こんにちは。私はデータマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。
株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、ヴァリューズに入社。現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。
普段は事業会社に対して、マーケットリサーチやデータ分析という切り口からマーケティングのお手伝いをする仕事を行っています。特に最近ではDX推進やデータ活用が重要視される傾向はますます高まってきています。
ただ、実際マーケティングにどのようにデータを活用したら良いのかわからないことも多いのではないでしょうか。そこで前回の記事では、「WEB行動ログデータから消費者ニーズをクイックに把握し、商品企画に活かす」というテーマで、データの活用方法を検討しました。
商品企画にデータを活かす方法・STP分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える
https://manamina.valuesccg.com/articles/1400商品を企画する際には、消費者のニーズを把握すること、競合環境を把握することが欠かせません。この記事では、商品企画にデータを活かす方法について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタントである伊東さんが解説します。STP分析のフレームワークを使い、ヴァリューズが保有しているWeb行動ログデータを活用して分析しました。
今回は、データをもとに考えた商品企画が、実際消費者に受け入れられるのか、アンケート調査を用いて検証していきます。結果はどのようなものになったのでしょうか。コンセプト受容性調査の方法にも注目してみてください。
商品企画の内容について
Web行動ログデータの分析結果から、新商品は「『おでこ』のシワを気にしている30~40代女性向けのスキンケア商品」に設定しました。
<企画内容>
ターゲット |
「おでこ」のシワを気にしている30・40代の女性 |
ポジショニング | 価格帯が8,000円~10,000円程度、容量が35g~40gの領域を狙いたい |
USP | たっぷり使える量で、気になるおでこのシワに惜しみなく使える。 価格はそれなりにするが効果が期待でき、他社商品に比べるとコスパがいい |
この設定もデータを用いて3C分析、STP分析を行った結果から導きました。詳しくは前回までの記事をご覧ください。
今回はこの商品のコンセプトシートを作成し、アンケートによる受容性調査を行います。
※商品は実在しない架空の商品です。調査にあたり、ブランド名なども設定しています。
コンセプトシートを作る
商品の受容性を確認する際には、商品の内容や特徴を説明した「コンセプトシート」を作成します。
今回のコンセプトシート作成時には、どのような商品かをまず簡潔に伝えること(画像上部)、商品特徴を分かりやすく伝えること、価格や容量に対する反応も確認するため、内容として反映することを特に意識し作成しました。
■「おでこのシワ」への悩みも併せて聴取する調査設計に
コンセプト調査と並行し、「おでこのシワ」悩み市場についても現状を把握できるよう、アンケートで聴取する内容の設計を行いました。
「おでこのシワ」悩み市場について把握していくポイントは下記のように整理しています。①~③の3つの検証ポイントを中心に、調査を設計し、結果を振り返ります。
検証①:おでこのシワに悩む人の割合・対策している割合
他のシワ悩みと同程度存在するものの、既存商品が少なく対策者は少ないのではないか、という仮説を検証します。
検証②:おでこのシワ、どんな人が悩んでるのか。対策内容は?
30代から悩む人が増えてくると推測。化粧品だけでなく「隠す」等の手段もあるのではないかと考えられます。どんな人が悩んでおり、対策としてはどのようなことを行っているのかを明らかにします。
検証③:おでこのシワ悩みは意識されているのか、訴求後の反応はどのように変化するか。
他のシワ悩みと比較すると、悩みが顕在化していない層も多いと考えられますが、「危機訴求(おでこのシワができる原因や、外見にあらわれるデメリット)」を当てることにより、どのように反応が変化するかを確認します。
上記の「おでこのシワ」悩み市場について把握するための設問と、今回企画した商品コンセプトに対して消費者がどのように反応したのか確認する設問を用意し、調査を行いました。
調査結果「おでこのシワ」悩み市場について
ここからは、実際のアンケート調査で聴取した回答をもとに、「おでこのシワ」に関する消費者の悩みを分析していきます。
■検証①:おでこのシワに悩む人の割合・対策している割合
他のシワ悩みと同程度存在するものの、既存商品が少なく対策者は少ないのではないか、と仮説を立てていました。結果として、目元・口元のシワよりも悩んでいる人の割合はやや少ないものの、調査対象者の2割程度が「おでこのシワ」を悩みとして感じていました。
ただし、他の目もとや口元のシワ悩みや肌質悩みと比較し、対策者が少ないことが特徴として挙げられます。
■検証②:おでこのシワ、どんな人が悩んでるのか。対策内容は?
おでこのシワに関しては、30代から悩む人が増えてくると推測していましたが、やはり30代以降で悩んでいる人の割合が増加していることがわかりました。ただし、30代・40代で対策している人の割合は少ないという結果です。
対策している人に関しては、化粧品で対策している人の割合が高く出ており、さらに、7割以上の人が複数の手段で対策を行っていることがわかりました。
■検証③:おでこのシワ悩みは意識されているのか、訴求後の反応はどのように変化するか。
他のシワ悩みと比較すると、悩みが顕在化していない層が多いと仮説を立てていましたが、①②の結果から、やはり悩みが顕在化している人の割合は、他の部位で悩んでいる人の割合よりも少ないことがわかりました。
では、顕在化していない人も含め、「危機訴求(おでこのシワができる原因や、外見にあらわれるデメリット)」を行うことにより、どのように反応が変化したのでしょうか。結果としては、8割以上の人が対策意向有りという回答になりました。
このことから、「おでこのシワ」悩みについては潜在的にはニーズを抱えている人が多いと考えられます。商品を売り出す際には、悩みが顕在化している層だけでなく、潜在層にもアプローチしていく方法を考えていくと、顧客層が広がると考えられます。
調査結果〜商品の購入意向度はどれほどだったのか?
