行動プロセスを分解!フレームワーク「AARRR」の活用法

行動プロセスを分解!フレームワーク「AARRR」の活用法

Dave McClure(デイブ・マクルーア)氏の提唱した、経営のデータ分析を行う際に重要なフレームワーク「AARRR」。「アーモデル」と呼ばれます。


フレームワーク「AARRR」では、CVや新規ユーザーの獲得だけを指標にせず、ユーザーの行動を5段階に分類し、各地点でのKPIを計測してユーザー行動の全体像をみて効果的な施策を立案・実行します。

今回は、Webマーケティングで注目を集めているフレームワーク「AARRR」の活用法をご紹介します。

グロースハックの考え方

グロースハック(Growth Hack)とは、プロダクトの本質的な価値をユーザーに理解させるだけではなく、その可能性を把握して成長させていくアクションと、そのための技術やノウハウを指します。

グロースハックでは、分析・仮説・施策実行・検証の過程を繰り返して、サービスを成長させます。
特にスタートアップ企業で注目を集めており、企業の成長に欠かせない取り組みとして活用されています。

グロースハックでは、スピードが重要なポイントとなります。
スピーディーにPDCAを回すことで、トライアンドエラーを繰り返すことができます。
そのため、計画を立てる際は、短い期間で区切って効果測定を試みることも重要です。

WEBマーケティングと異なる点は、広告費を多く割かずに行うことが前提であり、従来の成功事例となっている施策に倣うわけではないので、成果が未知数という点です。


・グロースハッカーとは
グロースハックを専門で行う人を「グロースハッカー」と呼び、特にIT関連企業の間では、たとえ広告費が潤沢に割けなくても、サービスのユーザー数やCVなどを飛躍的に増やすことが出来ると注目されています。
グロースハッカーは従来のマーケティング手法の場合とは異なり、製品やサービスの開発に自ら携わることもあります。
そのため、現場の技術に関する知識を所持している必要があります。

AARRRモデルの全体像とその必要性

AARRRモデルは、データドリブン分析に使用する定番のフレームワークのことを指します。

「収益の発生=コンバージョン」という単純化した考え方とは異なり、ユーザーの行動の変化についてより詳細に分割して分析・考察します。

AARRRとは、Acquisition(獲得)・Activation(活性化)・Retention(継続)・Referral(紹介)・Revenue(収益)の5つの単語の頭文字です。

AARRRモデルの各ファネルに合わせてデータを収集し、次のアクションを起こすためのきっかけを分析することで、マーケティングデータを定量的に判断することができ、スピードを実現することができます。

ただしデータドリブン分析では、データを収集し整形して、データを活用することができる状態に整備する必要があり、さらにデータがない場合にはデータを収集する必要もあります。

データを施策に活かすためには、データについて、信頼度の検討を行うことや、どのようにして解釈をするのかが大切なポイントとなります。

AARRRモデルの各ステップの考え方

・Acquisition(獲得)
計測ポイントとしては、初回訪問の新規ユーザー数が挙げられます。
また、実際にページを閲覧しているユーザーについて調べたい場合には、非離脱の指標として、滞在時間や2ページ以上の閲覧の有無、直帰率や滞在時間をチェックします。

具体的な施策としては、初回訪問ユーザーにページを印象付けられるよう、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジンの最適化)LPO(Landing Page Optimization:ランディングページの最適化)を行います。

行動ログ分析サービス「eMark+」シリーズでは、設定した期間のユーザー数に加え、ユーザー一人当たりのページビュー数や平均滞在時間、直帰率をその場で分析することが可能です。

また、特定のユーザーについて、性別や年齢などを絞って分析することができるため、ターゲットユーザーのAcquisition(獲得)状況についても、分かりやすいグラフで閲覧することができます。

