2023年のトレンド、あの後どうなった?2024年はどうなる?【Threads編】

2023年のトレンド、あの後どうなった?2024年はどうなる?【Threads編】

Threads(スレッズ)とは、2023年7月にMeta社がリリースした新興SNSです。サービス開始当初こそX(旧Twitter)を代替する候補として注目を集めたものの、一時的なトレンドとして下火になった印象があるかもしれません。そんなThreadsですが、インスタからの流入促進効果もあってか、実はじわじわとユーザー数を伸ばしており、再加熱の兆しも見られています。そこで今回は、2024年1月時点で改めて利用動向を調査し、Threadsの今後を占います。


リリース当初のThreads動向をおさらい

Threadsとは、2023年7月6日にMeta社が発表した新しいSNSで、サービスを開始してわずか5日間でユーザー数が1億人を突破したことで話題となりました。Threadsの基本的な機能は、「短文や画像の投稿」、「他のユーザーの投稿の引用」、「投稿に対して『いいね』やコメントで反応」などXと酷似しています。当時はXが相次ぐ仕様変更でユーザー離れを起こしていたこともあり、「Threadsが受け皿となってXを代替する存在になるのではないか」という期待の声もありました。

しかし実際に蓋を開けてみると当時のThreadsには、Xで頻繁に利用される「トレンド検索機能」や「ハッシュタグ機能」が実装されておらず、Xを使い慣れている層にとっては使用感で劣る面もあったかもしれません。他にもユーザビリティが細かな点まで行き届いておらず、一時はアクティブユーザー数がピーク時の1〜2割にまで落ち込むという報道もありました。

サービス開始初期のThreads利用動向については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

Threadsを使っているのはどんな人?Twitterの代替となれるか

https://manamina.valuesccg.com/articles/2670

Meta社は2023年7月6日、新しいSNS「Threads(スレッズ)」を発表しました。Threadsのユーザー数はリリースからわずか5日間で1億人を突破し、度重なる改変で話題となるX(旧Twitter)を代替するサービスの候補として注目されています。本稿では、そんなThreads利用者の人物像を分析し、今後の動向を占います。

Threadsは密かに成長を続けていた?

結局のところ、Threadsの勢いはXを代替するとまではいかず、世間の関心も徐々に離れていったのではないでしょうか。しかしながら、そんな世間の関心とは裏腹に、Threadsの利用者数は着実に増えています。実際にデータを見てみましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

まずは検索者数の推移から、Threadsへの関心の動きを確認しましょう。下記グラフは、Web上で「Threads(表記ゆれを含む)」あるいは「スレッズ」と検索した人数の推移を表しています。Threadsがリリースされた2023年7月は検索されていたものの、翌月以降の検索者数はピーク時の1割程度で推移していることが分かります。やはり、Threadsへの関心は瞬間的なトレンドであったと考えられます。

「Threads」または「スレッズ」検索者数の推移
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:PC、スマートフォン

つづいて、Threadsのアプリ利用者数の推移を見てみましょう。グラフでは、Threadsの利用者数は8月こそ減少が見られるものの、9月以降は増加傾向にあることがうかがえます。「世間の関心が薄れているのならば、ユーザー数は減少するか、少なくとも伸び悩むのでは」と思いきや、Threadsは着実にユーザーを獲得しているようです。

たしかに、Threadsのリリース初期にダウンロードをするような流行に敏感な層の勢いは衰えたのかもしれません。しかし、それほど強い動機や関心がなくとも「周りにやっている人が増えてきたから何となくいれてみようかな」というマジョリティ層の参入が、このようなユーザー数の増加を引き起こしたのではないでしょうか。

「Threads」利用者数の推移
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

ThreadsにはInstagramという流入基盤が存在することも大きな強みです。ThreadsはInstagramアカウントと連携することで、簡単にアカウントを開設することができます。
さらに最近ではInstagramを利用しているだけでも、「Threadsのおすすめ投稿がサジェストされる」、「Instagramのフォローアカウントが、Threadsで投稿をすると通知がくる」など、よりInstagramからThreadsへの導線を意識した仕様になっているように感じます。今後も「Threadsを使うぞ!」という明確なモチベーションがなくても、Instagramからの流入が増えることで、まだまだThreadsのユーザー数は増え続けるかもしれません。

アメリカのデータ分析会社であるセンサータワーのレポートによると、Threadsは世界で1億5000万人程のユーザーを獲得しています(2023年12月時点)。一方でXの毎日のアクティブユーザー数は2億〜2億5000万人程度であると、Xの現CEOであるヤッカリーノ氏が「Code Conference 2023」にて発言しています。

Threads' Global Journey: Triumphs and Challenges

https://sensortower.com/blog/threads-global-journey-triumphs-and-challenges

Discover the latest app trends. Explore insights into the global app market. Stay informed and embrace these trends shaping the app landscape.

