D2Cとはどのようなビジネスモデル?
D2Cとは、「Direct to Consumer」の略称で、原則としてメーカーが店舗(卸業者)を介さず、顧客に直接商品を届けるビジネスモデルです。
このビジネスモデルのメリットは、問屋や小売店による中間マージンを抑えられることでユーザーに安価で商品を提供できる点です。その反面、ブランディングや集客が課題になるデメリットがあります。
D2Cが普及した背景には、実店舗がなくてもECサイトから販売できたり、SNSの普及でブランドが顧客と直接コミュニケーションを取れるようになった背景があります。これにマッチしたのが、レディス向けのブランドでファッションやコスメといったジャンルで、とくにその勢力を拡大しています。
メーカー、ブランドが直販するという意味ではSPA(製造小売)に近いのですが、SPAの場合は店舗を持つことが多い点がD2Cとは異なります。
■B2B、B2Cとの違い
B2Bは「Business to Business」の略で、企業間取引。B2Cは「Business to Consumer」の略で、企業対一般消費者の取引形態を指しています。
B2CにはAmazonなどのECサイトも含まれるのでD2Cと混同するかもしれませんが、B2BやB2Cは顧客の属性に注目した用語なので、流通業者を挟まないという流通経路を表すD2Cとは性質が異なります。
日本のD2Cブランド事例
日本でもD2Cの興隆はめざましいものがあります。カテゴリーとしてはレディスアパレルが中心ですが、メンズアパレルを始めファッション関連、コスメ関連、フード関連、サプリメント関連、ペット関連と幅広い領域でD2Cが広がっています。
■レディス・メンズアパレルのD2C事例
レディスアパレル全般を扱う「RiLi STORE(リリ ストア)」
ユーザー参加型のファッションメディア『RiLi.tokyo』が、ユーザーとのコミュニケーションの中でニーズの理解が深まり、商品を販売したところインスタグラムなどのSNSで拡散され、大ヒット。
このようにメディア発のショップはSNSとの親和性も高く、D2Cビジネスには数多く存在しています。
ファッションメディアRiLi(リリ)の公式通販サイト「RiLi STORE」。トレンドだけどちょっぴり個性的。インスタグラマーのお手本コーデも見れる!今っぽかわいいファッションアイテム続々入荷中。RiLi.tokyoの公式店舗。インスタ⇢@rili.shopping
男性用アンダーウェア「BARAILLE & GARMENTS(バライル アンド ガーメンツ)」
男性用のアンダーウェアのみを扱う「BARAILLE & GARMENTS」。男性用アンダーウェアのみの取り扱い、素材にこだわり、履き心地と耐久性を重視するという独自性は、D2Cならではのものといえます。
BARAILLE & GARMENTS | 公式オンラインストア
https://baraille.club/バライルアンドガーメンツ公式通販サイト。男性へのプレゼントにも最適なアメリカンシーアイランドコットンを使用したボクサーブリーフ・ボクサーパンツ。最高の着心地を目指すメンズアンダーウェアブランドです。
クラウドファンディングを活用する「ALLYOURS(オールユアーズ)」
海外事例でよく取り上げられるAllbirdsも、最初はクラウドファンディングを活用していました。
「あたりまえを、あたりまえにしないモノづくり」を理念に、「新しい普通」となる洋服を開発し続けるALL YOURSはクラウドファンディングを活用する国内D2C事例です。
24ヶ月連続、隔月クラウドファンディングを実施し、支援総額は5700万円(2019年8月時点)に達しています。クラウドファンディングでは企画の趣旨をPRしたり、支援者に経過を報告するなど、メーカーがユーザーと直接コミュニケーションするD2Cのビジネスモデルの特徴が現れています。
ALL YOURS 公式オンラインストア|次のあたりまえをつくる人の夢中服
https://store.allyours.jp/着飾るためではなく、日常を快適にするための服。オールユアーズの服は着飾るためのものではありません。 着ているときはストレスがなく、その後の手入れも簡単。それでいてちゃんとして見える” いまこの時代でそんなものが必要とされていると思うのです。 特別な日のためではなく、日々の暮らしのための服。 オールユアーズはあなたの生活に寄り添う服を目指しています。
■ファッション関連のD2C事例
レザー製品ブランド「objcts.io(オブジェクツ アイオー)」
土屋鞄出身者がガジェット向けの革製品を作るブランドとして立ち上げた「objcts.io」では、上質なレザーを使用し、ビジネスマンに向けた機能性とラグジュアリーを備えたバックパックなどの革製品を展開。
