顧客のインサイトをもとにマーケティング戦略を設計するメソッドとは?
株式会社ヴァリューズ データプロモーション局ゼネラルマネージャー・山本渚氏(以下、山本)
マーケティングリサーチ会社での調査設計などを経て、2011年からヴァリューズに参画。現在はeMark+を広告代理店やコンサルティング会社向けにASPで提案したり、クライアント企業のデータ活用やデータマネジメントのコンサルティングを行う。
VENECT株式会社 代表取締役CEO 大脇香菜氏(以下、大脇)
CRM支援会社会社の事業戦略立案やクライアント企業の海外進出プロモーション支援などを経験。個別案件にも加わり、データを基軸にしたマーケティング戦略と実践をサポート。クライアントの社内データを分析したり、データ保有術の最適化を支援することもある。
■VENECTメソッド
― マーケティング戦略設計メソッドについて教えてください。
大脇:VENECTでは、以下5つのマーケティング戦略設計メソッドを提示しています。
- 目標を明確に
- マーケットを捉える(ソースオブビジネス分析)
- ロイヤル顧客から学ぶ(カスタマージャーニー設計)
- 態度変容を促す知覚刺激はなにか(パーセプションフロー設計)
- 活動を通じて戦略を振り返る(PDCA)
山本:メソッドが整理されていると、属人性が減らせますね。そこが強みなんだと想います。どんな流れで実装されるのでしょうか?
大脇:目的を整理してマーケットをしっかり捉える、まずはここが起点です。SOBは主にデータからマーケットの定量分析を行ったうえ、定性情報も加えながら、ブランドのモデルとなる顧客像を描き出し、カスタマージャーニーとして整理します。
モデル顧客像のカスタマージャーニーをもとに、態度変容を促す知覚刺激、すなわちパーセプションフローを設計していきます。
■VALUESメソッド
― VALUESではいかがですか。
山本:カスタマージャーニーはクライアントと一緒に設計しています。行動ログデータをもとに、自社サイトへアクセスしたものの競合で購入したユーザー、自社と競合を比較しながら購買へ至ったユーザーがどんな情報に接触してどう判断したのか、その足取りを読み解きながら、意思決定要因やボトルネックを探る作業です。プロジェクトメンバーがそうした課題をクリアにしていくために、実際の行動ログデータを活用します。
アウトプットは定型化を進めていて、データ整形やレポート作成など、データの可視化まではスピーディですね。データのどこをピックアップするかという議論に、できるだけ時間をかけています。
大脇:どのフェイズでクライアントと議論されますか?
山本:まずは粗くても大きくカスタマージャーニーを描いてみて、極力早い段階でクライアントと共有ワークショップを実施しています。業界固有の背景も影響が大きいので、作り込んでしまう手前で、クライアントと相談しながらのチューニングが欠かせません。
ワークショップには、できるだけ多くの関係者に参加してもらうようクライアントにお願いしています。最終的にまとめたサマリーだけじゃなくて、データの読み込みを通じたユーザー行動観察へ一緒に参加してもらうプロセスに意義があるんです。粗い段階でいいから、まずはお酒でも呑みながら多くの関係者に共通認識をもってもらうほうが、クライアントの社内でも合意を形成しやすい。カスタマージャーニーにおける意思決定フロー、それを示すデータはプロジェクトの共通認識として絶対に共有すべきですね。
大脇:クライアントと一緒にデータを読み解く時間は、当社も早めに設けますね。
山本:粗くても早いのが大事ですね。ユーザー行動をどう見るか、気づきを得ながらメンバーの観点を揃える面で、ワークショップは不可欠なプロセスです。我々もリサーチや設計のプロではありますが、カスタマージャーニー設計にはクライアントの参加が欠かせません。
設計にあたっては、既存のメソッドやフレームワークも活用しますが、「最初のトリガーは何か」など、最終的には消費者の行動ログデータからの気づきのほうが大きいですね。
消費者行動という視点から、データに助けられながら、実行可能な施策としてのカスタマージャーニーとして組み立てていくイメージです。
まずすぐに始められることとは?
■目的をもって小さく始める
― マーケティングにおけるデータ活用、まず始められることを教えてください。
山本:繰り返しになりますが、データがあるから何かができるという順番ではありません。成し遂げたい目的を定めて、必要最小限のデータでスモールスタートをおすすめします。
データは目的に合わせて選ばないと活用できなかったり活用するためのコストや時間が伴うので、既存データの整理より外部データが使いやすいかもしれない。
はやく気づきを得ることを、小さく始める。そしてモニタリングすべき枠組みを徐々に構築していくと、サイクルが回りやすいですね。
大脇:まず目的、そして仮説をもつことから始めていただきたいです。データを見る順番が違ったら、データから読み取る結果も全く変わってしまう。大枠の目的が決まっていない状態では、判断材料として正しいのかどうか、値の意味がわからないし、往々にして数字は高ければいいかのような誤解にもつながります。
山本:何のデータ、どういうデータかという位置づけすら曖昧だと、「見る」ことができませんよね。「データを見る」の意味が違ってしまいます。AI活用のご相談も増えていますが、勝手に機械が何かいいものをだしてくれるという誤解がまだまだ多い(笑)。機械が設定できない部分、仮説こそが大切ですよね。人間がしっかり目的と仮説をもたないと、AIだって適切な特徴データを見つけてくれません。
社内に味方がいなければ、社外のひとと一緒に動かしていくことを考えてはどうでしょう。
組織の力関係のなかで、デジタルもデータ活用も、社員は言い出しづらいことが少なくありません。我々のような立場なら、まずここから小さくスタートしましょう、定期モニタリングを始めましょうと助言してさしあげられます。続けるなかで新しい情報を一緒に見つけたり、旬な個別テーマにあわせた発生ベースで議論を早くしたりと育てていければいいのではないでしょうか。
― ありがとうございました。
■事業内容
株式会社ヴァリューズ
2009年創業。消費者の行動履歴に基づくマーケティング調査やデータ活用・マネジメント等のコンサルティング、インターネット行動ログ分析サービス「eMark+」、行動ログをふまえたインターネットリサーチなどを展開。BtoC分野を中心とした250社以上の上場企業のビジネスパートナーを務める。
ビッグデータ×マーケティングで事業の成長を支援|株式会社ヴァリューズ
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ヴェネクト株式会社
WPP傘下のデジタルエージェンシー・VMLの東京支社VML TOKYOとして2013年に創業。2019年4月の独立を機に現VENECT(INVENT+CONNECT)に社名変更。市場調査、顧客分析、戦略立案、施策実行まで、一連のデジタルマーケティングを支援。「eMark+」のユーザーでもある。
法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。