既存顧客からの売上を維持・拡大する「LTV(ライフタイムバリュー)」の考え方とは?

既存顧客からの売上を維持・拡大する「LTV(ライフタイムバリュー)」の考え方とは?

顧客の行動を分析し、自社の商品やサービスの改善に役立てるデータマーケティングにおいて、重視されるようになってきたのが「ライフタイムバリュー(LTV)」という概念です。顧客の一定期間の売上貢献度を計るこの指標について、計算方法から活用方法まで解説します。


LTV(顧客生涯価値)とは?

LTVとは「顧客生涯価値」を意味し、ある顧客が取引を始めてから終わるまでのライフルサクル(生涯)で得られる売上、のことを指します。あまり長期間だと指標として使えないので、3年から5年程度のスパンで見るのが一般的です。

LTVが注目される理由

LTVが注目される理由として、市場の飽和が挙げられます。新規顧客獲得コストは既存顧客維持の5倍かかる「1:5の法則」があるように、新規需要を求めるよりも既存顧客を定着・維持する方が効率的なのです

このほか、サブスクリプションサービスの台頭も理由のひとつとして挙げられます。サブスクリプションサービスではビジネスの構造上、解約率を下げることが重要です。そのためには顧客満足度をあげて、契約継続につなげる方法が有効です。

いくつご存知ですか?日本でメジャーなサブスクリプションサービス事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/769

生活に定着しつつある「サブスクリプション」型のサービス。代表的な動画配信サービスといったデジタル系だけではなく、住まいや自動車、食材といった「モノ」を提供するサブスクリプションサービスも増えています。今回はさまざまなジャンルの代表的なサブスクリプションサービスの事例を紹介します。

カスタマーサクセスのKPIに使う指標とは?チャーンレート・LTVなど

https://manamina.valuesccg.com/articles/313

顧客の成功を支援するカスタマーサクセスですが、その結果として契約更新を目指すだけが目的ではありません。カスタマーサクセスのKPIとしては顧客生涯価値を最大化するLTV、解約率を見るチャーンレート、オンボーディング完了率、アップセル/クロスセル率などの指標を使います。

LTVの算出方法

まずはもっとも基本的なLTVの算出式を紹介します。

平均購買単価×購買頻度×継続購買期間=LTV

例として、毎月5,000円で定期販売している商品があるとします。この商品の顧客は毎年20%ほど離脱する場合、継続購買期間は5年(1/0.2)となります。これを上記の式にあてはめると

5,000(平均購買単価)×12回(購買頻度)×5年(継続購買期間)=300,000

つまり、この商品の顧客のLTVは300,000円で、顧客を1人獲得すると年間300,000円の売上を見込める、となります。

実際には商品を売るために広告を出稿したり、メールマガジンを発行するなど、顧客の獲得や維持の費用・経費がかかります。

したがって、上記の計算式から算出された値から広告出稿費などの経費を引いたものを顧客1人あたりのLTVとする必要があります。

LTVを向上させるには?

LTVの算出式に含まれる要素を高めれば、LTVもそれに比例して向上します。そのための代表的な施策を紹介します。

なお、諸経費に関しては低くする(抑える)必要がありますが、やみくもに減らせばいいというものではありません。広告の入札価格を下げてしまえば新規顧客獲得の機会損失につながり、メールマガジンの発行頻度を下げ、既存顧客のアフターフォローがおろそかになり、離脱……と本末転倒の結果になってしまうからです。この点に関しては、十分に注意する必要があります

商品の値上げ:平均購買単価の向上

商品の値上げは単純な方法ですが、平均購買単価を上げるにはもっとも効果的な施策です。値上げした分、顧客離れにつながるリスクはあります。しかし、値上げをしても自社を選び続ける優良顧客もでてきます。

したがって、値上げを検討する場合は、優良顧客が自社の商品を選ぶ理由に価格以外のものがないかを探し、その部分は可能なかぎり維持します。これにより、値上げの幅が少なければ、顧客離れの危険性は最小限に留められると考えられます。

商品価格のバリエーションを増やす:平均購買単価の向上

今までひとつの価格帯の商品しか扱っていないのであれば、高級品、中級品、普及品のように3つのラインナップを用意します。商品選択の幅を広げて顧客満足度を高める狙いのほかに、「値段は安いほうがいいけれど、品質はそれなりのほうがよい」という顧客の心理から中級品以上の商品を選ぶ可能性が高まり、平均購買単価の向上が見込めます。

リマインドメールを配信する:購買頻度の向上

購入歴のある顧客に対し、季節やイベント、買い替え時期など、「欲しい」と思うタイミングを見計らってリマインドメールを配信します。これにより、自社商品を購入候補に挙げてもらえます。

複数回の購入歴があるとしても、他社との比較検討が予想されるので、自社で購入するメリットをリマインドメールに記載するのが肝心です。

メールマガジンを配信する:継続購買期間の向上

一度でも購入してくれた顧客にリピーターに育て、継続購買期間の向上に繋げるための施策はいくつかあります。代表的なものとしてメールマガジンの配信があります。

メールマガジンの内容は自社(商品)のアピールがメインになりますが、行き過ぎると顧客の興味を削いでしまいます。よって、内容は商品の使い方(一般的な使い方から意外な使い方など)や、商品にまつわる話題など、顧客が有用だと感じる内容を盛り込みます。

このほか、継続購買期間の向上策としてアフターサポートの充実やユーザーコミュニティサービスなども考えられます。

まとめ

LTVを向上させる作業は、時間がかかるものばかりです。とはいえ、市場が成熟し、新規顧客の獲得が困難である場合、既存顧客から長期的な利益を得るのが重要な戦略になります。
よって、まずは自社のLTVを知り、業績を伸ばす対策を行うのが重要と言えます。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

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