Threadsを使っているのはどんな人?Twitterの代替となれるか

Threadsを使っているのはどんな人?Twitterの代替となれるか

Meta社は2023年7月6日、新しいSNS「Threads(スレッズ)」を発表しました。Threadsのユーザー数はリリースからわずか5日間で1億人を突破し、度重なる改変で話題となるX(旧Twitter)を代替するサービスの候補として注目されています。本稿では、そんなThreads利用者の人物像を分析し、今後の動向を占います。


ポストXの座を狙う?新SNS「Threads」とは

まずはThreadsの概要について簡単におさらいしましょう。Threadsは、2023年7月6日にMetaが発表した新しいSNSです。基本的な機能や使用感はXに類似しています。ユーザー離れが進んでいるXを代替し得るサービスは複数登場していますが、中でもThreadsはMetaという大手企業が運営していることもあり、一際存在感を放っているといえるでしょう。

Threads以外のX代替サービスの候補とその利用状況については、こちらの記事で紹介しています。

Twitterからの乗り換えが進む?今大注目の分散型SNSとは

https://manamina.valuesccg.com/articles/2580

2023年7月1日、Twitterでは一時的に、1日に閲覧できるツイート数が制限されるAPI規制がかかりました。相次ぐTwitterの仕様変更に伴いユーザーの不安が高まる中、Twitterからの乗り換え先として他のSNSを探す動きも加速しています。そこで今回は、Twitterを代替する可能性が高いのはどのサービスなのか、有力候補と考えられるアプリについて、利用者像や乗り換え状況を調査しました。

では、ThreadsとXの間にはどのような違いがあるのでしょうか。
まず、Threadsの優れている点としては、投稿の自由度の高さが挙げられます。Xの場合、投稿できるテキストは140文字以内、動画は2分20秒以内、画像は4枚までという制限があります。これに対し、Threadsでは、500文字以内、動画は5分以内、画像は10枚までの投稿が可能です。

一方で、Xと比較して不足している機能も存在します。例えば、ThreadsにはXでいう「トレンド検索」や、「#〇〇」で検索できる「ハッシュタグ機能」がありません。投稿の検索という点では、Xを使い慣れている人にとっては、不便に感じるかもしれません。(2023年8月15日時点)

実装間もない段階で粗が目立つThreadsですが、Metaは今後、より使いやすくするための機能を追加していく意向を発表しています。例えば7月25日には、タイムライン機能で閲覧できる投稿を、フォロー中のユーザーのみに設定できるように変更しました。もともとタイムラインは、知人以外の投稿で溢れてしまっており、ユーザーからも不満の声が多かったため、嬉しい仕様変更なのではないでしょうか。

他にも現在ユーザーが不満を感じているポイントは、少しずつ改善されていくのかもしれません。新機能の実装に、引き続き注目です。

Instagramからの流入次第ではX超えもあり得る?

ThreadsはInstagramと連携することで、初期登録を簡単に済ませることが出来ます。自分のプロフィールはInstagramに記載している情報をそのまま使えるため、既にInstagramのアカウントを持っていれば、ものの1分でアカウント登録が完了してしまいます。

また、プロフィールだけでなく、Instagramで既にフォローしているユーザーもそのまま引き継ぐことが出来ます。新しくSNSを始めると、他のアプリでフォローしていた友人と再びアカウントを交換する工程に手間がかかりますが、ThreadsではInstagramを経由することでスムーズに利用を開始できます。

Instagramユーザーの多くがThreadsに流入すれば、Xのユーザー数を超えることも期待できます。日本国内では、Xのユーザー数が4500万人、Instagramは3300万人と、Xの方が多くのユーザーを獲得しています。そのため実感は湧きにくいですが、実は世界的にはInstagramの方が圧倒的に多くの人に利用されています。

総務省が公表している、世界の主要SNSの月間アクティブユーザー数(2022年1月)を見ると、X(表内ではTwitter)のユーザー数は4.36億人であるのに対し、Instagramは約15億人ものユーザーが存在します。

これはInstagramユーザーの内、約3割がThreadsを利用すれば、Xのユーザー数に並ぶ計算になります。Instagramの規模を考えると、Instagramユーザーに魅力を届けることが出来れば、ThreadsがXを超える存在になることも夢ではないかもしれません。

Threadsのユーザー層は、他のX代替SNSと異なる

ここからは、Threadsユーザーの人物像を探っていきます。Threadsユーザーの属性は、XやInstagram、その他のX代替候補のサービスと比較して、どのような違いがあるのでしょうか。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

