SWOT分析(環境分析のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

SWOT分析(環境分析のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は、「SWOT分析」(環境分析のアウトプット)について寄稿いただきました。


1.SWOT分析とは

●モデルイメージ

●概要

SWOT分析とは、自社の特徴をStrength/強み・Weakness/弱みの項目(内部要因)により、市場環境をOpportunity/機会・Threat/脅威の項目(外部要因)により、それぞれ整理することで自社が置かれた事業環境を抜け漏れなく分析するアウトプットです。

通常は経営・マーケティング分析の文脈で使用しますが、プロダクトマネジメントの観点では、PMFに至るまでの事業機会の発見とリスクの認識を把握するために使います。フレームワーク自体が広く知られており、作り手・読み手を選ばないのが特徴です。

ただ、いきなり作成に入ると大味な情報整理になってしまいやすい難点があります。おすすめの進め方は、①3C分析で情報を整理する→②SWOT分析に要素を当てはめる→③クロスSWOT分析により強みを活かし弱みを補うパターンを検討する方法です。

※クロスSWOT分析とは、SWOT分析の各象限を組合せて具体的な討議を行うための付加分析の方法です。

●構成要素

SWOT分析の構成要素は以下のようになります

○SWOT分析

●1.Strength/強み

・自社の活かすべき強み
(ソフト力・ハード力・コスト効率など)

<インプット>
・3C分析|3.Company/自社
・3C分析|2.Competitor/競合

●2.Weakness/弱み

・自社が克服すべき弱み
(営業年数を経ないと拡充が難しい事項)

<インプット>
・3C分析|3.Company/自社
・3C分析|2.Competitor/競合

●3.Opportunity/機会

・外部環境の変化で活かせる機会
(マーケットの社会的なニーズ)

<インプット>
3C分析|1.Customer/市場・顧客
A.市場:業界
B.市場:事業部門/ブランド/カテゴリ
C.顧客:ユーザー/消費者/生活者
D.顧客:クライアント/法人顧客

3C分析|2.Competitor/競合

PEST分析
1.政治/Politics(法改正)
2.経済/Economy(景気・為替)
3.社会/Society(ライフスタイル)
4.技術/Technology(技術革新)

●4.Threat/脅威

・外部環境の変化で回避が必要な脅威
(特に強みを消す社会環境変化)

<インプット>
3C分析|1.Customer/市場・顧客
A.市場:業界
B.市場:事業部門/ブランド/カテゴリ
C.顧客:ユーザー/消費者/生活者
D.顧客:クライアント/法人顧客

3C分析|2.Competitor/競合

PEST分析
1.政治/Politics(法改正)
2.経済/Economy(景気・為替)
3.社会/Society(ライフスタイル)
4.技術/Technology(技術革新)

○クロスSWOT分析

●1.Opportunity/機会×Strength/強み
・ビジネスチャンスに強みを活かす

●2.Opportunity/機会×Weakness/弱み
・ビジネスチャンスで弱みを越える

●3.Threat/脅威×Strength/強み
・強みを活用して脅威を回避する

●4.Threat/脅威×Weakness/弱み
・脅威が影響する弱みを最小化する

●よくある課題

「SWOT分析の結果を全く有効活用できない…」
⇒この悩みに一枚で答えるためのアウトプット

SWOT分析の実施自体は組織でも様々な場面で推奨されていることでしょう。しかし、SWOT分析が単発の分析活動として実施され、その場しのぎの成果に終わるケースも多く見かけます。実は同じフレームワークを作る作業でも、初心者と中級者ではそれぞれに抱える課題が異なります。まずはそこから理解しましょう。

①初心者:すべて想像や印象で書いてしまうケース

SWOT分析は新入社員研修のワークショップでよく行われています。ここでは、項目数を上げられない、個人の想像や印象による項目が多い、結果的に材料不足で考察が深まらないなどの課題が発生します。インプット不足が原因です。

場の設定からして致し方ない状況ではありますが(特に新入社員研修では完成度よりも取り組み自体に意義があることも)、「抜け漏れなく事業環境を検討できる」というフレームワークの趣旨を活かせないのは本末転倒でもあります。

②中級者:事実確認に終始して示唆が出ないケース

SWOT分析は事業開発や経営計画のシーンでよく行われています。ここでは、認知が低い、競合が強い、○○不況など、事実を事実として認識して終わったり、実際には機能していない他社ネットワークへの期待が高まったりしがちです。

分析から導く結論も「マスメディアに取り上げられること」など大味な解決策へと向かいます。この状況は、収集した社会統計データが自社の提供価値とは距離がありすぎて、実際に何をするかの議論に結びつきにくいことが原因です。

2.作り方

●全体の構成

<STEP1:SWOT分析の白図を作る>

①各象限の定義と補足を記載する
・図の記入が進むよう思考の観点をサジェストしておく

②3C分析・PEST分析からのインプット方法を記載する
・インプットする3C分析・PEST分析のアイテムを示す

③クロスSWOT分析の白図を作る(適宜)
・SWOT分析を深めるニーズを想定して作成しておく

<STEP2:SWOT分析を行う>

①Strength/強みを記載する
・差別化・独自性の観点では定性アプローチが重要になる
(強みの項目は業界通念的なものが上がってきやすい)

②Weakness/弱みを記載する
・商品・サービスはもちろん、バックエンドも含める

③Opportunity/機会を記載する
・数が不十分な時は脅威の項目を発想転換して考える
(機会の項目はたいてい出揃いにくい)

④Threat/脅威を記載する
・真の脅威は強みの項目を参照しながら考える

3.使い方

①3C分析のデータをもとにファクトを充実させる

SWOT分析は取り扱えるトピックの間口が広い分、議論するアイテムの粒度にばらつきが大きくなります。情報収集やアイデアが出たままに項目を並べていると、決裁者側では羅列された個別事象を見る羽目になってしまいます。

そこで本稿で紹介しているように、3C分析のデータアイテムと同期を取ることで項目の粒度を整えます。そうすると、カテゴリ戦略・プロダクト戦略・顧客戦略などの観点で括られたトピックを関係者間で認識しやすくなります。

②データを拡充した上でクロスSWOT分析を行う

SWOT分析の議論が漠然とした抽象論に終わるのは、「機会」「脅威」の情報が一般的すぎるからでもあります。この状況は、トップマターのトピック(経営陣が重視する領域)に合わせて情報を選ぶことで精度を改善できます。

そのうえで、各象限を組合せて考察するクロスSWOT分析を行うと議論の精度が上がってきます。できれば探索型の調査で(自社ユーザーだけでなく)カテゴリーユーザーの動向を分析しておくと情報に幅が出て議論が活性化します。

この記事のライター

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当する。

デザインとマーケティングを横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行い、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)

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