ここまで、「おでこのシワ」市場に関する仮説を検証してきましたが、実際、今回企画した商品がどのくらい消費者に受け入れられたのか、結果を振り返ります。
■購入意向
結果として、全体の15.5%が「購入したい」と回答し、「おでこのシワ」対策を行っている人は購入意向が+6.8pt 高いという結果になりました。
特に、「前髪で隠す」という対策を行っている人の意向が高く、これまで化粧品でのケアを行っていなかった人からの反応が大きかったと言えそうです。
■購入したい理由・購入したくない理由
続いて、商品に購入意向を示した人と、示さなかった人の理由をそれぞれ見てみましょう。
購入したい理由TOP3としては下記のようになりました。
1位 | おでこのシワの対策はとりあえず試してみたいから…25.8% |
2位 | 早めのエイジングケアを行える商品だから…23.9% |
3位 | 美白にも効果があるから… 23.5% |
「早めのエイジングケア」というポイントや、「おでこのシワ対策以外の効果」について好意的に受け止められていることがわかりました。このあたりは商品を訴求していく際の参考情報となりそうです。
一方、購入したくない理由のTOP3はこちらです。
1位 | 購入しにくい価格だから…29.5% |
2位 | 続けられなさそうだから…14.6% |
3位 | おでこのシワ改善に特化した商品に興味がないから …13.1% |
価格面がネックになっていること、おでこのシワにまだ関心がない層が一定いることがわかりました。価格設定の際には、競合とのポジションを比較した上で検討しましたが、見直しの余地がありそうだという結果になりました。
※今回は仮想ブランドで調査しており、全く知られていないブランドで受容性を確認していますが、ブランドの知名度によっては十分設定価格でも受け入れられる可能性があるのではないかと考えています。
今後のマーケティング施策につなげる
コンセプト調査の結果から下記の点が見えてきました。
おでこのシワ悩み実態
・目元・口元のシワ悩みよりやや少ないものの、2割程度存在。他のシワ悩みや肌質悩みと比較し、対策者が少ない。
・30代以降、悩む人が増える。(また、30代・40代で対策している人は少ない。) 対策者は、7割以上が複数手段で対策している。
・危機訴求テキスト提示後、8割以上が対策意向ありと回答。潜在層が多いと推測される。
コンセプト受容性
・15.5%が「購入したい」と回答。「おでこのシワ」対策を行っている人は、購入意向がやや高め。
・購入したい理由1位は「とりあえず試したい」。おでこのシワに対する効果以外の要素も購入検討理由に。
この結果をふまえ、悩み顕在層と潜在層に分けてアプローチ施策を行う必要があると考えました。顕在層に対してはどのように商品を知ってもらうか、この商品を使って対策しようと思ってもらえるよう訴求するかというのが今後考えていくポイントとなりそうです。
例えば「前髪で隠す」という対策をしている人に対して、クリームでケアしていく利点や、「もう、前髪で隠さない!」といった思わずハッとするような訴求を考えていきます。
また、悩み潜在層に対しては、「おでこのシワ」対策を啓蒙していく活動からスタートし、顧客層を広げる必要があります。そのためには、「おでこのシワ」をしないことで起こるデメリットをうまく伝え、「ケアをしたい」という気持ちに変えることがポイントとなりそうです。
Web行動ログデータを使った商品企画について
今回、商品企画の根拠データとしてはすべてWeb行動ログデータを使用しました。アンケート調査結果と比較したところ、消費者ニーズについて、消費者が悩んでいる内容や、「おでこのシワ」に悩んでいる年代層など、おおよそ正確に捉えられていたと言えそうです。
消費者ニーズをクイックにWeb行動ログデータで把握し、仮説を立て、検証していくことでよりスピーディーに商品企画が行えます。ぜひ検討してみてください。
Appendix
今回のコンセプト調査結果から「商品購買意向あり」と回答した人がどのようなサイトやアプリをよく使っているか、Web行動を紐づけて分析することも可能です。
ご興味がある方はぜひお問い合わせください。
▼「商品購入意向あり」と回答した人が普段よく見ているサイトランキング
「マナラ」や「ていねい通販」といった化粧品サイトに接触している。ターゲットとしてはこのような通販化粧品を利用している層になり得る。
ホワイトペーパーダウンロード【無料】|美容商材のコンセプト受容性調査
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※商品企画にデータを活かす方法【3C分析編】はこちら
商品企画にデータを活かす方法・3C分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える
https://manamina.valuesccg.com/articles/1366商品を企画する際には、消費者のニーズを把握すること、競合環境を把握することが欠かせません。この記事では、商品企画にデータを活かす方法について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタントである伊東さんが解説します。3C分析のフレームワークを使い、ヴァリューズが保有しているWeb行動ログデータを活用して分析しました。
株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。