ウィズコロナ時代の新たなビジネス機会を発見する「Listening型リサーチ」とは|セミナーレポート

ウィズコロナ時代の新たなビジネス機会を発見する「Listening型リサーチ」とは|セミナーレポート

私たちの消費行動を大きく動かした新型コロナ。観光業や外食産業を中心に多くの事業者が経営不振に苦しむ一方で、コロナ禍需要を掴んだ新たなビジネスが頭角を現しています。 このような中、企業ではウィズコロナ時代に向けた新たなビジネス開拓が活発化。しかし、コロナ禍で変わり果てた社会において、従来のリサーチ手法では潜在ニーズやビジネス機会を見つけ出すことが困難だという声も聞かれます。 8/28,9/9にヴァリューズが開催したオンラインセミナーでは、新しいビジネス機会を発見するための手法として、「Web行動ログを活用したListening型のリサーチ手法」を紹介。有効なアプローチやプロセスを紐解きました。本稿はそのレポートをお届けします。


従来のAsking型と新しいビジネス機会の発見に役立つListening型リサーチ

本題に入る前に、榊が最近気になるサービスとして挙げたのは、居酒屋チェーン甘太郎が始めた「リモート飲み専用席」サービス。「自宅だと家族の目が気になる」「雰囲気を味わいたい」などのニーズを察知し、自社のサービスとして展開。非常に行動が早いと感じたと紹介しました。

本セミナーでは、このようなウィズコロナ時代に躍り出る新たなビジネス機会を発見するための有効な手法を、ヴァリューズが持つログデータを活用しながら解説します。

まずはじめに、従来のリサーチ手法である「Asking型」と今回取り上げる「Listening型」の違いを説明しました。

これまで定番とされてきたAsking型は、選択回答のアンケートやインタビューによるもので、利用実態や顕在的ニーズの数値化、効果検証などに適し「聞きたい内容をピンポイントでヒアリングできること」を強みとしています。しかし、本セミナーの目的は「新しいビジネス機会の発見」。ここには、顕在化していない生活者の不満や悩みの抽出が求められ、企業の多くが「Asking型では対応しきれない」という課題を感じているといいます。

一方、Listening型は「無意識の行動把握」を強みとし、自由回答のアンケート調査やエスノグラフィ、Web行動ログデータを活用した調査がこれに該当します。「Listening型リサーチは、傾聴することで潜在的ニーズを発見することができ、新しいビジネスの創出に役立つリサーチ手法」と榊はコメントしました。

改めてListening型リサーチがどのような手法かを整理すると、

  • 日記調査:対象者に日々あったことを文章や写真で回答してもらう
  • エスノグラフィ調査:観察者が対象者の現場に赴き、行動観察を行う
  • ソーシャルリスニング:TwitterやInstagramの投稿を収集する
  • Web行動ログ:対象者のWeb閲覧履歴を収集する

主にこれら4つの手法があり、最初の2つは「集める」データ、後の2つは「集まる」データに分類できます。

上記4つの中から、Web行動ログを用いたListening型リサーチの例を紹介しました。
こちらは、8月初旬に吉村洋文大阪都知事が「うがい薬」について言及した際のログデータです。(調査:ヴァリューズ、集計定義:「うがい薬」をページタイトルに含むページのアクセス数推移)

グラフの推移を見ると、8/4(記者会見当日)と8/5(記者会見の弁明があった翌日)に反響があったことが分かります。では、ユーザーは「うがい薬」関連のページを閲覧する際に、どのようなキーワードで検索したのでしょうか。それをまとめたものが図の下の丸く囲まれた部分です。榊は、検索ワードを赤、青、黄、緑、の4つにグループ分けし、それぞれ以下のように意味づけました。

・赤(メルカリ、Amazonなど)=ネットで購入をしたい
・青(イソジン 成分、副作用など)=使用時の効果や副作用が気になる
・黄(医薬部外品 転売、イソジン 転売など)=転売したい
・緑(イソジン 株価、会社など)=株価が気になる

これによると、赤と青は購入先や効果などの情報を求めており、「自分で購入して活用したい」という目的が想定されます。一方、黄と緑は「投資や転売」という文脈でうがい薬に着目していることが分かります。

「アンケート調査でもある程度仮説があればヒアリングできますが、Listening型リサーチでログデータを活用すると、そのキーワードの周辺(今回であればうがい薬)で人々がどのような興味関心を持っているのかを発見ができる」と榊はコメント。ログデータを読み解くことで、想定していなかった新しい文脈が浮き上がることが利点だと説明しました。

新たなビジネス機会を発見するための4ステップ

続いて、具体的プロセスを紹介します。
新しいビジネス機会の発見までのステップを、以下の4つにまとめました。

  1. 課題認識:自社での課題を明確化
  2. 切り口の発見:1を出発点に、世の中の動向を整理し、切り口を発見
  3. 切り口を広げる:2の背景理解を深め、潜在的ニーズを探索
  4. 情報の構造化:データを俯瞰し、新しいビジネス機会を言語化

