SFCの学生が語る、データを駆使して大学HPのPR改善を実現した研究プロジェクトの実態とは?

SFCの学生が語る、データを駆使して大学HPのPR改善を実現した研究プロジェクトの実態とは?

カリキュラムの自由度の高さなど、ユニークな教育プログラムで注目を集める慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)。マーケティングコミュニケーションを研究する桑原武夫研究会では、大学の広報担当と連携してPRコンテンツを制作する研究活動も行われています。その際にはWeb行動ログデータも使い、コンテンツの課題発見や改善、効果検証まで実施されているとか。では、その実態はどのようなものなのでしょうか? プロジェクトリーダーである4年生の加藤さん、次期リーダーの3年生の片桐くんに取材しました。


SFCの学生さんに取材

――今日はSFCの桑原研究会で、大学のPRコミュニケーションに対する提案・改善を行う研究プロジェクトについて、MC(マーケティング・コミュニケーション)班リーダーの加藤さんと片桐くんのお二人にお聞きしたいです。よろしくお願いします! まず、所属されている桑原研究会ではどんな研究をされているんですか?

加藤里佳子さん(以下、加藤さん):よろしくお願いします! 桑原研究会ではマーケティングコミュニケーションと科学技術コミュニケーションの大きく2つのテーマが設定されていて、学生たちがグループで意見をかけ合わせながら様々なプロジェクトを行なっています。博物館と協力してマーケティングを行っている班や口コミデータなどの自然言語処理を行う班、企業の公式SNSや広告について研究する班など様々です。

その中で私たちはマーケティングコミュニケーションの方に所属していて、大学の広報担当の方々と連携して実際にPRプロジェクトを進めたりといった活動を行なっています。

(左)片桐裕哉くん(SFC桑原研究会の3年生、来年度MC班リーダー)
(右)加藤里佳子さん(SFC桑原研究会の4年生、現MC班リーダー)

――では、お二人は実際にどのようなプロジェクトに携わっているのでしょうか?

片桐裕哉くん(以下、片桐くん):SFCの公式Webサイト内にある「SFCの現場」にて、大学の研究活動を紹介するコンテンツの分析に基づく改善提案や記事制作を行なっています。目的として、ひとつは高校生や現役のSFC生が「自分がやりたい研究や興味のある分野と出会える場を作る」ということ。それに加えて一般の方々にも広く価値ある情報を提供し、SFCのファンを増やすのも目標にしています。

SFC公式サイト内「SFCの現場」のキャプチャ画像

コンテンツを改善する研究プロジェクトとは

――大学の広報と学生が一緒になってコンテンツを作るプロジェクトはとても面白そうですね! 活動の中では、ヴァリューズ社のデータ分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」や「story bank(ストーリーバンク)」も使いながらコンテンツ改善を提案したとお聞きしました。そこで、プロジェクトの詳しい内容について教えてもらえますか?

加藤さん:はい。まず背景として、「SFCの現場」では大学や研究会側が伝えたい内容がコンテンツの中心だったという点があります。教員へのインタビューが主で、学生目線に立った内容はあまり載っていないイメージでした。

実は、大学広報に関する研究論文を読んでみると、アメリカでも日本でも対話の欠如が問題になっていると言われています。学生や保護者といったユーザーは、大学と双方向的なコミュニケーションを取れる機会が少ないと感じているんですね。

さらに、SFC生にアンケート調査すると、入学前に比べて研究会とのマッチングの点において入学後に満足度が下がっているという結果が出てきました。SFCでは1年生から研究会(他大学での「研究室」や「ゼミ」に類するもの)に所属することができ、自分のやりたいことに早くから没頭できるのが魅力です。この自由な制度に魅力を感じてSFCにやってくる学生が多いのですが、一方で入学後に必ずしも自分の興味関心や志向に即した研究会を選択できていない場合もあり、ギャップが生じていることも見受けられる状況でした。

――なるほど。確かに、大学や研究会に入ってみないと雰囲気や専門領域があまりよく分からないという問題は想像しやすいです。

加藤さん:この問題を解決するには、より学生目線で研究会を紹介する必要があると考えました。そこで、高校生やSFC生が求めている情報をきちんと知った上で、「SFCの現場」の研究会紹介コンテンツを一緒に作らせてくださいと先輩と大学側に提案したんです。

片桐くん:提案の際には、eMark+で検索データを調べることで取り上げる研究会を選定しました。具体的には、SFCのWebサイトに訪れた人が「どのような検索ワードで流入したか」を調べました。

すると、例えば検索ワードとして「SFC 農業」や「バイオ」などが上位に来ていました。そこで、関連する研究会の取材・執筆を進め、今年9月に記事を公開しました。このように、検索者の需要が高いにも関わらず、サイト内で十分な情報が発信できていないところを検証して記事制作を進めています。

――コンテンツの企画から取材・執筆まで、すべて桑原研究会のメンバーが行なっているんですね。一から記事を作るとなると、最初は制作の難しさを感じたりしましたか?

