中国シルバー経済の新傾向を調査

中国シルバー経済の新傾向を調査

日本と同様、年々高齢者の割合が高くなっている中国。中国民政部が発表した《2023年民政事業発展統計公報》によると、2023年末の時点で全国の60歳以上の人口は29,697万人に達し、総人口の21.1%を占めました。高齢者の増加に伴い、近年中国では“銀髪経済”(シルバー経済)という高齢者を主力とした現象が発生しており、高齢者の間で新たな生活様式が広がっています。


50~65 歳の“新老人”たちが主力に

国家信息中心経済予測部によると、2024年5月時点のシルバー経済規模は約7万億元に達しました。しかし一口にシルバー世代と言っても、その年齢層はさまざまです。例えばAgeclubが発表した《2024年银发健康经济趋势与展望》(2024年シルバー健康経済の傾向と展望)では年齢層区分の一例として、50~65歳を“熟齢”、65~75歳を“老齢”、75~100歳を“高齢”という区分を示しています。今回特に注目したいのは50~65歳の世代です。50~65歳は中国における第二次ベビーブームの中心世代であり、過去40年間の経済発展の利益を享受しているといいます。
Ageclubが発表したデータによると、各年齢層の財産力について、世帯主が 45~55歳/55~65歳の家庭層が最も総資産が高く、負債率が低くなっています。このように高齢者層の平均収入が上がったことで購買力も向上し、彼らの生活スタイルが多様化してニーズの在り方も多元化しています。

このような状況において、新華養老週刊が発表した《2024年银发经济洞察报告》(2024年シルバー経済洞察レポート)では50~64歳の新老人に焦点を当て、彼らの消費スタイルについて“五大消費新傾向”と題し、その特徴を分析しました。その内訳は“健康养生化”(健康志向化) 、“求稳养老化”(老後生活の安定志向化)、“网络圈层化”(ネットワーク層化) 、“家庭联结化”(家庭のつながり強化)、“价值深造化”(価値の深化)となっています。ここからは、そのうちの“老後生活の安定志向化”、“ネットワーク層化”に焦点を当てていきます。

老後生活の安定志向化

老後においても安定した生活を送るためには強い身体を維持することが重要であり、その方法の一つが運動をすることです。新老人のスポーツ参加率は、2021年には40%であったのが2023年には51%に上昇しました。日に日に新老人のスポーツ参加率が高まる中、レジャーと在宅ジムが人気になっています。彼らは競技スポーツよりもレジャー活動を楽しむ傾向にあります。人気を集めている活動としては、ジョギング、バドミントン、登山、卓球、ダンス、釣り、サイクリングが挙げられます。同時に、外出することなく自宅で運動するという新たな選択肢も現れています。8割近くの老人が中国式エクササイズの効果に対して積極的な姿勢を見せており、最近の“太極八段錦”という養生新ブームに乗っています。この人気の理由としては、敷居が低く習得がしやすいこと、場所を選ばないことが挙げられます。

ネットワーク層化

近年新老人へのネット浸透率が急速に高まっており、ネットの機能も彼らのニーズに合わせて改善され続けています。新老人のネット浸透率は、2020年に60%であったのが2023年は77%に達しました。ネット機能改善の例としては、WeChatによる“关怀模式”(ケアモード)・抖音による“长辈模式”(シニアモード)など、文字の大きさの調整や操作性の簡略化といった機能改善が行われています。彼らが積極的に利用するアプリはWeChat、淘宝、抖音、拼多多、百度、支付宝、快手が挙げられます。最も浸透率の高いWeChat は82%に達し、一日あたりの平均利用時間は85分となっています。

ネットワーク層化 — ネットショッピング

ショッピングにおいても、新老人の傾向に合わせた展開が進んでいます。彼らが買い物をする際の特徴として、家族友人といった親しい人によるおすすめに強く影響されるという点があり、口コミマーケティングが多くのブランドの普及方針となっています。
高齢者向けの靴を販売するブランド“足力健”は、商品の質とブランドの印象が口コミの重要な要素となっていると分析し、その口コミマーケティングでは再購入率が85%に達しました。
また新老人には口コミ購入のような受動的な側面だけでなく能動的に自分の購入体験をシェアする側面もあり、彼らのうちの半数が、食品や健康といった話題における自身のおすすめが説得力を持つと考えています。e コマースプラットフォーム・拼多多には、“拼小圈”という家族友人とつながりながらショッピングを楽しめるという機能があり、おすすめを共有して共同購入することで特典を得ることができます。この機能では“知人効果”が発揮され、ユーザーの定着率の向上や再購入の増加を促します。この機能は互いに商品をおすすめし合うための効果的な手段となっており、そのアクティブユーザーは大部分が中高年で、プラットフォームにおける新老人ユーザーの継続利用が定着しています。

ネットワーク層化 — オンラインで趣味を楽しむ

また新老人は退職後の生活において、オンラインで趣味を探すようになりました。彼らは自分が興味を持った分野の情報を得て、さらにそれについて注目・討論し続けています。彼らはネット上で友人と連絡をしたり、またソーシャルメディアで自身の生活をシェアしたりすることも一種の趣味愛好となっており、新老人がネットをつかう目的は“友人と連絡を取り続ける”が40%、“他者とシェアができる・新しい友人を作る”が38%を占めています。
また、“银发网红 ”(シニアインフルエンサー)になる人もおり、例えば上海の人気スポットでは次々と銀髪族がビデオをとるようになっています。より多くのいいねと関心を得るために、三脚や自撮り棒といった撮影道具を持参して撮影し、ビデオの素材を集めたりソーシャルメディア上で配布したりしているといいます。また小紅書や抖音では、新老人によるファッションレビューの投稿が多くなされており、中には数万~数十万のフォロワーを有するアカウントも存在しています。ネット利用をする老人の愛好は、ショートビデオや流行、情報やバラエティ、ドラマなどとなっており、最も多いショートビデオでは57%が愛好しています。その代表的アプリである抖音の浸透率は50%に達しており、そこでは新老人関連のハッシュタグも盛り上がっています。例えば “#我的退休生活”(私の隠居生活)、 “#老年舞”(シニアダンス)、“#老年养生”(シニア養生)などが見られ、それぞれ再生数は2.4億回、1.8億回、4000万回に達しています。

左:小紅書で“中老年人 服装” と検索した結果
右:抖音で“老年养生”と検索した結果

まとめ

ここまで50~65歳の“新老人”を中心とした新たな生活様式を紹介しました。比較的大きな財産を持つ彼らは、多様なレジャー活動に積極的に参加しています。また彼らの間ではネット利用が急速に浸透しており、新老人をターゲットにしたマーケティングも盛んになっています。今後も高齢化が進むと予測される社会において、シルバー世代の生活様式にどういった変化がもたらされるのかが注目されます。

参考URL

全国60 周岁及以上老年人口占比已超20% 
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_28617931
推进规模化标准化集群化品牌化 银发经济市场广阔
https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202405/content_6950792.htm
2024 年中国银发经济发展报告
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1801725619612164560&wfr=spider&for=pc
2024,银发经济,三大机会 
https://www.163.com/dy/article/JB0E1O7A05199MO5.html
2024 年银发经济洞察报告|新一代银发族5 大消费新趋势
https://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzAxOTA1MDgxMA==&mid=2649561101&idx=2&sn=a937419726fd5e44b02734bb71cc52d4&chksm=82e06bd230d2078c2fb893ea2f22de63eda22daa2d3c6ccea3eae95b6eb483c1f015b7bae12c&scene=27

この記事のライター

早稲田大学在学中。

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