商品企画にデータ分析を活かす方法・3C分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える

商品企画にデータ分析を活かす方法・3C分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える

商品を企画する際には、消費者のニーズを把握すること、競合環境を把握することが欠かせません。この記事では、商品企画にデータ分析を活かす方法について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタントである伊東さんが解説します。3C分析のフレームワークを使い、ヴァリューズが保有しているWeb行動ログデータを活用して分析しました。


商品企画にデータ分析を活かす方法とは

こんにちは。データマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、ヴァリューズに入社。現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。

普段は事業会社に対して、マーケットリサーチやデータ分析という切り口からマーケティングのお手伝いをする仕事を行っています。特に最近ではDX推進やデータ活用が重要視される傾向がますます高まってきています。

ただ、実際どのようにデータを分析し、ビジネスに活用したら良いのかわからず、悩んでいる方は多い印象です。そこで今回は、「データ分析を商品企画に活かす方法」について考えていきます。WEB行動ログデータから消費者ニーズをクイックに把握し、商品企画に活用するためには、何をすれば良いのでしょうか。

テーマ

商品企画として、具体的な例を設定することにします。今回は「ECを中心に展開している化粧品会社で、新商品を開発する」という場面設定としましょう。

この化粧品会社では、既存のスキンケアラインに新たな商品を追加することを検討しています。そのため、ターゲットを定めてニーズを明確化し、どのようなコンセプトで進めていくかを考えることになります。

手順

次の3つの手順で企画を検討し、各々の場面でデータを活用していきます。

①3C分析
市場・顧客の分析から、どのようなニーズを満たす商品が良いか検討します。
自社の既存顧客にも購入して欲しいので、既存顧客についても理解を深めます。
さらに、競合の状況も分析した上で、商品で解決していくニーズを決定します。

②STP分析
商品で解決していくニーズが決まったら、ニーズを持つ人の中でも、どのような人をメインターゲットとするかを検討します。
さらに、すでにある競合商品との差別化を考え、どのようにポジショニングしていくかを考えます。

③USP(Unique selling proposition)を明確化
USP(ターゲットのニーズを満たす自社独自の価値)を明確化し、商品の内容・コンセプトを決定します。

では早速、①の3C分析から始めていきます。

3C分析から、商品で解決すべきニーズを理解する

3C分析とは、市場全体を俯瞰して見たいときに使われる手法です。
Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの視点で市場を分析します。

まず、自社(Company)は化粧品ECを行う会社という設定です。分析の観点としては、顧客層や商品の特徴を考えましょう。

この化粧品会社は30代、40代がメインの顧客層です。また、スキンケア商品として化粧水、乳液、シートマスクを出しており、環境に配慮した商品設計でありながら、保湿力の高さを謳っています。

現在、一定の顧客は獲得できているものの、さらに販路を拡大していきたいこの会社。そこで、悩みに特化した新商品を打ち出すことで、既存顧客のアップセル、新規顧客の獲得を狙っていきたいと考えています。

市場・顧客(Customer)を把握する

次に、顧客のニーズとしてどのようなものがありそうか、仮説出しを行います。すると、下記のようなものが挙げられるでしょう。

<30・40代女性のニーズ仮説>
・シミをなくしたい
・シワが気になる
・毛穴のケアをしたい

この仮説に基づいて、データを見ていきます。シミ、シワ、毛穴に関心がある人について調べたいので、検索キーワードでそれぞれを調べている人についてデータを出しました。(なお、検索キーワード分析には弊社のWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用しています。)

▼「シワ」「シミ」「毛穴」それぞれのキーワードを含む検索者の推移

まず、3つのキーワードについて検索者のボリュームを見ていくと、「1.シミ」「2.毛穴」「3.シワ」の順に検索するユーザー数が多いことがわかります。


▼「シワ」「シミ」「毛穴」それぞれのキーワードを含む検索者のユーザー属性

続いて、キーワード検索者の属性を比較すると、「毛穴」は20代・30代が多く、「シミ」「シワ」は30代、40代のボリュームが多いことが分かりました。

自社の既存顧客は30代、40代がメインなので、「シミ」と「シワ」を新商品で解決していきたいニーズとして絞り込むことにします。

さらに、もう少し顧客のニーズを細分化して見てみましょう。

▼「シミ」と一緒に調べられているキーワードのランキング

「シミ」と一緒に調べられているキーワードを見ることで、ユーザーの悩みの細分化を試みます。すると、「化粧品」や「クリーム」といった化粧品関係のキーワード以外にも、「レーザー」や「皮膚科」など化粧品以外のワードも調べられていることがわかります。

▼「シワ」と一緒に調べられているキーワードのランキング

同様に「シワ」についても一緒に調べられているキーワードを見てみると、「おでこ」「首」「目の下」などシワが気になる具体的な部位や、「クリーム」といったアイテム名が見られました。

