「データ活用ってなんのためのもの?」|VALUES×VENECT データ活用マーケティング談義(3)

「データ活用ってなんのためのもの?」|VALUES×VENECT データ活用マーケティング談義(3)

「ビッグデータ×マーケティング」を掲げる株式会社ヴァリューズ、「データドリブンマーケティング」を掲げるヴェネクト株式会社。マーケティングでのデータ活用が注目されるなか、国内有数のデータ分析手法を持つ両社のキーマン同士の対談が実現。最終回の第3回は顧客のインサイトをもとにマーケティング戦略を設計するメソッドについてうかがいました。


顧客のインサイトをもとにマーケティング戦略を設計するメソッドとは?

株式会社ヴァリューズ データプロモーション局ゼネラルマネージャー・山本渚氏

株式会社ヴァリューズ データプロモーション局ゼネラルマネージャー・山本渚氏(以下、山本)
マーケティングリサーチ会社での調査設計などを経て、2011年からヴァリューズに参画。現在はeMark+を広告代理店やコンサルティング会社向けにASPで提案したり、クライアント企業のデータ活用やデータマネジメントのコンサルティングを行う。

VENECT株式会社 代表取締役CEO 大脇香菜氏(以下、大脇)
CRM支援会社会社の事業戦略立案やクライアント企業の海外進出プロモーション支援などを経験。個別案件にも加わり、データを基軸にしたマーケティング戦略と実践をサポート。クライアントの社内データを分析したり、データ保有術の最適化を支援することもある。

VENECTメソッド

― マーケティング戦略設計メソッドについて教えてください。

大脇:VENECTでは、以下5つのマーケティング戦略設計メソッドを提示しています。

  • 目標を明確に
  • マーケットを捉える(ソースオブビジネス分析)
  • ロイヤル顧客から学ぶ(カスタマージャーニー設計)
  • 態度変容を促す知覚刺激はなにか(パーセプションフロー設計)
  • 活動を通じて戦略を振り返る(PDCA)

山本:メソッドが整理されていると、属人性が減らせますね。そこが強みなんだと想います。どんな流れで実装されるのでしょうか?

大脇:目的を整理してマーケットをしっかり捉える、まずはここが起点です。SOBは主にデータからマーケットの定量分析を行ったうえ、定性情報も加えながら、ブランドのモデルとなる顧客像を描き出し、カスタマージャーニーとして整理します。

モデル顧客像のカスタマージャーニーをもとに、態度変容を促す知覚刺激、すなわちパーセプションフローを設計していきます。

VALUESメソッド

― VALUESではいかがですか。

山本:カスタマージャーニーはクライアントと一緒に設計しています。行動ログデータをもとに、自社サイトへアクセスしたものの競合で購入したユーザー、自社と競合を比較しながら購買へ至ったユーザーがどんな情報に接触してどう判断したのか、その足取りを読み解きながら、意思決定要因やボトルネックを探る作業です。プロジェクトメンバーがそうした課題をクリアにしていくために、実際の行動ログデータを活用します。

アウトプットは定型化を進めていて、データ整形やレポート作成など、データの可視化まではスピーディですね。データのどこをピックアップするかという議論に、できるだけ時間をかけています。

大脇:どのフェイズでクライアントと議論されますか?

山本:まずは粗くても大きくカスタマージャーニーを描いてみて、極力早い段階でクライアントと共有ワークショップを実施しています。業界固有の背景も影響が大きいので、作り込んでしまう手前で、クライアントと相談しながらのチューニングが欠かせません。

ワークショップには、できるだけ多くの関係者に参加してもらうようクライアントにお願いしています。最終的にまとめたサマリーだけじゃなくて、データの読み込みを通じたユーザー行動観察へ一緒に参加してもらうプロセスに意義があるんです。粗い段階でいいから、まずはお酒でも呑みながら多くの関係者に共通認識をもってもらうほうが、クライアントの社内でも合意を形成しやすい。カスタマージャーニーにおける意思決定フロー、それを示すデータはプロジェクトの共通認識として絶対に共有すべきですね。

大脇:クライアントと一緒にデータを読み解く時間は、当社も早めに設けますね。

山本:粗くても早いのが大事ですね。ユーザー行動をどう見るか、気づきを得ながらメンバーの観点を揃える面で、ワークショップは不可欠なプロセスです。我々もリサーチや設計のプロではありますが、カスタマージャーニー設計にはクライアントの参加が欠かせません。

設計にあたっては、既存のメソッドやフレームワークも活用しますが、「最初のトリガーは何か」など、最終的には消費者の行動ログデータからの気づきのほうが大きいですね。

消費者行動という視点から、データに助けられながら、実行可能な施策としてのカスタマージャーニーとして組み立てていくイメージです。

まずすぐに始められることとは?

