シンプル&低価格!無印良品とは?
株式会社良品計画が運営する、日本を代表するブランド「無印良品」。生活雑貨や日用品のみならず、食品や衣料品など多岐にわたる商品を展開しています。
1. 素材の選択(=低価格で質の良いものや業務用、旬のものを選ぶ)
2. 工程の点検(=商品本来の質に関わらない工程を省く)
3. 包装の簡略化(=二重包装、飾りのためだけの包装などをしない)
を原則とし、シンプルで洗練されたデザイン、かつ低価格の商品づくりが人気を博しています。
(参考:良品計画公式サイト https://www.ryohin-keikaku.jp/about-muji/)
そんな無印良品を好むのはどんな人たちなのでしょうか? 今回はアプリの利用者データと無印良品の販売戦略から探っていきます。
なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」と、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank(ストーリーバンク)」を使用します。
「無印良品」を支持する人はどんな人? 競合他社と比較
食品から生活雑貨、衣料品までさまざまな商品を展開している無印良品ですが、今回は比較対象として、UNIQLO、ニトリを選定しました。無印良品は衣料品でUNIQLOと、生活雑貨、インテリアでニトリと競合しています。
今回は、各ブランドの公式アプリユーザーをヴァリューズの保有するデータから抽出し、分析を行いました。期間は2023年5月から2024年5月のデータを用いています。
まず、以下は各公式アプリの併用状況を表したベン図です。円の大きさがユーザー数を、円の重なりが併用を表しています。「MUJI passport」は無印良品の公式アプリの名称です。
各ブランド公式アプリユーザーの併用状況
期間:2023年5月-2024年5月
デバイス:スマートフォン
ユーザー数ではUNIQLOがもっとも大きいですが、どのアプリのユーザーも高い割合で他の2つのアプリも利用しています。
次に各アプリユーザーの性別・年代を比較します。
各ブランドアプリユーザーの性別・年代
期間:2023年5月-2024年5月
デバイス:スマートフォン
すべてに共通する傾向として、女性ユーザーの割合がネット利用者全体に比して高くなっています。特に無印良品は7割をこえるユーザーを女性が占めています。
続いて、婚姻関係や子供の有無をみてみます。
各ブランドアプリユーザーの婚姻状況
期間:2023年5月-2024年5月
デバイス:スマートフォン
各ブランドアプリユーザーの子供の有無
期間:2023年5月-2024年5月
デバイス:スマートフォン
どのブランドもネット利用者全体と比べ、既婚の方もしくは子供がいる方が多いようです。とくにニトリは65%以上が既婚と、家庭をもつこととの深い関連性がうかがえます。
以上を総合して、無印良品に着目してみれば「特に女性に人気で、婚姻関係や子供の有無には関わらず顧客を獲得している」と言えるのではないでしょうか。
どんなカテゴリに使っている? お金の使い道の特徴を分析
続いては、少し視点を変えてアプリユーザーの「お金の使い方」をみていきます。特に支出が多いカテゴリがわかれば、ブランドファンの人物像が見えてくるかもしれません。
以下は、ヴァリューズの分析ツール「story bank(ストーリーバンク)」を用いて、さまざまなカテゴリの商品に対する支出額の平均を比較した表です。
各ブランドアプリユーザーのカテゴリ別平均支出
期間:2023年5月-2024年5月
デバイス:スマートフォン
支出額の横にある「特徴値」という値は 1ポイントを「ネット利用者全体の平均とほぼ同じ値である」として、そこから大きくなるほど平均より大きい、ということを表しています。各ブランドユーザーごとに特徴値の大きい(=支出額の高い)カテゴリが異なることが見てとれます。
各ブランドに共通する特徴としては、「お子様の教育費」への支出の高さがあげられます。無印良品、UNIQLO、ニトリのアプリユーザーはいずれも子どもあり層の割合が多い結果となっていたため、ネット利用者全体と比べて教育費への支出が高いと考えられます。また、パチンコや競馬といったギャンブルへの支出が総じて低くなっています。
一方、無印良品ユーザーに特徴的な傾向として、「ライブ・コンサート鑑賞」と「イベント・グッズ購入」への支出がネット利用者全体と比べて高くなっていることがあげられます。生活雑貨や食品、衣類を扱う無印良品と直接的なつながりは小さいカテゴリに特徴が現れていました。
実際、ユーザーの関心領域を、右上ほど高くなるようマッピングした以下の表からも、「歌手・ミュージシャン」や「イベント・コンサート」などの文言が右上の方にあるのが見てとれます。無印良品アプリユーザーは、音楽ライブやイベントなどにも興味をもって足を運び、グッズ購入も行うような傾向が高いことがうかがえます。
無印良品アプリユーザの関心マップ
期間:2023年5月-2024年5月
デバイス:スマートフォン
無印アプリユーザーは「限定」の文字に弱い?