Code 2023

https://www.theverge.com/code-2023

The Code Conference brings together key leaders from the tech and business worlds to talk about what comes next. The 2023 conference features X CEO Linda Yaccarino, GM CEO Mary Barra, and more.

Threadsのユーザー数も伸びているとはいえ、依然としてXを代替する水準とまではいえなさそうです。Instagramのアカウントを既に持っている潜在的なユーザーをいかに取り込めるかが、覇権争いのカギになってくるのではないでしょうか。

Threadsユーザーの利用動向についても、もう少し探ってみましょう。下記グラフはThreadsの月平均アプリ起動日数を表しています。こちらは7月をピークに9月まで減少した後、緩やかに増加しています。最初は一部のユーザーが頻繁に使っていたものの、マジョリティ層の参入によってライトユーザーが増え、平均としては利用頻度が落ち着いてきたと考えられます。それでも、普及が進んできたことで知っている人の投稿回数も増え、ライトユーザーの利用頻度も少しずつ高くなっているのかもしれません。

「Threads」月平均アプリ起動日数
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

Threadsのシェアは主要SNSには及ばない?

ここからは、Threadsと他のSNSとを比較して、Threadsユーザーの特徴を深堀していきます。まずは主要SNSとして、「Instagram」、「TikTok」、「X」、「Facebook」アプリの4つを比較対象とします。

はじめに、ユーザー数から現在のSNSの勢力図を確認しましょう。特に規模が大きいのはInstagramとXでした。Threadsのユーザー数は、世界的にはXの半分以上に迫る勢いですが、今回の日本のデータではXユーザーの15%にとどまっています。日本では他の主要SNSと比べても、Threadsの規模はまだまだ小さいようです。

「Threads」、「Instagram」、「TikTok」、「X」、「Facebook」利用者数の推移
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

さらに、利用頻度も比較していきます。下記グラフは、各アプリの月平均アプリ起動日数の推移を表しています。Xユーザーは2日に1回程度アプリを利用しているのに対し、Threadsユーザーの利用頻度は4日に1回程度のようです。さらに、他のアプリと比べてもThreadsの利用頻度は最下位でした。Threadsは利用者数、利用頻度ともに他のSNSよりも低く、トップシェアのSNSに仲間入りするにはまだ一歩及んでいないようです。

「Threads」、「Instagram」、「TikTok」、「X」、「Facebook」月平均アプリ起動日数の推移
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

つづいて、ユーザー層の違いも見ていきます。性別の割合に関しては、どのSNSも男女比は半々程度でした。しかし、中でもInstagramは女性の割合が比較的多く、それにつられてかThreadsユーザーもやや女性の割合が高いという結果でした。

「Threads」、「Instagram」、「TikTok」、「X」、「Facebook」利用者の性別割合
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

年齢層の違いも見てみましょう。グラフによると、Facebookだけは40〜60代の利用が多いですが、基本的には20〜40代が中心となってSNSを利用しています。中でもThreadsは特に20代の割合が高く、流行に敏感な層が主に利用していると考えられます。一方で、流入経路であるInstagramは主要SNSの中でも幅広い年齢層で利用されています。Threadsの潜在ユーザーである30代以上のInstagramユーザーまで普及が進めば、Threadsの規模感も変わってくるかもしれません。

「Threads」、「Instagram」、「TikTok」、「X」、「Facebook」利用者の年代割合
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

主要SNSとの比較として最後に、各SNSの併用状況も見ておきましょう。先述の通り、Threadsが規模を拡大するにはInstagramからの流入がカギとなりますが、現状ではInstagramユーザーのうちThreadsも利用しているのはわずか13.3%でした。一方で、Instagramユーザーの7割以上がXも利用しています。Threadsのシェアを伸ばすには、Xを既に使い慣れている人でも、敢えて利用したくなるような機能の差をアピールしていく必要があるのかもしれません。

