若者向けのマーケティング活動を行うにあたって、Z世代やミレニアル世代が注目している事柄は無視することができません。しかしスマートフォン・SNSの普及により、個人の嗜好が多様化していることからも、これらの世代のトレンドや興味は把握することが難しくなっています。
そこで、今回はヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット) 」のキーワードトレンド機能、サイトトレンド機能の6ヶ月上昇を使用して、Z世代やミレニアル世代の特徴を分析していきます。
Dockpitのこの機能を利用することで、設定した対象年月の6か月前と比べてユーザー数が急上昇したサイト、キーワードを簡単に把握することができます。他にも、キーワード・サイトの前月比上昇や当月ランキングといった機能もあり、短いスパンのトレンド分析も可能になっていますが、今回はより長期のトレンドを分析するために6か月上昇を利用します。
Z世代、ミレニアル世代は比較的オリンピックへの興味が低かった…?
まず、Z世代やミレニアル世代の主要層である20代にターゲットを絞った6ヶ月上昇のキーワードトレンドを50位までまとめたものがこちらになります。
【20代】6ヶ月上昇のキーワードランキング
集計期間:2021年8月、デバイス:PC&スマートフォン
※季節性ワードを除く
この50位までのキーワードのデータから、ジャンルごとに分類して特徴を分析してみましょう。ここでは下記のトピックに注目してみました。
1. コンテンツ系(オレンジ色)…「ハコヅメ」「彼女はキレイだった」「プロミスシンデレラ」など
2. スポーツ系(青色)…「パラリンピック」「侍ジャパン」「中田翔」など
3. コロナ係(緑色)…「副反応」「解熱剤」「ワクチン接種」など
4. 商品・サービス系(水色)…「サン宝石」「HAFH」「PIXEL6」など
まずひとつ目はコンテンツ系について。「ハコヅメ」や「彼女はキレイだった」などのテレビドラマにZ世代、ミレニアル世代の注目が集まっていることが分かりました。ドラマやコンテンツ系だと、15位以降にも「猫の恩返し」や「おかえりモネ」「もののけ姫」など多数がランクインしています。
自粛に伴う家で過ごす時間の増加や、各種サブスク配信の普及と内容の充実により、若者のアニメ・ドラマ・映画といったコンテンツへの関心は高くなっていると言えそうです。好きなコンテンツや興味のあるコンテンツについて検索して調べている行動も特徴的です。
また、スポーツ系ではオリンピック関係の検索キーワードも多く見られました。スポーツジャンルのなかでも目立ったのが野球関連のワード。オリンピックで金メダルを獲得したこともあり、侍ジャパンは20代からも注目を集めていたようです。
次にコロナ関係のワードの目を移すと、「副反応」「解熱剤」「ワクチン接種」などが上位に上がっていました。若年層はワクチン接種の副反応が強く出やすいため、気になって検索した人が多かったのではないでしょうか。
4つ目に商品・サービス系のワードについて見てみると、「サン宝石」「HAFH」「PIXEL6」などが気にされていたようです。
「HafH」公式サイト
サン宝石は若年層に人気の雑貨やアクセサリー、デコパーツなどの激安通販サイト。「 HafH(ハフ)」は毎月定額で旅ができる「旅のサブスク」サービスです。また、Pixel6はGoogleの新しいスマートフォンです。
Z世代やミレニアル世代は一般に収入が少ないため、安価に自分の好きなものを楽しめる「お得感」を重視しているのではないでしょうか。
次に、ターゲットを絞らずに全年代での6か月上昇キーワードをまとめたものが以下になります。Z世代・ミレニアル世代と比較してどのような違いがあるかを分析していきます。
【全体】6ヶ月上昇のキーワードランキング
集計期間:2021年8月、デバイス:PC&スマートフォン
※季節性ワードを除く
50位までのキーワードを20代と比較してみると、まずコンテンツ系のキーワードは少ないことが分かります。ドラマなどのコンテンツを検索して調べるのはZ世代・ミレニアル世代の特徴と言えるのではないでしょうか。
また、スポーツジャンルを見ると、オリンピック関連のワードが多くランクインしていることが分かります。「閉会式」「バレーボール女子」「パラリンピック日程」「ブラインドサッカー」…などのワードが上位にあり、以降も競技名や選手名での検索が見られました。
比較してみると、Z世代・ミレニアル世代はオリンピックよりもドラマやコンテンツに多くの興味を持っていた…という可能性が考えられます。
コロナ系のワードでは、20代では「解熱剤」が上位にありましたが、全体ランキングには見当たりません。その一方、「個別接種」が上位にランクインしています。医療機関で予防接種を行う場合が個別接種です。子どもへのコロナワクチン接種は個別接種が望ましいとされており、親世代が気になっているトピックと考えられます。
【関連記事】Z世代に今何が刺さっているのか?検索行動から顕在ニーズを分析し、トレンドを探る
https://manamina.valuesccg.com/articles/1491昨今マーケティングの文脈で注目度が大きく上昇している「Z世代」。1990年代中盤以降に生まれた世代を指し、幼少期からデジタルに触れて育ってきたデジタルネイティブであるという特徴から、それ以前の世代とは全く異なる価値観を持っているとされています。InstagramやTiktokを代表としたSNSの利用時間や、SNSを通じた購買も多いため、SNSきっかけでトレンドが生まれ消費が動くことも少なくありません。今回はそんなZ世代のトレンドとして、今後大きくなりそうなものの可能性を検索キーワードから調査します。
