「マネコミ!」は「お客様と直接接点を持てる媒体を」との想いで作られた
―― オウンドメディアを運営しようと思ったキッカケを教えてください。
齋藤 瞬さん(以下、齋藤):当社は主に代理店さん経由でお客様へ保険をお届けしており、当社の保険を取り扱っている代理店さんがリアルでのお客様との接点にて、お客様のニーズを把握し、ニーズに応じた情報提供をすることでご契約頂くケースが主流です。ただ、時代の変化もあり、お客様が自ら保険やお金に関する情報をWebサイトやSNSから集める時代になってきました。当社としても、「お客様にとってタメになる情報を直接お届けできる媒体を作ろう」という想いで、2020年5月にオウンドメディア「マネコミ!」を立ち上げました。
「マネコミ!」トップページ
―― オウンドメディアを運営する組織体制について教えてください。
齋藤:「マネコミ!」の運営体制は私を含めた2人体制です。2人でSEO対策をはじめとした流入対策から、その先のお金の無料相談までのジャーニーを検討し、戦略を立て、運営しています。
―― 「マネコミ!」は保険を検討している人というより、もう少し手前の人にアプローチして行きたい、というところがメディアの目的となるのでしょうか?
齋藤:「マネコミ!」は直接的に保険を訴求するコンテンツではなく、お金のことで何かしら悩みを持っている方やお金のことで不安がある方向けの幅広いコンテンツを多く発信しておりますので、そのような悩みを持つ方々が情報を求めて検索され、来訪されるケースが多いと考えております。
「マネコミ!」ではコンテンツを読んでいただくだけでなく、その悩みや不安を直接相談して解消したい!という要望にもお応えできるように「お金のプロとのマッチングサービス」も提供しています。このように「リアルでのサービスに繋がること」も、「マネコミ!」の強みですね。
約3年で月間20万UUから月間60万UUへ。「マネコミ!」の成長の軌跡
―― 「マネコミ!」のUU数はどのように推移しましたか?
齋藤:オウンドメディアの運営がスタートして、3年目が過ぎるところです。
2020年にメディアを立ち上げて1年ほどで、月間の訪問者数は約20万UU(ユニークユーザー)になりました。そこからさらに取り組みを強化し、2023年3月現在では月間60万UUほどになっています。
立ち上げ当初は順調だったのですが、サイトへの流入が落ち込んだ時期もありました。その時は、保険会社が運営するサイトの難しさ等、なかなか苦労しましたね。しかしお客様にとって本当に必要な情報は何かを改めて考え、記事作りの改善等を行った結果、またUUが伸び始めています。
――「マネコミ!」ユーザー層の属性はどうなっていますか?
齋藤:男女比は、ほぼ半々です。年齢層は20代~40代前半までで全体の7割を占めており、マネコミ!に来て欲しいデジタルネイティブ層に来ていただけていると感じております。よく読まれている記事から推測するにZ・α世代から子育て世代まで幅広い方に訪問をいただいております。
―― UU数の伸びに対して社内の反応はいかがですか?
齋藤:50万人を超えたあたりから、社内の「マネコミ!」に対する見方が少し変わりました。こんなに多くのユーザーが来るサイトなんだね」という反応をよくもらうようになりました。
オウンドメディアとして他と比較してそのユーザー数が多いか少ないか、という基準は社内の方々にはなかなか伝わりません。ヴァリューズさんから競合他社が運営しているオウンドメディアのデータ等もいただいて比較をするなど社内での伝え方も工夫をしております。
―― オウンドメディアを運営してから、お客様からの反応や問い合わせはどのように変化しましたか?
齋藤:直接のお声は聞けていないのですが、「マネコミ!」から「お金のプロとのマッチングサービス」を経由しての相談の申し込み件数が徐々に増えていることから、お客様にとってタメになる情報がお伝えできており、信頼されてきているのだと感じております。
当社の保険営業担当も、営業活動のなかでお客様に「マネコミ!」の記事を紹介しているケースがあり、お客様から「あの記事、わかりやすくていい記事だね」と感想をいただくこともあるようです。
―― ユーザーの反応からコンテンツに生かせた事例はありますか?
齋藤:「マネコミ!」に掲載する記事は、「「マネコミ!」に来てもらうための記事」と「お金に関して何らかの気づきを得ていただくための記事」とに分けて制作しています。直接ユーザーにヒアリングをしているわけではありませんが、「お金に関して何らかの気づきを得ていただくための記事」は、過去に記事を見た後に相談をした方が「どの記事を読んで相談をしたか」の分析を行い、次の記事制作に活かしています。
そのような分析から制作をしているのが、「〇歳で子ども2人、専業主婦が保険で備えるべきこと」といったような、ペルソナを具体的に絞りこんだ記事です。「「マネコミ!」に来てもらうための記事」は、社会情勢や季節トレンドを意識し、記事を出稿するタイミングも考え、制作をしています。
Googleアルゴリズムの打撃をキッカケにコンテンツを改善して右肩上がりに成長
―― コンテンツの企画から集客まで、これまで担当されたなかで手応えを感じた施策はどういったものがありましたか?
