Twitterからの乗り換えが進む?今大注目の分散型SNSとは

Twitterからの乗り換えが進む?今大注目の分散型SNSとは

2023年7月1日、Twitterでは一時的に、1日に閲覧できるツイート数が制限されるAPI規制がかかりました。相次ぐTwitterの仕様変更に伴いユーザーの不安が高まる中、Twitterからの乗り換え先として他のSNSを探す動きも加速しています。そこで今回は、Twitterを代替する可能性が高いのはどのサービスなのか、有力候補と考えられるアプリについて、利用者像や乗り換え状況を調査しました。


Twitterの代替サービス候補3選

Twitterに代わるサービスとして、様々なSNSアプリが候補として存在しますが、今回は中でも特に注目度の高いアプリを3つ厳選してご紹介します。

「Mastodon(マストドン)」

Twitterからの乗り換え先として、最有力候補ともいえるのが分散型SNS「Mastodon(マストドン)」です。Mastodonの基本的な機能はTwitterとほとんど同じで、短文投稿や自分以外の投稿の拡散、ユーザーのフォローなどが可能です。利用時の流れがTwitterと同様であることから、移住しやすいサービスだといえます。

MastodonがTwitterと決定的に異なるのは、「分散型ソーシャルメディア」の形態をとっていることです。分散型ソーシャルメディアとは、誰でも自由にサーバーを開設して、独自のルールで運営することができる仕組みのことです。

ユーザーが作成したサーバーは「インスタンス」と呼ばれています。ユーザーは自らインスタンスを立ち上げるか、他のユーザーが作成した既存のインスタンスに参加することが可能です。簡単にいうと、「映画が好きな人のコミュニティ」、「イラストや小説が好きな人のコミュニティ」など、趣味や興味が同じ人同士が集まって投稿を確認できるということです。

Twitterをはじめとした、特定の企業が運営・管理する中央集権的SNSと違い、分散型SNSでは個人が独自のルールで運営することができます。そのため、今回のように運営企業による、突然の一方的な仕様変更に振り回されるリスクを軽減することができます。このことからMastodonは、Twitterに不信感を抱いたユーザーたちの受け皿となる可能性が期待できるといえるのではないでしょうか。

分散型SNSの仕組みについて詳しくは、Mastodonが公式に提供しているこちらの紹介動画が分かりやすいので、気になる方は是非ご覧ください。

What is Mastodon?

https://youtu.be/IPSbNdBmWKE

The social network of the future: No ads, no corporate surveillance, ethical design, and decentralization! Join today: https://joinmastodon.orgOr, some recom...

「Misskey(ミスキー)」

Twitterの代替サービス候補として、Mastodonの次に名前が挙がるのが「Misskey(ミスキー)」です。MisskeyもMastodonと同様に、Twitterと同じような機能を備えた分散型SNSです。Misskeyのユーザー数はTwitterのAPI規制に伴って急増しました。日本経済新聞の記事によると、従来は1万4000人ほどで推移していたアクティブユーザー数が、7月2日で11万7000人と8倍以上にも膨れ上がったそうです。

Twitterにさよなら SNSの自治求めMisskeyに移民 - 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB034P20T00C23A7000000/

さよならツイッター――。7月2日、イーロン・マスク氏が投稿閲覧数に制限をかけたと発表すると、混乱に愛想を尽かした利用者の「移民」が加速した。行き先は多数の個人が運営する「分散型」のSNSだ。運営企業に振り回されない自治コミュニティーが魅力。米メタも「スレッズ」の提供を始め、ツイッター1強だった短文投稿サービスに地殻変動が起きている。「イーロンがとんでもないことをしてくれた」。ツイッターに似た日

では、MastodonとMisskeyの間にはどのような違いがあるのでしょうか。Misskeyが特徴的なのは、リアクションの豊富さです。例えばTwitterでは、気に入った投稿に「いいね」で反応することができますが、Misskeyでは多種多様なスタンプを付けることができます。

Misskeyのスタンプはカスタム可能でユーザーオリジナルのスタンプを作成できるため、反応方法は無限にあるとすらいえるでしょう。また、Misskeyは投稿の字数制限が緩いことも特徴です。Twitterは140字、Mastodonは500字以内という制限があるのに対し、Misskeyではなんと3000字までの投稿が可能です。

ただし、Misskeyの魅力であるスタンプの豊富さや動作の多彩さは、人によっては複雑すぎるように感じてしまうかもしれません。反対に、MastodonはTwitterに近いようなシンプルで万人受けしやすいデザインになっているため、好みに合わせて使い分けるといいでしょう。

「Bluesky(ブルースカイ)」

最後にご紹介するのは、昔のTwitterが帰ってくると噂されているSNS「Bluesky(ブルースカイ)」です。Blueskyは現在βテスト中ですが、Twitterから独立した部門が「Twitterを本来の姿に戻す」ことを目標に運営しており、デザインや操作感が最もTwitterに近いSNSだといえるのではないでしょうか。

