サステナブルは購買動機に繋がるか?消費者の関心を検索動向から考察

サステナブルは購買動機に繋がるか?消費者の関心を検索動向から考察

SDGsが採択されて以降、世界中でサステナブルな取り組みが加速する昨今、日本国内でも環境へ意識が特に高まり、「サステナブル」を掲げる商品も多く見られるようになりました。商品価値の一つとしてサステナブルが発信されるようになった一方で、その訴求が購買にまで繋がっているのかには様々な意見が述べられています。そこで本稿では「サステナブル」の検索動向から、サステナブルを検索する人の興味関心を調査。ユーザーはサステナブルの何を知りたいと考えているのでしょうか。


広がるサステナブル商品、イケアや中川政七商店も

「サステナブル」とは、英語で「持続可能な」という意味。地球上では、私たちの経済活動を通じて、温暖化や海洋・土壌汚染など、様々な環境問題が深刻化しています。地球に生きるあらゆる生物がこの先も安心して暮らせる世界であるために、これらの環境問題の解決に努め、「持続可能な社会」をつくっていく必要があります。

2015年に国連で策定されたSDGsは、この「持続可能な社会」を築くための国際社会共通の目標。SDGsの達成に向けた取り組みの広がりから、ここ数年特に「サステナブル」への関心が高まっています。

最近では、地球にやさしい「サステナブルな商品」もメーカー各社から販売されており、
・オーガニック、自然・天然由来の素材
・繰り返し使える
・リサイクル素材で作られている
などは、日用品やファッション、インテリア分野などでよく目にするサステナブル商品の特徴です。

例えば、これまではプラスチックが一般的だったストローも、紙のストローが普及し、飲食店やコンビニでも、紙ストローが提供されることが増えてきました。

サステナブル商品の例)中川政七商店の「紙のストロー」
紙素材で作られたストロー。燃やしても有毒ガスが発生せず、環境ホルモンも不使用。

また、大手インテリアブランドのIKEAの「ペットボトルの再生樹脂を使用したラグ」をはじめ、リサイクル素材の製品も開発が進められています。

サステナブル商品の例)IKEAの「TYVELSE ティヴェルセー」
500mlのペットボトルおよそ345本分の再生樹脂を使用したラグ。

これらの環境に配慮した商品を積極的に選択する「エシカル消費」という言葉も使われるようになり、SNSで発信するユーザーも増加。サステナブルな暮らしを取り入れることが、ひとつのトレンドとして世の中で意識されつつあります。

【↓関連記事↓】

「SDGs」検索数は過去1年で2倍に。企業の担当者がロゴのDLページや取り組み事例を調査か

https://manamina.valuesccg.com/articles/750

「持続可能な開発目標」、SDGsに対して、世の中ではどのような形で関心が寄せられているのでしょうか。検索ワード等をカギに分析していきます。

「サステナブル」検索者は月5万人ほどで推移

では、「サステナブル」の検索動向はどうなっているのか。Web行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、まずは過去1年の検索ユーザー数推移を見ていきます。

分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年9月〜2021年8月、対象デバイス:PC、スマートフォン

過去1年を調査すると、検索ユーザーは月間5万〜6万人ほどで推移しています。

ユーザー属性を見てみると、女性が6割を占め、年代では50〜60代が多いという傾向でした。家事を通じて家族の暮らしを整える女性の方が、家族の健康のためや、子どもちが成長した時の社会が安心安全であるために、「サステナブル」に関心が高いのかもしれません。

【性別比】分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年9月〜2021年8月、対象デバイス:PC、スマートフォン

【年代比】分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年9月〜2021年8月、対象デバイス:PC、スマートフォン

また、世帯年収はインターネット利用者全体と比較して大きな偏りは見られませんでした。

【世帯年数比】分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年9月〜2021年8月、対象デバイス:PC、スマートフォン

サステナブルはマーケターの注目大、分野はファッションが主流?

では、「サステナブル」を検索するユーザーは何に関心があり、サステナブルの何を調べようとしているのでしょうか。掛け合わせワードから、検索目的を考察します。

分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年9月〜2021年8月、対象デバイス:PC、スマートフォン

「意味」や「とは」等の言葉が上位にランクインしており、概要を調べる人が多いことが分かります。また、概要の検索に次いで多いのは「ファッション」「ブランド」。ファッション分野で検討するユーザーが多いようです。

続いて、関心ワードを見ていきます。

「関心ワード」では、サステナブルを検索したユーザーの閲覧・検索履歴から、関心の高いキーワードを抽出し、ランキング形式で示しています。

分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年9月〜2021年8月、対象デバイス:PC、スマートフォン

関心ワードには1位に「マーケティング」がランクイン。企業のマーケターが検索するケースも多いと考えられます。また、「長谷川京子」や「仲里依紗」などの著名人も目立ちます。特に長谷川京子さんは植物性原料の製品を積極的に取り入れるなど、サステナブルな生活を体現している人として知られています。雑誌のインタビューでは、サステナブルについて以下のようなコメントをしていました。

体にいいものって環境にも優しい場合が多いんじゃないかなあと。サステイナビリティに目を向けるのは大切だと思いますが、私の場合はまず〝好き〞かどうかを基準に選択していますね。自分を満たすことができてこそ、外の世界まで思いやれると考えているので

インスタグラムでも自身のライフスタイルを発信しており、共感したり、憧れる女性も多いのではないでしょうか。

長谷川京子さんインスタグラム

流入ページでは「サステナブルとは」系の記事が多い

続いて、流入サイトを見てみます。

分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年9月〜2021年8月、対象デバイス:PC、スマートフォン

