日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

日本のLDHとタイのGMMが一丸となって誕生した新会社G&LFH 背景とトレンドを解説

2024年6月5日、EXILEを輩出した音楽事務所LDHがタイ大手音楽レーベルGMM MUSICと新エンターテイメント会社【G&LDH】開設を発表しました。タイ最大のメディア企業GMM GRAMMYの子会社であるGMM MUSICは、タイの音楽産業を牽引する存在です。 この合弁会社の設立により、両国の音楽市場の強化と相互の文化理解が期待されています。 本記事では、タイと日本の音楽文化の違いや、音楽がビジネスに与える影響、そしてG&LDH設立の背景を探っていきます。


GMMとLDHの合併会社【G&LFH】開設の背景

タイ大手音楽レーベルのGMM MUSICはアーティスト選定、音楽制作、マーケティング、芸能学校の運営など幅広いサービスでタイの音楽産業を支えている企業です。

合併会社開設によりGMMは世界規模二位の音楽市場を持つ日本からノウハウを吸収し、アーティスト育成水準の向上を狙います。

LDH側は、まだまだ国内だけで完結している日本の音楽を世界に広めつつ、ダンスを軸にした自社のパフォーマンス拡散を狙います。

近年は、国境に囚われないグローバルな楽曲やアーティストが続々と現れるMUSIC SECOND WAVE BOOMです。合併子会社開設により、この波にのることで、今後互いの音楽市場の繋がりが強化されるのではないでしょうか。

タイと日本の音楽文化の傾向比較

タイと日本の音楽シーンにはどのような違いがあるのでしょうか?
音楽文化の傾向を比較してみましょう。

① アイドル 

タイ・日本間の音楽文化の違いがわかりやすいものの一つに、アイドルの系統の違いが挙げられます。日本では、AKBや坂道系アイドルのように統一感のある制服のような衣装を着用している清純さを強調したアイドルが多くいます。

最近人気の超ときめき宣伝部などのような、各メンバーカラーに合わせた衣装を着た、可愛らしさを強調したアイドルも多くいます。

一方タイでは、可愛らしさよりもクールさ、美しさを強調したアイドルが目立ちます。タイでは、日本の可愛らしいアイドルとは異なり、K-pop系統に近いアイドルが多いようです。

出典:YouTube「PiXXiE - DEJAYOU | OFFICIAL M/V」

② タイ、日本のポップジャンルにおけるビデオ・ストリーミング数比較

日本とタイでは、人気のある音楽ジャンルには違いがあるのでしょうか?

以下のグラフより、日本国内でのJ-Popストリーミング数は日本全体の64.4%であることが分かります。
そしてタイ国内でのポップ全般ストリーミング数は、日本国内でのJ-Popストリーミング数と同じ65%程を占めています。

筆者の留学経験では、タイではT-popが多く聴かれており、屋台やモールでもよく流れています。

ポップジャンルにおける2023年の世界総オーディオ&ビデオ・ストリーミング数(Luminate社 2023年データ)

このことから、日本人がJ-popを聴くのと同じような頻度や感覚でタイ人もT-popをストリーミングしているのではないでしょうか。

両国民の自国の曲に対する意識や親近感には、共通した何かがあるのかもしれません。

3.音楽文化とビジネスの関係性

次に、音楽文化が与える影響について、インスタフォロワー118万人のタイ人気歌手NONT TANONTを例に3つの観点に分けて見ていきましょう。

① 歌、映画、テレビ番組、ユーチューブの視聴率増加

まず、音楽文化の影響はメディアやSNS業界に現れる傾向があります。

NONT TANONT が2022年にリリースした『โต๊ะริม(melt)』はYouTubeで1億2000万回以上再生され、世界中に広まっています。

出典:YouTube「NONT TANONT - โต๊ะริม (melt) [Official MV]」

2023年には、日本の歌手である藤井風がバンコク公演の際にこの曲をカバーしたことで、両者の存在が両国で広まりました。

② タトゥー、ピアス、ダンスの動き、Y2Kファッションなど、人々の行動

Youtubeや音楽番組などを通して知名度がつくと、その歌手が身に着けているもの、その歌手の行動全てがファンに影響を与えます。

例えば、韓国歌手の投稿やアイドルのダイエット方法が話題になることがあります。NONT TANONTにおいても、彼の影響力から2019年にはICONSIAM Fashion Trendとコラボしました。

出典:YouTube「NONT TANONT x ICONSIAM Fashion Trend 2019 [ Special ]」

③ イベントやコンサートに行く機会の創出

楽曲が有名になると、国境を越えてライブに来るファンも増えます。

日本でもタイで開催された、タイで今最も人気のある男性アーティスト4人のコンサート「THE KINGDOMS CONCERT」が有料配信されました。また、NONT TANONTは6月に日本初ライブを行い、日泰間の繋がりが強まっています。

まとめ

今回は、G&LDHの設立のニュースを受けて、タイの音楽シーンの特徴を解説してきました。

国籍や職を問わず、音楽が瞬時に多くの人に届く現代だからこそ今後両国の繋がりや文化理解が深まっていくのではないでしょうか。

G&LDHの設立で、日本の音楽文化がタイにどのように浸透していくのか、今後の展開が楽しみです。

この記事のライター

東京外国語大学でタイ語を学ぶ大学生。高校生の頃に初めてタイを訪れ、タイ独特の文化や言語、国民性を体感したことでタイに関する理解を深めたいと考えるようになる。最近までタイのタマサート大学に半年間、交換留学をしていた。

