PayPay「100億円あげちゃうキャンペーン」、その後のマーケティング効果を調査

PayPay「100億円あげちゃうキャンペーン」、その後のマーケティング効果を調査

PayPayは2019年も独走?!


ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸)は、一般ネットユーザーの行動ログを用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用して、2018年12月「100億円あげちゃうキャンペーン」で話題をさらい、2019年2月12日(火)からは日常的な決済利用の定着を図る「第2弾100億円あげちゃうキャンペーン」実施中のスマートフォン決済アプリ、PayPayの利用動向を調査しました。

2018年12月実施の第1弾キャンペーンで一気に新規ユーザーを獲得したPayPay(*1)は、2019年に入っても順調にユーザーを増やし、2月時点のアプリ所持ユーザーは774万人に達していました。

キャッシュバック上限を第1弾の5万円から1千円相当に大幅に縮小した「第2弾100億円あげちゃうキャンペーン」のインパクト、また第1弾キャンペーンでの獲得ユーザーのロイヤルティを、ヴァリューズのスマートフォン行動ログデータから探ります。

分析概要

ヴァリューズ保有モニターパネル(20代以上)のスマホ行動ログデータを用いて、「PayPay」アプリ及び主要決済アプリのユーザーの行動ログを分析した。
※行動ログは、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用。
※アプリユーザー数は、Androidスマートフォンでのインストールおよび起動を集計し、ヴァリューズ保有モニター(20代以上)での出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
※「LINE Pay」は決済機能単独でのログが取得できないため、主要アプリの対象外としている。

考察サマリ

1月に落ち込むも2月は急回復、600万人に迫る月次利用ユーザーを獲得したPayPay

主要決済アプリの月次ユーザー数からは、第2弾キャンペーンが前回以上にPayPayユーザーを集めている様子が明らかになりました。第1弾キャンペーン終了後、1月は441万人と若干落ち込んだ利用ユーザーが、2月には前月比36%増の599万人に急増し、相応のインパクトを与えています。【図表1】。

第1弾キャンペーンでいきなりPayPayに抜き去られた楽天ペイ、Origami決済アプリがこの間ユーザー数で巻き返すことはなかったものの、両サービスとも右肩上がりで増加しました。PayPayキャンペーンはスマホ決済への注目を集め、市場自体の拡大に寄与したといえそうです。

図表1 主要決済アプリの月次ユーザー数推移(2018年3月-2019年2月)

2月時点のPayPay所持ユーザー数は774万人

日次の主要決済アプリインストールユーザー数からは、第2弾キャンペーンが新規インストールユーザーも着実につかんでいることがわかります【図表2】。

第2弾キャンペーン期間中のPayPayインストールユーザーは、2月13日(水)が99,000人で最多。ついで2月16日(土)も85,000人がPayPayをインストールしました。12月9日(日)に603,000人のインストールを促した第1弾キャンペーンに比べると控えめながら、やはりキャッシュバックの威力は大きく、2月12日(火)から2月28日(木)の17日間で合計70万人以上が新たにPayPayをインストールした計算です。この結果、2月時点のアプリ所持ユーザー数は774万人に到達しています。

他の主要アプリは楽天ペイが2月21日(木)に45,000人をマークしたものの、概ね20,000人以下で推移していて、PayPayの強さが際立ちます。

図表2 主要決済アプリをインストールしたユーザー数(2018年12月-2019年2月)

日次起動ユーザー数では、キャンペーン開始日2月12日(火)205万人から徐々にユーザーを増やし、2月15日(金)にはのべ231万人がPayPayを起動しました【図表3】。

キャンペーン終了日12月13日(木)に471万人が起動した第1弾ほどではないものの、1日でその半数近くは稼いだ計算です。第2弾キャンペーンの思惑通り、日常的な決済利用が進んだものとみられます。

図表3 主要決済アプリを起動したユーザー数(2018年12月-2019年2月)

PayPayの1日あたり平均起動回数(*2)は2月12日(火)2.00回、2月13日(水)2.03回と、第1弾キャンペーン終了後1.3回程度に落ち込んでいた利用を着実に取り戻しています【図表4】。

*2)アプリ起動は1時間単位で取得しているため、1日の起動回数は最大で24回となる

3ヶ月間の1日あたり平均起動回数はPayPayが1.67回、Origami決済アプリ1.60回、楽天ペイ1.54回。ユーザー数では水を開けられる他の決済アプリですが、既存ユーザーの定着度は大差がありませんでした。

図表4 主要決済アプリの1日平均起動回数(2018年12月-2019年2月)

キャンペーン外の獲得ユーザーが高ロイヤルティ

新規市場の一挙獲得を果たした第1弾キャンペーンは、日常的な利用定着というファン化に奏功しているのでしょうか。PayPayユーザーのロイヤルティを、インストール時期の違いから確認してみます。

第1弾キャンペーン期間中にインストールしたPayPayユーザー(「期間中」の青線)のアプリ起動回数は、2019年1月-2月で1日平均1.60回。キャンペーン期間外にPayPayを使い始めたユーザー(「期間外」のオレンジ線)の1日平均起動回数1.71回に比べ、やや少ないことがわかります。

日次でみても「期間中」ユーザーの起動回数が「期間外」ユーザーを上回った日は2月6日(水)、2月18日(月)など、ごくわずか【図表5】。2週間単位の平均値(14区間移動平均)でも、「期間外」ユーザーの起動回数が「期間中」を上回っています。一挙に541万ユーザーを獲得した第1弾キャンペーンでしたが、キャンペーン外で得たユーザーの方がロイヤルティは高そうです。

図表5 PayPayアプリユーザーの1日平均起動回数(インストール時期別)
「期間中」は2018年12月4日-13日に、「期間外」はそれ以外の時期にインストールしたユーザー

女性が反応した第1弾キャンペーン

今年に入ってPayPayを起動したユーザーは男性が64.9%で、女性よりも利用が多い傾向です【図表6】。

インストール時期別にみてみると、「期間中」は「期間外」に比べて女性が多く、女性ユーザーには第1弾キャンペーンが有効だったといえそうです。

図表6 2019年1月-2月のPayPay起動ユーザー(インストール時期×男女別)
「期間中」は2018年12月4日-13日に、「期間外」はそれ以外の時期にインストールしたユーザー

今回の調査で、PayPayが国内のスマホ決済市場全体を牽引している実態が明らかになりました。一方、LINE Payとメルペイは業務提携を発表し、2019年初夏を目処に両社の加盟店が相互開放され、市場での競争は激しさを増しています。各社のマーケティング戦略が消費者のキャッシュレス決済をどのように促すのか、今後も要注目といえるでしょう。

この記事のライター

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