利用ユーザーが急増した教育アプリランキング
まずはサイト・アプリ市場調査ツールのeMark+を用いて、人気の教育アプリについて分析します。
2020年3月のユーザー数ランキング(カテゴリ:教育)から上位30アプリのうち、利用ユーザー数前月比が高いアプリは以下のとおりでした(グラフ黄色網掛け)。
◆前月比UP率TOP5
1位:N予備校(株式会社ドワンゴ)/846.8%
2位:PictureThis:撮ったら、判る-1秒植物図鑑(Glority LLC)/193.0%
3位:PEAK - 脳トレ(Peaklabs)/150.0%
4位:シンクシンク(WonderLab Inc.)/122.2%
5位:TED(TED Conferences LLC)/47.0%
ユーザー数上位30位までのアプリには特に「英語」「語学」が多く、常時人気コンテンツではあるものの、この情勢で急激にユーザー数を増やしたのは「N予備校」を代表とするトータル学習支援アプリや、「PEAK」「シンクシンク」などの子どもから大人までが楽しめる、楽しみながら学べる系のアプリでした。
教育アプリ利用ユーザーTOP30
2020年3月アプリ利用ユーザー数(カテゴリ:教育)
※想定ユーザーは筆者が独自に設定したもので、
各提供元が設定する「コンテンツのレーティング」とは異なります。
ユーザー数急上昇アプリの人気のヒミツを探る
政府より学校の一斉休校が要請されたのは2020年2月27日。これを受けて全国の多くの学校で3月2日から3週間程度(発表当初予定)の臨時休校が発表されました。
このことから、上記のユーザー数前月比UP率上位5アプリのユーザー数の変化を分析し、休校による影響を受けたアプリを考察します。
ユーザー数前月比UP率上位5アプリ ユーザー数推移
期間:2019年10月〜2020年3月
上のグラフによると、休校などによる社会情勢により影響を受けたと考えられるアプリは「N予備校」「シンクシンク」で、「TED」「PEAK」は2020年3月以前のユーザー数から少しずつ回復している状況であり、休校影響かどうかはこのデータだけでは読み取ることができません。
「1秒植物図鑑」についてはユーザー属性が異なるため休校影響は受けていないと考えられます(詳細は後述)。
この観点から考察すると、TOP30ランキングからは「みまもるトークアプリ」「NHKゴガク」も休校影響を受けたと考えられるユーザー推移が見られました。
いち早く無償サービス提供を発表した「N予備校」
N予備校は株式会社ドワンゴが提供するeラーニングサービスです。主にN高等学校(学校法人角川ドワンゴ学園運営)の生徒向けの学習ツールですが、一部のコースをのぞき一般向けにも有償にてサービス提供されていました。
同社は全学校の休校要請を受け、3月1日からN予備校アプリを全ての利用者に無償で提供し、かつ、全ての教材とオンライン授業を無料開放すると発表しました。
このことはニュースでも取り上げられたため、ユーザーが一気に増加したのだと考えられます。
親世代に支持された知育アプリ「シンクシンク」
シンクシンク - パズルや図形で思考力が育つ!算数や勉強が好きになる知育アプリ
次に、休校影響を受けていると考えられる「シンクシンク」についてデータを確認します。
下図の推移グラフでもわかるとおり、3月に増えたユーザーは女性、30代と40代、子どもがいると回答した、まさに“母親”が大多数と言えるでしょう。
休校で自宅にいる子どもたちに、無料で利用できる学習ツールを導入したユーザーが多いことがわかりました。
「シンクシンク - パズルや図形で思考力が育つ!算数や勉強が好きになる知育アプリ」ユーザー属性の変化(性別)
期間:期間:2019年10月〜2020年3月
「シンクシンク - パズルや図形で思考力が育つ!算数や勉強が好きになる知育アプリ」ユーザー属性の変化(年代)
期間:期間:2019年10月〜2020年3月
「シンクシンク - パズルや図形で思考力が育つ!算数や勉強が好きになる知育アプリ」ユーザー属性の変化(子どもの有無)
期間:期間:2019年10月〜2020年3月
ユーザー急増「1秒植物図鑑」は春の散歩のため?
PictureThis:撮ったら、判る-1秒植物図鑑
2020年3月でユーザー数が急増した「PictureThis:撮ったら、判る-1秒植物図鑑」ですが、ユーザー属性によると増加したのは40〜60代以上、特に60代以上だということがわかりました。
これについては、休校影響は考えにくく、春先であること、もしくは何らかのミドル、シニア向けメディアで取り上げられた可能性が考えられます。ユーザー評価コメント欄にも新型コロナウイルスや休校に関わるコメントは見られませんでした。
「PictureThis:撮ったら、判る-1秒植物図鑑」ユーザー属性の変化(年代)
期間:期間:2019年10月〜2020年3月
まとめ
今回は2020年3月の教育アプリの利用状況についてまとめました。政府による全学校の休校要請の影響を大きく受けたのは「N予備校」で、提供元である株式会社ドワンゴのサービス無償提供の反響が相当数あったと考えられます。同社は3月末より「小学校復習講座」の提供も開始しており、対象者の幅を広げることで、さらなるユーザー獲得が期待できます。
いまだ先が見えない状況下で、教育アプリの注目度は増しています。また、学校においてはオンラインによる教育インフラを整えることは喫緊の課題であり、EdTech (エドテック)という言葉に代表されるように、今後ますます業界全体のイノベーションが加速することが予測されます。
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フリーライター。大手キャリア系企業で編集の仕事に出会い、その後、3つのメディアの立ち上げなど行い、2014年にフリーランスに。医療系、就活系、教育系、結婚系のサイトで執筆中。