代表は土屋鞄でサイトやSNSの運営に携わっていただけに、こうしたツールを活用したブランディングにも長けていることも、objcts.ioがD2Cで成功している要因のひとつになります。
objcts.io オブジェクツアイオー | イノベーターのためのレザーバックパック
https://objcts.io/objcts.ioがつくるのは、イノベーターのためのワードローブ。もてる時間のすべてを「創造」のために使い新しい価値を生み出す人々へ、感性に響くものづくりを届けます。
メガネを通販で販売「Oh My Glasses(オーマイグラス)」
レンズの度数の測定という点からメガネは店舗で買うもの、という既成概念を取り払い、メガネのEC販売を始めた「Oh My Glasses」。
当初はネットショップだけでしたが実店舗を複数展開しているところが、他のD2Cブランドとは一線を画しています。
メガネのオーマイグラス(めがね・眼鏡) | メガネ通販・試着
https://www.ohmyglasses.jp/オーマイグラスのメガネ・サングラス通販サイトではご自宅で商品の試着・店舗に商品の取寄ができます。遠近両用メガネやビジネスメガネ、レイバンなどのブランドメガネだけでなく、通販だからこそ取り扱える珍しい眼鏡・サングラスをお探しのお客さまにも満足していただける品揃え。約7,400 本のサングラス・メガネ、230ブランドから「運命の1本」を見つけてください。
■シャンプー・化粧品・コスメのD2C事例
レディスコスメ 「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)」
美容分野に特化した動画メディア「DINETTE」発のコスメブランドが「PHOEBE BEAUTY UP」。前出の「RiLi STORE」のように、メディアからユーザーの要望を集めてから商品を発売しています。
生まれたばかりのベンチャーがいきなり商品を出しても埋もれてしまうだけ。だから当社の場合は先にファンを囲い込んで、そこから売り上げにつなげていきました……という同社代表の尾崎氏のコメントは、D2Cならではの戦略といえます。
D2Cで大手に勝つ コスメ業界の急成長スタートアップ3社のキーパーソンが語る
https://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/1907/26/news019.html「PHOEBE BEAUTY UP」「BULK HOMME」「MEDULLA」。3つの急成長D2Cコスメブランドそれぞれの戦略とは。
ぷるんと肌に密着して美容保湿成分を肌の奥深く届ける天然由来のフェイスマスク。潤いに満ちた潤いのある透明感のある美肌に導くきます。
メンズコスメ 「BULK HOMME(バルクオム)」
オンライン定期購入型の男性化粧品ブランド「BULK HOMME」を展開する同社は、2013年の創業。洗顔料や化粧水は累計出荷本数350万本を突破(2019年9月末時点)し、公式オンラインストアの利用者は累計5万人に達するなど存在感を見せています。
国内では窪塚洋介さんをブランドアンバサダーに、グローバルアンバサダーにワールドカップでブレークしたサッカーのフランス代表エムバペ選手を起用するなど、ブランディング型のPRが特徴です。
「THE BASIC MENʼS SKIN CARE」をコンセプトに、確かなエビデンスから成る「瞬間的価値」と「⻑期的価値」を両⽴したプロダクトを提供する、メンズスキンケアブランドです。【brand site】https://bulk.co.jp/ 【amazon】http://goo.gl/gvZ6Ej
■フード・ドリンクのD2C事例
チョコレートブランド「Minimal(ミニマル)」
カカオ豆から板チョコまでの全製造行程を自社工房でおこなう「Bean-to-Bar」。Minimalは国際的な品評会で受賞歴があるチョコレートブランドです。
サロン・デュ・ショコラの盛況に見られるように日本では高級チョコレート市場が盛り上がっています。
Minimalでは少数の実店舗で商品をブラッシュアップさせながら、SNSでブランディングを行い、ネットショップで定期便やトライアルキットを販売する手法を取っています。
Minimal -Bean to Bar Chocolate- TOKYO