これらの結果から、「シミ」の対策については化粧品だけでなく、美容医療や皮膚科での解決を求める人も一定数のボリュームがありそうだとわかります。

また、「シワ」の対策については具体的な身体の部位ごとに、改善策を求めるニーズがありそうです。

全体のボリュームとして多いのは「シミ」検索者で、「シワ」検索者の約2倍で毎月推移しています。市場規模で見ると、「シミ」関連の商品が良さそうですが、「シミ」「シワ」どちらを商品のテーマとして決定するかについては、より細かなニーズをふまえつつ、さらに競合環境を把握した上で決定することにしましょう。

競合(Competitor)を分析する

次に、デスクリサーチやDockpitのキーワード分析から、競合環境を調べました。なお、競合は「外からのケア」「中からのケア」の2つの観点で分類して分析します。

「シミ」対策において競合となりそうなところ

外からのケア

・化粧品では、「美白」といった観点で様々な商品が多数出ている。

・美容医療を検討する人も多そう。(Dockpitキーワード分析による)

中からのケア

インナーケア商品も複数あり、製薬会社も参入してきている。

(ハイチオールやトランシーノなど)

直接の競合となりそうなのは、外からのケアで美白関連化粧品、美容医療です。美白関連の化粧品はアイテム数もかなり多いことを考えると、競合環境はかなり厳しそうです。

「シワ」対策において競合となりそうなところ

外からのケア

・化粧品のアイテムとして複数見られるが、シミ対策や美白商品ほどアイテム数は多くない

POLAリンクルショットなど、有名商品が目立っている印象。

・ボトックスなど美容医療のメニューもあるが、化粧品を検討しているユーザーが多く、

美容医療の検討ユーザーがそこまで多くないと推測。(Dockpitキーワード分析)

中からのケア

・プラセンタやコラーゲンなどのサプリはあるが、

インナーケアで改善していくという動きは少ないと見られる。

シワ対策に関しては、競合はいるものの、商品自体はそこまで多くないようです。

「シミ」ケア市場と「シワ」ケア市場を3C分析で整理

ここまでの分析結果から、「シミ」ケア市場と「シワ」ケア市場について3Cのフレームワークで整理をしました。

「シミ」ケア市場の方が規模としては大きそうなものの、競合となりえる商品・サービスが多数あり、これから参入していくにはかなり大変そうだと考えられます。

一方、「シワ」ケア市場では、競合商品を見てみるとおそらくPOLAリンクルショットの一人勝ちとなっていそうで、商品点数も「シミ」ケア市場と比較すると比較的少ないです。下記の図をご覧ください。

▼「シワ」ケア関連商品ページのシェア比較
各商品ページが閲覧されている回数を比較しています。

<対象>
POLA:POLAリンクルショット
ELIXIR:リンクルクリーム
Attenir:アイ エクストラ セラム
ONE BY KOSE:ザ リンクレス
DECENCIA:アヤナス リンクルO/Lコンセントレート

商品の質にはもちろんこだわらないといけませんが、打ち出し方を考えていけば、「シワ」ケアは十分戦えそうな領域です。

特に、目もとや口元のシワケア商品は多いですが、顧客ニーズとしてある「おでこ」や「首」に特化して打ち出しているものが少ないため、狙い目だと思われます。

さらに、シワケア商品は容量が少ない商品が多く、おでこのシワや首のシワなど、広範囲に使用するにはあまり適していません。

惜しみなく使える量で、広範囲をケアできる商品、という軸で新商品を検討していくことに決定しました。

ここまで、化粧品の新商品企画というテーマを設定し、3C分析を行ってきました。

次回は【STP分析】【USPの明確化】を行い、より商品のターゲットや自社ならではの強みを検討していきます。


▼本記事で使用しているWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」には無料お試し版があります。気になった方はぜひデータの中身を確かめてみてください。

dockpit 無料版の登録はこちら

※【②STP分析、③USPの明確化】編はこちら

商品企画にデータを活かす方法・STP分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える

https://manamina.valuesccg.com/articles/1400

商品を企画する際には、消費者のニーズを把握すること、競合環境を把握することが欠かせません。この記事では、商品企画にデータを活かす方法について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタントである伊東さんが解説します。STP分析のフレームワークを使い、ヴァリューズが保有しているWeb行動ログデータを活用して分析しました。