VENECT株式会社 代表取締役CEO 大脇香菜氏

目的をもって小さく始める

― マーケティングにおけるデータ活用、まず始められることを教えてください。

山本:繰り返しになりますが、データがあるから何かができるという順番ではありません。成し遂げたい目的を定めて、必要最小限のデータでスモールスタートをおすすめします。

データは目的に合わせて選ばないと活用できなかったり活用するためのコストや時間が伴うので、既存データの整理より外部データが使いやすいかもしれない。

はやく気づきを得ることを、小さく始める。そしてモニタリングすべき枠組みを徐々に構築していくと、サイクルが回りやすいですね。

大脇:まず目的、そして仮説をもつことから始めていただきたいです。データを見る順番が違ったら、データから読み取る結果も全く変わってしまう。大枠の目的が決まっていない状態では、判断材料として正しいのかどうか、値の意味がわからないし、往々にして数字は高ければいいかのような誤解にもつながります。

山本:何のデータ、どういうデータかという位置づけすら曖昧だと、「見る」ことができませんよね。「データを見る」の意味が違ってしまいます。AI活用のご相談も増えていますが、勝手に機械が何かいいものをだしてくれるという誤解がまだまだ多い(笑)。機械が設定できない部分、仮説こそが大切ですよね。人間がしっかり目的と仮説をもたないと、AIだって適切な特徴データを見つけてくれません。

社内に味方がいなければ、社外のひとと一緒に動かしていくことを考えてはどうでしょう。

組織の力関係のなかで、デジタルもデータ活用も、社員は言い出しづらいことが少なくありません。我々のような立場なら、まずここから小さくスタートしましょう、定期モニタリングを始めましょうと助言してさしあげられます。続けるなかで新しい情報を一緒に見つけたり、旬な個別テーマにあわせた発生ベースで議論を早くしたりと育てていければいいのではないでしょうか。

― ありがとうございました。

事業内容

株式会社ヴァリューズ

2009年創業。消費者の行動履歴に基づくマーケティング調査やデータ活用・マネジメント等のコンサルティング、インターネット行動ログ分析サービス「eMark+」、行動ログをふまえたインターネットリサーチなどを展開。BtoC分野を中心とした250社以上の上場企業のビジネスパートナーを務める。

ビッグデータ×マーケティングで事業の成長を支援|株式会社ヴァリューズ

https://www.valuesccg.com

国内25万人以上の消費者行動から 確実に成果につながるデータ マーケティングを導き出すSaaS、eMark+(イーマークプラス)を提供する企業 VALUES。無料から有料アップグレードで ネット広告の市場+効果、キーワード調査、集客施策などの分析も可能。今すぐOODAを実現させましょう。

ヴェネクト株式会社

WPP傘下のデジタルエージェンシー・VMLの東京支社VML TOKYOとして2013年に創業。2019年4月の独立を機に現VENECT(INVENT+CONNECT)に社名変更。市場調査、顧客分析、戦略立案、施策実行まで、一連のデジタルマーケティングを支援。「eMark+」のユーザーでもある。

VENECT | デジタルエージェンシー

https://www.venect.jp

私たちは生活者のカスタマージャーニーに基づき、テクノロジーを取り入れて成果に繋げるデジタルエージェンシーです。

この記事のライター

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。

関連する投稿


日産が行う、カスタマー理解のための“ Non  Asking ”データ活用術 ~ 自動車メーカーのデジタルマーケティング事例

日産が行う、カスタマー理解のための“ Non Asking ”データ活用術 ~ 自動車メーカーのデジタルマーケティング事例

「アンケートやインタビュー中心のAskingデータだけでなくWeb上の行動から得られるNon Askingデータを組み合わせて分析し、カスタマー理解を深めたい」。そう語る笹岡さんはDockpit(ドックピット)を愛用する一人。ユーザー行動の理解を深め、課題解決に至ったエピソードを聞きました。


ポストクッキー時代、デジタルマーケティングはどうする?CARTA COMMUNICATIONSが目指すデータ活用の民主化とは

ポストクッキー時代、デジタルマーケティングはどうする?CARTA COMMUNICATIONSが目指すデータ活用の民主化とは

個人情報保護の観点から規制と制限が進むサードパーティクッキー問題。ポストクッキー時代のデジタルマーケティングにおいて、データ統合支援・活用サービスを提供するのが株式会社CARTA COMMUNICATIONSが提供する独自のデータマーケティングサービス『Data Dig』です。企業のデジタルコミュニケーション戦略を提案する上で視点を持たなければいけない市場環境やターゲット理解をするために、消費者データ分析ツール「Dockpit」と「story bank」を用いて同社が取り組んでいることを、Data Dig部の三代氏に伺いました。