「eMark+」で把握できる直帰率・一人当たりページビュー数推移の一例

※デバイス:PC、データ期間:2016年4月~9月

・Activation(活性化)
2つ目のポイントとなるActivation(活性化)では、Acquisition(獲得)でも活用した非離脱の状況に加え、閲覧ページ数滞在時間メルマガ登録アカウント作成各種機能の利用の有無を指標とします。

そこで行うべき施策は、ユーザーが価値を早い段階で体感できるようにすることや、UI/UXを改善し、複雑な操作を排除して混乱をなくすことが挙げられます。ユーザーテストを行って改善をしていくことで、ユーザー体験の最大化を図ります。

・Retention(継続)
Retention(継続)では、リピート(再訪問)率はもちろん、引き続き各種機能の利用状況、また、メルマガの開封率が指標として有効です。
何をもってRetention(継続)と定義するのかということが重要になり、定義によって施策や改善すべきポイントが変化します。
せっかくユーザーを獲得してもユーザーが流出してしまう、ということのないようにします。

「使いやすい」かどうかを意識して、CVまでのステップを明瞭にする等UI/UXを改善することによって、リピーターを増やすことができるようになります。

eMark+ Pro」では、多彩なデバイスに対応しており、フルカスタマイズ分析を行うことができます。
通常のリピート分析機能をはじめ、CVを行ったユーザーや会員登録したユーザーにフラグを付けるなどカスタマイズセグメントを利用できる機能もあり、ユーザーのRetention(継続)状況を複数の観点から分析することができます。

「eMark+ Pro」で利用できるCVユーザーのリピート分析機能の一例

※デバイス:PC、データ期間:2016年1月

・Referral(紹介)
Referral(紹介)では、ユーザーが他のユーザーを紹介してくれる数を指標とします。
例えば、会員登録をしてから特定の期間内に招待機能を利用し、新規ユーザーを招待したユーザーの比率に着目します。

この指標を改善するポイントは、「紹介を行うことで、紹介したユーザーが新たに価値を得ることができるポイント」をつくることです。例えばECサイトでは、SNSを利用してシェアをしてくれたユーザーにインセンティブを与えるという手法が多く使われます。

・Revenue(収益)
Revenue(収益)では、リピート(再来訪)率や特定の機能の利用率、CVレートにとどまらず、1件あたりの平均収益収益が発生しやすい時間帯売れ筋商品等、ユーザーの購買行動についての指標を確認します。

さらにCVレートに加え、かかったコストを考慮した収益率も有意義な指標となります。
これらの指標は、会員登録をしてから一定の期間内に、収益につながったユーザーについて測定します。

ここでは「支払う金額に見合った価値が提供されていることをユーザー認識させる」ことが肝要となります。

・ECサイトにおけるAARRRモデルとは
どんな指標を当てはめるかで、ECサイトの方向性が変わります。


Acquisition : サイトを訪問する(SEO・LPOの最適化)
Activation : 商品を購入する(ユーザー体験の最大化)
Retention : 何度もサイトを来訪する(UI/UXの最適化)
Referral : 情報をシェアする(インセンティブの設定)
Revenue : 販促コストの回収


指標を設定する際には、期間内に指標が計測できるかどうかということは当然ですが、その指標をコントロールすることが可能かということにも注意しましょう。

例えば「販促コストの回収」という指標は、投資回収にかかる期間が長ければ長いほど測定に時間が掛かります。
AARRRモデルではスピードが要となるので、指標の効果測定が早くできることも大切なポイントです。

・おわりに
AARRRモデルを活用して、ECサイトにおいて効果的な施策を企画し実行するためには、指標の設定が大切なポイントになります。効果測定に時間をかけすぎることなく、トライアンドエラーを繰り返せるように、指標の設定を行ってくださいね。

そして一番大切なことは、ユーザーテストを繰り返すだけではなく、ユーザーへ良質な体験の提供と、収益の両立を実現することです。売り上げを上げるためにもぜひ、AARRRのフレームワークをお役立てください。

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