商品企画にデータを活かす方法・STP分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える

商品企画にデータを活かす方法・STP分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える

商品を企画する際には、消費者のニーズを把握すること、競合環境を把握することが欠かせません。この記事では、商品企画にデータを活かす方法について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタントである伊東さんが解説します。STP分析のフレームワークを使い、ヴァリューズが保有しているWeb行動ログデータを活用して分析しました。


商品企画にデータを活かす方法とは

こんにちは。私はデータマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、ヴァリューズに入社。現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。

普段は事業会社に対して、マーケットリサーチやデータ分析という切り口からマーケティングのお手伝いをする仕事を行っています。特に最近ではDX推進やデータ活用が重要視される傾向はますます高まってきています。

ただ、実際どのようにデータを活用したら良いのかわからないことも多いのではないでしょうか。そこで今回は「WEB行動ログデータから消費者ニーズをクイックに把握し、商品企画に活かす」というテーマで、データの活用方法をご紹介します。

テーマ

商品企画として、具体的な例を設定することにします。今回は「ECを中心に展開している化粧品会社で、新商品を開発する」という場面設定としましょう。

この化粧品会社のメインの顧客層は30代〜40代です。スキンケア商品として化粧水、乳液、シートマスクを出しており、環境に配慮した商品設計でありながら、保湿力の高さを謳っています。

同社では一定の顧客は獲得できているものの、悩みに特化した新商品を打ち出すことで、既存顧客のアップセル、新規顧客の獲得を狙っていきたいと考えています。

そこで現在この化粧品会社では、既存のスキンケアラインに新たな商品を追加することを検討しています。そのため、ターゲットを定めてニーズを明確化し、どのようなコンセプトで進めていくかを考えることになります。

手順

次の3つの手順で企画を検討し、各々の場面でデータを活用していきます。

①3C分析
市場・顧客の分析から、どのようなニーズを満たす商品が良いか検討します。
自社の既存顧客にも購入して欲しいので、既存顧客についても理解を深めます。
さらに、競合の状況も分析した上で、商品で解決していくニーズを決定します。

②STP分析
商品で解決していくニーズが決まったら、ニーズを持つ人の中でも、どのような人をメインターゲットとするかを検討します。
さらに、すでにある競合商品との差別化を考え、どのようにポジショニングしていくかを考えます。

③USP(Unique selling proposition)を明確化
USP(ターゲットのニーズを満たす自社独自の価値)を明確化し、商品の内容・コンセプトを決定します。

前回の記事では①の3C分析を行いました。

商品企画にデータを活かす方法・3C分析編〜スキンケア化粧品の新企画をマーケコンサルが考える

https://manamina.valuesccg.com/articles/1366

商品を企画する際には、消費者のニーズを把握すること、競合環境を把握することが欠かせません。この記事では、商品企画にデータを活かす方法について、ヴァリューズのマーケティングコンサルタントである伊東さんが解説します。3C分析のフレームワークを使い、ヴァリューズが保有しているWeb行動ログデータを活用して分析しました。

3C分析を行った結果、「シワ」ケア市場が狙い目だと考えました。シワケア商品では目もとや口元をケアする商品は多いですが、顧客ニーズとして見られた「おでこ」や「首」に特化して打ち出しているものが少ないためです。

さらに、シワケア商品は容量が少ない商品が多く、おでこのシワや首のシワなど、広範囲に使用するにはあまり適していません。これらのことから、惜しみなく使える量で広範囲をケアできる商品、という軸で新商品を検討していきたいと考えています。

この方向性で進めていくにあたり、よりターゲットを明確化すること、さらに自社が検討している方向性と被っている競合がいないかどうかを調べていきます。

今回の記事では②STP分析、③USP(Unique selling proposition)について取組んでいきます。

STP分析でのデータ活用

まず、STP分析を使って「シワ」ケア商品の詳細を詰めていきます。STP分析は、市場をS=セグメンテーション(市場細分化)、T=ターゲティング、P=ポジショニングするマーケティング理論です。

セグメンテーション

「シワ」ケア商品を検討していくにあたり、おでこや首のケア、というのは候補に上がっていますが、誰をメインターゲットとして狙っていくのかが不明確です。

ターゲット像をよりクリアにしていくため、まずは年代でセグメンテーションを行い、「シワ」に対する年代ごとのニーズを見てみましょう。

▼「シワ」と一緒に調べられているキーワードを年代ごとに比較

データを見てみると年代ごとに関心のある内容が異なることがわかります。「おでこ」を調べているユーザーのボリュームは30代、40代が多いのに対し、「首」を調べているのは20代が多いです。

同じ「シワ」に対する悩みでも、やはり年代によって気になるポイントが違うようです。

▼STP分析のセグメンテーションの基本的な考え方については、下記記事もご参考ください。

STP分析でセグメンテーションする具体的な方法と事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/695

