データマーケティングの活用シーン
顧客の属性や嗜好、行動履歴から顧客ごとにパーソナライズする「One to One マーケティング」と、それを大規模に行うためにシステムで自動化する「マーケティングオートメーション(MA)」がデータマーケティングの代表例です。
たとえば行動履歴に基づくリマーケティング広告や、嗜好に合わせてパーソナライズしたWeb広告を出すには、大量の生のアクセスログを整理して分析する前処理が必要です。
データ活用の8ステップ
■1.目的を明確化する
大量のデータを収集・分析するには費用も時間もかかります。「何をしたいか」が明確であればあるほど、どんなデータが必要で分析手法には何を用いるか決めやすくなります。
大脇:まず目的、そして仮説をもつことから始めていただきたいです。データを見る順番が違ったら、データから読み取る結果も全く変わってしまう。大枠の目的が決まっていない状態では、判断材料として正しいのかどうか、値の意味がわからないし、往々にして数字は高ければいいかのような誤解にもつながります。
データマーケティングをこれから始める場合、データを活用する前に整備するコストや時間が伴うので、小さく始めるのがおすすめです。
― マーケティングにおけるデータ活用、まず始められることを教えてください。
山本:繰り返しになりますが、データがあるから何かができるという順番ではありません。成し遂げたい目的を定めて、必要最小限のデータでスモールスタートをおすすめします。
データは目的に合わせて選ばないと活用できなかったり活用するためのコストや時間が伴うので、既存データの整理より外部データが使いやすいかもしれない。
はやく気づきを得ることを、小さく始める。そしてモニタリングすべき枠組みを徐々に構築していくと、サイクルが回りやすいですね。
■2.仮説を立てる
自社が解決したい問題に対して、原因の仮説を立てます。例えば、ECサイトで商品がカートに入ったまま購入されない「カゴ落ち」の原因にも幾つか種類があります。
入力項目が多い、案内が不親切などショッピングカートのユーザービリティが原因と仮定する場合はカート関連の画面遷移を中心に調査します。一方、カートに入っていることを忘れてサイトを離脱してしまう場合は、ユーザーが最後に見ていたページを調べ、離脱する際にメッセージを出す方法があるかもしれません。
このように目的と仮説によって、必要なデータも変わってきます。
■3.データを俯瞰し全体像をとらえる
時間軸・属性・行動などの観点でフィルタ前の全データを俯瞰し、特徴あるポイントがないか見つけていきます。
■4.データ分析し特徴を捉える
全体像を俯瞰して気づいた傾向や異常値、仮説を裏付けるデータを確認します。
Webのアクセスログを初めて触る方の場合、利用者も多く活用方法もよく知られているGoogle Analyticsでデータ集計したり、フィルタリングしたりすると良いでしょう。
複数のサイトを統合したデータが欲しい場合はデータを出力してエクセルやDBで加工する方法がありますが、ドラッグ&ドロップで現場の人間でも簡単にビジュアライズできるTableau(タブロー)を使うと便利です。
最終的にはSQLを使ってデータベースを操作する人たちもいます。従来は欲しいデータをエンジニアや外注業者に依頼して、時間も費用もかかっていた部分が短縮され、試行錯誤の頻度も上げられます。
例えば日経新聞のような古くて大きい会社でも社内にデータドリブンを加速する「データ道場」を開設しSQLを触れる人が200人以上いる状況になっています。
株式会社デジタルガレージCDOの渋谷直正さんが語る、データ分析組織づくりの2つの方向とは
https://manamina.valuesccg.com/articles/559データ分析組織づくりの2つの方向性は、トップダウンかボトムアップか。日本航空(JAL)にて10年間データ分析に携わり、現在は株式会社デジタルガレージにてCDO(チーフ・データ・オフィサー)を務める渋谷直正さんが語ります。
■5.その特徴を深堀りする
見つけた特徴を詳しく調査したり、別のデータソースからも検証します。補足データでも裏付けられれば、仮説がより確かなものになります。
■6.深堀りした結果から戦略を立てる
仮説がデータから裏付けられたなら、その課題を解決するマーケティング施策を検討します。またここまでデータ分析していれば、どの指標をKPIに改善とみなすかも決められます
■7.施策を実行する
課題を改善する施策を実行します。
■8.施策の効果を検証する
施策実行後に改めてデータを分析して、KPIとする指標が改善されたかPDCAを回します。
まとめ
マーケティングにデータを活用するには、まずデータを収集し分析するステップが必要です。それには時間も費用もかかるので「何を解決したいか」という目的を明確にして必要なデータや分析手法をはっきりさせることが重要です。
またデータ分析のサイクルを早めるには現場がすぐデータを扱える環境づくりが必要です。Tableauのようなツールを導入する方法もあれば、社内で勉強会を開いてSQLを扱える人数を増やしていくアプローチもあります。
これからマーケティングにデータ活用していこう、というフェーズの企業ではまずは小さく始めることからやってみましょう。
マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
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