まずは、各アプリの併用状況から確認しておきましょう。下記グラフは、ポストX候補と噂される「Threads」、「Mastodon」、「Misskey」それぞれのユーザーが他の各アプリを併用している割合を示したものです。

Threadsユーザーは、同じくMeta社が提供するInstagramの併用率が高いだけでなく、Xの併用率も90%程度になっています。反対に、MastodonやMisskeyの併用率は低いことが分かります。

一方で、MastodonとMisskeyから見た併用率では、Threadsやお互いのアプリの併用率が20%を超えており、Xの併用率は97%以上と、Instagramよりも高い併用率になっていました。MastodonやMisskeyのユーザーは、Threadsユーザーに比べると、Xを代替する他サービスを積極的に探したいユーザーが多いと考えられます。

「Threads」、「Mastodon」、「Misskey」利用者から見た他アプリ併用率
集計期間:2023年7月
デバイス:スマートフォン

Threads利用者はMastodonやMisskeyユーザーのような強い探索意欲はないものの、InstagramとXをどちらも利用していた層が軽い興味をもって始めたケースが多いのではないでしょうか。

続いて、各アプリ利用者の属性も比較していきます。
下記グラフは、「Threads」、「Instagram」、「X」、「Mastodon」、「Misskey」の利用者の性別割合を表しています。Threadsユーザーの男女比はほぼ半々であり、Threadsユーザーの性別属性は、InstagramよりもXやMastodonに近いことが分かりました。

「Threads」、「Instagram」、「X」、「Mastodon」、「Misskey」利用者の性別割合
集計期間:2023年7月
デバイス:スマートフォン

同様に、各アプリ利用者の年代割合も見ておきましょう。
InstagramとXはネット利用者全体に近い分布になっているのに対し、MastodonやMisskeyといった最近注目されだしたアプリは、トレンドに敏感な若者を中心に利用されているようです。そんな中Threadsは、20代の割合がInstagramやXよりも高いものの、幅広い層に利用されています。

ThreadsはInstagramから手軽に登録できるため、他の代替候補サービスと比べて始めるハードルが低いのかもしれません。

「Threads」、「Instagram」、「X」、「Mastodon」、「Misskey」利用者の年代割合
集計期間:2023年7月
デバイス:スマートフォン

ここまで、ThreadsのユーザーはX代替候補サービスの中でも、Mastodon、Misskeyのユーザーよりは代替候補サービスの探索意欲が低い可能性や、Xに近い利用者属性であることが分かってきました。
では、ThreadsとXのユーザーの特徴に、何か違いはないのでしょうか。

Threadsはインフルエンサーにとって大チャンス⁉

Threadsを既に利用している人はどんな人なのでしょうか。さらに考察していきます。
Threadsを最初に積極的に利用し始めるのは、芸能人などのインフルエンサーが考えられるでしょう。先述した通り、ThreadsはInstagramからの流入経路が確立されており、インフルエンサーが新しく進出するSNSとしてはポテンシャルが高いと言えます。仮に今後、誰もがThreadsを使うような時代が到来すれば、初期からアカウントを育てたインフルエンサーが獲得する先行者利益は計り知れないでしょう。

実際にインフルエンサーの間で、既にThreadsでのフォロワー獲得競争が始まっています。例えば、インスタグラマーとしても大人気の渡辺直美さんは、Threadsでも56万人のフォロワーを獲得しています。他にも、女優の本田翼さんやお笑い芸人の有吉弘行さんも26万人のフォロワー数を誇っています。(2023年8月15日時点)

Threads参入で世の中への影響力を高めたいと考えているのは、芸能人だけではありません。企業もマーケティングや広報戦略の一環としてThreadsアカウントを活用しているケースが存在します。例えばユニクロは、新商品の情報やセール情報、おすすめコーディネートなどをThreadsのアカウントで紹介しています。また、NetflixもThreadsで新番組の情報を公開し、7万人以上のフォロワーを獲得しています。(2023年8月15日時点)

Instagramは画像中心のSNSなのに対し、Threadsはテキストが中心のSNSなので、詳細な情報を求めるユーザーにアプローチする環境として適しているのではないでしょうか。また先述の通り、ThreadsはXよりも多くの文字数や動画を投稿できるため、より細かい情報を発信することができます。

