こんにちは。データマーケティングの会社・ヴァリューズでリサーチャー/マネジャーを務めている鳥塚です。
わたしは主に事業会社のマーケティング部門や商品開発部門のご担当者様に対して、事業課題やマーケティング課題をお聞きし、その解決に向けた調査・分析をご提案・実施し、課題解決に向けたソリューションをご提案するようなことに携わっています。
ユーザーセグメンテーションの基本的な考え方とは?
現代の消費社会では消費者のニーズや価値観が多様化しているため、闇雲に商品/サービスを開発・販売してもなかなか思うような結果にならないようなケースが起こってしまいます。
そのため、企業は商品/サービスを効果的にアピールできる層を定め、その上で商品を開発し効果的にアプローチしていくプロセスの必要性がさらに高まっていると言えます。
このアピールできる層を定めるプロセスがセグメンテーション、ターゲティングの考え方になります。セグメンテーションでは消費者を様々な変数を用いて分類し、その中から狙いを定める層(ターゲティング)を決定する一連の流れですが、今回はこの中でユーザーセグメンテーションについて、ヴァリューズの独自データであるWeb行動ログデータとアンケート調査を組み合わせた方法についてご紹介します。
紋切り型のユーザーセグメンテーションだけでは消費者の理解が難しくなっている
マーケティングリサーチにおけるユーザーセグメンテーションで最初に思い浮かぶのは「性年代別」のようなデモグラフィック変数を用いた分類ではないでしょうか。
性別や年代別の要素はユーザーをイメージする際に重要なデータであり、属性情報が事前に取れているようなデータパネルであれば情報取得のコストも発生しないため非常に使い勝手の良い変数だと言えるでしょう。
一方、多様化した価値観の中では一概に性年代別だけではユーザーの特徴が測れなくなっているとも感じています。例えば、「Z世代」と一括りにまとめて捉えてしまいがちですが、先般ヴァリューズがリリースした自主調査の中でもZ世代は細分化されたコミュニティの中で、その中の流行に影響を受けながら価値観が醸成されているとZ世代リサーチャーが考察しています。
そこでマーケティングリサーチではサイコグラフィック変数と呼ばれる価値観やユーザー意識を用いたセグメンテーションも多くの場面で用いられています。
その中での代表的な手法が「因子・クラスター分析」です。ユーザーの価値観や意識項目をアンケート調査で取得し、その回答データを用いて複数のクラスター(似たような価値観などを持ったユーザーのグループ)に分類するというものです。先にご紹介したZ世代の自主調査でも、この「因子・クラスター分析」を用いてZ世代のユーザーセグメンテーションを行っています。
Webログデータを用いたユーザーセグメンテーションの事例紹介
マーケティング・リサーチではよく使われている「因子・クラスター分析」でのユーザーセグメンテーションですが、分析に用いるデータにアンケート回答データを用いるため、事前に想定されるセグメントの仮説を持つことや、価値観を正確に取得するための設問設計など、リサーチャーの知見やスキルも必要な方法であり、極論するとリサーチャーの主観やセンスが介在する方法とも言えます。
そこでヴァリューズではアンケート調査のようなAskingデータではなく、Listeningデータとしてインターネットの検索ワードを用いたユーザーセグメンテーションを提案することもあります。
ヴァリューズが実施した「ダイエット検索者のWeb行動とプロファイル調査」を例に、検索ワードを用いたユーザーセグメンテーションの事例をご紹介します。
「ダイエット」は多くの人にとって非常に関心の高いテーマで、ネット上でも「ダイエット」は検索ワードランキングでも常に上位に位置しています。
そこで「ダイエット」と検索しているユーザーを抽出し、その前後の検索ワードから関連性の高いワードをまとめ上げ、その結果を基にユーザー分類をしたものがこちらになります。
「ダイエット」と一言で言ってもやせたい願望が強いユーザーだけではなく、出産前後の身体のケアを考えているクラスターや筋肉をつけて身体を鍛えたいクラスターなど、指向性や背景情報も加味されたユーザーセグメンテーションを行うことができました。
ヴァリューズではこのように分類された各クラスターに対して、詳細なWeb行動ログデータの分析やアンケート調査を配信することで、さらにユーザー理解を深めることができます。
こちらは各クラスターの平均支出額をアンケート調査で聴取した結果ですが、これをみると「ボディメイクダイエッター」が全体的に消費行動が活発で、旅行やイベントなど様々なジャンルにお金を使っていることがわかります。
Webログデータを用いたユーザーセグメンテーションのメリットとは?
このように検索ワードを用いたユーザーセグメンテーションでは、Web上のアクション(検索)をそのまま変数として用いるため、SEO対策や検索流入後のランディングページのキーメッセージやコンテンツ制作に活用できることが大きなメリットとなっています。
また、アンケート調査やインタビューのようなAsking型の手法ではなかなか本音が回答しづらいようなテーマ、商材ではWeb行動ログデータを用いたユーザーセグメンテーションは特に真価を発揮します。
リサーチャーが指南! 調査設計上のポイントとは?
ユーザーセグメンテーションは分類することが目的ではなく、その結果からターゲットを定め、そのセグメントに対してどのようにアプローチしていくか施策に落とし込んでいくことが重要です。
そのためにも、ユーザーの背景情報や価値観を理解するためのAskingデータは重要なデータと言えます。AskingデータとListeningデータ、それぞれのデータのメリット、デメリットを補い合う形で適切なセグメンテーションを設計することが大切だと考えます。
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新卒で総合調査会社に入社し社会調査や自治体の計画策定支援業務を行う。
その後ネットリサーチ会社マクロミルを経て2016年にヴァリューズに入社。
リサーチャーとしてアンケート×ログ調査の設計・分析を担当している。