商品企画にデータ分析を活かす方法とは
こんにちは。データマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。
株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、ヴァリューズに入社。現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。
普段は事業会社に対して、マーケットリサーチやデータ分析という切り口からマーケティングのお手伝いをする仕事を行っています。特に最近ではDX推進やデータ活用が重要視される傾向がますます高まってきています。
ただ、実際どのようにデータを分析し、ビジネスに活用したら良いのかわからず、悩んでいる方は多い印象です。そこで今回は、「データ分析を商品企画に活かす方法」について考えていきます。WEB行動ログデータから消費者ニーズをクイックに把握し、商品企画に活用するためには、何をすれば良いのでしょうか。
■テーマ
商品企画として、具体的な例を設定することにします。今回は「ECを中心に展開している化粧品会社で、新商品を開発する」という場面設定としましょう。
この化粧品会社では、既存のスキンケアラインに新たな商品を追加することを検討しています。そのため、ターゲットを定めてニーズを明確化し、どのようなコンセプトで進めていくかを考えることになります。
■手順
次の3つの手順で企画を検討し、各々の場面でデータを活用していきます。
①3C分析
市場・顧客の分析から、どのようなニーズを満たす商品が良いか検討します。
自社の既存顧客にも購入して欲しいので、既存顧客についても理解を深めます。
さらに、競合の状況も分析した上で、商品で解決していくニーズを決定します。
②STP分析
商品で解決していくニーズが決まったら、ニーズを持つ人の中でも、どのような人をメインターゲットとするかを検討します。
さらに、すでにある競合商品との差別化を考え、どのようにポジショニングしていくかを考えます。
③USP(Unique selling proposition)を明確化
USP(ターゲットのニーズを満たす自社独自の価値)を明確化し、商品の内容・コンセプトを決定します。
では早速、①の3C分析から始めていきます。
3C分析から、商品で解決すべきニーズを理解する
3C分析とは、市場全体を俯瞰して見たいときに使われる手法です。
Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの視点で市場を分析します。
まず、自社(Company)は化粧品ECを行う会社という設定です。分析の観点としては、顧客層や商品の特徴を考えましょう。
この化粧品会社は30代、40代がメインの顧客層です。また、スキンケア商品として化粧水、乳液、シートマスクを出しており、環境に配慮した商品設計でありながら、保湿力の高さを謳っています。
現在、一定の顧客は獲得できているものの、さらに販路を拡大していきたいこの会社。そこで、悩みに特化した新商品を打ち出すことで、既存顧客のアップセル、新規顧客の獲得を狙っていきたいと考えています。
市場・顧客(Customer)を把握する
次に、顧客のニーズとしてどのようなものがありそうか、仮説出しを行います。すると、下記のようなものが挙げられるでしょう。
<30・40代女性のニーズ仮説>
・シミをなくしたい
・シワが気になる
・毛穴のケアをしたい
この仮説に基づいて、データを見ていきます。シミ、シワ、毛穴に関心がある人について調べたいので、検索キーワードでそれぞれを調べている人についてデータを出しました。(なお、検索キーワード分析には弊社のWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用しています。)
▼「シワ」「シミ」「毛穴」それぞれのキーワードを含む検索者の推移
まず、3つのキーワードについて検索者のボリュームを見ていくと、「1.シミ」「2.毛穴」「3.シワ」の順に検索するユーザー数が多いことがわかります。
▼「シワ」「シミ」「毛穴」それぞれのキーワードを含む検索者のユーザー属性
続いて、キーワード検索者の属性を比較すると、「毛穴」は20代・30代が多く、「シミ」「シワ」は30代、40代のボリュームが多いことが分かりました。
自社の既存顧客は30代、40代がメインなので、「シミ」と「シワ」を新商品で解決していきたいニーズとして絞り込むことにします。
さらに、もう少し顧客のニーズを細分化して見てみましょう。
▼「シミ」と一緒に調べられているキーワードのランキング
「シミ」と一緒に調べられているキーワードを見ることで、ユーザーの悩みの細分化を試みます。すると、「化粧品」や「クリーム」といった化粧品関係のキーワード以外にも、「レーザー」や「皮膚科」など化粧品以外のワードも調べられていることがわかります。
▼「シワ」と一緒に調べられているキーワードのランキング
同様に「シワ」についても一緒に調べられているキーワードを見てみると、「おでこ」「首」「目の下」などシワが気になる具体的な部位や、「クリーム」といったアイテム名が見られました。