さらに、各ブランドアプリユーザーの買い物行動を比較してみます。
各ブランドアプリユーザーのよくとる購買行動
期間:2023年5月-2024年5月
デバイス:スマートフォン
ブランドごとにみてみると、ニトリアプリユーザーの「割引されている商品をよく購入する」のスコアの高さが目につきます。3ブランドの中でもっとも既婚者の割合が高いブランドでしたが、節約への意識も比較的高いといえそうです。
他方、無印良品ユーザーは「季節限定商品やエリア限定商品を購入する」のスコアが高くなっています。「限定!」の文字に惹きつけられやすいユーザー像が浮かび上がってきます。
無印良品の戦略を4P 分析でまとめてみた
以上の内容を踏まえて、無印良品のブランド力の強さを、マーケティングの4Pの観点からあらためて整理してみます。なお念のため、4P分析とは、マーケティング戦略を商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)の4つの要素に分解して分析する手法です。
まずは商品についてです。無印良品はシンプルで洗練されたデザインや、用途に応じて選べる幅広いサイズ展開、それでいて安価な価格帯であることが魅力です。この裏には、無印良品が掲げる以下のようなブランドの意志があるといえます。
それは「これがいい」「これでなくてはいけない」というような強い嗜好性を誘う商品づくりではありません。
無印良品が目指しているのは「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客さまに持っていただくことです。
「これがいい」には微かなエゴイズムや不協和が含まれますが「これでいい」には抑制や譲歩を含んだ理性が働いています。
しかしながら「で」の中には、あきらめや小さな不満足が含まれるかもしれません。
無印良品は「で」の中にある小さな不満足を払拭し、明晰で自信に満ちた「これでいい」の次元を目指します。
理性的な「これでいい」を目指す商品づくりを掲げる無印良品。こだわりすぎず、かといって無頓着すぎないちょうど良い塩梅を目指すことが、商品の独自性に繋がっているのではないでしょうか。
次に価格です。価格の低さと品質のバランスがとれた商品が特徴の無印良品ですが、公式サイトによれば、1. 素材の選択、2. 工程の点検、3. 包装の簡略化を原則とし、生産工程を徹底的に合理化することで、低価格を実現しているそうです。
ただし、すべてのものが他社と比較して安いわけではなく、安売りを身上としているわけでもありません。価格はあくまでも、素材の選択、工程の点検、包装の簡略によって、同程度のクオリティの商品より安価にできていると言えます。粗製濫造ではなく、無駄を省いた製造工程で、品質と低価格を実現しています。
続いて流通です。550店をこえる店舗数に加え、ECサイトや公式アプリ、ローソンでの一部商品の販売など多岐にわたる経路で商品を販売しています。西友のプライベートブランドとしてスタートしたこともあり、百貨店を含め多様なチャネルで販売することで、多くの消費者の目に留まるようになっています。
最後に販売促進です。近年ではインターネットやSNSを駆使し、商品のプロモーションに注力しています。商品の明確なコンセプトを伝えるとともに、ブランドイメージのアピールにもつながっています。
1980年に西友のプライベートブランドとしてスタートした「無印良品」。今や店舗数は全世界で1000を超えるブランドに成長しています。その成長の根源にあるマーケティング戦略はどのようなものなのか探ります。
【参考記事】無印良品に「惚れた」のはどんな人なのか?ブランドの強みをデータ分析でマーケコンサルが考察
https://manamina.valuesccg.com/articles/920気になるブランドや商品についてヴァリューズのマーケティングコンサルタントが調査する企画。今回の調査は根強いファンを持ち、ブランドを確立している『無印良品』についてです。無印良品ファンにはいったいどんな特徴があるのか。他ブランドとの比較を交えながら考察していきます。
以上、本記事では無印良品の顧客像を探っていきました。無印良品は競合するブランドのユーザーと比較して、
・女性の割合が特に高い
・独身、既婚の割合がネット全体のそれに近く、幅広い層を獲得しているバランスが良い
・ライブ鑑賞やグッズ購入への関心が特に高い
・限定商品をよく購入する
というような特徴が見受けられました。幅広い顧客に愛される無印良品と、流行や自身のこだわりに敏感なユーザーの姿が想起されます。シンプルで低価格、かつ高い品質を実現している無印良品がどんな商品を展開していくのか、今後も注目です。
趣味はアカペラ・ゲーム・謎解き。
大学で経済学を学びながら、マナミナのライターを務めています。
ライター歴は浅いですが、Z世代のならではの視点をお届けできるよう頑張ります!