2021年はじめのClubhouse(クラブハウス)ブームを皮切りに、世間でポッドキャストや音声SNSへの関心が高まり、音声コンテンツの注目度が上昇しました。数年前からポッドキャストなどの音声関連サービスが盛り上がるアメリカやヨーロッパ、中国などのアジア各国同様、日本でも2019年から続々と音声業界へ参入する企業が増加しており、最近ではTwitterへのSpace機能実装などの記憶も新しいかと思います。
今回はそんな音声コンテンツの市場調査を行いつつ、ポッドキャストの関心ユーザーについても分析していきます。
Clubhouseの現状は。音声コンテンツアプリのユーザー数ランキング
まずは音声コンテンツアプリのユーザー数ランキングについて、株式会社ヴァリューズが保有するWeb行動ログデータを使って見ていきましょう。今回は音声コンテンツサービスとして「ポッドキャスト系」「ラジオ系」「オーディオブック系」「音声SNS系」のジャンルのアプリに着目して、上位20アプリをまとめました。下表をご覧ください。
音声コンテンツアプリのユーザー数ランキング
(集計期間:2021年11月、デバイス:スマートフォン)
最もユーザー数を集めていたのは、サブスクで楽曲を聞くだけでなく、ポッドキャストを聞くこともできるAmazon music、Spotifyでした。続いてラジオ放送を聞けるradiko、NHKラジオ らじる★らじるがその後を追います。ここまでが月間100万ユーザー以上のアプリで、その次に34万MAUのオーディオブックアプリAudible、音声SNSアプリのVoicyがランクインしています。
Amazon music、Spotify以外のポッドキャストアプリのユーザー数を考えると、やはりこれらのアプリのユーザーの大部分はポッドキャスト目的ではなく、楽曲を楽しむ目的のユーザーがメインだと言えそうです。とすれば、音声コンテンツの市場規模的にはラジオが頭一つ飛びぬけており、ポッドキャスト・オーディオブック・音声SNSはほとんど同程度の規模だと分かります。
また、2021年前半に話題を集めた音声SNS「Clubhouse」は、現在では約11万MAUほどの規模にとどまっていることが分かりました。2021年2月には約108万MAUと多くの利用者に使われていましたが、今やその10分の1ほどに縮小したことがうかがえます。
▼関連:2021年6月公開の音声コンテンツアプリ調査記事
radikoやDiscord、Clubhouse〜音声コンテンツ市場3サービスのユーザー数や属性を調査
https://manamina.valuesccg.com/articles/1365音声コンテンツ市場のサービス動向を調査しました。取り上げたのはradiko(ラジコ)、Discord(ディスコード)、Clubhouse(クラブハウス)の3サービス。それぞれのサービス概要に加え、ユーザー数推移、ユーザー属性について集計しています。音声コンテンツ市場の分析にお使いください。
音声SNSジャンルのアプリでは、VoicyやSpoon、stand.fmなど、Clubhouseの国内登場以前からサービスを展開していたアプリの方が、現在では利用者数が多い状況でした。ただし、今後Clubhouseが市場での存在感を巻き返す可能性も否めず、注視が必要です。
では続いて、音楽視聴のサブスクサービスを除いた音声コンテンツのアプリについて、ユーザー数推移などを詳しく分析してみます。
本の朗読アプリ「Audible」が過去2年で2倍に成長
今回は、「radiko」「Audible」「Voicy」「Spoon」「stand.fm」の5つを取り上げました。まずはユーザー数推移に注目してみましょう。
(縦軸は対数表記)
音声コンテンツアプリのユーザー数推移
(集計期間:2020年1月~2021年11月、デバイス:スマートフォン)
現在のユーザー数がトップだったradikoですが、ユーザー数としてはこの1年で月間500万~600万ユーザー程度を推移しています。
また、注目したいのが「Voicy」「stand.fm」の2つのアプリです。「Voicy」は2019年12月から右肩上がりにユーザー数が増え続け、直近のMAUではSpoonを抜いています。また、「stand.fm」は2020年1月の段階でMAUは5,000人程度だったものの、その後急成長を見せ、現在では14万MAUほどとなっています。
続いて、radikoを除いたアプリのユーザー数推移グラフを見てみましょう。
音声コンテンツアプリのユーザー数推移
(集計期間:2020年1月~2021年11月、デバイス:スマートフォン)
まず目立つのはSpoonのユーザー数の時期変動です。特に2021年の6月をピークに大きな変動が見られます。ただ、直近では月間20万UU程度となっており、2年間をトータルで見ると、ユーザー数の増加は見られません。一方で、Audibleは2020年1月で月間20万人程度だったユーザー数が、2021年9~11月には月間約40万人程度と2倍近くになっています。
Spoonはエンタメ利用が主目的であり、エンタメ目的のサービスはSpoon以外にもYouTubeやTikTok等競合が多いため、ユーザーを長期間定着させることの難易度は高いでしょう。一方、Audibleは40万冊以上の本の朗読を聴けるアプリで、ビジネス書等を聞いて情報収集に利用するユーザーも多くなっています。Audibleが右肩上がりに成長できた要因のひとつは、同じようなサービスがそこまで多くなく、サービスの独自性を感じたユーザーが定着したからではないかと考えられます。
全体としては、この2年間を通してAudible、Voicy、stand.fmの3つのアプリが大きくユーザー数を伸ばしたことがわかりました。
▼関連記事:音声メディアの中から「個人での配信が可能な6メディア」をピックアップして調査しました。リンク先から無料のホワイトペーパーをダウンロードしてご覧ください。
個人での情報発信や「ながら聴き」を楽しむ人も増える中、盛り上がりをみせる音声メディアに着目し、個人で配信可能な「Voicy」「stand.fm」「spoon」「Radiotalk」「himalaya」「REC.」の6メディアの特徴を比較分析しました。(ページ数|25p)
ニッポン放送のポッドキャストが人気の背景とは
