ECサイトへのリピート率を改善するために検討すべき施策とは

ECサイトへのリピート率を改善するために検討すべき施策とは

ECサイトの売り上げを増加させるためには、優良顧客を増やすことが重要であり、そのためにリピート率を改善することが必要です。本記事では、はじめにリピート率改善に向けてCRM戦略が重要であることを紹介し、次に家電ECサイトを例に、リピート率改善に向けたCRM戦略に基づく具体的な施策検討の流れをご紹介します。


【1】リピート率改善のヒントはCRM戦略の中にある?

ECサイトでは、新規顧客の獲得だけでなく、一度サイトを利用してくれたユーザー(=既存顧客)にリピート利用して貰い、いかにファンを増やしていくか、一人当たりの生産性(LTV)を増加させるかが重要視されています。

ファンを増やしていくためには、顧客ごとに異なる施策を実施する必要があり、このような考え方はCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)と呼ばれています。

CRMとは、長期にわたって顧客がもたらしてくれる価値を最大化することを目的に、顧客ごとに必要とされるサービスや情報、キャンペーンなどを提供することにより、優良な顧客関係を構築、維持しようとする経営手法です。

商品やサービスが飽和状態にあるマーケットでは、新規顧客を獲得することは非常にコストがかかりますが、既存顧客との関係を維持するためのコストは比較的小さく、一般的に新規顧客獲得コストと既存顧客維持コストの5倍と言われています。

また、売り上げのほとんどは一部のロイヤル顧客によってもたらされることが多く、このように既存顧客との優良な関係をCRM戦略に基づいて構築することが必要です。

【2】CRM戦略を設計する前に・・・

CRM戦略といっても、何から始めるのか分からない方も多いのではないでしょうか。

答えは、ECサイトに訪れているユーザーデータを収集し、分析することから始めます。CRMでは、顧客ごとに異なるアプローチをとるため、まずは顧客を分類する必要があります。

顧客分類では、実際のサイト行動に基づく分類が有効です。
今回はリピート率改善を目的とする分析なので、購入回数をキーとなる指標として、顧客を4パターンに分類しています。

(今回は一定期間内のリピート率に着目したため、RFM分析で考慮する購入額や前回購入時期は無視しました。)

【3】家電ECサイトにおけるCRM戦略の具体例

以下では、家電ECサイトを具体例として、CRM戦略に基づいたリピート率改善のための施策について考えていきます。

下のグラフは家電ECサイトのリピート率を表します。データは、一般ネットユーザーの行動ログとデモグラフィック(属性)情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を用いて分析したものです。

リピート率の計算は、2016年1月から3月までの3カ月間に各サイトで商品を購入したユーザーのうち、複数回購入したユーザーの割合として算出しています。

A社のリピート率が高く、B社、C社が低くなっています。リピート利用するユーザーはどのような特徴を持っているのでしょうか。またA社と他のサイトとの違いはどこにあるでしょうか。今回はB社から見たリピート率改善のための施策について考えていきます。

3-1.顧客分類ごとに特徴を抽出する

顧客を分類した後は、それぞれの分類ごとにその特徴を調べていきます。

初めに一般的によく考慮される性別および年代別で、購入無しユーザー、1回購入ユーザー、リピーターを分析しました。

家電EC3社接触ユーザーの男女構成比

家電EC3社接触ユーザーの年代構成比

性別では、男性が60%以上で女性よりも多いことが分かります。またリピーターではさらに男性比率がさらに高くなることから、優良顧客には男性が多いことが分かります。

年代別では、全体的に40代と50代が多いことが分かります。一方で性別の場合とは異なり、購入無しや1回購入とリピーターとの間で明確な差は見られませんでした。

これらから、リピーターとなるターゲットユーザーとして、40代や50代の男性が浮かび上がってきます。1回購入ユーザーの40代や50代の男性に対して、特にリピート購入を促すような施策の実施を第一に考えるとよいでしょう。

しかしながら、上記のようなターゲティングだけでは、どのような施策が実際に効果的かまでは分かりません。そこで、ユーザーがサイトに訪れる際にどのような経路で流入しているかを分析することが有効です。

3-2.流入元の分析により、効果的な施策を発見する?