https://mini-mal.tokyo/Minimal -Bean to Bar Chocolate- は、2014年12月に東京・渋谷区富ヶ谷で立ち上がったクラフトチョコレートメーカーです。 世界中のカカオ農園に足を運び、品質の良いカカオ豆を選び仕入れ、自社工房でカカオ豆から板チョコレートができるまでの全工程(選別・焙煎・摩砕・調合・成形)を管理し、製造する“Bean to Bar Chocolate”専門店です。 カカオ豆の個性を活かし、カカオ豆本来の味わいや香りの表現に徹底的にこだわっています。私達のチョコレートで、皆様の生活に”新しい彩り”を加えたい。そんな思いでチョコレートを製造しています。
“完全食”ブランド 「BASE FOOD(ベースフード)」のD2C事例
1食で1日に必要な栄養素の1/3を摂れ、さらに糖質やカロリーも抑えた“完全食”を謳う「BASE PASTA(ベースパスタ)」と「BASE BREAD(ベースブレッド)」をD2C販売している「BASE FOOD」。
国内で食品だけを販売している唯一のフードテックブランドである同社は、4億円もの資金調達に成功しました。BASE FOODが今までになかったコンセプトの商品を開発し、D2Cで売り出したことが資金調達成功のポイントです。
ベースフードの公式オンラインショップ。完全栄養のベースヌードル®、ベースブレッド®を好評発売中。初回限定50%OFFのスタートセットもご用意。
■サプリメントのD2C事例
カスタマイズサプリ 「FUJIMI(フジミ)」
20問ほどの肌診断から、ユーザーに最適なスキンケアサプリをカスタマイズするサービス「FUJIMI」。診断結果から処方されたサプリは、1日分ずつ個包装され、1ヶ月分が送られてくるサブスクリプション形式で提供されます。
同社はインスタグラムにて「SkieNa(スキーナ)」を運営し、約半年で10万フォロワーを達成。20代後半から30代前半女性が関心を示しており、エンゲージメント率の高さも話題になっています。
栄養ドリンク「COMP(コンプ)」
健康に欠かせない必須栄養素を理想的なバランスで配合した完全栄養食品が「COMP」シリーズです。COMPシリーズにはパウダー(水など液体に溶かして飲む)、グミ、ドリンクという3種類が用意されていますが、いずれも効能は同じです。
いずれの商品も「ながら摂取」が可能なため、食事の時間を惜しむゲーマーやアニメファンに対してスポンサー活動、コミケ出展といった、ターゲットに合わせたブランディング活動も特徴のひとつです。
COMPは、ヒトが生きるのに必要なすべての栄養素を、理想的に補える「完全食」です。 寝食惜しんでもやりたい仕事や趣味がある人々に、栄養と時間を提供することで、目的達成をサポートします。パウダー、グミ、ドリンクなど様々な形で理想の栄養バランスを。
■ペット関連のD2C事例
ドックフード 「PETOKOTO FOODS(ペトことフーズ)」
愛犬の体重、年令に応じたオーダーメイドタイプのドックフードを提供する「PETOKOTO FOODS」。サブスクリプション形式のドックフードは、国産素材にこだわり、愛犬の健康を徹底的に考慮しています。
獣医や専門家が執筆しているため、信頼性の高いWebメディアとして多くの愛犬家から支持を集める『ペトこと』から派生したD2Cビジネスです。
PETOKOTO FOODS|愛犬のための高級オーダーメイドフレッシュドッグフード
https://foods.petokoto.com/獣医師・動物栄養学博士監修で国産にこだわったフレッシュタイプのプレミアムドッグフードです。国産の新鮮な肉や野菜を使い、保存料、着色料は一切不使用。美味しくて食いつきも良く、子犬や成犬、シニア犬までオールステージに対応しています。冷凍定期配送で送料無料。
犬用完全食 「CoCo Gourmet(ココグルメ)
獣医師監修の手作りドックフードとして、2019年6月に販売を開始。2ヶ月で5万食を売り切ることで注目を集めました。
国内の飼育犬の頭数は減少しているのに対し、ドックフードの市場は伸びており、その中で高級ペットフードという、差別化した商品による事業展開がD2Cとマッチした好例といえます。
獣医師監修の手作りドッグフード【公式】CoCo Gourmet/ココグルメ
https://coco-gourmet.com/CoCo Gourmet(ココグルメ)の公式オンラインショップです。CoCo Gourmetは、新鮮な素材をそのままに冷凍配送でお届けする、獣医師監修のワンちゃん用の手作りフードです。ココグルメは、ワンちゃんが健康に生活するために必要な栄養素を定義した総合栄養食の基準を満たしています。
海外のD2Cブランド事例
D2Cがめざましい発展を遂げている海外、とくにアメリカで成功したブランドを紹介します。
■スニーカー直販「Allbirds(オールバーズ)」
