マーケティング戦略のお手本?無印良品を分析

マーケティング戦略のお手本?無印良品を分析

1980年に西友のプライベートブランドとしてスタートした「無印良品」。今や店舗数は全世界で1000を超えるブランドに成長しています。その成長の根源にあるマーケティング戦略はどのようなものなのか探ります。


無印良品のマーケティング戦略が注目される理由

無印良品

無印良品のマーケティング戦略が注目される理由はいくつかあります。1つ目の理由は、日本で一から作られた事業・ブランドの代表例であること。

2つ目の理由は、マーケティング戦略の内実が非公開の事業・ブランドも多い中、無印良品の場合は、インタビューや資料の多くが公開されていて参考にしやすいという点。

3つ目の理由は、無印良品はもともとセゾンのプライベートブランドという出自から、新規事業のマーケティング戦略を行う際の参考例として用いられる場合が多いことも特徴です。

無印良品とはどんなブランド?

無印良品

特徴的なロゴがないシンプルな「無印」でありながら、「無印良品」と言えば誰でも知っています。2020年6月現在、日本では477店舗、海外でも556店舗を展開しており、日本を代表するブランドとなりつつあります。

そんな「無印良品」に魅了されている人は多く、熱狂的なファンも存在しています。特に無印良品メンバーが10%OFFで商品が買える「無印良品週間」はある種のイベント化しています。

人々がもつ無印良品のイメージは?

無印良品が掲げる「無印良品=しるしの無い良い品」というコンセプトが浸透していて、安価で品質は高いブランドとして認知されています。

ブランディングとは、商品やサービス、そして企業自体に対して顧客に共通したイメージを持ってもらうことですが、無印も最初からこうしたイメージを持ってもらえていたわけではありません。

無印良品のマーケティング戦略は常識破り?

マーケティング戦略の立案にあたっては、ターゲットを絞ることが一般的です。しかし、無印良品ではその常識を破り、ターゲットを絞り込んでいません。特定の誰かではなく、誰にとっても必要であったり、手に取りやすい商品展開になっています。

また、文房具から家まで幅広い商品展開で、これだけ商品の種類が多いと、絞り込んだコアなターゲットだけを対象にすることはできません。

シンプルなデザインは時として特徴がないと見られてしまいますが、それゆえに誰が持っていても、そしてどのようなシチュエーションで使っても違和感がないので、世代、性別を問わず支持されています。

提供する商品・サービスによっては、皆が手に取りやすくするためにターゲットをあえて絞らない、という戦略も検討対象になるでしょう。

顧客はEC・実店舗のどちらで買ってもよい

現代の購買行動では、実店舗で購入する前に、ネットで下調べしたり比較したりする段階があることが知られています。無印良品の会員証アプリ「MUJI passport」は、2017年時点でアクティブユーザー数700万人に達し、売上にも大きく貢献しています。

この「MUJI passport」アプリを店頭で提示して購入することで、ポイントがたまる仕組みになっていますが、これは購買前の行動まで一貫して把握できるメリットをもたらします。

その結果、無印良品のECサイトを訪問した閲覧者のうち、そのままサイトで購入する人が3割程度しかおらず、5割の人はECサイトで下調べして実店舗で購入していることがわかりました。

こうしたデータを得られたことで、顧客は欲しいときにECサイトと実店舗のどちらから買ってもらってもよいというO2O的発想にいたることになったのです。

データに基づいた経営判断は、昨今言われる「データマーケティング」そのものであると言えるでしょう。

商品開発やPRに妙味あり

無印良品の特徴的なマーケティング戦略の2つ目は、商品の開発や広報活動です。先述したように、無印良品の商品展開は「誰もが手に取りやすいもの」がメインになっています。とはいえ、商品を1から開発・製造するのは現実的ではありません。

無印良品のアイテムは、既存の商品であっても発想の転換によって商品価値を高めていたり、パッケージや内容量を変えてオリジナル商品、新商品として提供しています。

そして、そのままでは他との差別化、PRとしては難しくなりますが、価格や機能、商品の開発理由、素材の選定理由や形状の決定理由といった、商品に対する「物語」を加えることによって、無印良品の理念である「これでいい」商品の説得材料にもなっています。

市場のニーズを読み取り、まず既存のアイテムからそれに近づけられないかを考える、いわば発想力と、そこに物語を与えて発信する広報力は、おおいに参考になります。

顧客とのコミュニケーション機会を増やす

無印良品の特徴的なマーケティング戦略3つ目は、顧客とのコミュニケーション機会、コミュニケーションの場が多い点です。

自社アプリ「MUJI passport」を始め、Facebook、Instagram、Twitter、LINEといったSNSを積極的な利用に加え、YouTubeで商品の製造工程を紹介する動画を公開するなどし、さまざまなチャネルから情報を発信しています。これによって、消費者・顧客の共感を得られるばかりではなく、その共感の拡散にも期待が持てます。

自社アプリ「MUJI passport」では、来店、マイバッグの持参のほか、商品の口コミ投稿でもマイルを付与し、貯まったマイルに応じて買い物に利用できるポイントに還元できるようになっています。口コミについては、今までは本当にそのユーザーが商品したのかどうかまでは追いきれませんでしたが、MUJI passportによってその問題は解決し、調査の精度向上を実現しています。

無印良品のマーケティング戦略を4P分析してみる

4P分析

これまで紹介した内容を踏まえつつ、無印良品のマーケティング戦略を4P分析に当てはめてみます。

Product(製品):
品質が同じならば見栄えのよくない安価な素材、そして国内産の素材の選択、品質には関係しない工程を削減、簡素な包装によって、「シンプルながらも素材が良くて安価」という顧客ニーズを満たしています。

Price(価格):
無印良品では「わけあって、安い」と謳っていますが、すべてのものが他社のものと比較して安いわけではありませんし、むしろ安売りを身上としているわけでもありません。
価格はあくまでも、素材の選択、工程の点検、包装の簡略によって、同程度のクオリティのものより安価にできたもの、と言えます。

Place(流通)
自社店舗はもとより、リアルな店舗にはフランチャイズ店、そしてローソンも含まれます。そしてインターネット上には公式オンラインショップのほかAmazonや楽天にも出店しており、多くの消費者の目に留まるようになっています。

Promotion(販促)
店舗内のPOPや広告のほか、近年ではインターネットやSNSを駆使し、Productの部分で紹介した内容のアピールに注力しています。商品の明確なコンセプトを伝えるとともに、絶え間ないブランドイメージのアピールにもつながっています。

ちなみに、どんな人が無印良品に「惚れて」いるのかについて、こちらの記事で考察しているので、ぜひご一読ください。

【関連】無印良品に「惚れた」のはどんな人なのか?ブランドの強みをデータ分析でマーケコンサルが考察

https://manamina.valuesccg.com/articles/920

気になるブランドや商品についてヴァリューズのマーケティングコンサルタントが調査する企画。今回の調査は根強いファンを持ち、ブランドを確立している『無印良品』についてです。無印良品ファンにはいったいどんな特徴があるのか。他ブランドとの比較を交えながら考察していきます。

まとめ

無印良品が提供する商品の大半は、強烈な個性はなく、いたってシンプルです。シンプルであるがゆえに老若男女問わず使えたり、使い勝手がよいと顧客に判断されています。

無印良品のマーケティング戦略は、「なぜ」のアピールを強調するほか、顧客の購買活動を徹底分析した結果にもとづいた各種施策が際立っています。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
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編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

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