中国の若者に人気!生活の各分野で広がる「新中式」スタイルを調査

中国の若者に人気!生活の各分野で広がる「新中式」スタイルを調査

2023年に大流行した“新中式”。新中式とは、中国の伝統的な要素と現代的な要素を融合させたスタイルを指します。この新中式の流行は発展変化しており、小紅書が発表したデータによると、ファッションのみならず、メイク、グルメ、インテリアなどの領域にも次々と広がっています。それらに関する投稿は実に前年同期比350%以上の増加となりました。この記事ではファッション、グルメ、インテリアに焦点を当て、新中式がどのように広がっているのかを紹介します。


新中式ファッション

“新中式穿搭”と呼ばれる新中式のファッションはSNSでの人気が高く、小紅書が発表した《2023“新中式”潮流生活数据报告(2023“新中式”傾向の生活データ報告)》によると、2023年1月から10月の期間、小紅書における新中式ファッション関連の紹介は2022年の同時期比較で110%近くの増加となりました。

2023年「新中式」种草笔记増加傾向
(2022年1-10月と2023年1-10月のデータを比較したもの、小紅書《2023“新中式”潮流生活数据报告》をCBNDatataが整理したものをもとにヴァリューズが作成)

新中式ファッションのうち、特に若者に人気があるのが漢服、旗袍、連衣裙です。これらは伝統的な服装ですが、現代的な要素が融合されたことにより、オリエンタルな優雅さを保ちつつ日常着としてもマッチしました。同データによると、新中式ファッションは写真撮影、旅行、通勤といったシーンでの人気が強く、それに続いて野外イベントやデート、散歩といったシーンが人気となっています。このように、新中式ファッションは日常生活における高い親和性を有しています。

小紅書における新中式ファッションの投稿。
左から2列ずつ旗袍、連衣裙、通勤スタイルの検索結果。

加えて、2024年の春晩(春節聯歓晩会・旧暦の大晦日に放送される娯楽番組)で漢・唐・宋・明王朝のファッションが披露されたことで、さらに新中式ファッションの人気が高まりました。京東のデータによると、春晩の放送開始からプラットフォームにおける新中式ファッションの取引額が前年同期比215%の増加となりました。
また、新中式ファッションのさらなる人気の高まりはSNSにとどまりません。その影響は、中国国際消費品博覧会にも及んでいます。
中国国際消費品博覧会は高級品をテーマとした国家レベルの消費品博覧会で、2024年4月に第4回を迎えました。今回の中国国際消費品博覧会に出展したあるプラットフォームでは、商品の販売量が前年同期と比べて増加しており、漢服は2倍、新中式ファッションは366%、特に女性用新中式ファッションは4倍の増加となりました。

新中式茶館

グルメ分野においても新中式は広がっています。中国茶葉流通協会が発表した《2023年度中国茶叶产销形势报告(2023年度中国茶葉生産販売情勢報告)》によると、茶の消費の中心が18〜30歳の若者に推移しており、業界はZ世代の消費者をターゲットにした発展方向を定めました。
健康志向が広がる中、皆でお茶をすることを健康と結び付け、次々と現れた新中式の茶館が若者の新たな交流スタイルにもなりました。
企査査の調査によると、2023年に茶館企業の登録数は21,397件となり、前年同期比20.4%の増加となりました。有名なブランドとしては、奈雪茶院、小神閑茶館、tea’stone、隠渓茶館などが挙げられます。
このような新中式茶館は、現在3つの方向性を模索しています。一つ目は製品の方向性です。製品の方向性を成立させるための基本的な前提は、製品の制作に一定の基準を設けることです。インスタントやペットボトルという簡単に飲めるものではなく、特別な設備や材料を使用する製品を提供する必要があります。
二つ目は空間の方向性で、オープンスタイルとクローズスタイルがあります。オープンスタイルはスターバックスのような「第三空間(生活と仕事以外の交流空間)」を目指し、クローズスタイルは独立したプライベート空間です。
三つ目はコンビネーションの方向性です。お茶を提供するだけの空間ではなく、食事や演出などの要素を融合したサービスを提供することで、他との差別化を図ろうとしています。
その他、新中式茶館には回転率や客単価の低さなどを始めとした弱点もあり、今後どのように進展していくかが注目されます。

