こんにちは。データマーケティングの会社・ヴァリューズのデータプロモーション局でコンサルタントを務めている利根川と申します。前職ではWeb広告代理店に勤めており、教育業界や女性向け商材を中心に広告の運用やマーケティングに携わっていました。ヴァリューズでもプロモーションの提案や運用、新人教育を中心に担当しています。
株式会社ヴァリューズ
マーケティングコンサルタント 利根川唯
Web広告代理店出身。大手教育業界クライアント様をはじめ、美容業界クライアント様を中心に主に女性をターゲットとする様々な業界で経験を積む。業界特性に合わせた運用型メディア全般のプランニング/実行を得意とする。
昨今急成長を遂げたデジタル広告は今や日常で目にしない日はないくらい私達の生活に溶け込んでいます。では、デジタル広告はこれまでどのように成長を遂げてきたのでしょうか。
そこで本連載では、デジタル広告にまつわる基礎的な内容をまとめます。今回はインターネット広告の種類や主な取引手法など、デジタル広告の概要についておさらい。これからデジタルマーケティングの業界で働く方や、あらためて基礎を身に着けておきたい方は、ぜひご自身の学びに役立ててみてください。
▼前回はWeb広告の歴史を振り返り、技術の発展とともにWebマーケティングが成長していく様子を概観しました。ぜひ併せてお読みください。
デジタルマーケティングの歴史を振り返る〜現場担当者が語るデジタル広告の基礎
https://manamina.valuesccg.com/articles/1629/デジタルマーケティングの歴史を、ヴァリューズのマーケティングコンサルタント・利根川さんがまとめます。デジタル広告の発展の流れや、デジタルマーケティングの全体図について、現場の担当者が分かりやすく解説。基本を学びたい方は必見です。
2021年、インターネット広告費がマス4媒体を初めて上回る
まずはインターネット広告を取り巻く環境を見ていきましょう。前回はBtoCのEC市場規模が右肩上がりに増加している様子をご紹介しましたが、今回は日本の総広告費の推移グラフを見てみましょう。電通による「2021年 日本の広告費」でレポートされた下図をご覧ください。
日本の総広告費の推移
日本の広告費の推移は2011年の東日本大震災以来、2019年まで右肩上がりに推移してきましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、前年比約89%と落ち込みました。下げ幅としては2009年のリーマンショックと同程度の影響です。
それに対し、2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響が緩和し、またオリンピックの後押しも受け全体的な広告需要が回復し、前年比110%ほどの成長となりました。
続いて媒体別に広告費を見ていきましょう。下図は媒体別の広告費の内訳です。
媒体別広告費<2019年~2021年>
2020年においては新聞や雑誌、テレビメディアなどが軒並み落ち込んでいる中、インターネット広告は前年比105%と伸長しています。巣ごもり需要によってインターネットに接触する機会が増えたことが要因として考えられます。また、プロモーションメディア広告費については各種イベントの中止や延期の影響を受け、昨年対比約75%と大きく落ち込みました。
それに対し、2021年はほぼ全媒体が伸長。その中でもやはりインターネット広告が昨年対比120%超と牽引しています。巣ごもり需要の継続や、動画サービスの利用者が増加したことが要因として挙げられます。また、各媒体の広告費を比較するとインターネット広告費がマスコミ四媒体広告費をはじめて上回りました。
インターネット広告の5つの種類とは
では、成長が続いているインターネット広告費の内訳はどのようになっているのでしょうか。インターネット広告の種類を整理しながら確認していきましょう。
インターネット広告の種類は大きく以下の5つに分類されます。
■1.ディスプレイ広告
サイトやアプリ上の広告枠に表示する画像、テキストなどの形式の広告およびタイアップ広告です。ブログ上やニュースサイトの間などに「広告」「PR」と書かれているようなものがディスプレイ広告であると判断ができます。バナー形式での表示が一般的なため、バナー広告と言われることもあります。
■2.検索連動型広告
検索サイトに入力した特定のワードに応じて、検索結果ページに掲載する広告のことです。ディスプレイ広告とは異なり、GoogleやYahooの検索結果の検索窓の下に表示され、リスティング広告ともいわれます。
■3.ビデオ(動画)広告
動画ファイル形式(映像・音声)の広告。代表的な動画広告としてはYouTubeが挙げられます。YouTubeなどのプラットフォーム内に流れる動画広告をインストリーム広告といい、サイトやアプリ上の広告枠で流れる動画広告をアウトストリーム広告といいます。
■4.成果報酬型広告
インターネット広告を閲覧したユーザーが、あらかじめ設定されたアクションを行った場合に、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告のことです。他の広告とは違い、広告配信だけでは料金が発生しないことが特徴。代表的な手法はアフィリエイト広告が挙げられます。
■5.その他のインターネット広告
上記以外のフォーマットのインターネット広告です。たとえば、メール広告やオーディオ(音声)広告などが挙げられます。
■種類別の市場規模はどれくらい?