ベネッセコーポレーションや大和ハウスの企業サイトが上位にランクインしていました。

分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年9月〜2021年8月、対象デバイス:PC、スマートフォン

流入ページを見てみると、流入サイトで上位に上がっていたサイトの記事が上位にランクインしていました。内容はいずれも、サステナブルとは何かを解説する記事が多いことが分かります。

サステナブルは商品選択軸のひとつ、ただしバランスも重要か

サステナブルに関心の高いのは高年代層の女性が多く、長谷川京子さんなどサステナブルな生活をナチュラルに体現しているインフルエンサーに共感する人も一定数いることが分かりました。

一方、掛け合わせ検索ではファッション分野への関心がうかがえましたが、ブランド名や商品名など具体的な商品軸での検索は多くはなく、サステナブルがきっかけとなる購買行動がそれほど見られませんでした。

サステナブル商品はポジティブに評価されており、ある程度の購入意欲を喚起するものの、購入されにくいという商品属性もあると言われています。サステナブルは潜在的に「安全」「マイルド」などのイメージを持たれ、機能や効能が一般的に劣ると感じられること(トレードオフ感)から、洗剤など機能性が重視される製品カテゴリーでは、サステナブル商品の選択されづらいという見解もあります(参考:『なぜサステナブル商品は売れないのか?「好きだけど買わない」に潜む消費者の購買行動』)。

「サステナブル」は日本国内でも意識されており、商品選択のひとつの軸となっています。しかし、カテゴリーによっては打ち出し方に気をつける必要があり、そのバランスの見極めが重要と言えそうです。

今後はさらにサステナブルへの意識が高まり、興味を持つ層にも広がりが出てくるかもしれません。ニュースやSNSでトレンドをチェックするとともに、検索動向からユーザー層の顕在ニーズを考慮することで、戦略や施策はより洗練されるでしょう。サステナブル商品の発展やマーケティング戦略の登場に、これからも注目していきます。

<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「Dockpit」を使用し、2020年9月~2021年8月のネット行動ログデータを分析しました。※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。

関連する投稿


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


【調査リリース】2024年夏の旅行トレンド全国調査~海外旅行は早めの予約が人気、20代女性の旅行意欲の高まりが目立つ

【調査リリース】2024年夏の旅行トレンド全国調査~海外旅行は早めの予約が人気、20代女性の旅行意欲の高まりが目立つ

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸、以下「ヴァリューズ」)は、国内の20歳以上の男女45,818人を対象に、今夏の旅行予定に関する消費者アンケート調査を実施しました。またヴァリューズが保有する約250万人の独自消費者パネルを活用したインターネット行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用して、消費者の観光ニーズを分析しました。


レトロブームで再燃? コンデジやチェキ、写ルンですの消費者ニーズをデータで深掘り

レトロブームで再燃? コンデジやチェキ、写ルンですの消費者ニーズをデータで深掘り

「コンデジ」「チェキ」「写ルンです」。この言葉を聞いて懐かしいと思う大人は多いかもしれません。スマートフォンの普及によって、カメラを買う機会は減少傾向にありました。しかしながら、最近はZ世代の間で「レトロ」が注目を集め始め、コンデジブームがやってきました。データ分析を通してそれぞれのカメラの関心層を分析します!


The latest trends provoke “empathy for real-life negative situations”? Analyzing popular characters and events

The latest trends provoke “empathy for real-life negative situations”? Analyzing popular characters and events

To generate buzz in a systematic manner, rather than by chance, it is important to look for commonalities in why certain things become a trend. We will analyze recent trends such as "cat memes," popular characters, and events to determine "what people are supporting these days, and why."


人気デリバリーアプリ「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」のポジション分析 | コロナ初期からの変化は?【2024年最新版】

人気デリバリーアプリ「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」のポジション分析 | コロナ初期からの変化は?【2024年最新版】

ここ数年で需要が高まったデリバリーアプリ。コロナ禍に利用し始めた人も多いのではないでしょうか。デリバリーサービスが注目され始めて数年が経った今、需要はどう変化したのか、また各社アプリを今利用しているのはどのような人たちなのか、人気デリバリーアプリの「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」を比較しながら分析します。


最新の投稿


アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

Repro株式会社は、アパレル系店舗アプリのインストール前後の利用状況に関するユーザー調査を実施し、結果を公開しました。


認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

未知株式会社は、全国の企業に在籍する20〜60代の方を対象に「コンテンツマーケティングの実施・成果」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

近年、美容インフルエンサーの発信により特定のスキンケア成分がフォーカスされ、「成分関心層」が増加しています。今回は、@cosmeを運営するアイスタイル社が保有する、日本最大級の美容に関する生活者データと、ヴァリューズが保有するオンライン行動データを活用。成分に関する情報感度の高いアーリーアダプター層に注目し、その裏にあるユーザーインサイトから、成分関心層と取るべきコミュニケーションを探ります。※本セミナーのレポートは無料でダウンロードできます。


官民連携の智略 ~ PPP/PFI

官民連携の智略 ~ PPP/PFI

高い効率性が求められるのは今や個人の仕事や学業の範疇にとどまらず、国の施策運営である公共事業などにもその思考傾向は浸透しつつあります。その結果、国は民間企業の協力を得て「官民連携」で公共事業を進めることでそれらを効率化し、さまざまな事業を支えている例が多く存在します。本稿では、このような「官民連携」で効率化を目指す手法のPPPやPFIなどについて、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が解説します。


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