新中式インテリア

新中式の人気はインテリアにも及んでいます。2023年には増え続けており、2022年の同時期と比較すると、ブランドが供給した紹介記事数は109.41%、販売数には111.86%の増加が見られました。また、千瓜のデータによると、壁紙、絨毯、ソファー、カーテン、屏風、山水画といった各種インテリアの記事の数、販売数が増加しています。
また新中式インテリアでは、新中式に別のスタイルを加えたミックススタイルのインテリアの人気が高まっています。ミックススタイルには「新中式現代風」「新中式復古風」「新中式風」「新中式原木風」「新中式プチ贅沢風」「新中式クリーム風」などさまざまなものがあり、2023年における「新中式」インテリア関連の紹介記事数は、それぞれ2022年の同時期と比較して以下のように増加しています。

千瓜による新中式インテリアのミックススタイルとその増加率のデータ


その中でも特に「新中式原木風」の増加率が突出しており、前年同期比570%の増加となりました。原木風は、全体的に原木色や彩度の低い色をメインにして、木材やそれに近い材料が使われた家具や装飾を組み合わせてデザインされます。それによって自然に近い雰囲気を作り出して気分をリラックスさせることを好む傾向にある若者に人気のスタイルです。
新中式インテリア市場は徐々に成熟していくのと共にインテリア用品が充実し、住宅空間にも至るところに新中式が加わる余地があります。テンプレート化したスタイルでは若者の嗜好を満足させることはできず、「個性、センスがある」インテリアによって、若者の心を掴むことができるといえます。

まとめ

この記事では若者を中心に流行する「新中式」について、ファッション、茶館、インテリアから関連市場の成長発展を紹介してきました。
ファッションでは2024年に入ってからさらに流行の高まりが見られ、日常のシーンに取り入れられるようになっています。若者の新たな交流スタイルとして打ち出された茶館は、模索が続きながらも件数を伸ばしています。インテリアでは、新中式に別の要素を融合したミックススタイルが発展しており、若者の個性化のニーズに応える動きが見られます。
このように「新中式」はさまざまな角度から人々の生活に入り込んでおり、消費行動に影響を与えています。

【無料ダウンロード】中国お菓子市場実態調査 ~ チョコレート・クッキー・グミ編 ~

https://manamina.valuesccg.com/articles/3844

現代の中国国民の間食事情はどのようになっているでしょうか。それを知ることで、嗜好品の好みの実態(どんなお菓子が好まれ、よく食べられているのか、なぜその商品が選ばれるかなど)が見えてくるのではないでしょうか。本レポートは、いくつかの商材について、中国人消費者はどういうタイミングで食べたくなるのかという具体的なシーンの補足や、認知・購入チャネルを把握。中国市場進出の際のプロモーション施策検討にもご活用いただける内容となっています。※調査レポートは記事末尾のフォームより無料でダウンロードいただけます。

参考URL

大火的“新中式”,给消费行业带来了什么?
https://mp.weixin.qq.com/s/0FZRXb5sqIUg-a5ZAAT63A
什么是消博会?
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_26997696
国风个性化消费火了“新中式”女装销量同比增长400%
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1796361922084038290&wfr=spider&for=pc
从小众爱好到频频“出圈”,“新中式”究竟为什么火?
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_26794166
新中式茶饮助茶产业实现升级
https://finance.sina.cn/2024-04-24/detail-inasxuyu8404346.d.html
NCBD|新中式茶馆行业研究报告
https://mp.weixin.qq.com/s/eIfoiWM9IQaN0hSn02__bA
年度报告热门行业新中式流量趋势数据解读
https://mp.weixin.qq.com/s/Pp_FyLr8d9WaBnusG8GxJg
2023年家装流行这五大风格!你知道怎么搭配瓷砖吗?
https://www.sohu.com/a/731482882_120719878

この記事のライター

早稲田大学在学中。

関連するキーワード


中国トレンド調査 中国市場

関連する投稿


中国で勢いを見せる「氷雪経済」を最新調査

中国で勢いを見せる「氷雪経済」を最新調査

2022年に開催された北京冬季オリンピックの「オリンピック効果」によって、中国では「氷雪経済」の成長が加速しています。アイススポーツを中心にレジャー、文化などを総合的に巻き込むこの経済システムは、広いサプライチェーンと高い集客効果を持っています。本記事では、氷雪経済が中国にどのような変化をもたらしているのかを調査しました。