ここからは、特にListening型リサーチが役立つステップ2、3。そして終着点となるステップ4のプロセスについて深堀していきます。

切り口の発見

まずは、ステップ1で明らかにした自社の課題を出発点に、世の中の動向から切り口を探すステップ2を解説します。

こちらは、ヴァリューズのモニターが2020年7月に検索したキーワードランキングです。前月比が伸びているキーワードの上位20を示しています。(※ヴァリューズが選定した美容健康系サイトへの流入からデータを抽出)

これらのキーワードを黄、赤、青、緑、紫の5つにグループ分けすると、それぞれ以下のような興味関心の「兆し」が見えてきました。

・黄「糖質制限 ダイエット」「お腹 脂肪」など=痩せたい
・赤「紫外線アレルギー」「脱水症状」など=日焼け・汗対策
・青「眠い 原因」など=睡眠不足・眠気
・緑「肩こり」など=体の痛みの増加
・紫「うつ 症状」など=精神的な悩み

このように、検索キーワードから生活者の興味関心や悩みを察知することができました。
続くステップ3は、ステップ2で見えてきた「兆し」を広げ、ニーズを探索する作業です。

切り口を広げる

先ほどの5つの兆しの中から、「睡眠不足・眠気」のグループに絞り、ステップ3に進んでいきます。

グループ2は、ステップ2で「睡眠不足で悩みがあるのではないか」という兆しが見えてきました。ステップ3では、それらを検索をしたユーザーを抽出し、その人たちが他にどのような検索をしていたのかを時系列で辿り、n=1の定性調査で探索していきます。

また、この段階ではよく、「n=1の定性調査の対象はどういう人を選べばいいのか?」「対象者が平均的なユーザーなのかどうかが心配だ」という声があがるといいます。

これについて榊は、「仮説検証型のアプローチ(従来のAsking手法)では平均的なユーザーを見ていくことが重要です。しかし、新たなビジネス機会の発見のためには、ある種枠外の視点を見つけたい意図が強い。そのため、平均的なユーザーよりも、一定特殊な動きや、ある関連において如実に行動をしている"エクストリームユーザー"を選び、その人たちの行動から示唆を得ることが有効」と解きました。

例えば、特定ワードの検索回数が多い人や特定商品の購入回数が多い人などに焦点を当て、その人がなぜその行動をとっているのかを見ていくことで、枠外の視点を得られるといいます。

情報の構造化

続いて、ステップ4情報の構造化のプロセスです。
今回は、ヴァリューズでよく利用するグルーピング手法を使い、ステップ3で確認された睡眠不足の背景とそこから考えられる潜在ニーズを、以下4つのクラスターにまとめました。

同じ睡眠に関する検索をしたユーザーでもそれぞれ背景が異なり、潜在ニーズも各々であることが分かります。

最後に、グルーピングしたものから新しいビジネス機会を見つけていきます。今回は参考手法として、ユーザーの悩みを描きながらビジネスチャンスを探していくプロセスマップでの実践を紹介します。

こちらは、眼精疲労による寝不足に悩んでいたユーザー事例に焦点を当てたプロセスマップです。

例えば、眼精疲労によって寝不足になっていた人に焦点を当てると、
・新型コロナの影響で在宅勤務になった。
・PCの利用時間が増加し、目が疲れるようになった。
・ブルーベリーを食べてみた。
の3つが実際の行動です。
そして、これらの要素から榊は「目の疲れを取りたい」や「ブルーベリーではすぐに効果が現れない」「毎日食べるのは面倒」などの不満・悩みがあると解釈しました。

さらに、不満を解消するためのアプローチとして、「ブルーライトカット機能を搭載した画面フィルターのような、PCの光から目を守る何か。もしくは即効性や手軽さのニーズに応えつつ、USP(Unique Selling Proposition)を活かした新しいモノ・解消法が提供できれば、ビジネス機会になるのではないか?」と考えを進めました。

ただし、これらの生活者の不満や解消法はあくまでこれは榊が読み取った解釈であり、これが全てではありません。「自分や社内のメンバーならどう見ていくのか?というのが、定性調査データ活用の重要なポイントになる」と榊は解説しました。

まとめ

今回のセミナーから、
・新しいビジネス機会を発見するためには、生活者の声に耳を傾ける「Listening型リサーチ」が有効
・具体的プロセスは「課題認識」「切り口発見」「切り口の探索」「情報の構造化」の4つのステップで、これらの取り組みを進めることで、全体のプロセスになっていく

という2つが紹介されました。

また、従来型のAsking型リサーチであれば、設計した内容で結果を求めていくためハッキリとした結果が出ますが、n=1の定性調査やListening型リサーチ型の場合は、明確な正解データが出るものではありません。「定性的なデータを見ながらどのような解釈をしていくのか、どういう気づきを得られるかは人それぞれ異なる。一人ひとりの視点で見たときに、チームで議論を重ねて収束していくことが有効なポイント」と解説し、榊はセミナーを締めくくりました。

新型コロナで社会経済は大きく変化し、業界によて爪痕の大小はありつつも、新しいビジネスを模索する動きは益々活発化するでしょう。ウィズコロナ時代のビジネス創出に、今回セミナーで解説されたアプローチおよびプロセスを役立てていただければ幸いです。

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