コンセプト評価調査の位置づけ
まず最初に、コンセプト評価調査の位置づけを確認しておきましょう。下の図は市場調査から商品の育成までのマーケティング・リサーチをまとめたものです。
マーケティングの各段階において効果的なリサーチをまとめた図
ここでコンセプト評価調査は主に赤枠で囲われた部分、ターゲット選定の直後の広告戦略/コンセプト開発/4Pの開発・策定における調査が該当します。
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マーケティングリサーチとは何か?事例でリサーチャーが基礎知識を解説
https://manamina.valuesccg.com/articles/1555マーケティングリサーチの基礎知識について具体例を交えて紹介します。マーケティングリサーチとは、「組織が商品・サービスを提供するために、お客様を知り、お客様にあった商品・サービスをつくることで、様々な経営資源を効率的に運用するために顧客を知る活動」のこと。マーケティングリサーチを自社のマーケティング活動のなかに取り入れるには、どのタイミングで、何を、どのように行えばいいのでしょうか。当メディアを運営する株式会社ヴァリューズのリサーチャーがマーケティングリサーチについて解説したセミナーから、ポイントをまとめました。
コンセプト評価調査の枠組み
コンセプト評価調査とは、商品やサービスのコンセプトを検討する際に行う調査です。消費者のニーズに合っているか、コンセプトで強化・改善すべきところはどこか、といった確認を目的に行われます。
ヴァリューズが実施するコンセプト調査では、まず商品やサービスのコンセプトをまとめたコンセプトシートを作成し、アンケート対象者に提示します。次に、シートへの反応ごとに利用意向者 / 態度保留者 / 非利用意向者といったグループに分類することで、未だ認知のない商品・サービスの潜在ターゲットを把握することができます。
また、利用意向者の反応の詳細を見ることで、重きを置くべき訴求軸・魅力点や認知拡大にあたってのタッチポイントも明らかにすることができます。
コンセプト評価調査の概念図
コンセプト評価調査を行うことで、商品やサービスを世に打ち出す前の戦略立案時のwho(ターゲットを誰にするか)/ what(何を訴求点にするか)/ how(どうやって届けるか)を整理することができます。
コンセプト調査ではWho/What/Howを整理できる
続いて調査イメージをご覧ください。調査対象者のセグメントごとに次の例のような商品コンセプトとアンケートを提示して、利用意向からターゲットのポテンシャルを確認します。
コンセプト調査のイメージ
また、コンセプトの受容層が市場にどれくらい出現するのかを、下図のようにセグメントごとに可視化できるアウトプットを作成することも可能です。
セグメント別の購入意向を洗い出す
このコンセプト評価調査は商品コンセプト以外でも、広告クリエイティブ、製品パッケージ、ブランドコンセプト等に応用することが可能です。
事例で見るコンセプト評価調査
では実際にコンセプト評価調査を利用した事例について見てみましょう。ヴァリューズでは自社で考えた「架空の新商品」を使い、モニターにアンケート×Web行動ログ調査を行うことで、その結果を分析する取り組みを行いました。そこで今回はその新商品のコンセプト評価調査をご紹介していきます。今回の設定は、「ECを中心に展開している化粧品会社で、新商品を開発する」という場面を想定しました。
まず、コンセプト評価調査を行うタイミングを確認しましょう。マーケティング活動全体のなかで、3C分析・STP分析などによってある程度の戦略が固まってきたら、次に決めていくのが商品やサービスのコンセプトです。調査はその商品コンセプトが具体的になったタイミングで行います。
コンセプト調査の流れ
今回の「化粧品会社の新商品」という設定では、STP・3C分析の結果から、おでこのシワを気にしている30・40代の女性をターゲットに向けた、「おでこのシワ」に特化したコスパのいい商品というコンセプトを設定しました。
そこでターゲットが適正かどうか、商品コンセプトが悩みにマッチしているか、他社との競争力があるか等を検証するために「コンセプトシート」を作成します。今回の商品を例に、コンセプトシート作成の際のポイントを見てみましょう。
調査対象者にその商品コンセプトを理解・判断してもらえるように、訴求ポイントを網羅的に分かりやすくまとめることが重要になります。
次にこのコンセプトシートを用いてアンケート調査を行います。ヴァリューズではアンケートだけでなく消費者のWeb行動ログデータを用い、オンライン・オフラインの両軸でより深く消費者を理解する調査を実施しています。
こうしたオンライン行動の把握は、コロナ禍の影響で消費者のEC・Webメディア利用が浸透している背景に加え、アンケート調査では浮き上がってこない消費者の無意識のWeb行動にもアプローチできる点で重要です。
では実際にアンケート結果、Web行動ログのデータを見てみましょう。まずコンセプトシートを利用したアンケート調査の結果がこちらです。
ここでは、現状のおでこのシワ対策の有無と購入意向についてまとめています。
全体で購入意向者が15.5%を占めている(左の円グラフ参照)なかで、おでこのシワを既に気にしている人の購入意向者は、全体より6.8pt高い22.3%となっています。そのなかでも、前髪やメイクなどでシワを隠している対策者は28.6%にも上ります。この結果から、「おでこのシワ対策の有無、およびその内容」によって購入意向に差が見られることが分かります。
続いてWeb行動ログを用いた調査結果です。まず購入意向層が特徴的に閲覧しているWebサイトをまとめたものが下表になります。
今回設定した架空の商品はEC中心での販売を見込んでいるという設定ですが、購入意向層も普段から化粧品通販を利用している人が多いようです。また、楽天系のサイトの利用も多いため、ポイント付与などの施策との親和性も伺えます。
次に、@cosme内で閲覧されているカテゴリを購入意向の有無で比較したものが下図になります。
ここでの特徴は、購入意向あり層のメイクアップ関連ブランドの閲覧率が、購入意向のない層の約半分となっている点です。このことからメイクよりもスキンケアでの対策に関心が高く、購入意向者にはスキンケア軸での訴求が刺さりそうです。
まとめ
ここまで「おでこのシワに特化したクリーム」という商品のコンセプト評価調査についてアンケート調査・Web行動ログ分析のそれぞれのデータをピックアップしてみました。特に従来のアンケート調査にWeb行動ログ分析を組み合わせて調査することで、以下のようなメリットがありました。
・利用意向者の獲得施策やWeb接点といった具体的な打ち手の立案
・利用意向者の「普段のWeb行動」によって具体的なペルソナを作成
・事前に想定していなかった仮説をログデータから発見
ヴァリューズのコンセプト評価調査ではアンケート調査とWeb行動ログ分析を組み合わせることで、商品やサービスのwho / what / howのそれぞれを多面的に調査・整理することができます。なお、今回の事例については下記の記事でより詳細に扱っておりますので是非ご覧ください。
アンケートでコンセプト受容性調査を実施!データから考えたスキンケア化粧品は消費者に受け入れられるのか?
https://manamina.valuesccg.com/articles/1490商品を企画し、発売に至るまでには様々な工程がありますが、企画した商品のテーマや内容に対する消費者の反応を確認するのがコンセプト調査です。ヴァリューズが保有しているWeb行動ログデータでの分析結果を基に商品の企画設計を行い、その企画内容が消費者に受け入れられるのかをアンケート調査にて確認しました。
STP・3C分析により具体的になった商品やサービスのコンセプトが、実際に市場に受け入れられるのかを検証するコンセプト評価調査について、理解が深まったでしょうか。ヴァリューズのアンケート×Web行動ログデータ調査に興味を持たれた方はぜひお気軽にご相談ください。また、コンセプト評価調査以外のマーケティング・リサーチについてもヴァリューズでは幅広く行っています。少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。