2025年の中国春節消費の新トレンド 〜 Z世代が牽引する新年の風潮

2025年の中国春節消費の新トレンド 〜 Z世代が牽引する新年の風潮

2025年の春節(旧正月)が終わり、中国の都市や農村の至るところで、まだ新年の余韻が感じられます。しかし、例年と異なり、今年の中国の春節消費はより個性的でデジタル化が進んでいます。Z世代(1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代)が春節消費市場の中心となりつつあり、年貨(春節用の買い物)や贈り物の選び方、そして春節文化の楽しみ方において新たな価値観を生み出しています。本記事では2025年中国の春節の消費トレンドを詳しく分析します。


中国の健康消費の新トレンド ~ 若者に人気の「中式養生水」

中国の健康消費の新トレンド ~ 若者に人気の「中式養生水」

中国の経済発展につれ、飲料の選択にも変化が見られるようになりました。かつては、炭酸飲料が売上ランキングを独占していましたが、中国人の健康意識の高まりとともに、高糖分の飲料が体に与える負担が認識されるようになり、無糖茶飲料が新たな市場の主役となりました。無糖茶は、さっぱりとした味わいと低カロリーという特徴を持ち、健康志向の消費者のニーズを満たしてきましたが、過去には味わいと機能性の両面で十分に満足させるものではありませんでした。こうした中、さまざまな改良が加えられ、伝統的な養生理念と現代的な飲料の形態を融合させた新カテゴリー「中式養生水」が登場し、注目を集めています。


スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

近年のデジタル化や購入支援政策も相まって、中国国内でスマート家電が広く普及し始めました。スマート化によって利便性や機能性が向上すると謳われていますが、実際のところはどうなのでしょうか?ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「ValueQIC(ヴァリュークイック)」を用いて、ユーザーの本音を明らかにしました。


訪日外国人観光客調査【2025年最新】 -中国・台湾・タイ・韓国-

訪日外国人観光客調査【2025年最新】 -中国・台湾・タイ・韓国-

1年間で3,686万9,900人と過去最多訪日外国人数を記録した2024年。この数字はコロナ前の2019年の過去最高訪日数を上回ります。今や世界中からやってくる訪日観光客。本レポートでは、その中でも隣国の中国・台湾・タイ・韓国からの訪日観光客にフォーカスを当て、2024年の観光動向を調査しました。※レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


最新の投稿


インフルエンサー活用の選定基準は「商品やサービスとの親和性」!7割が成功を実感するも「購買に繋がらない」課題も【PRIZMA調査】

インフルエンサー活用の選定基準は「商品やサービスとの親和性」!7割が成功を実感するも「購買に繋がらない」課題も【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、インフルエンサーを事業プロモーションに活用したことがあるBtoC業界の企業担当者を対象に「【2025年版】インフルエンサーPRの実態調査」を実施し、結果を公開しました。


博報堂DYホールディングス、メタバース生活者定点調査2024を実施

博報堂DYホールディングス、メタバース生活者定点調査2024を実施

株式会社博報堂DYホールディングスは、全国15~69歳の生活者を対象に、メタバースに関する現状の生活者意識や動向を把握することを目的とした「メタバース生活者定点調査2024」を実施し、結果を公開しました。


Apple Intelligenceの機能が日本語で利用可能に

Apple Intelligenceの機能が日本語で利用可能に

Appleは、iOS 18.4、iPadOS 18.4、macOS Sequoia 15.4のリリースにより、Apple Intelligenceを日本語をはじめ、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語(ブラジル)、スペイン語、韓国語、中国語(簡体字)、英語(シンガポール)、英語(インド)の8つの新たな言語に対応したことを発表しました。


8割以上がWebサイトの運用に「課題」を実感!そのうち約6割が「分析結果を具体的な改善施策に結びつけられない」【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

8割以上がWebサイトの運用に「課題」を実感!そのうち約6割が「分析結果を具体的な改善施策に結びつけられない」【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は、事業会社に勤めており、Web広告の運用に携わっているマーケティング担当者を対象に、Webサイトの継続的改善と効果測定に関する実態調査を実施し、結果を公開しました。


生成AIは誰がどう使っている? ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeの利用データを比較調査

生成AIは誰がどう使っている? ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeの利用データを比較調査

ChatGPTやGeminiをはじめとした生成AIが近年急拡大しています。生成AIではテキストのみならず画像や音声など様々なものを出力できますが、実際はどのように使われているのでしょうか。本稿では、そんな生成AIを利用するユーザーの属性や関心を比較・分析し、各AIとそのユーザーの実態を明らかにしていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