そんなBlueskyですが、これまで紹介したSNSと同様に、分散型の形態である点でTwitterと異なります。Twitterの雰囲気はそのままに、Twitterユーザーが抱えている不満を解消することができるため、乗り換える際のハードルは低いと考えられます。完成版がリリースされてからの伸びに期待できそうです。

代替サービスの探索は20代が中心

それでは、これまでご紹介した3つのアプリは、Twitterと比較して利用者層にはどのような違いがあるのでしょうか。Twitterと同様に、若年層のユーザーが多いと考えられるInstagramも合わせて、どのような人が利用しているのか探っていきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

まずは利用者の性別割合から見ていきましょう。Twitterは男女の利用割合にほとんど差がないことが分かります。これに対し、おしゃれなイメージのあるInstagramは、女性人気が高いようです。

Mastodon、Misskeyは共におよそ男女半々という結果で、やはり利用者層はInstagramよりもTwitterに近いと考えられます。一方でBlueskyの利用者は約7割が男性でした。Blueskyのようなβ版まで積極的に試したいというニーズは男性に多いのかもしれません。

「Twitter」、「Instagram」、「Mastodon」、「Misskey」、「Bluesky」利用者の性別割合
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン

つづいて、年代割合も確認しておきましょう。TwitterとInstagramは、ネット利用者全体とおよそ近い分布になっており、利用者層の幅広さがうかがえます。一方で、Twitter代替候補のアプリは20代の割合が高いことが特徴的です。代替サービスを積極的に探しているのは、トレンドに敏感な若い世代に多いのではないでしょうか。

特にMisskeyは20代の割合が86.7%であり、この特徴が顕著でした。Misskeyはカスタムスタンプや長文投稿など、オリジナリティのある機能が豊富なので、新しいもの好きな人が集まる傾向がより強く出たのではないでしょうか。

「Twitter」、「Instagram」、「Mastodon」、「Misskey」、「Bluesky」利用者の年代割合
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン

では、これらの各代替サービス利用者は本当にTwitterから移行しているのでしょうか。下図は、Mastodon、Misskey、Blueskyのそれぞれから見た、他アプリの併用率を表しています。

どのアプリも共通して、InstagramよりもTwitterの併用率が高く、代替サービス利用者の9割以上がTwitterを利用しているようです。やはりこの3つの代替サービスは、「もともとTwitterを利用していた人が、新たに乗り換え先を模索してインストールされた可能性が高い」と言えそうです。

各代替サービスからみた他アプリ併用状況
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン

開始5日でユーザー数1億人を突破した新SNSにも大注目

Twitterからの乗り換え候補として、7月6日にMeta社がリリースした「Threads(スレッズ)」も無視できません。ThreadsはInstagramのアカウント情報をそのまま利用して始めることができ、ユーザー数は開始わずか5日で1億人を突破しました。

ThreadsもTwitterと同じような機能を備えているうえに、投稿上の制限がTwitterよりも緩いというメリットがあります。具体的には、Twitterの投稿では140文字以内、動画は2分20秒以内、画像は4枚までという制限があるのに対し、Threadsでは、500文字以内、動画は5分以内、画像は10枚まで投稿できます。Meta社という大きな企業が運営しているということもあり、その注目度はかなり高いのではないでしょうか。

一方で、Threadsはリリースして間もないSNSであるため粗が目立つ部分もあり、使いづらいという声も挙がっています。例えば、Twitterのような「ハッシュタグ機能がない」「トレンドが見れない」などの課題があります。Twitterを使い慣れている人にとっては、現状ではすぐにThreadsに乗り換えようと判断するのは難しいのではないでしょうか。

実際に、Threadsのアクティブユーザー数はリリース1週間をピークに減少しています。アメリカのニュースサイト「Axios」の記事によると、7月8日から7月12日までの間だけでも、アクティブユーザー数は20%減少し、利用時間も1日あたり20分から10分まで減少したそうです。

Axiosの記事はこちら
https://www.axios.com/2023/07/14/threads-twitter-engagement-launch

Meta社は今後、Threadsに様々な機能を追加していく予定で、分散型SNSへの対応を目指すことも発表しています。リリース直後なこともあり、機能面でTwitterに劣る点が指摘されているThreadsですが、今後の改良次第でユーザーの満足度が向上すれば代替サービスとして有力となる可能性もあります。出だしは好調だったThreadsのユーザーはどの程度定着するのか、引き続き動向に注目です。

まとめ

今回はTwitterを代替する可能性のあるサービスをご紹介しました。20代を中心に、様々なアプリが検討されているようですが、中でも鍵を握るのは分散型SNSではないでしょうか。ユーザーが独自にインスタンスを作成できる分散型SNSは、Twitterの動向に振り回されて疲れたユーザーが、希望を見出す場となるかもしれません。

とはいえ、これらの代替サービスのユーザー数は、現状ではTwitterに及びません。まだまだTwitterの発信力は顕在であり、すぐに使われなくなるということはなさそうです。