Allbirdsはアメリカ発のシューズメーカー。エコな素材を使ったアッパーに「世界一履き心地の良い靴」をモットーにしています。
2014年にオンライン販売のみでスタートするとシリコンバレーから支持を受け、オバマ前大統領やGoogleの共同創業者ラリー・ペイジなど有名人も使うブランドに成長しました。
数種類しかないデザインや30億円以上の資金調達額、店舗を持たない直販からスタートした点でD2Cモデルを代表する成功例です。
The World’s Most Comfortable Shoes
https://www.allbirds.comThe world’s most comfortable shoes, made with natural materials like merino wool, eucalyptus tree fiber, and sugar cane, Allbirds has created the comfiest shoes on the planet.
■眼鏡ブランド「Warby Parker(ワービーパーカー)」
Warby ParkerはNY発の眼鏡メーカー。10億円以上の企業価値を持つスタートアップ=ユニコーン企業で、アメリカで発表された「世界で最もイノベーティブな50社」でAppleやGoogleを抑えて1位になったこともあります。
アメリカでは数万円するオシャレな眼鏡に対し、中間業者を省いてネット販売することで1万円程度の価格帯を実現しました。
自宅で試着体験ができる試み「Home Try-On」や、スタートアップにも関わらず、発展途上国に眼鏡を寄付する社会貢献など中長期的なブランディングを行い、ミレニアム世代から支持を受けています。
Glasses & Prescription Eyeglasses | Warby Parker
https://www.warbyparker.com/Prescription eyeglasses starting at $95. Find a new pair today with our free Home Try-On program. Fast, free shipping both ways. For every pair sold, a pair is distributed to someone in need.
■寝具マットレス「Casper(キャスパー)」
2014年に創業すると2年目にして売上100億円に達して注目されたのが寝具マットレスのCasperです。選択肢が多く顧客が選べないマットレス市場に対し、最高のマットレスを1モデルだけ提供しました。
D2Cブランドの多くは、商品の種類を極めて少数に絞っているのが特徴です。在庫リスクを抑えながらブランドイメージをアイコン的な商品に集中させるメリットがあります。
SNSで顧客と対話しながら、絞り込んだ商品をブラッシュアップさせていくのがD2Cでよく見られるマーケティングです。
The Best Bed for Better Sleep | Casper®
https://casper.comGet the sleep you've always dreamed of. Casper's award-winning mattresses, sheets & more are quality-crafted and ethically built in the USA. Free shipping & returns!
なぜD2Cがここまで普及したのか
スマホやECの普及に加え、ネット系のマーケティングツールによるインフラ整備が、スタートアップのD2Cを可能にしました。
D2Cは磨き上げた少数の商品を、WEBサイトやSNS、インフルエンサーなどデジタル領域でブランディングし、中間業者を省いたネット販売で低価格に抑えるというビジネスモデルです。
顧客がネット上でどのような購買行動をしているか把握するには、インターネット行動ログ分析サービス「eMark+」をご活用ください。
eMark+ | ビッグデータ×マーケティングで事業の成長を支援|株式会社ヴァリューズ
https://www.valuesccg.com/service/dmd/emarkplus/国内30万人規模の消費者行動から 確実に成果につながるデータ マーケティングを導き出すSaaS、eMark+(イーマークプラス)を提供する企業 VALUES。無料から有料アップグレードで ネット広告の市場+効果、キーワード調査、集客施策などの分析も可能。今すぐOODAを実現させましょう。
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