新しいプラットフォームであるThreadsでいち早く動き出せば、他のSNSを運用するよりも効率よく発信力を高められるかもしれません。
逆に、フォロワーを積極的に増やしたいという強い動機がない場合は、一先ず様子見をするという人も少なくないのではないでしょうか。この層の人は、自分の推しのインフルエンサーや特定の興味のある情報があれば、その投稿を見るために今後Threadsを利用し始めるケースが増えてくるかもしれません。

また、このような動きが活発化する背景には、Threadsの匿名性の低さが影響している可能性が考えられます。ThreadsはInstagramのアカウントと紐づけて登録するため、アカウントで個人を特定するのは比較的容易です。匿名性が低いことには、安易な誹謗中傷を妨げる効果があるため、インフルエンサーにとっては活動しやすい環境となるでしょう。

しかし、匿名性が低いことはメリットばかりではありません。Xでは、匿名のアカウント、いわゆる裏垢を利用して自由な発言を楽しむ層が一定数存在します。匿名だからこそ、「周囲の目を気にせず本音で語り合いたい。」「友人に話すのは少し恥ずかしいようなニッチな趣味を持つ人同士でつながりたい。」という願いが実現できます。
Threadsがこのような裏垢需要に応えることは難しく、この点ではXを完全に代替できるとはいえないでしょう。Threadsの匿名性の低さは吉と出るのか、それとも凶と出るのでしょうか。

ユーザーは既に8割減。Threadsの今後はどうなる?

サービス開始わずか5日で1億ダウンロードを突破したことで話題となったThreadsですが、その後のユーザー数はどのように推移しているのでしょうか。米メディアCNNの記事によると、実はThreadsのアクティブユーザー数はピーク時から8割も減少しているようです。

Threadsはリリース翌日に、アクティブユーザー数が約4,400万人を記録しました。しかしこの時点をピークに、7月31日の調査では82%減の約800万人になっていたそうです。
また、アクティブユーザー数だけでなく、ユーザーの利用時間も減少しています。同記事によると、リリース当日のユーザーの平均利用時間は19分でしたが、8月1日時点ではわずか2.9分にまで落ち込んでいます。最初は興味本位で登録してみたものの、実際に使用してみると、機能の不十分さが浮き彫りになり、利用を控える人が増えてきているのではないでしょうか。

CNNの元記事はこちら
https://edition.cnn.com/2023/08/03/tech/threads-user-count-falls/

これに対し、Metaは楽観的な見解を示しています。7月26日に行われたMetaの決算会見で、マーク・ザッカーバーグCEOは「Threadsは期待以上に普及している」「基礎作りと定着率向上に今後はフォーカスする」といった趣旨の発言をしています。

また、Metaは今後「Fediverse(フェディバース)」へ接続することを表明しています。Fediverseとは、分散型SNSが集合したネットワーク世界やその概念のことを指します。仮にThreadsがFediverseに接続すると、Mastodonなどの他のSNSとも相互に交流することが可能になり、Xの代替ではなく、完全に新しい領域のSNSとして地位を確立することになるかもしれません。

Metaは今後様々な機能追加を予定していますが、そのアップデートでユーザーの心を繫ぎ止めることはできるのでしょうか。リリースした瞬間の話題性という効力を失った今、Threadsが提供できる本当の価値が問われています。

まとめ

今回は、話題のThreadsを利用しているのはどんな人物なのか分析しました。まとめると、以下のようなことが分かりました。

・Threadsは、MastodonやMisskeyと異なり、積極的にXの代替サービスを探しているユーザーは少ない可能性が高く、より幅広い年齢層で利用されている。
・Threadsで先行者利益を狙う芸能人や企業が、初期に利用を開始していると考えられる。
・Threadsのアクティブユーザー数は、2023年7月末時点でピーク時の20%程度まで落ちている。

リリース当初の勢いを失いかけているかのように感じられるThreadsですが、Metaの今後の戦略次第でユーザーが定着すれば、先見の明でアカウントを育てた企業にとって大きなチャンスが訪れるかもしれません。

このままユーザー数減を続けるのか、新世代のSNSとしてXを超える存在となるのか。正念場を迎えたThreadsの動向に、引き続き目が離せません。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。



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この記事のライター

大学では経済学部で主に会計学を学び、2024年に新卒でヴァリューズに入社しました。現在はデータプロモーション局にて、弊社プロモーション事業のフロントを担当しています。

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