齋藤:2021年に、Googleアルゴリズムのアップデートが行われたこと等によって、これまで右肩上がりで上がってきたUU数が一時期ガクンと落ちたことがありました。「マネコミ!」だけでなく、いわゆるYMYL領域の各メディアサイトのオーガニック検索の順位が大きく変動しました。
そのとき「もう一度、コンテンツの信頼性を見直そう」と考え、各記事の著者の肩書を紹介することやひとつのテーマを細分化して、複数の記事を制作するといった取り組みをしました。たとえば「老後資金」がテーマなら、「老後資金 いくら必要か」「老後資金 準備の仕方」といったように記事内容を細分化して制作しています。
この取り組みによって、よりお客様の検索ニーズに合致する記事を出せるようになり、再びUUも増えてきました。
―― Googleアルゴリズムアップデートのキャッチアップは、どのような方法でされていますか?
齋藤:アルゴリズムのアップデート情報は一般には公開されておらず、基本的には自前で調べていますが、パートナー企業の方に情報提供をいただくこと等パートナー企業様と一緒に対策を講じております。
――「マネコミ!」にはたくさんのテーマのコンテンツがありますが、ターゲットユーザーのニーズはどのように把握されていますか?
齋藤:ユーザーのニーズは、基本的に検索ボリュームでみています。「このキーワードは最近どれくらいの数が検索されているのか」といったものです。さらに社会情勢の変化や法の改正等はユーザーのニーズが高いと考えており、タイミングを合わせた記事を出稿するように努めております。また、最近だと「Instagramで収益を得るためには」といったZ・α世代をターゲットとした記事も制作をしています。
オウンドメディアを成長させるのは「情報の確かさ」と「マネタイズ(CV)」
―― オウンドメディアを成長させるにあたり、どのようなことを意識されていますか?
齋藤:情報の「確かさ」や「信頼性」を一番重視しています。記事の「信頼性」は開設以来、重視しています。そのために情報の「確かさ」に拘って取り組んでいます。
―― 60万UUのメディア運営を2人だけでなさっていますが、メディア運営でご苦労されているところはどのようなところですか?
齋藤:集客のみを目的としたメディアであれば、コンテンツ作りだけに集中できるため、2人でも十分に運営は可能だと思います。ただ、集客の先のマネタイズ施策との両立が一番苦労するところです。
今は、いわゆる「保険ニーズ未顕在層」の方々が多く「マネコミ!」を訪れてくれています。なので、保険ニーズ未顕在層の方々が、「マネコミ!」内のコンテンツを見て、保険に興味を持ってもらうようにどのようにつなげていくか、お金の相談の必要性をいかに感じてもらうか、を日々悩みながら運営しています。
―― その悩みは、どうしたら解決していくと思われますか?
齋藤:直接的な解決策ではないのですが、ひとつは保険加入を考えている層、つまり「保険ニーズ顕在層」にも来ていただけるメディアにすることだと思います。「保険ニーズ顕在層」に来ていただけるメディアすなわち、保険に関する情報が充実したメディアであり、これは「保険ニーズ未顕在層」に保険の必要性を感じていただくことに必ずつながるものと考えています。
また、60万UUの方に毎月来ていただいているので、会員登録等によるデータを活用した読者アプローチの高度化をしていくことも解決策の一つだと考えています。
「お客さんが自ら見に来てくれる」のがオウンドメディアの価値
―― 齋藤さんが考えるオウンドメディアの価値とは、何ですか?
齋藤:企業側がお客様にダイレクトにアプローチできる手段は限られています。「マネコミ!」を運営しているからこそ、毎月60万UUの方々に企業から新鮮な情報をお伝えでき、「東京海上日動あんしん生命」の名前を多くの方に知っていただける取組みができるのは非常に価値があることだと思います。
企業が新しくメディアを立ち上げる最大のメリットは、企業からの広告ではなく、お客様が自ら検索し、自らオウンドメディアを見に来てくれることだと思います。そこでお客様へ正しい情報をお伝えすることで、お客様への直接的な接点を持てることも魅力だと思います。
――「マネコミ!」の短期的な目標と中長期的な目標を教えてください。
齋藤:短期的には「マネコミ!」の訪問者数を維持しつつ、CVであるお金の相談数を増やすことです。また、中長期的には月間のUU数を100万人規模にし、100万人のデータを活用したお客様へのダイレクトアプローチの高度化を実現することです。
―― 最後に、他にもお金に関するメディアはいくつかあるなかで「マネコミ!」をどのように差別化しようと考えておられるのか、教えてください。
齋藤:「マネコミ!」は情報発信をするだけでなく、お客様ひとりひとりに合ったお金の専門家を直接紹介できるのが、「マネコミ!」の強みだと思っています。
お客様がお金の悩みを持ったときに「マネコミ!」を思い出していただき、「マネコミ!」なら自分で情報収集ができ、かつ、いつでもお金の専門家に気軽に相談ができる!というサイトになっていけるといいなと思います。
1978年長崎県生まれ。1男の母。プログラマを経て現在フリーランスのライターとして活動中。不惑の年齢にしてK-popにハマり、韓国語勉強中。食育アドバイザー、薬膳コーディネーター、野菜スペシャリスト。