これらの結果から、「シミ」の対策については化粧品だけでなく、美容医療や皮膚科での解決を求める人も一定数のボリュームがありそうだとわかります。
また、「シワ」の対策については具体的な身体の部位ごとに、改善策を求めるニーズがありそうです。
全体のボリュームとして多いのは「シミ」検索者で、「シワ」検索者の約2倍で毎月推移しています。市場規模で見ると、「シミ」関連の商品が良さそうですが、「シミ」「シワ」どちらを商品のテーマとして決定するかについては、より細かなニーズをふまえつつ、さらに競合環境を把握した上で決定することにしましょう。
競合(Competitor)を分析する
次に、デスクリサーチやDockpitのキーワード分析から、競合環境を調べました。なお、競合は「外からのケア」「中からのケア」の2つの観点で分類して分析します。
「シミ」対策において競合となりそうなところ
外からのケア |
・化粧品では、「美白」といった観点で様々な商品が多数出ている。 ・美容医療を検討する人も多そう。(Dockpitキーワード分析による) |
中からのケア | ・インナーケア商品も複数あり、製薬会社も参入してきている。 (ハイチオールやトランシーノなど) |
直接の競合となりそうなのは、外からのケアで美白関連化粧品、美容医療です。美白関連の化粧品はアイテム数もかなり多いことを考えると、競合環境はかなり厳しそうです。
「シワ」対策において競合となりそうなところ
外からのケア |
・化粧品のアイテムとして複数見られるが、シミ対策や美白商品ほどアイテム数は多くない ・POLAリンクルショットなど、有名商品が目立っている印象。 ・ボトックスなど美容医療のメニューもあるが、化粧品を検討しているユーザーが多く、 美容医療の検討ユーザーがそこまで多くないと推測。(Dockpitキーワード分析) |
中からのケア | ・プラセンタやコラーゲンなどのサプリはあるが、 インナーケアで改善していくという動きは少ないと見られる。 |
シワ対策に関しては、競合はいるものの、商品自体はそこまで多くないようです。
「シミ」ケア市場と「シワ」ケア市場を3C分析で整理
ここまでの分析結果から、「シミ」ケア市場と「シワ」ケア市場について3Cのフレームワークで整理をしました。
「シミ」ケア市場の方が規模としては大きそうなものの、競合となりえる商品・サービスが多数あり、これから参入していくにはかなり大変そうだと考えられます。
一方、「シワ」ケア市場では、競合商品を見てみるとおそらくPOLAリンクルショットの一人勝ちとなっていそうで、商品点数も「シミ」ケア市場と比較すると比較的少ないです。下記の図をご覧ください。
▼「シワ」ケア関連商品ページのシェア比較
各商品ページが閲覧されている回数を比較しています。
<対象>
POLA:POLAリンクルショット
ELIXIR:リンクルクリーム
Attenir:アイ エクストラ セラム
ONE BY KOSE:ザ リンクレス
DECENCIA:アヤナス リンクルO/Lコンセントレート
商品の質にはもちろんこだわらないといけませんが、打ち出し方を考えていけば、「シワ」ケアは十分戦えそうな領域です。
特に、目もとや口元のシワケア商品は多いですが、顧客ニーズとしてある「おでこ」や「首」に特化して打ち出しているものが少ないため、狙い目だと思われます。
さらに、シワケア商品は容量が少ない商品が多く、おでこのシワや首のシワなど、広範囲に使用するにはあまり適していません。
惜しみなく使える量で、広範囲をケアできる商品、という軸で新商品を検討していくことに決定しました。
ここまで、化粧品の新商品企画というテーマを設定し、3C分析を行ってきました。
次回は【STP分析】【USPの明確化】を行い、より商品のターゲットや自社ならではの強みを検討していきます。
▼本記事で使用しているWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」には無料お試し版があります。気になった方はぜひデータの中身を確かめてみてください。
※【②STP分析、③USPの明確化】編はこちら
商品企画にデータを活かす方法・STP分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える
https://manamina.valuesccg.com/articles/1400商品を企画する際には、消費者のニーズを把握すること、競合環境を把握することが欠かせません。この記事では、商品企画にデータを活かす方法について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタントである伊東さんが解説します。STP分析のフレームワークを使い、ヴァリューズが保有しているWeb行動ログデータを活用して分析しました。
※データをもとに考えた商品企画が、実際消費者に受け入れられるのか?【アンケート調査を用いたコンセプト受容性調査】編はこちら
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株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。