な色を裕福さと関連付けていますが、豊かな人々がベージュやニュートラルカラーを着るという考えはアメリカ文化に根ざしています。

クワイエット・ラグジュアリーの文脈で、人気が高まっているブランドは非常にシンプルです。The Rowは、比較的新しいハイブランドで、人々が品質を評価できるようにとの意図で、ブランディングにおいて任意の種類のラベルや派手なロゴを明示的に排除しています。一見すると、デザインは他のランウェイショーよりも見た目が非常にシンプルで、主にニュートラルカラー、特にベージュとブラックを使用しているように見えますが、フィット感と生地に対する強い評判を築いています。Bottega Venetaは、ラベルを追加することなく、時代を超えたバッグで成功しています。2016年に設立されたKhaiteは、ミニマルなカシミヤセーターで知られています。

ますます多くの人々がミニマルなライフスタイルとスローファッション(※)を採用し、長い年月にわたってアパレル市場を支配してきたファストファッション業界を批判し、意識的かつ意図的な方法で消費を始めています。品質とスタイルの両方で長持ちする限られた数の商品を購入する、ということにメリットを感じているのです。

※スローファッションとは、人権や環境・動物に配慮して作られたファッションアイテムのことです。さらに、消費者がほんとうに必要なものだけを厳選して長く愛用する取り組みを指します。

出典:
Quiet Luxury Explained: A Trend or a Fashion Subculture That’s Gone Popular?
https://wwd.com/pop-culture/celebrity-news/quiet-luxury-trend-fashion-explained-1235630126/amp/

Japandi(ジャパンディ):日本の「侘び寂び」とスカンジナビアの「ヒュッゲ」を融合させたデザイン

Google Trendsでは、「Japandi」は過去最高の検索ボリュームを記録しています。「Japandi」とは、「Japan」と「Scandi(Scandinavianの略)」を組み合わせた言葉で、2つのミニマリストの美学を融合させたデザインスタイルを表します。

「Japandi」は、日本の「侘び寂び」の哲学と、スカンジナビア(特にデンマーク)の「ヒュッゲ(Hygge)」の概念を取り入れたスタイルです。侘び寂びとは、「質素ものの美しさ」を高く評価する考え方。ヒュッゲとは、温かくて居心地の良い空間や雰囲気、時間のことを指します。これら2つのスタイルには類似点があり、一緒になることでより概念が強化され、シンプリシティ(質素さ、飾り気のなさ)と機能性が高まります。

そのシンプリシティは、カラーに表れています。Japandiで使われるカラーには、さまざまな濃淡の茶色、白、そして時折黒があり、刺激的な色はほとんどありません。これはJapandiの元となっている日本とスカンジナビアの両方の文化が、自然に根差しているため、ひいては住環境にも自然素材が使われているためと言えます。実際Japandiでは、木材、リネン、石などの自然素材から作られた家具や伝統的な家庭用品、外観が多く見られます。特によく見られるのは、木の美しさを引き立てて丁寧に作られた長い木製のテーブルです。Japandiの室内には、余分な装飾はほとんど見当たりません。代わりに急須や陶器のカップ、そして照明が装飾として機能します。

家の中の各アイテムは、見た目の美しさと機能性の両方の観点から選ばれます。Japandiは、時間の経過とともに古びたり欠陥が生じたりしたアイテムに美しさを見出す侘び寂び文化から派生しています。そのため安価で設計が悪く、すぐに使い捨てられるような商品は避けられ、代わりに年月を経ても美しい工芸と素材が使われているのです。過剰なものを避け、高品質な家具や機能的な装飾を長く使うJapandiは、持続可能なライフスタイルといえます。

Japandiの考え方は、スカンジナビアの企業や日本のデザイナーが認知される一助となっています。IKEAはそのヒュッゲな美学で世界的に知られています。デンマークの小規模なデザイン会社であるferm LIVINGは、シンプルでありながら精巧なデザインのランプを手掛けており、その知名度は代表的商品の「Arum Lamp」の人気に表れています。よく知られるようになった日本のデザイナーといえば、日系アメリカ人の芸術家であるイサム・ノグチ氏です。多くの企業が彼からインスパイアされた商品を制作しており、彼の提灯のような和紙ランタン「Akari」は、ここ数年でさらに有名となっています。他にも、日本のインテリアデザイナーである剣持勇氏や建築家の隈研吾氏は、世界中のインテリアデザインに影響を与えています。

世界中の消費者がJapandiスタイルを自宅に取り入れようとしている昨今。日本のデザイナーや企業は自らの製品を海外で宣伝するチャンスを生かすため、日本の美学を活用していくべきです。

出典:
Japandi Style: Everything You Need to Know About These East-Meets-West Interiors
https://www.architecturaldigest.com/story/japandi-style-101
The rise of ‘Japandi’ style
https://www.bbc.com/future/article/20191018-the-rise-of-japandi-style

この記事のライター

Born and raised in the Bay Area, U.S.A, I was fascinated by the different social and purchasing behaviors between Japanese and American consumers. I studied communication for undergrad and international marketing for my graduate studies. My professional background is in bilingual recruitment and Japanese-English translation.

