インタビュー実施要項(調査企画のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

インタビュー実施要項(調査企画のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は、「インタビュー実施要項」(調査企画のアウトプット)について寄稿いただきました。


インタビュー実施要項

1.インタビュー実施要項とは

●概要

インタビュー実施要項とは

インタビュー実施要項とは、インタビューの実施概要(日程や参加者情報など)と実施環境(オンラインの画面URLや当日の連絡先など)の情報から成る、当日の運営マニュアルとなるアウトプットです。

インタビュー当日が近づくほど関係者間でファイルや連絡手段が錯綜してしまう状況は皆さんも一度は経験しているでしょう。ツギハギの運営情報が出回り、直前の時間が社内対応に追われてしまったり…

このアウトプットは、当日の運営情報を資料一枚で共有することができます。運営者は当日の段取りを、見学者は入退室の手順を、それぞれ同じファイルで最新情報(最終情報)参照することができます。

●構成要素

インタビュー実施要項の作り方(構成要素)

インタビュー実施要項の構成要素は以下のようになります。
※以下の記載内容はあくまで代表的な一例です。

○実施概要
1.調査手法
・オンラインインタビュー

2.使用ツール
・Zoom

3.実施日程
・20XX年X月X日(X)〜20XX年X月X日(X)

4.実施時間帯
①X月X日(X)00:00-00:00 ○○様
②X月X日(X)00:00-00:00 ○○様
③X月X日(X)00:00-00:00 ○○様
④X月X日(X)00:00-00:00 ○○様

5.実施時間
・60分/1名

6.実施人数
・8名

7.調査対象者
グループA(4名)|○○○○ユーザー
・○○○○○○○○
・○○○○○○○○
グループB(4名)|○○○○ユーザー
・○○○○○○○○
・○○○○○○○○

8.モニター当日環境
PC  :あり(対面通話用)
スマホ:あり(画面操作用)
アプリ:あり(画面操作用)

○実施環境

1.Zoom URL
https ://×××××××××××

2.担当体制
・インタビュアー:○○
・記録者:○○
・運営事務局:○○
・見学者:○○

3.当日連絡先・連絡掲示板
・運営事務局:000-0000-0000(○○携帯)
・インタビュアー:000-0000-0000(○○携帯)
・Slackチャンネル:○○○○プロジェクト

4.運営者向け連絡事項
入室時間・退出方法
・開始30分前から関係者で直前打合せを行います
・モニターは定刻と同時に待機室から誘導します
・終了後に15分程度デブリーフィングを行います

個人設定
・インタビュアーは表示名を「司会者」で設定
・記録者は表示名を「記録係」で設定

5.見学者向け連絡事項
入室時間・退出方法
・開始10分前を目安に早めの入室をしてください
・開始以降頻繁な出入りがないようお願いします
・終了後そのまま退出ボタンで退出してください

個人設定
・カメラ・マイクともOFFの状態で入室ください
・画面下ツールバーから以下設定をお願いします
・設定>ビデオ>音声参加者を非表示にチェック
・参加者>名前の変更>「見学者」と入力

●このアウトプットの導入が向いているケース

インタビュー実施要項が必要なケース

「インタビューの日取りはいつか?同席してもよいか?」
⇒この質問に一枚で答えるためのアウトプット

①当日の運営に関する情報が錯綜するケース

インタビュー当日の運営に関する情報はとかく散らばりやすいものです。インタビュー画面のURLがメールやメッセージの中にあったり、対象者情報が企画書の中や調査票の中にあったり、はたまたGoogleカレンダーのメモ欄にあったり。

こうした運営情報は皆がよく参照する同一ファイル内で情報を更新するようにしておけると連絡効率が上がります。特に、候補者日程調整から対象者確定までの期間が緊密な進行だと情報が散らかりやすいので、あらかじめ整理しましょう。

②普段は関与していない見学者が多いケース

インタビューの見学者は日程だけ合わせていることが多く、多くの人は当日になってから実施概要や視聴環境を確認します。そして大規模なプロジェクト(または大企業)ほどこうした初めてオンラインインタビューを見学する人が増えます。

そうすると、自然と運営者への直前問合せが増えます。運営者にとって(特にインタビュアーにとって)は直前の時間は非常に貴重な準備時間ですが、一方で見学者からの問合せが発生しやすいのも同じ時間帯のため、事前の対策が必要です。