「Instagram」から見た他アプリ併用状況
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

Threadsは新興SNSの期待の星となるか

マナミナでは過去に、Threads以外のXを代替する候補のSNSとして、「Mastodon」、「Bluesky」、「Misskey」を紹介しています。これらの新興SNSの中では、Threadsはどのような立ち位置なのでしょうか。同様に比較してみましょう。

X代替候補のアプリについては、こちらの記事をご覧ください。

Twitterからの乗り換えが進む?今大注目の分散型SNSとは

https://manamina.valuesccg.com/articles/2580

2023年7月1日、Twitterでは一時的に、1日に閲覧できるツイート数が制限されるAPI規制がかかりました。相次ぐTwitterの仕様変更に伴いユーザーの不安が高まる中、Twitterからの乗り換え先として他のSNSを探す動きも加速しています。そこで今回は、Twitterを代替する可能性が高いのはどのサービスなのか、有力候補と考えられるアプリについて、利用者像や乗り換え状況を調査しました。

まずはユーザー数から比較しましょう。各アプリの利用者数の推移を見てみると、Threadsが圧倒的に多いことが分かります。Xを代替する候補として取り上げた新興SNSの中では、Threadsの勢いが頭一つ抜けているようです。Threadsは他の新興SNSと比べると、メディアでも多く取り上げられており知名度が高いのではないのでしょうか。Mastodon、Bluesky、Misskeyは自ら新しいSNSを探索する一部の層が利用しているのに対し、Threadsはそれほど積極的な情報収集をしていない層も利用していることが、このような差を生み出していると考えられます。

「Threads」、「Mastodon」、「Bluesky」、「Misskey」利用者数の推移
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

ちなみに、Threadsを除いてユーザー数の推移を詳しく見てみると、どのSNSも2023年7月に伸びていることが分かります。この時期はXのユーザー離れの動きが話題となっていたため、代替アプリの探索も活発になっていたと考えられます。しかしThreadsとは異なり、その後定着したユーザーは少ないようです。ただ、Blueskyに関しては12月にUIや設定画面が日本語に対応した影響もあってか、ユーザー数が急上昇しています(日本語での投稿はもともと可能)。

「Threads」、「Mastodon」、「Bluesky」、「Misskey」利用者数の推移
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

ユーザー層について、もう少し詳しく見てみましょう。各アプリのユーザーの年齢割合を確認すると、どのアプリも20〜30代の利用が多いことが分かります。そんな中、先ほどの主要SNSの中では最も20代の割合が高かったThreadsですが、新興SNSと比較すると20代の割合はむしろ最も低いという結果になりました。Mastodon、Bluesky、そして特にMisskeyは、新しいものを積極的に使いたいという若い人が多く利用しているのかもしれません。逆にいうと、Threadsは新興SNSの中では大衆向けのアプリとして機能していると言えるのではないでしょうか。

「Threads」、「Mastodon」、「Bluesky」、「Misskey」利用者数の年代割合
集計期間:2023年1月~12月
デバイス:スマートフォン

ここまで見てきた通り、Threadsは主要SNSと比較するとまだ発展途上な面が見られますが、Xを代替する候補としては最も近いSNSといえそうです。2024年1月時点のThreadsは、主要SNSと新興SNSの中間的なポジションにあるのではないでしょうか。

2024年、Threadsのユーザー数は伸びるのか

これまで、Threadsの利用動向を他のSNSとも比較して見てきました。最後に、2024年のThreadsの動向を予想するうえで参考になりそうな情報もいくつかご紹介します。

まずは時事情報です。2023年11月20日、バイデン米大統領がThreadsのアカウントを開設し、投稿を始めました。これによって、Threadsは政策をアピールするプラットフォームとしても活用されるようになり、意見を発信する場としての存在感を高めていくかもしれません。

2023年12月14日にThreadsがヨーロッパでサービスを開始したことも注目の出来事です。以前のヨーロッパでは、プライバシー保護や競争促進の観点からアメリカのテクノロジーサービスが規制される事例が多く存在しました。しかし、EUが2022年に施行したデジタル市場法をきっかけに対応が進み、ついにヨーロッパでのサービス開始が実現しました。ヨーロッパでの普及が進めば、さらにThreadsの世界的な影響力が増していくと考えられます。