書籍『データ分析失敗事例集』の著者インタビュー!分析で陥りがちな失敗とは

書籍『データ分析失敗事例集』の著者インタビュー!分析で陥りがちな失敗とは

他者にデータ分析を依頼する際、または自身が分析する際、失敗が起こらないよう、どんなことに気を付けているでしょうか。 2023年8月3日に出版された『データ分析失敗事例集』(共立出版)では、25の失敗事例が掲載されています。株式会社ヴァリューズからは、輿石 拓真、川島 彩貴、竹久 真也の3名が著者として参画。敢えて成功ではなく失敗を取り上げた出版の背景や、失敗しないためのポイントを伺いました。 データ分析を担当する方だけでなく、データ分析を依頼する方、依頼の可能性のあるマーケターの方も必見です。


新たなエンタメ体験を創出!サイバーエージェントが仕掛けるエンタメテック事業とは

新たなエンタメ体験を創出!サイバーエージェントが仕掛けるエンタメテック事業とは

コロナ禍でDX化が進み、ネット上の体験価値の重要性がますます高まっています。エンターテインメントの領域も例外ではありません。 そのような中、エンタメテック(エンタメ×テクノロジー)事業を強化分野として力を注いでいるのがサイバーエージェントです。今回は、エンタメテック事業を統括する専務執行役員の山内氏にインタビュー。同社が仕掛けるエンタメテック事業の全容や具体的な取り組み、今後の展望などを伺いました。


店舗DXにWeb行動ログを生かす!中古時計の買取事業を立ち上げたキタムラのデータ戦略

店舗DXにWeb行動ログを生かす!中古時計の買取事業を立ち上げたキタムラのデータ戦略

店舗DXをリアル店舗だけで進めるには限界がある。「カメラのキタムラ」や「スタジオマリオ」を全国展開している株式会社キタムラは、新規事業においてWeb行動ログを活用し、事業運営につなげています。どうDXを進めているのか、同社の上田氏と、データ分析パートナーである株式会社ヴァリューズの和田が対談しました。


最新の投稿


Since ChatGPT first launched, how have its users changed? Investigating the actual situation regarding ChatGPT users

Since ChatGPT first launched, how have its users changed? Investigating the actual situation regarding ChatGPT users

ChatGPT emerged as the pioneer of generative AI in November 2022, and the number of users continued to grow. We conducted research on the number of users and their personas for March 2023 (4 months after its release). Now (after approx. 9 months), we look to see if there have been any changes in ChatGPT's user base.


サイバーエージェント、Webサイト上で3DCGを活用し顧客に新しい体験を提供するバーチャルストアサービスを開始

サイバーエージェント、Webサイト上で3DCGを活用し顧客に新しい体験を提供するバーチャルストアサービスを開始

株式会社サイバーエージェントは、AI事業本部において3DCGを活用し、企業の販促活動を支援するバーチャルストアの開設・運営サービスを開始したことを発表しました。


BYDのコンパクトEV「ドルフィン」。初速の反応や関心層は?

BYDのコンパクトEV「ドルフィン」。初速の反応や関心層は?

EV業界でトップを走るテスラに続いて日本に参入した、EVメーカーのBYD(比亜迪)。2023年9月20日に日本市場向けEVの第二弾としてコンパクトEVの「ドルフィン」を発売しました。車体価格は363万円と、一般的に高額なEVの中では手頃な価格帯でありながら高い機能性が注目されています。 今回は、BYD「ドルフィン」Webページの訪問者の調査を行い、初速の反応やどのような人が関心を持っているか調査していきます。


年末年始、これさえ見とけば大丈夫!2023年のトレンド振り返り

年末年始、これさえ見とけば大丈夫!2023年のトレンド振り返り

マナミナでは、国内最大規模の消費者オンライン行動データを活用して、世の中のトレンドを調査しています。2023年も様々なトレンドが生まれ、個別に記事として取り上げてきました。今回はそんな調査記事の総集編として、2023年の重要トレンドを振り返ります。


トレンドワードに「麻布台ヒルズ」「アニヤハインドマーチ」など...「週間」検索キーワードランキング(2023/11/19~2023/11/25)

トレンドワードに「麻布台ヒルズ」「アニヤハインドマーチ」など...「週間」検索キーワードランキング(2023/11/19~2023/11/25)

行動ログをもとに週次の検索急上昇ワードランキングを作成し、トレンドになっているワードについて取り上げます。2023年11月19日~11月25日は、11月24日に開業した日本一の超高層ビル「麻布台ヒルズ」や、11月23日から発売開始のユニクロとのコラボ商品で話題の英国ブランド「アニヤハインドマーチ」などが検索急増していました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