カスタマージャーニーのセミナーを取材しました
カスタマージャーニーとは、消費者が商品やサービスの検討過程を経て購買・申込みに至り、実際に使用するまでの旅路のこと。
この理解ができれば、それぞれのフェーズにいるユーザーに対して適切なコミュニケーション施策を考える足がかりになる。そのためにマーケターたちは日々、自社のターゲットとなるユーザーのカスタマージャーニー理解に努めているはずです。
カスタマージャーニーを把握するとき、よく用いられるのはアンケートやインタビューでの調査でしょう。しかしアンケートに加え、インターネット行動ログというデータを用いれば「より確からしい裏付けを持ったカスタマージャーニーを描くことが可能になる」と、株式会社ヴァリューズのマーケティングコンサルタント・竹久氏は語ります。
株式会社ヴァリューズでマーケティングコンサルタントを務める竹久氏
こうしたWeb行動ログデータの活用の可能性を探るため、「アンケートとビッグデータで見つけるカスタマージャーニー」セミナーが6月26日に開かれました。
事例として用いられたのは犬を飼う人のカスタマージャーニー。今回、マナミナ編集部がその内容を取材しました。
アンケートとWeb行動ログデータをどう使うのか
犬を飼う人のカスタマージャーニーを理解する上で、「犬を飼育し始めた人が飼育前、飼育後でそれぞれどんな悩みや関心があったのかを明らかにした」とヴァリューズのデータアナリスト・灰谷氏は語ります。
株式会社ヴァリューズでデータアナリストを務める灰谷氏
そのためのステップとして、まずはアンケート調査を行ったと言います。
これは主に「調査対象者の中で犬を飼育している人と、飼育を始めたタイミングを知る」ことが目的。インターネット上の行動を測るだけでは、あるユーザーが本当に犬を飼育し始めたのか、またそれはいつだったのかが分かりません。このオフライン行動を理解するため、まずはアンケート調査を行っていきます。
アンケート回答を取得後、次はWeb行動ログを使います。では、そもそもWeb行動ログデータとは具体的にどんなデータなのでしょうか?
今回利用したものは「対象者が閲覧したコンテンツのタイトルと、そのコンテンツに流入したときに打ち込んだ検索キーワード」だと灰谷氏は言います。そこで、実際の行動データを見てみましょう。
例えば図の赤枠部のデータを見れば、あるユーザーは「子犬 爪切り いつから」と検索して、Yahoo!知恵袋のページを閲覧しているといったことが分かります。
このようなインターネット上の行動をユーザー自身が覚えておくことは難しいため、アンケートでは回答を得ることができません。しかし、購買検討においては必ずと言っていいほどインターネットでの情報収集が行われます。だからこそWeb行動ログデータは、カスタマージャーニーのより正確な理解に役立ちます。
飼い始めたときはトイレに、その後フードやグッズに関心を持つ
こうして必要なデータが揃ったら次は集計・分析を行っていく、と灰谷氏。アンケートで明らかにした犬の飼育開始時期からデータを抽出し、まずは検討者が閲覧していたコンテンツのタイトルを分類しました。
これを見れば、飼育開始月に「病気」関連コンテンツの閲覧者がぐっと増えているのが分かります。
また、開始月に2番目に見られていたコンテンツタイトルは「しつけ」関連で、これはその後も継続して見られ続けています。一方、「グッズ」に関するタイトルは飼育を始めてから比較的あとの時期に興味度が高まっているようです。
「しつけ」関連のコンテンツについてはさらに分類を行いました。
図の青色の折れ線グラフで表された「トイレ」は、飼育開始月で特徴的に多く閲覧されています。また、「食事」に関するコンテンツは飼育開始以降もさらに関心が集まっていくテーマでした。
ここまではインターネット上のすべてのサイト内コンテンツでしたが、大手ECサイト内のコンテンツに絞った分析も行ったと灰谷氏は語ります。
図では飼育開始月にピークがくる商品と、飼育開始後にピークがくる商品で分けています。ここでもまた、全体の傾向と同じようにトイレ用品は飼育開始月にニーズが高まり、お手入れグッズやフード系は飼育後にじわじわとニーズが高まっているようでした。
犬を飼う人のカスタマージャーニーは
Web行動ログを使った上記の分析結果をまとめれば、犬を飼う人が飼育開始前、開始月、開始後にたどるカスタマージャーニーが見えてきます。
今回は詳しく語られませんでしたが、まず飼育開始前ではユーザーは犬のかわいい動画を見て夢を膨らませていました。
その後、飼育開始月はこれまで気にしていなかった「トイレ」「病気」など、ペットを飼っていく上で最初に必要なトピックに急に関心が向き始めます。
そして飼育開始から数ヶ月経って落ち着いてくると、今度はヘルスケアやお手入れグッズ、おやつ・フード系の商品や、犬との外出方法といった「そういえばこれってどうしよう」と思うようなトピックへの関心が盛り上がってくる結果になりました。
このように、アンケートとWeb行動ログの利点をともに活用した調査を行うことで、オフラインとオンラインの両方の行動を理解することができます。
いままでどうしても仮説の域を出られなかったインターネットでのユーザーの検索・閲覧行動を可視化することで、より精度の高いカスタマージャーニーが得られる。これがWeb行動ログのデータを用いる利点と言えるのではないでしょうか。
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マナミナ編集部でデスクを担当しています。新卒でメディア系企業に入社後、フリーランスの編集者・ライターとして独立。マナミナでは主にデータを活用した取り組み事例の取材記事を執筆しています。