※データをもとに考えた商品企画が、実際消費者に受け入れられるのか?【アンケート調査を用いたコンセプト受容性調査】編はこちら

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。

関連する投稿


【良書推薦】顧客起点の価値提供とは?「電力マーケティング」著者から学ぶ本質

【良書推薦】顧客起点の価値提供とは?「電力マーケティング」著者から学ぶ本質

電力会社におけるマーケティングとは、どのような意義、目的があるのでしょうか。 東京電力で20年に渡りマーケティングを推進されてきた高橋徹氏は、書籍「電力マーケティング~その本質と未来~」(日本電気協会新聞部)の中で、無形かつ差別化できない商材だからこそ顧客接点の現場が大事と伝えています。高橋氏へのインタビューを通じて、その本質を伺いました。 電力という身近な商材を通じて、マーケティングを体系的に理解することもできる良書です。


ARPUとは?客単価との違いや計算方法・向上のための6つの施策

ARPUとは?客単価との違いや計算方法・向上のための6つの施策

ARPU(アープ)とは、ユーザー一人当たりの平均収益・売上を示す指標です。 もともとは携帯電話等の一契約当たりの売り上げを表す際に用いられていましたが、Saasや課金制のビジネスモデルでもARPUが活用されています。ARPUを用いることで、「優良顧客の選定」や「事業の成長性や収益性の判断」といった経営判断を行えます。本記事では、ARPUの計算方法に加え、ほかの関連指標との違い、ARPUを向上させる施策について解説します。SaaSの運営や、課金のあるサービスの運営をしている方や、ARPUの数値を改善したい方は参考にしてください。


プレスリリースアワード2024イベントレポ。受賞プレスリリースから考える、優れたプレスリリースとは

プレスリリースアワード2024イベントレポ。受賞プレスリリースから考える、優れたプレスリリースとは

株式会社PR TIMESが開催した、優れたプレスリリースを表彰する「プレスリリースアワード2024」に、マナミナ編集部員が参加してきました。入賞したプレスリリースがどんなものだったか、今回のイベントから考えられる優れたプレスリリースとはどんなものなのかを紹介していきます。


POLAが描いた独自の顧客体験戦略と、組織横断型のプロジェクト・組織マネジメント術 |「Values Marketing Dive」レポート

POLAが描いた独自の顧客体験戦略と、組織横断型のプロジェクト・組織マネジメント術 |「Values Marketing Dive」レポート

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を6/25に開催しました。第4回目となる今回の全体テーマは「Think & Expand - 潜考から事業拡大へ」。企業の成長、事業拡大を目指すためのマーケティング戦略、組織について考え、革新的な思考・潜考がどのように事業拡大につながるのか、マーケティング組織のマネージャーやエグゼクティブが押さえておきたい“Premium”な知識や事例をご紹介します。本講演では音部大輔氏がモデレーターとなり、顧客体験・組織戦略についてPOLA中村俊之氏と対談しました。


無印良品のアプリユーザーをUNIQLO、ニトリと比較。興味関心と購買行動の特徴とは

無印良品のアプリユーザーをUNIQLO、ニトリと比較。興味関心と購買行動の特徴とは

シンプルで洗練されたデザインと低価格を両立した商品づくりで人気を博している無印良品。そんな無印良品のユーザーの関心や購買行動の特徴を、UNIQLO、ニトリと比較しながら紐解いていきます。その上で、無印良品のマーケティング戦略も分析しました。


最新の投稿


【2025年7月7日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2025年7月7日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


ライブ配信から商品購入に至った視聴者は3割超!ライブ配信は「楽しむもの」から「売る手段」へ着実に進化【PRIZMA調査】

ライブ配信から商品購入に至った視聴者は3割超!ライブ配信は「楽しむもの」から「売る手段」へ着実に進化【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、企業のマーケティング・PR担当者と、ライブ配信を視聴したことのある10代~60代の一般視聴者を対象に、「ライブ配信を活用したリアルタイムマーケティングに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2025/06/02〜2025/06/08)

みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2025/06/02〜2025/06/08)

ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」をもとに、週次の検索急上昇ワードランキングを作成し、トレンドになっているキーワードを取り上げます。


中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者実態調査

中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者実態調査

中国国内でも盛況なキャラクターコンテンツ市場。本資料では、どのようなキャラクターコンテンツが好まれているのか、派生商品やイベントなどの人気動向などにも注目し、中国におけるキャラクターコンテンツ愛好者の実態について行った定量・定性調査の結果をまとめました。 グッズの購入実態やコラボ商品・イベントへの意向なども聴取したことで、中国人キャラクターコンテンツ愛好者において受容度が高いコラボ施策も把握可能となっています。<br>※本資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


買い物にAIを活用するZ世代は約3割!Adyen、買い物および決済体験における消費者と小売企業に関する2025年度調査結果を発表

買い物にAIを活用するZ世代は約3割!Adyen、買い物および決済体験における消費者と小売企業に関する2025年度調査結果を発表

Adyenは、顧客の決済体験と企業のテクノロジー投資に関する年次調査「リテールレポート 2025」を発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