2.作り方

インタビュー実施要項の作り方(作成手順)

①あり得る時間帯枠を決める

・関係者で都合の良い時間帯枠を選定しておく
・参加希望が多い時間帯は厚めに用意しておく
(社会人は18:00-19:00や19:00-20:00が多い)

【午前】10:00-11:00|11:00-12:00
【日中】12:00-13:00|13:00-14:00|14:00-15:00
    15:00-16:00|16:00-17:00|17:00-18:00
【夜間】18:00-19:00|19:00-20:00|20:00-21:00

--------------------------

②モニターの当日環境を記す

・オンラインインタビューにおけるモニター(調査協力者)の通話環境を記載する
・ユーザーテストの場合はスマホやアプリなど画面操作の環境も事前確認しておく

<記入例>
PC  :あり(対面通話用)
スマホ:あり(画面操作用)
アプリ:あり(画面操作用)

--------------------------

③主要な連絡先を決めておく

・回線不調や開始時刻などの緊急連絡用に事務局とインタビュアーの携帯番号を記載する
・オンラインメッセージの場合もSlackチャンネル・LINEグループなど連絡先を決めておく

<記入例>
*当日連絡先・連絡掲示板
・運営事務局:000-0000-0000(○○携帯)
・インタビュアー:000-0000-0000(○○携帯)
・Slackチャンネル:○○○○プロジェクト

--------------------------

④当日の進行手順を周知する

・運営者向けの連絡事項を記載する(リハーサルの段取りなど)
・見学者向けの連絡事項を記載する(入室・退出の段取りなど)

<記入例>

●運営者向け連絡事項

*入室時間・退出方法
・開始30分前から関係者で直前打合せを行います
・モニターは定刻と同時に待機室から誘導します
・終了後に15分程度デブリーフィングを行います

*個人設定
・インタビュアーは表示名を「司会者」で設定
・記録者は表示名を「記録係」で設定

●見学者向け連絡事項

*入室時間・退出方法
・開始10分前を目安に早めの入室をしてください
・開始以降頻繁な出入りがないようお願いします
・終了後そのまま退出ボタンで退出してください

*個人設定
・カメラ・マイクともOFFの状態で入室ください
・画面下ツールバーから以下設定をお願いします
・設定>ビデオ>音声参加者を非表示にチェック
・参加者>名前の変更>「見学者」と入力

3.使い方

インタビュー実施要項で得られる効果

①同一ファイルで運営情報を更新する

・一つのファイルで情報の同期を行う
・必要な運営情報をすぐに転記できる

この実施要項には当日の運営に関する情報がすべて揃っているため、関係者への情報同期は一つの同じファイルを更新し続けるだけで済みます。作成時点ではすり合わせ用の中間成果物で、実行期には教本として最終成果物の顔を持ちます。

仮に関係者が運営情報を切り出して何かの連絡を行いたい場合に、情報が一箇所にまとまっていないと独自に情報をまとめ直す手間が発生してしまいますが、本表により必要な運営情報をすぐに転記でき、しかも最新の情報を参照できます。

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②運営マニュアルとして皆で活用する

・運営者が段取りを確認する用途として
・見学者が画面環境を整える用途として

この実施要項はインタビュー当日の運営マニュアルとしての顔を持ちます。それゆえに、運営者は当日の段取りをファイルを行き来することなく確認することができます。そしてこのアウトプットがより効果を発揮するのは見学者に対してです。

通常、見学者は運営者ほどオンラインインタビューの経験は無いので、特に画面設定のルールなどには疎い面があります。この資料があると、事前に読み込んでもらったり、見学者間で自主的に対応を補い合ってもらう状況を作り出せます。

この記事のライター

株式会社アイスリーデザイン
chapter UI/UXデザイングループ スペシャリスト
菅原大介

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、日系最大手のマーケティングリサーチ会社で月次500問以上を運用する定量調査のディレクター業務を経験。総合ECサイト・アプリを運営する大手事業会社でデジタルプロダクトの戦略企画を担当したのち、現在は株式会社アイスリーデザインでUI/UXデザインの支援・研究に携わる。

デザインリサーチとマーケティングリサーチのトレンドをウォッチするニュースレター「リサーチハック101」を個人で発行するほか、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして活動や記事の監修も行っている。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)、『リサーチからはじめる仮説ドリブン・マーケティング』(WAVE出版)

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