続いて、ポッドキャストに興味を持つユーザーについて調べるため、「ポッドキャスト」検索ユーザーを分析していきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用しました。
まず検索ユーザー数のこの2年間での推移は下図のようになっています。
「ポッドキャスト」検索ユーザーの推移
(集計期間:2019年12月~2021年11月、デバイス:PC&スマートフォン)
時期ごとの波はありながら、2019年12月には2万人程度だった検索ユーザーが徐々に増加し、2021年11月には4万人程度と、約2倍に増加しています。先ほどご紹介したサービスが伸びていることからも分かるように、ポッドキャストに関心を持っているユーザーもやはり増えているようです。
次にユーザーの年齢に注目してみます。年代の構成比が下図になります。
「ポッドキャスト」検索ユーザーの年代別割合
(集計期間:2019年12月~2021年11月、デバイス:PC&スマートフォン)
20代の若者はネット利用者全体と同程度でそこまで高い比率ではなく、30~50代のユーザーが検索のメインになっています。YouTubeやTikTokといった動画コンテンツに慣れ親しんでいる20代よりも、30~50代の方がラジオに慣れ親しんでいる人が多く、親和性が高いのかもしれません。
ではユーザーは、検索の際にどのような情報を求めているのでしょうか。
検索ワードのランキング上位と、ワードネットワークをまとめました。
「ポッドキャスト」の検索キーワード
(集計期間:2019年12月~2021年11月、デバイス:PC&スマートフォン)
「ポッドキャスト」の検索ワードネットワーク
(集計期間:2019年12月~2021年11月、デバイス:PC&スマートフォン)
検索キーワードを見てみると、「ポッドキャスト おすすめ」「ポッドキャスト ランキング」といった聞きたいコンテンツを探す検索行動や、「ポッドキャスト 使い方」で使い方を調べる行動が見られました。また、「ニッポン放送」の指名検索が上位に来ていることが特徴的です。そのほかには、ポッドキャストを英語学習に利用したり、自分が配信する側に回ったりするための検索行動も見られます。
ワードネットワークではこうした検索ワードごとの相関を見ることができます。中央の「ポッドキャスト」から直接つながっている2階層目のワード(「英語」や「おすすめ」など)がポッドキャストと関連性の強いワードです。さらにその下の階層のワードと、2階層目のワードと掛け合わせて見ることで、当該ジャンルに関するユーザーの興味を調べることができます。
たとえば、英語の階層では「初心者」といったワードがあり、ポッドキャストで英語を勉強したい初学者のニーズがうかがえます。また、「おすすめ」の階層では「お笑い」のワードがあり、ポッドキャストのお笑いチャンネルに興味を持つユーザーの存在も見えてくるでしょう。
こうしたユーザーの興味関心は、実際に流入したページにも反映されています。検索後の流入ページの上位をまとめたものが下表です。
「ポッドキャスト」検索ユーザーの流入ページ
(集計期間:2019年12月~2021年11月、デバイス:PC&スマートフォン)
使い方やアプリ、Wikipediaのページがランクインしているなかで、ニッポン放送のポッドキャストステーションが4位に入っています。やはり、ニッポン放送のポッドキャストは高い人気を誇っているようです。
公式ページでは2021年の10月の段階で、ニッポン放送が配信する全ポッドキャストの月間ダウンロード数が1,000万DLを記録したと発表されています。
ニッポン放送ポッドキャスト 2021年10月実績で 月間1000万ダウンロード 突破 | ニッポン放送 ラジオAM1242+FM93
https://www.1242.com/information/263919/FM93.0・AM1242のラジオ局・ニッポン放送のホームページ。「オールナイトニッポン」「ショウアップナイター」などの番組情報や、イベント情報以外にも、記事やコンテンツが満載です。
飯田浩司や辛坊治郎さんといった人気解説者によるニュース系ポッドキャストだけでなく、芸能人を起用した「オールナイトニッポンPODCAST」、オーディオドキュメンタリードラマなど多岐にわたる人気コンテンツを持っていることが人気の理由だと言えそうです。
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まとめ
今回の記事では、音声コンテンツのユーザー数とポッドキャストの関心層について分析しました。音声コンテンツアプリについて、ユーザー数ではラジオアプリの「radiko」が最も多いことが示されました。ポッドキャストやオーディオブック、音声SNSがユーザー数で続くかたちとなっています。また、この2年間を通してAudible、Voicy、stand.fmの3つのアプリが大きくユーザー数を伸ばしています。
ポッドキャスト関心層の調査では、検索ユーザー数の推移から、ポッドキャストに関心を持つユーザーが徐々に増えていることがわかりました。また、検索キーワードや実際の流入ページからは、おすすめを知りたいという行動だけでなく、英語学習への利用や配信側への興味が見られたほか、ニッポン放送のポッドキャストの人気が高いことがわかりました。
今後も音声コンテンツ市場や、ポッドキャスト市場は多様化の進行や規模の拡大が想定されます。ぜひ今回の記事を今後のご参考にしていただければと思います。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2019年12月〜2021年11月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:音声コンテンツアプリの調査→スマートフォン、ポッドキャストの検索者調査→PC・スマートフォンの両デバイス
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。例えば、今回の調査で行った以下のような分析が可能です。
Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
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