関連する投稿


中国乳製品市場が健康ニーズと共に拡大中

中国乳製品市場が健康ニーズと共に拡大中

中国では、冷蔵牛乳やチーズ、バターなどはもちろん、日本では馴染みのない、常温保存が可能で半年以上鮮度を保つロングライフの牛乳やヨーグルトも親しまれています。基礎的な栄養補給が目的だった乳製品は、消費者のニーズに伴ってより高い付加価値が求められるようになりました。この記事では、現在の中国乳製品市場のトレンドを紹介します。


【無料レポート】タイ消費者のリアル〜美容家電・住宅設備・家具編

【無料レポート】タイ消費者のリアル〜美容家電・住宅設備・家具編

成⻑を続けるタイの消費市場。しかし、⽇本から⾒えるのはマクロ統計や店頭の⾵景までで、消費者が家の中で実際に何を使い、何にこだわって暮らしているかは⾒えにくいのが実情です 。本レポートでは、美容家電・キッチン・家具の3 領域にフォーカスし、2 つのアンケートと投稿写真の分析により、タイの暮らしの実態を調査しました。※本レポートは記事のフォームから無料でダウンロードできます。


中国で抹茶が若者を中心に人気拡大。その魅力は?

中国で抹茶が若者を中心に人気拡大。その魅力は?

近年、中国の抹茶人気が高まっています。抹茶飲料だけでなく、アイス、ジェラート、チョコ、ラテ、お酒など数えきれないほどの抹茶商品が登場しており、「万物皆可抹茶(なんでも抹茶味にできる)」という言葉ができるほどです。この記事では、このような抹茶人気の背景にある要因を紹介します。


中国の犬猫3000万匹がシニア期へ、進化するペット終活最新事情

中国の犬猫3000万匹がシニア期へ、進化するペット終活最新事情

今、中国ではペットの老いが大きなテーマになっています。たくさんの犬や猫がシニア期を迎え、ペット業界もかわいがるだけのフェーズから、最期まで寄り添うケアへと変わってきました。ペット保険、フードと健康管理、そしてペット葬儀。広がり続けるこの市場で、今最も注目されている変化をレポートします。


中国で大ブーム!食べて健康になる薬食同源(やくしょくどうげん)と最新トレンド

中国で大ブーム!食べて健康になる薬食同源(やくしょくどうげん)と最新トレンド

中国で今、伝統的な健康思想「薬食同源」が大ブームを巻き起こしています。急速な高齢化を背景に健康寿命を延ばしたいシニア世代だけでなく、日々の疲れやストレスを抱える若者たちの間でも、タイパ抜群の手軽な養生スタイルとして急速に浸透中。2024年には主要ECだけで1兆円を超える巨大市場へと成長しました。本記事では、老舗の若返りやヒット商品の動向など、進化を続ける中国の最新健康トレンドを解説します。


最新の投稿


中国乳製品市場が健康ニーズと共に拡大中

中国乳製品市場が健康ニーズと共に拡大中

中国では、冷蔵牛乳やチーズ、バターなどはもちろん、日本では馴染みのない、常温保存が可能で半年以上鮮度を保つロングライフの牛乳やヨーグルトも親しまれています。基礎的な栄養補給が目的だった乳製品は、消費者のニーズに伴ってより高い付加価値が求められるようになりました。この記事では、現在の中国乳製品市場のトレンドを紹介します。


ブランドらしさをどう再現?スターバックスが追求する「さりげないテクノロジー」

ブランドらしさをどう再現?スターバックスが追求する「さりげないテクノロジー」

2017年にはロイヤルティプログラムの「Starbucks Rewards」を開始。2019年には一部の店舗から、モバイルオーダー&ペイのサービスを開始するなど、店舗でのブランド体験をデジタルの世界へと拡張し、顧客にとって新たな体験価値を提供すべく、DXの取り組みを進めてきたスターバックス コーヒー ジャパン。同社で、顧客起点のデジタル戦略の企画から実装までを担ってきたのが、濱野努氏だ。“スタバらしさ”を体現する、デジタル体験はいかにして設計されているのか。ヴァリューズの岩村大輝が話を聞いた。


シュークリームが再注目の理由。プチ贅沢ニーズを捉えるブランドとは

シュークリームが再注目の理由。プチ贅沢ニーズを捉えるブランドとは

近年、コンビニや専門店でシュークリームの商品展開が活発になっています。定番のカスタードシューに加え、クリーム増量、新食感、季節限定フレーバー、コラボ商品など、各社がさまざまな切り口で新商品を打ち出しています。では、シュークリームへの関心は実際にどのように高まっているのでしょうか。本記事では、検索データから注目ブランドや関心層を整理し、長く選ばれ続ける背景を考察します。


データと感性の「橋渡し」が顧客起点のDXを加速させる 花王のDXがブレない理由

データと感性の「橋渡し」が顧客起点のDXを加速させる 花王のDXがブレない理由

デジタル化の進展により膨大なデータが得られるようになった現代。しかし、高度なデータ分析が必ずしも顧客理解やビジネスの成果に直結するとは限らない。データ活用のROIに多くの企業が苦悩する中、花王はなぜ「顧客起点」の軸をブレさせずにデジタル変革を推進できるのか。30年にわたりシステム開発とマーケティングの現場の融合に挑んできた同社の佐藤満紀氏に、ヴァリューズ ゼネラルマネジャーの岩村大輝が聞いた。


10代の42.0%が複数SNSを併用、50代は非利用が56.9%【スパイスボックス調査】

10代の42.0%が複数SNSを併用、50代は非利用が56.9%【スパイスボックス調査】

株式会社スパイスボックスは、全国の10代〜50代の男女を対象に「日本国内のSNS・ショート動画プラットフォーム利用実態」についてアンケート調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