最後に、2024年1月時点でのThreadsとXの機能も比較しておきましょう。リリース当初は機能の不十分さが指摘されていたThreadsですが、この半年間で続々と新機能が実装されています。特に影響が大きいのは検索機能が豊富になったことではないでしょうか。従来のThreadsのキーワード検索は英語やスペイン語にしか対応していませんでしたが、2023年11月末のアップデートで、日本語を含むThreadsを利用できる全ての国の言語でキーワード検索ができるようになりました。さらに2023年12月7日にタグ付け機能が導入されました。投稿にタグをつけていれば、「#〇〇」で検索することで該当するタグが付いたトピックを絞り込み検索することができます。検索機能が充実したことで、Threadsが機能面ではXに劣っているという印象は払拭されていくかもしれません。

Threadsの投稿にトピックをタグ付けする機能を導入、キーワード検索は日本語でも利用可能に

https://about.fb.com/ja/news/2023/12/threadskeywordsearch_tags/

興味関心やテーマなどのトピックを追加して投稿をカテゴリー分けできる機能を導入。キーワード検索はThreadsを利用できる全ての国で使えるように

Threadsは新機能の追加で足りない要素を補い始めています。では反対に、現状のThreadsとXの機能には、どのような違いがあるのでしょうか。ThreadsがXと比較して不足している代表的な機能としては、トレンド機能が挙げられます。Threadsでは閲覧履歴をもとにカスタマイズしたおすすめしか出てこないため、世間の流行を簡単に把握するには、今のところXに軍配が上がるのではないでしょうか。

一方で、Threadsの方がXより優れている点も存在します。例えば、Xは2023年10月27日から新たにサブスクリプションサービスを開始し、140文字以上の投稿や、投稿の編集機能が有料となっています。これらの機能はThreadsなら無料で利用することができます。また、Xでは一つの投稿に対して複数のタグを付けられるのに対し、Threadsでは一つしかタグを付けられないという違いもあります。これは場合によっては不便さを感じるかもしれませんが、Xでは関係のないタグを複数つけて閲覧数を稼ぐというユーザーもいるため、タグの制限がThreadsを「知りたいことをピンポイントで探せる」アプリにしているという側面もあるでしょう。一見するとThreadsがXの代替候補として挑戦しているような構図にも感じられますが、実際は各アプリに長所短所が存在し、現状では共存するかたちをとっているのではないでしょうか。

さらに今後、Threadsは「Fediverse(フェディバース)」への接続を予定しています。Fediverseとは、 federation (連合) と universe (世界)からなる造語で、「独立したサーバが相互に通信し、全体として一つのサービスであるかのように連携する」ことを指します。つまり、Fediverseに接続されると、Threadsのアカウントにログインしながらも、Mastodonなどの他のSNSのアカウントのフォローや投稿の閲覧が可能になります。仮にこの機能が実装されれば、他SNSの連携というThreads独自の強みが生まれるだけでなく、Mastodonを始めとする新興SNSの利用も促進されると考えられます。今後Fediverseが実装されることで、SNSの勢力図が大きく変わってくるかもしれません。

まとめ

今回は、2023年に注目を集めたThreadsについて、改めて利用動向を調査しました。まとめると、以下のようなことが分かりました。

・Threadsのユーザー数はマジョリティ層の参入によって、増加傾向にあると考えられる。
・トップシェアの主要SNSに比べると、Threadsのユーザーは若い層が多く、発展途上だと考えられる。
・新興SNSのみで比較すると、Threadsが最も普及しているといえる。
・Threadsも機能追加が進み、必ずしも機能面でXに劣っているとはいえない水準に達している。
・Fediverseへの接続によって、SNS市場全体に大きな変革がもたらされるかもしれない。

Threadsは一時のブームとして忘れ去られてしまう懸念もありましたが、実はユーザーの規模、機能ともに成長を続けているようです。一方で、XやInstagramに並ぶSNSになるには、まだ道のりが長いようにも感じました。2024年のThreadsはどうなるのでしょうか。引き続き注目です。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

大学では経済学部で主に会計学を学び、2024年に新卒でヴァリューズに入社しました。現在はデータプロモーション局にて、弊社プロモーション事業のフロントを担当しています。

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