GMMとLDHの合併会社【G&LFH】開設の背景
タイ大手音楽レーベルのGMM MUSICはアーティスト選定、音楽制作、マーケティング、芸能学校の運営など幅広いサービスでタイの音楽産業を支えている企業です。
合併会社開設によりGMMは世界規模二位の音楽市場を持つ日本からノウハウを吸収し、アーティスト育成水準の向上を狙います。
LDH側は、まだまだ国内だけで完結している日本の音楽を世界に広めつつ、ダンスを軸にした自社のパフォーマンス拡散を狙います。
近年は、国境に囚われないグローバルな楽曲やアーティストが続々と現れるMUSIC SECOND WAVE BOOMです。合併子会社開設により、この波にのることで、今後互いの音楽市場の繋がりが強化されるのではないでしょうか。
タイと日本の音楽文化の傾向比較
タイと日本の音楽シーンにはどのような違いがあるのでしょうか?
音楽文化の傾向を比較してみましょう。
■① アイドル
タイ・日本間の音楽文化の違いがわかりやすいものの一つに、アイドルの系統の違いが挙げられます。日本では、AKBや坂道系アイドルのように統一感のある制服のような衣装を着用している清純さを強調したアイドルが多くいます。
最近人気の超ときめき宣伝部などのような、各メンバーカラーに合わせた衣装を着た、可愛らしさを強調したアイドルも多くいます。
一方タイでは、可愛らしさよりもクールさ、美しさを強調したアイドルが目立ちます。タイでは、日本の可愛らしいアイドルとは異なり、K-pop系統に近いアイドルが多いようです。
■② タイ、日本のポップジャンルにおけるビデオ・ストリーミング数比較
日本とタイでは、人気のある音楽ジャンルには違いがあるのでしょうか?
以下のグラフより、日本国内でのJ-Popストリーミング数は日本全体の64.4%であることが分かります。
そしてタイ国内でのポップ全般ストリーミング数は、日本国内でのJ-Popストリーミング数と同じ65%程を占めています。
筆者の留学経験では、タイではT-popが多く聴かれており、屋台やモールでもよく流れています。
ポップジャンルにおける2023年の世界総オーディオ&ビデオ・ストリーミング数(Luminate社 2023年データ)
このことから、日本人がJ-popを聴くのと同じような頻度や感覚でタイ人もT-popをストリーミングしているのではないでしょうか。
両国民の自国の曲に対する意識や親近感には、共通した何かがあるのかもしれません。
3.音楽文化とビジネスの関係性
次に、音楽文化が与える影響について、インスタフォロワー118万人のタイ人気歌手NONT TANONTを例に3つの観点に分けて見ていきましょう。
■① 歌、映画、テレビ番組、ユーチューブの視聴率増加
まず、音楽文化の影響はメディアやSNS業界に現れる傾向があります。
NONT TANONT が2022年にリリースした『โต๊ะริม(melt)』はYouTubeで1億2000万回以上再生され、世界中に広まっています。
2023年には、日本の歌手である藤井風がバンコク公演の際にこの曲をカバーしたことで、両者の存在が両国で広まりました。
■② タトゥー、ピアス、ダンスの動き、Y2Kファッションなど、人々の行動
Youtubeや音楽番組などを通して知名度がつくと、その歌手が身に着けているもの、その歌手の行動全てがファンに影響を与えます。
例えば、韓国歌手の投稿やアイドルのダイエット方法が話題になることがあります。NONT TANONTにおいても、彼の影響力から2019年にはICONSIAM Fashion Trendとコラボしました。
■③ イベントやコンサートに行く機会の創出
楽曲が有名になると、国境を越えてライブに来るファンも増えます。
日本でもタイで開催された、タイで今最も人気のある男性アーティスト4人のコンサート「THE KINGDOMS CONCERT」が有料配信されました。また、NONT TANONTは6月に日本初ライブを行い、日泰間の繋がりが強まっています。
まとめ
今回は、G&LDHの設立のニュースを受けて、タイの音楽シーンの特徴を解説してきました。
国籍や職を問わず、音楽が瞬時に多くの人に届く現代だからこそ今後両国の繋がりや文化理解が深まっていくのではないでしょうか。
G&LDHの設立で、日本の音楽文化がタイにどのように浸透していくのか、今後の展開が楽しみです。
東京外国語大学でタイ語を学ぶ大学生。高校生の頃に初めてタイを訪れ、タイ独特の文化や言語、国民性を体感したことでタイに関する理解を深めたいと考えるようになる。最近までタイのタマサート大学に半年間、交換留学をしていた。