サブスクリプション化など、新たなビジネスモデルを模索するTwitter。分散型SNSを中心に、新たに代替サービスとしての可能性を見せるSNSが登場する中、Twitterの立ち位置はどうなるのでしょうか。今後覇権を握るのはどのSNSか、引き続き動向に注目です。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。



dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

2024年4月にヴァリューズに入社しました。
大学では経済学部で主に会計学を学んでいました。

関連するキーワード


SNS トレンド調査 Dockpit

関連する投稿


「引っ越し」に関するニーズを調査!「挨拶」や「ふるさと納税」に注目

「引っ越し」に関するニーズを調査!「挨拶」や「ふるさと納税」に注目

進学、卒業、就職など環境が大きく変化する春。引っ越しをして新天地での生活を始める人も多いと思います。引っ越しを考える上で一番気になることは何なのでしょうか。引っ越し検索者の心理を読み解いていきます。


「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

検索エンジンで調べ物をするときによく使われる「〇〇とは」検索。今回は、直近1年間で検索数が多かった注目ワードや、時期によって急上昇したトレンドワードをご紹介します。「とは」検索から見えてくる最新の流行りやみんなの関心事を読み解いていきます。


Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

“Oshikatsu” stimulates consumption in Japan. In fact, more than 80-90% of teens answered that they have an “Oshi.” We will deepen our understanding by investigating the current state of the “Oshikatsu” market, behaviors like time and money spent on “Oshikatsu,” and its connection with collaborations, etc. in marketing.


現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!「イマーシブ・フォート東京」「変な家」のプロモーションを考察(2024年3月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!「イマーシブ・フォート東京」「変な家」のプロモーションを考察(2024年3月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

Z世代のデータアナリストが、自らZ世代の行動データを分析する本連載。第17弾となる今回は、Z世代とミレニアル世代の検索キーワードランキングから、「イマーシブ・フォート東京」「変な家」「新生活」の3テーマを取り上げてZ世代のトレンドをお送りします。イマーシブ・フォート東京が刺さるのはどんな人?映画化で話題の「変な家」と、マンガ広告が生み出す購買活動とは?、Z世代のニーズに刺さる家電のサブスクリプションとは?など、データとリアルな声を掛け合わせ、Z世代のニーズを読み解きます。


いま「note」がアツい!人気の秘訣はSEO?noteの集客動向を調査<後編>

いま「note」がアツい!人気の秘訣はSEO?noteの集客動向を調査<後編>

2023年夏頃から集客数を急激に伸ばしているメディアプラットフォーム「note」。人気を後押ししているのはどのような人々なのでしょうか?前編では、noteが集客しているユーザーの特徴を深掘り調査し、後編では、noteが規模を拡大している要因を探っていきます。


最新の投稿


約8割がオウンドメディアにプラスの効果を実感!課題は「コンテンツ数の維持」【宣伝会議調査】

約8割がオウンドメディアにプラスの効果を実感!課題は「コンテンツ数の維持」【宣伝会議調査】

株式会社宣伝会議は、同社発行の広報・PR・コミュニケーションの専門誌『広報会議』にて、広報活動において重要な役割を担う「オウンドメディア」について、広報担当者、オウンドメディアの担当者を対象に調査を実施し、結果を公開しました。


Z世代がサロンを探すときは“ハッシュタグ”と“実例数”を重要視?【僕と私と調査】

Z世代がサロンを探すときは“ハッシュタグ”と“実例数”を重要視?【僕と私と調査】

僕と私と株式会社は、全国のZ世代を対象に、サロンに関する意識調査を実施し、結果を公開しました。


約5割の企業経営者がGoogleマップ活用の成果を体感!約3割が売上増加【トライハッチ調査】

約5割の企業経営者がGoogleマップ活用の成果を体感!約3割が売上増加【トライハッチ調査】

株式会社トライハッチは、飲食・医療業界の経営者を対象にデジタルマーケティングの意識調査を実施し、結果を公開しました。


Increasing popularity among men? Investigating the needs for “sunscreen”! Latest Edition [2024]

Increasing popularity among men? Investigating the needs for “sunscreen”! Latest Edition [2024]

As men's cosmetics receive increasing attention, what are the consumer needs for sunscreen? Also, does the quality of sunscreen differ depending on the season, with summer and winter? We will analyze changes in needs and consumer psychology for sunscreen based on the behaviors during the consideration stages.


生成AIの時代におけるWEBライティング業界の健全な発展及び進化を実現する「日本AIライティング協会®」設立

生成AIの時代におけるWEBライティング業界の健全な発展及び進化を実現する「日本AIライティング協会®」設立

生成AIによるテキスト創出「AIライティング」の急速な普及に伴い、情報の正確性や倫理基準の劣化のリスクがある中で、WEBライター集団を抱える団体を中心に構成する「日本AIライティング協会®(英称:JAPAN AI Writing Association 略称:JAIWA)」を発足したことを発表しました。本協会では、前述の課題がある中で、「AIライティングの新たな規範の樹立」と「WEBライターと生成AIが共存共栄できる未来の探究」を目的に活動するといいます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