 以下に、A社とB社の流入元の分析結果を示します。

VALUES eMark+」では各サイトへの流入元を、一般広告(バナー広告やアドネットワーク経由)、外部サイト(比較サイト等からのリンク経由)、リスティング広告、自然検索、メール経由(WEBメール経由)、サイト内(セッション切れによるサイト内遷移)、お気に入り/履歴、ノーリファラー(リファラー不明の流入)に分類してそれぞれの経路からの流入量を分析することができます。

流入元の比較

A社、B社ともに、リピーターほどサイト内やお気に入り/履歴からの流入が増加することが分かります。

このことから、リピーターはサイト内での比較検討行動にかける時間が長く、また各サイトをお気に入りに登録して、直接訪問しているといったユーザー像を描くことができます。

3-3.他社との比較から改善点を把握する?

これまでの分析では購入無しユーザーや1回購入ユーザーをリピーターに成長させるために、リピーターがどのような特徴を持っているかを分析してきましたが、自社の集客構造を他社と比較することで、自社のポジショニングや弱点を把握し、具体的な施策を考える上で有用な情報を得ることができます。

下の表は、A社とB社のそれぞれの顧客分類ごとの顧客の職業の構成比を表します。

職業別の比較

黄色で示した会社経営(経営者・役員)と自営業(商工・サービス)は購入無し、1回購入と比較してリピーターの比率が両社とも高くなっており、これらの職業のユーザーはリピーターとなる確率が高いと考えられます。一方で、緑色で示した専業主婦(主夫)はA社ではリピーターの比率が購入無し、1回購入と同等なのに対し、B社ではリピーターの比率が低くなっており、両社で傾向が異なることが分かります。ここから、A社のリピート率がB社より高い理由として、リピーターにはなりにくい主婦層を上手く取り込むことでリピート率を高めているという仮説を立てることができます。

そこで、主婦層の動向を詳しく分析するため、専業主婦(主夫)の流入元分析を実施し、サイト利用者全体の傾向と比較しました。

専業主婦(主夫)に絞った流入元の構成比

全体の構成比と比較して、専業主婦(主夫)は黄色で示したリスティング広告や自然検索の比率が高いことが分かります。

そこで、次に両社の検索流入の違いを調べるため検索キーワードを、社名を含むブランドワードと社名を含まない商品名などの一般ワードに分類し、どのキーワードによる流入が多いかを比較しました。

流入キーワードの種類別構成比

検索流入の構造は両社で大きく異なることが分かります。最も差が出ているのは、リスティング・一般ワードであり、B社では一般ワードからの流入が弱いことが分かります。

このように、両社の検索流入ワードを比較して、検索数の多い一般ワードを把握したり、具体的に流入をとりこぼしているキーワードがないか、などを分析すれば、自社のSEM(サーチエンジンマーケティング)に活かすことができます。

3-4.顧客ステータスに合わせた施策立案?

最後に、以上の分析を元にして顧客ごとに施策を構築していきます。今回の分析結果からは、例えば以下のような施策を具体的に考えることができます。

■男性、会社経営者・自営業者をターゲットとしたお気に入り登録誘導
■主婦リピーターを増やすための、主婦層をターゲットとした一般ワードの検索流入対策

また、今回の分析に限らず考えられる具体的施策としては、流入元にメール流入が多かった場合には、リピーターを増やすためのメールマガジンによるリードナーチャリングや、ユーザーの滞在時間が他社サイトと比較して短い場合には、興味関心度を高めるためのコンテンツ改善などを実施することが考えられます。

【4】まとめ

リピート率を改善するためには、CRM戦略に基づいて施策を考えていくことが重要です。

具体的には、

①サイト行動履歴に基づき顧客を分類する
②顧客分類ごとに、属性、サイトへの流入経路、閲覧ページなどの特徴を抽出する
③顧客ステータスに合わせた施策を立案し実行する

という流れで進めていけばよいでしょう。

上記の内容を参考にCRM戦略を活用し、ECサイトのリピート率を改善するための施策を実施していきましょう。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

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