上記5つの主要なインターネット広告の種類について、広告媒体費の内訳はどのようになっているのでしょうか。下図をご覧ください。
電通の調査レポート「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」より
全体的な構成比としては検索型連動広告が牽引をしており、全体の約4割を占めています。ただし、2020年と比較をするとビデオ広告の成長が昨年対比132%と顕著に見られます。テクノロジーの進化に伴い、ユーザーとのコミュニケーションはより情報量の多い動画が重宝されるようになったことと、コロナ禍における動画視聴サービスの伸長が後押ししていると考えられます。
そのような背景から、動画広告においては動画のコンテンツ中に配信されるインストリーム広告の方が、動画コンテンツ外で配信されるアウトストリーム広告よりも費用としては多く配信されている状況です。
インターネット広告の3つの主な取引手法
次に、インターネット広告費の取引手法についてまとめます。大きく以下の3つに分類されます。
■1.予約型広告
純広告やタイアップ広告として、代理店・メディアレップ(広告主や代理店に対して広告の掲載や広告枠の仕入れ、販売を行う)経由もしくは直接広告主に販売されるもの、およびデジタル・プラットフォーム(ツール)やアドネットワークを通じて非入札方式(固定価格)で取引されるものを指します。
例えるなら看板の広告のようなもので、決められた枠に一定期間掲載することが可能です。
■2.運用型広告
検索連動型広告、およびデジタル・プラットフォーム(ツール)やアドネットワークを通じて入札方式で取引されるものです。予約型広告とは異なり、運用型広告は枠が決まっておらず、都度広告枠に対してどの広告が掲載されるかリアルタイムでオークションが行われます。
■3.成果報酬型広告
インターネット広告を閲覧したユーザーが、あらかじめ設定されたアクションを行った場合に、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告のことです。
■取引手法別の市場規模はどれくらい?
取引手法別の構成比を見ると、現在主流となっている運用型広告が8割を占めており、前年比約126%と大きく成長しています。また、予約型広告も111%の成長となりましたが構成比としては10%と縮小しました。
電通の調査レポート「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」より
インターネット広告の成長は続く
2020年は新型コロナウイルスの影響を受けて広告費全体の推移は9年ぶりにリーマンショック並みの落ち込みを見せました。しかしながら2021年には回復。また、インターネット広告費がマスコミ四媒体広告費を初めて上回るなど、インターネット広告は成長傾向です。
インターネット広告の取引手法別でみると運用型広告が主流となっており、広告種別で見ると動画の成長が特徴的でした。これはテクノロジーの進化に加えて、コロナ禍における生活の変化が要因と言えそうです。今後は5Gの浸透など通信環境の整備が進むことも見込まれ、インターネット広告がますます成長していくことが期待されます。2022年以降も同様の傾向は継続するのではないでしょうか。
今回はここまで。次回は主流のインターネット広告の特徴について解説していきます。
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前職ではWeb広告代理店に勤めており、教育業界や女性向け商材を中心に広告の運用やマーケティングに携わっていました。業界特性に合わせた運用型メディア全般のプランニング/実行を得意としています。ヴァリューズでもプロモーションの提案や運用、新人教育を中心に担当しています。