加藤さん:はい、大学広報担当の方々と協力しながら行っています。最初は本当に時間がかかりました…!試行錯誤しながら進めましたが、記事を書くのは得意なメンバーが担当したり、あとページレイアウトは片桐くんが一から考えてくれましたよね。

片桐くん:そうですね。レイアウトではパッと見たときに興味を持ってもらうため、全体的に視覚化を意識しました。ファーストビューで研究会の研究領域が分かるようなキーワードを記事の先頭を載せたり、普段の活動の様子がわかる写真を記事中に載せたりと、多角的な紹介で研究会の雰囲気や特徴を伝えられるようにしました。

もうひとつ工夫した点としては「研究会分析シート」です。これは私たちが取材を通して得た情報を、一枚のシートで可視化したもの。研究テーマやその目的、授業頻度など基礎情報を学生がパッと一目で分かるようにしました。

お二人が所属する桑原研究会の「研究会分析シート」。項目立てて分けられており、タグ形式でキーワードが並べられているなど、見やすさを意識している

大学生はTwitterを見ている、じゃあどうするか?

――制作したコンテンツをただ公開するだけでなく、eMark+やstory bankを用いてデータでの効果検証もされたとお聞きしています。これはどのように行なったのですか?

加藤さん:Web行動ログデータはアクセス数と流入元、検索ワードの3項目で分析しました。まずeMark+で「SFCの現場」ディレクトリのアクセス数を見てみると、2020年7月22日に私たちが作った最初の記事を公開して以降、1人あたりPVが約2倍になっています。また、昨年同月比だと約4.4倍です! ニーズに即した内容にしたことや、見やすいレイアウトによるものかははっきりしないですが、実際に効果が出ています。

加藤さん:また、SFC公式サイト内での「SFCの現場」のユーザー数ランキングは、eMark+によれば昨年は13位あたりでしたが、直近の9月では1位になっていました。

「SFCの現場」への流入元については、1位がFacebook、2位がTwitterとなっていました。一方、story bankで「SFC」検索者がどんなアプリを使っているかを見てみると、FacebookよりもTwitterの方が多いんですね。つまり、ターゲットはTwitterの方を頻繁に使っているはずなのに、実際の流入は少ない。そのギャップが、課題なのではないかと思っています。

片桐くん:そこで、いまはTwitterでどういう施策を打てば「SFCの現場」のコンテンツを届けられるか、チームで議論している最中です。まだアイデアの段階ですが、「SFCの現場」公式Twitterを開設して、先ほどの「分析シート」を画像で投稿したり、研究会選択の情報をライトに拡散したりすれば、「SFCの現場」の認知度も上がってTwitterからの流入を増やせるんじゃないかと考えています。

加藤さん:対話に力を注ぎ、「SFCの現場」を軸に双方向的なコミュニケーションをいかに増やしていけるかが、これからのテーマかなと思います。このように結果をデータから把握することで振り返りができ、今後につなげられるのでとても良かったです。

――実際にこれらのデータ分析ツールを触ってみて、使いやすさはどうでしたか?

加藤さん:私は直感的に使えました! また、story bankで「SFCの現場」へ流入しているユーザーの検索ワードを見ていると、こういう人がいるんだな、とイメージが湧き、ユーザー像が明確化されていって面白いなと感じました。

片桐くん:僕は初めてこういう分析ツールに触れたんですけど、インターフェイス的にすごく分かりやすくて。初心者の自分でも使いやすく、楽しみながら分析をすることができました。

――では最後に、お二人はこれから企業などで働かれていくと思うのですが、今後の意気込みを教えてくれますか。

片桐くん:僕は現在就活中ですが、課題を設定して定性・定量的な改善アプローチをしていく今の研究プロジェクトはとても活きているなと実感しています。来年は研究会を主導する立場ですが、これからも楽しんで活動していきたいです。

加藤さん:桑原研究会では、「SFCの現場」のように大学と連携するプロジェクトは今までにないものだったのですが、プロジェクトを提案する際に定量的なデータを説得材料にできたことが大きな発見でした。また、12人のグループでプロジェクトリーダーとして活動した経験はとても大きく、挑戦する大切さを学びました。来年は社会に出て企業で働くので、その経験を活かせればと思います。

――研究活動のお話を詳しく聞けて面白かったですし、何よりお二人がヴァリューズのデータ分析ツールを駆使されていてとても嬉しく思いました。今日はありがとうございました!

この記事のライター

マナミナ編集部でデスクを担当しています。新卒でメディア系企業に入社後、フリーランスの編集者・ライターとして独立。マナミナでは主にデータを活用した取り組み事例の取材記事を執筆しています。

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