日帰り温泉やJCBトラベルなど旅行情報サイトへの訪問者が上昇中
続いて、20代のWebサイトトレンドを30位までまとめたものがこちらになります。
【20代】6ヶ月上昇のWebサイトランキング
集計期間:2021年8月、デバイス:PC&スマートフォン
キーワードのジャンルは、
1. ゲーム・コンテンツ系(オレンジ色)…「Minecraft」「Plarium」「僕のヒーローアカデミア」
2.スポーツ系(青色)…「オリパラ公式サイト」「オリパラガイド(Yahoo!)」「侍ジャパンオフィシャルサイト」など
3.サービス系(水色)…「ミナカラ」「maneo」
4.屋外活動系(黄色)…「全国日帰り温泉・銭湯マップ」「JCBトラベル」「バーベキュー場検索サイト」
の4つに注目しましょう。
まずひとつ目にコンテンツ系では「Minecraft」を筆頭にゲーム関連サイトと、「僕のヒーローアカデミア」の映画特設サイトがランクイン。検索キーワードのランキングとコンテンツが一変しています。ドラマなどの検索は流入するサイトが分散しており、ゲームや映画については一つのサイトに集中していると考えられるのではないでしょうか。
検索キーワードでの分析とも併せて、やはり自粛に伴った家で過ごす時間・過ごし方の多様性が増加していると言えそうです。
次にスポーツ系について。検索キーワードと同様に、オリパラ関連や侍ジャパンのオフィシャルサイトがランクインしています。なかでも、オリパラ関連の情報を網羅的に把握できるNHKの特別サイトや、Yahoo!のガイドサイトに注目が集まっています。特定の競技だけでなく、様々な競技について情報を集めるための行動と言えそうです。
また、サービス系では「ミナカラ」などが注目されていました。
「ミナカラ」はユーザーが正しい知識とともに医薬品を購入できるオンライン薬局。ファミリーマートと提携して開始した、店内に設置した専用のボックスで処方薬や市販薬を受けとれるサービス「ファミマシー」の実験が注目されているようです。
「ファミマシー」公式サイト
最後に屋外活動系では、旅行やバーベキュー、温泉への関心が集まっています。
自粛期間の長引きと7月時点での感染者数減少を受けて、感染者が多かった時期には自粛していた、旅行などの屋外アクティビティへの関心が高まっていたと言えそうです。
また、ジャンルとしては1サイトしかありませんが、美容外科の企業サイトがランクインしていることも特徴的です。YouTubeをはじめとしたSNSで整形のリアルを知れるようになったことで、20代の間で整形への注目が高まっていると言えそうです。
次に、ターゲットを絞らず全年代での6か月上昇サイトをまとめたものが以下になります。
【全体】6ヶ月上昇のWebサイトランキング
集計期間:2021年8月、デバイス:PC&スマートフォン
※一部、公序良俗に反するサイトを除く
50位までのキーワードを20代と比較してみると、ゲーム・コンテンツ系のサイトがほとんどありません。映画やゲームなどのコンテンツについて、公式サイトに注目するのはZ世代・ミレニアル世代の特徴と言えそうです。
他にも、屋外活動系のサイトもランクインしておらず、自粛などの要素も含め屋外活動への関心が高いのはZ世代・ミレニアル世代だと分かります。
その代わりに、「新型コロナワクチンQ&Aサイト」やクリニックのサイトなど、医療系のサイトに注目が集まっています。Z世代・ミレニアル世代も検索キーワードで見るとコロナ関連情報への関心は高いことがわかりますが、ワクチンや副作用といった特定の情報以外には、やや関心が低いと言えそうです。
まとめ|ドラマ・ゲームなどのコンテンツ系と屋外活動に興味か
ここまで、Z世代・ミレニアル世代が注目している事柄について、Dockpitの6か月上昇キーワード・サイトの機能を用いて分析してきました。
まずキーワードにおいては、コンテンツ系、スポーツ系、コロナ関係、商品・サービス系の4ジャンルが多く見られました。特にコンテンツ系のキーワードの多さからは、若者のアニメ・映画・ドラマへの関心の高さが伺えます。
続いてサイトにおいては、スポーツ系、ゲーム・コンテンツ系、サービス系、屋外活動系の4ジャンルが多く見られました。特徴としては屋外アクティビティへの関心の高さが伺えます。また、上記のジャンルからは外れますが、美容外科の企業サイトがランクインしており、20代の整形への関心の高さが分かります。
各事業の特性に合わせて詳細にトレンドを探る上では、わずかな検索数・サイト訪問数の急上昇やトレンドを捉えることが重要です。
今回分析に使用した行動分析ツール「Dockpit」では、記事内で紹介した上昇キーワード・サイトランキングだけでなく、ユーザー数推移やユーザー属性、検索者がほかに関心を持っているワードや、流入先のコンテンツランキングなど、詳細なユーザー分析が可能です。無料版もありますので、興味を持った方はぜひお試しください。
【関連記事】ミレニアル世代の新富裕層はどんなサイトをよく見ている?投資信託やゲーム、インテリアなどに興味か
https://manamina.valuesccg.com/articles/1350ミレニアル世代の新富裕層が興味を持つトピックを調べるため、世帯年収800万円以上&20,30代のユーザーが多く訪問しているWebサイトを調査しました。使用したのはSaaS型のWeb行動ログ分析ツール「<a href="https://www.valuesccg.com/dockpit/" target="_blank">Dockpit(ドックピット)</a>」。投資信託やゲーム実況系のサイトが上位にランクインし、CtoCプラットフォーム利用も示唆される結果となりました。
2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。