自社にとって優位なマーケティング戦略を練るうえで欠かせないフレームワークSTP分析。今回STPのうちのS=セグメンテーションについて、市場を細分化する具体的な方法やポイント、事例をご紹介します。

ターゲティング

セグメンテーションとターゲティングはセットで行われますが、先ほど年代ごとに区切って調べたニーズの中で、自社としてどこを狙っていくのかを考えます。

もともとの自社の顧客としては30代・40代がメインのため、今回は「おでこ」のシワを気にしている30・40代の女性をターゲットとすることに決めました。

▼STP分析のターゲティングの基本的な考え方については、下記記事もご参考ください。

STP分析でターゲティングする具体的な方法と事例

https://manamina.valuesccg.com/articles/694

自社にとって優位なマーケティング戦略を練るうえで欠かせないフレームワークSTP分析。今回STPのうちのT=ターゲティングについて、ターゲットとする市場や顧客を選定する具体的な方法やポイント、事例をご紹介します。

ポジショニング

次にポジショニングを考えましょう。ターゲットは「おでこのシワを気にしている30・40代の女性」としましたが、競合もいる中で、自社商品がどのポジションを狙っていくかを考えます。

前回の記事でどの悩みを持つ人にアプローチするかを考えた際、シワケア商品は容量が少ない商品が多く、おでこのシワや首のシワなど、広範囲に使用するにはあまり適していないのではないかと仮説を立てていました。

そのため、惜しみなく使える量で、広範囲をケアできる商品、という軸で自社の新商品を検討していきたいと思います。ただし、自社商品の方向性が、すでに発売されている「シワ」ケア商品とバッティングしないかどうかを確認するため、価格と容量、関心ユーザー数のボリュームの3軸でポジショニングマップを作ってみます。

ポジショニングの軸を切る際には、例えば「ラグジュアリー」などのイメージや、技術力という効能軸という切り方もありますが、今回はよりデータで数値化して比較しやすい軸でポジショニングマップを作りました。

下のグラフでは縦軸が価格、横軸が容量、円の大きさは該当商品ページの閲覧ユーザー数の量を表しています。

<対象商品>
POLA:POLAリンクルショット
ELIXIR:リンクルクリーム
Attenir:アイ エクストラ セラム
ONE BY KOSE:ザ リンクレス
DECENCIA:アヤナス リンクルO/Lコンセントレート
SHISEIDO :リンクルリフト ディープレチノホワイト5
DHC:DHC薬用Qショートリンクルクリーム
benefique:レチノリフトジーニアス

上記の中で空いているポジションは、価格帯が8,000円~10,000円程度、容量が35g~40gの領域です。ここを狙いたいと考えました。

空いている部分のどこを狙うかというのは、自社の特性をふまえどこを狙っていきたいかという「決め」ではあります。

今回1つの軸としている価格については、自社がすでに出している商品の価格帯と大きく違わないことや、無理のない価格設定、かつ消費者にとってその価格でも買いたいと思うかどうかという視点で考えると良さそうです。
(このあたりは4Pの視点も必要となってきますが、今回は割愛します)

4P分析とは?マーケティングミックスに活用

https://manamina.valuesccg.com/articles/623

4P分析は企業が販売戦略を決める際に使わるフレームワークでProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の頭文字を取った用語です。ニーズを満たした製品を、適切な価格で適切な流通で効率よく販促できれば、売上拡大につながります。

USPの明確化を行う

ここまで3C分析とSTPの整理を行ってきましたが、最終的に自社商品のUSP(ターゲットのニーズを満たす自社独自の価値)を明確にしていきます。

ターゲット:「おでこ」のシワを気にしている30・40代の女性
ポジショニング:価格帯が8,000円~10,000円程度、容量が35g~40g(容量多)領域を狙いたい


これらの情報からさらに、「自社ならではの強み」を言語化していきます。たとえば、下記のような位置づけはどうでしょうか。

「たっぷり使える量で、気になるおでこのシワに惜しみなく使える。価格はそれなりにするが効果が期待でき、他社商品に比べるとコスパがいい」

3C分析からSTP分析へと進み、USPを明確にしていく方法で新商品のコンセプト設計を行うことができました。コンセプトを言語化しておけば、ここからプロモーションの施策設計やクリエイティブを立案する際も比較的スムーズに行えると思います。

本記事では全2回にわたって「商品企画にデータを活用する」方法をご紹介してきました。弊社ヴァリューズでは、オープンデータや他社の商品情報を整理していくことはもちろん、保有しているデータから消費者ニーズや競合商品への関心層を掴んでいくことも可能です。

今回の調査では主にヴァリューズのサービス「Dockpit」を使って分析を行っておりますので、気になる方は是非無料版をお試しください。

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※次回は、データをもとに考えた商品企画が、実際消費者に受け入れられるのか、アンケート調査を用いたコンセプト受容性調査で検証していきます。ぜひこちらの記事もご覧ください。

この記事のライター

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。

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