関連するキーワード


タイ 「エンタメ」市場調査

関連する投稿


年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

もうすぐ年末年始。時間のあるこのタイミングで、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを利用してコンテンツを一気見しよう、という方も多いのではないでしょうか。今回は、「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」それぞれについて、ここ数年の年末年始の集客状況を調査。実際に年末年始に利用者が増えているのか、各サービスでどんなコンテンツに注目が集まっているのかを分析し、来たる2024年の年末年始を占いました。


タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

近年タイではコーヒーブームが起こっています。バンコクには次々と新しいカフェができており、SNS映えする店内だけではなくコーヒーの味にもこだわりを持つカフェが増えています。実際に、起業してカフェオーナー兼バリスタになるのはタイでは一つのトレンドです。 近年、タイのコーヒー市場は右肩上がりに伸びており、タイのコーヒー市場は日本円で1440億円を超えると言われています。 そこで本記事では、タイのコーヒー市場の現状を読み解くとともに、タイでなぜコーヒーの人気が高まっているのかを、タイのコーヒーブームの歴史と共に解説します。


2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

コンテンツには事欠かない現代ですが、話題を呼ぶ人気作には、どのような「勝ちパターン」が存在するのでしょうか。2024年に放送された新規アニメ「薬屋のひとりごと」「逃げ上手の若君」「怪獣8号」「ダンジョン飯」に、11月に劇場版が公開された「進撃の巨人」を加えて、消費者の関心を調査しました。


タイのPride Month(プライドマンス)におけるマーケティング事例

タイのPride Month(プライドマンス)におけるマーケティング事例

近年タイでは、毎年6月のPride Month(プライドマンス)に力を入れています。特にバンコクを中心に、LGBTQ+の権利と平等を支持する活動やイベントが盛り上がりを見せており、企業やメディアもイベントに合わせた施策を行っています。本記事では、Pride Month期間中に展開されるタイのマーケティングについて、デザイン、キャンペーン、グッズの観点から紹介します。


新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

リリースされてから、Z世代を中心に強い支持を集めている「BeReal(ビーリアル)」。2023年初頭から人気を集め始めていますが、いまだにその人気は衰えていません。2024年7月には、日本で広告事業を本格化しはじめたことが大きな話題になりました。今回は、BeRealの最新動向をデータを用いて分析するとともに、広告ビジネスの可能性を調査していきます。


最新の投稿


年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

もうすぐ年末年始。時間のあるこのタイミングで、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを利用してコンテンツを一気見しよう、という方も多いのではないでしょうか。今回は、「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」それぞれについて、ここ数年の年末年始の集客状況を調査。実際に年末年始に利用者が増えているのか、各サービスでどんなコンテンツに注目が集まっているのかを分析し、来たる2024年の年末年始を占いました。


映像・書籍・音楽・ゲーム・ラジオ横断でリーチ力、2024年のTOP3は「ポケモン」「ツムツム」「ONE PIECE」【GEM Partners調査】

映像・書籍・音楽・ゲーム・ラジオ横断でリーチ力、2024年のTOP3は「ポケモン」「ツムツム」「ONE PIECE」【GEM Partners調査】

GEM Partners株式会社は、メディアを横断してエンタメブランドの真のリーチを比較・評価することを目指した指標(リーチpt)をもとに、「映像」「マンガ」「書籍」「家庭用ゲーム」「アプリゲーム」「音楽(アーティスト)」「ラジオ・ポッドキャスト番組」の7メディア横断の年間ランキングを発表しました。


WebマーケティングとIT業務における"よくある失敗"はDB更新エラーが最多!失敗を防ぐために必要だと感じるスキルとは?【Hagakure調査】

WebマーケティングとIT業務における"よくある失敗"はDB更新エラーが最多!失敗を防ぐために必要だと感じるスキルとは?【Hagakure調査】

株式会社Hagakureは、同社が運営するWebマーケティングスクール「デジプロ」にて、業務上のミスを防ぐためのリスキリングに関する調査を実施し、結果を公開しました。本調査は、300名を対象に、WebマーケティングやIT業務でよくある失敗と、その失敗を防ぐために必要だと感じるスキルについて調査したものです。


話題の「リカバリーウェア」のターゲット層は?人気の4ブランドをデータから比較

話題の「リカバリーウェア」のターゲット層は?人気の4ブランドをデータから比較

日々の疲れを癒し健康的な生活へと回復させるためのサポートとして、医薬品やサプリ、健康食品など、巷にはさまざまな情報が溢れています。中でも最近よく見聞きするのが「リカバリーウェア」。着るだけで疲労感などが軽減されると謳う救世主的な商品ですが、一体どのような物で、どのような人たちの関心を掴んでいるのか、データを用いて検証します。


Adjust、年末年始のアプリトレンドの予測とアプリを成長させるためのキャンペーンの作り方を発表

Adjust、年末年始のアプリトレンドの予測とアプリを成長させるためのキャンペーンの作り方を発表

Adjustは、昨年度のクリスマス後から1月下旬にかけての期間(第5四半期)を振り返り、本年度のポストクリスマスシーズンに向けてのトレンドを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